【KIYATAプロフィール】
KIYATA(キヤタ)はスリランカの言葉、シンハラ語でノコギリの意。
スリランカに所縁のあった若野忍、由佳夫妻が2008年に立ち上げた木工ユニット・KIYATAは、
森の奥深く 人間以外の者達が
来る者をもてなしてくれている場所
そこにあるものは……
そんな物語を背景に、生活にちょっとしたファンタジーをプラスする生き物をモチーフとしたインテリアを制作し、国内外問わず多くのファンに愛されています。
冬の風物詩のごとく毎年年末に開催される「手紙舎 2nd STORY」での個展「KIYATA国物語」は、事前受付入場を行うほどに大盛況。6年目となる今年は2019年11月27日(水)〜12月8日(日)の開催です。そのひと足先に行われる今回のもみじ市では、河川敷という屋外を舞台に、木から生まれた動物たちがのびのびと呼吸する姿も必見です。
http://www.kiyata.net
Instagram:@kiyataforest
Facebook:https://www.facebook.com/arts.crafts.kiyata/
2019/10/13追記)
<10月14日のもみじ市 in 神代団地 販売方法に関しまして>
10時の開場時にKIYATAブースにお並びになったお客様にクジを引いていただき順番を決めさせていただきます。
*木彫作品がなくなり次第、番号順のご案内は終了いたします。
<出品作品について>
もみじ市では木彫作品は少量になります。おもにプロダクト作品が中心の販売になります。
抽選にお越しいただいた方も木彫作品が売り切れの場合がございますのでご容赦ください。
*もみじ市では受注はお受けいたしません。
木彫作品 *12、13日両日に分けて販売いたします。
ムササビランプ(節ありなどB品含む)、ナマケモノランプ、ウサギ置時計、バスケット各種、キャニスター各種、手鏡、その他
プロダクト作品
金属アクセサリー、刻印ブローチ、マスキングテープ、グラス、スタンプなど
動物箸置きガチャガチャ
【商品カタログ予習帳】
【KIYATAの年表・YEARS】
【KIYATAインタビュー】
今年で4年目のもみじ市参加となるKIYATAさん。毎年打ち合わせの度に、アトリエのある埼玉県飯能市へ伺うのが、もみじ市担当スタッフの楽しみの一つでもあります。というのも、緑いっぱいの飯能の自然に加えて、KIYATA・若野家から溢れ出るホスピタリティといったら……! 温かく迎え入れてくれる若野家のあまりにもの居心地の良さに、仕事を忘れ「帰ってきた……」という気持ちにすら(勝手に)なってしまうほど。
一昨年はインタビュー、そして昨年は毎月更新される謎の動画と、毎年お二人の人となりを深掘りしてきましたが、今年のテーマ「YEARS」に合わせ、いざ「年表を作ってみましょう」とテーブルを挟んで話し始めてみると……まだまだ知らなかったことも多く、改めてKIYATA像がよりくっきりと浮かび上がってきました。
KIYATAは、木工を制作する若野忍さんと、布ものの縫製など木工以外の作業を担当する若野由佳さんからなるユニット。まだ年表作りも序盤だというのに、「二人はどこで出会ったのか……?」と、少々ゴシップ的な気持ちがムクムクと湧いてきました。
忍:絵の個展を開いたときに、由佳が見に来たんです。
由佳:まず絵にとても惹かれて見に行ってみたというのと、話したら共通点が結構あったんですよね。お互いスリランカに行ったことがあったり、阿佐ヶ谷に住んでいたことがあって、同じ飲み屋さんに行ってたりとか。
普段はなかなか聞けないことを、年表作りの勢いで伺ってみましたが、なかなか運命的な出会いをされていたようです。
忍さんに出会った当時はエステティシャンだったという由佳さんですが、留学先のアメリカの大学を卒業して初めに就いたのは、海外を飛び回る添乗員。打ち合わせでも、展示会場でも、いつも周りの人を明るい空気で巻き込み笑顔にしていく由佳さんの普段の立ち振る舞いに、前職が「添乗員」だったというのもうなずけます。
一方忍さんは、美大時代は木工ではなく、絵画を専攻していたのだそう。KIYATAさんが生み出す愛くるしい動物たちを眺めていると、その背景に広がる森や、そこで暮らす動物たちの物語が見えてくるのは、木に絵を描くように作品を生み出しているからなのかもしれません。
忍さんは大学卒業後もアルバイトをしながら創作活動を続け、その後パブリックアートの会社に就職。町にモニュメントを作ったり、壁画の企画などに7年間携わり、退社。ここでKIYATAとしての一つ目の転機が訪れます。
<転機1> 飛騨高山へ〜木工との出会い
「それまで携わっていた現代美術とはまた違った展開で、木を使ってインテリアに広げたものを作ってみたい」と、忍さんはパブリックアートの会社を退職し、飛騨高山にある家具作りの学校へ通います。
忍:アフリカのマスクやアイヌの木彫りとか、もともと木製の素朴な原始美術が大好きだったんですよね。木の生命力に作り手の力と思いが合わさって、新しい命が生まれてくる感じ、これが命の循環の中にいるような気にさせるんです。学校で学んだ木工と今の自分の仕事はずいぶん違いますが、腰を据えて木工と向かい合ういい契機になりました。あれからずっと木と向かい合って毎日削り、身体にも木の匂いが染み付いて、そうしてやっと自分が美術で培ってきた世界観にしっかりとした木工の肉付けができた気がします。
