もみじ市 in 神代団地,出店者紹介,ジャンル:ILLUST&DESIGN

ニシワキタダシ

【ニシワキタダシプロフィール】
思わずつっこみたくなるようなおかしなシチュエーションと、ユーモアあふれる関西弁のことばたちが魅力のイラストレーター。その独特の世界観や、“なんともいえない”キャラクターたちのとりこになっている方も多いのではないでしょうか。画風を少しずつ進化させながら日々生まれるニシワキワールドからは目を離せません。代表作『かんさい絵ことば辞典』(パイインターナショナル)をはじめ、絵本『ぼくのともだちカニやまさん』(PHP研究所)『えでみる あいうえおさくぶん』(あかね書房)や、漫画『かきくけおかきちゃん』(大福書林)など著書も多数。
http://www.smoca-n.com/
Instagram:@nishiwaki_t


【ニシワキタダシの年表・YEARS】

【ニシワキタダシさんインタビュー】
もみじ市には2011年から参加し、“なんともいえない”イラストでおなじみのニシワキタダシさん。これまでに3度個展を開催いただいている手紙舎 2nd STORYにお迎えし、担当の梶みのりがお話を伺いました。

アルバイトが最初の転機

ーーーイラストレーターとしてのお仕事の始まりは、アルバイトからだったのですね。
ニシワキ:美大を出てからはしばらくは絵やイラストとは関係のないバイトをしていたのですが、2000年のある時期に求人雑誌の専属イラストレーターのアルバイトを始めました。なんとなく絵の仕事ができたらいいなとは思っていたのですが、そこで3年働いたことが「イラストレーターになろう」と決めたきっかけです。今思うと大学での勉強もそうですが、アルバイトでの経験も大きかったですね。

ーーー当時のお仕事ではどんなイラストを?
ニシワキ:「アットホームな職場です!」とか「がんばるぞ!」みたいな元気な感じのイラストです。しばらくはバイトに専念していたのですが、20代後半の2003年にフリーランスになりました。フリーになってからはその勤めていた求人雑誌からお仕事をもらいつつ、グループ展やイベントに出展したり、売り込みの日々でした。

ーーーフリーランスになり、著書『かんさい絵ことば辞典』のもととなるブログを始められたりと、2003〜2004年は転機が多いですね。
ニシワキ:そうなんです。「かんさい絵ことば辞典」のブログはAmebaさんの「関西公式ブログ」にお誘いいただいてはじめたのですが、公式ブログの終了後も自分で続けて、『かんさい絵ことば辞典』出版にもつながりました。実は2008年ごろに一度別の出版社さんからお声がけいただいたのですが、なかなか企画が進まず……。そわそわしている期間に何度かPIE BOOKS(現パイインターナショナル)の編集者さんからメールをいただいて、PIEさんから出させていただくことになりました。編集さんと「名刺がわりになる本にしよう」と作ったので、思い出深いです。その方が手紙社さんに紹介して推してくださったことで、2011年のイベント「紙ものまつり」にポストカードを出品することになり、これが手紙社さんとの最初のお仕事となりました。

ーーーもみじ市にも「紙ものまつり」と同じ2011年からご参加いただいています。初めて出展された際は、どのような印象でしたか?
ニシワキ:アートイベントなどはよく出展していたのですが、もみじ市はいろんなジャンルの方がいて、おしゃれな印象でした。初参加の年には会場マップのイラストや「もみくじ」というおみくじの企画イラストも担当させていただいて、初めてながら色々関わらせていただいたのが嬉しかったです。

なんともいえない「しりとり」が定番に

ーーーその後はLINEスタンプのリリース、似顔絵ワークショップを始めるなどいまでも人気のコンテンツが並んでいます。「しりとりのカレンダー」もすっかり定番ですね。
ニシワキ:そうですね、最初は2015年版で「かんさい絵ことば辞典」のカレンダーを作らせていただきました。その時はもともと絵の種類があったので「これならできそう」ということで、53枚のイラストを使った週めくりカレンダーになりました。その後続編をとなったときに、自由度がありつつある程度テーマが決まっている“しりとり”で作ることになり、今でも続けさせていただいています。

ーーーしりとりといえば、カレンダーではないですが「ぶちやぶられたふすま」の絵が印象的です。確か、お題で指定された「ぶんぶくちゃがま」を変えたとか……。
ニシワキ:2013年くらいに描いたもので、『えBOOK』(大福書林)の表紙になっているイラストですね。しりとりをテーマにしたグループ展で「ぶんぶくちゃがま」というお題をもらったのですが、なんて自由度がないんだ……と思って、「ぶ」から始まって「ま」で終わる言葉に変えました。「ぶちやぶられたふすま」は自分の中でも気に入った絵になりました。

ーーー2020年版の「しりとりのカレンダー」も完成したとのことで、もみじ市でもぜひたくさんの方にご覧いただきたいですね。
ニシワキ:今回はイラストや台紙の色も今までと少し変えてみました。線も、いままで鉛筆で描いていたのですが今回からシャーペンで、かなり小さめに描いたものを拡大していびつな線を生かしています。ぜひもみじ市でも見ていただきたいです。

本のこと、まんがのこと

ーーーこの2〜3年は3コマまんが「あげたてコロばやしくん」の連載