しばらくはパブリックアートの仕事を受けながらも、徐々に木工の仕事を育てていこうと思っていた忍さんですが、2007年にリーマンショックが起き、パブリックアートの仕事は、世の中からどんどんなくなっていきます。今思えば良いきっかけだったようにも感じるのですが、それを機に制作を木工にシフト。そして時計などの木工作品を携えて、二人はクラフト市などのイベントへの出店を始めます。
<転機2>「KIYATA」結成
KIYATAとはスリランカ語でのこぎりの意味。スリランカに住む由佳さんのいとこに、木工にまつわるスリランカ語をいくつか聞いているうちに出てきた「KIYATA」という言葉の響きが気に入り、二人のユニット名としたのだそうです。
そんな「KIYATA」という屋号を掲げ、幾つかのアートイベントに参加していく二人。現代アートバリバリの雰囲気のイベントでは少し浮いてしまったり、逆に「手作り市」のようなイベントでは、お客さんに「もっと努力して、こういうの作った方がいいよ」と100均の木製スプーンを見せられ、落ち込んで帰ることも少なくなかったそう。
由佳:当時は売れなかったけど、同じイベントに出ている作家さんや関係者の人が、作品をすごく褒めてくれたから、悲壮感はなかったですね。
そんななか、「とにかく、わらしべを握りしめながらいろんなところに行ってみるしかない」と思った二人は、2008年のスパイラルで開催された「SICF」に参加。それを機に「CLASKA」や「バーデンバーデン」などでの展示へと繋がっていきます。
忍:当時は今ほどSNSでの発信もできなかったから、“バーデンバーデン”で取扱いが始まりメディアに発信できたのは大きかったです。
そしてKIYATAさんの世界観は、徐々に世の中へと広まっていきます。今では入場制限をしなくてはならないほどの人気ですが、初めてお客さんが押し寄せた、と感じたのは、2013年開催のスパイラルでの展示だったと言います。
忍:“これだけあれば大丈夫ですよ”なんて余裕でいたら、朝、たくさんの方が並んでくださっていて。予想もしていなかったので会期後受け取りではなく即売にしていたから、初日で会場がすっからかんになって、どうしようって。
<転機3>「チームKIYATA」体制確立
その後KIYATA作品を求める人が増えてくださるのに比例して、二人は製作に追われ、まともな生活を送れず体を壊してしまう…という状況になってしまったそう。
由佳:まずは木工のアシスタントさんに来てもらうことにして、忍がようやく睡眠時間をとれるようになりました。ただ今度は私がアシスタントさんのお世話と自分の縫製の仕事に追われて倒れてしまって。これじゃだめだと、縫製などのお手伝いをしてくれる人にも来てもらって、チームKIYATA体制が整ったんです。
もみじ市のKIYATAブースに行くと、由佳さん手作りのお揃いのユニフォームを来て、整列から販売までを行っているのがその「チームKIYATA」の皆さん。普段は飯能のアトリエに集まり、制作を行っている方達ですが、仕事の合間には料理上手な由佳さんの特製ごはんを食べ、遠くに住むアシスタントさんは寝泊りもするなど、まさに“寝食を共に”している仲間でもあります。
2017年のもみじ市サイトでのインタビューでは、仲間が増えた当時のことを思い返し、忍さんは外国の言葉を引用され、こう話されていました。
「早く行きたければ一人でいくのがいい、
遠くに行きたければ大勢でいくのがいい」
そして今、求めてくださる方々に一つでも多くのKIYATAの動物たちを届けようと、忍さん・由佳さんを軸とした「チームKIYATA」は、今日も飯能のアトリエに集まっているのです。
今年はどんな“YEARS”?
6月に北京で初の海外での個展を開催され、今年は「挑戦」の年だというKIYATAさん。北京へ行く前と行った後ではどんな気持ちの変化があったのでしょうか?
忍:こんなに歓迎されるとは思っていなかったですね。お客さんにも“来てくれてありがとう” と言われたり。
由佳:行ってわかったのは、国は関係なく、どこに行っても感覚が同じであれば友達になれるんだってことですね。作品を通じて、いろんな人と家族みたいに一つの個展を作り上げていくのが、一番の平和活動じゃないかなって。
まるでノーベル平和賞の受賞スピーチのようなコメント! ……なんて冗談は抜きにしても、確かに「好きなものが同じ」は、人と人が仲良くなる一番の近道でもあります。そう考えると、KIYATAさんの生み出す動物たちは、その人の暮らしに彩りを加えるのはもちろん、国を飛び越え平和を生む存在にもなり得るのかもしれません。
《インタビューを終えて》
2012年に飯能に移住、自宅横に建てられたアトリエも、現在2棟目を建築中。今回年表を作るべく様々なお話を伺っていると、山の麓に佇むその景色は、忍さん・由佳さんが別々の場所で生まれ、いろんなことを経験し、二人が「行き着いた」理想郷のようにも見えました。
(ちなみに来年・再来年も、日本以外の国での展示を予定されているというKIYATAさん。由佳さんの添乗員としてのキャリアもまた発揮されそうですね!)
(手紙社 城田波穂)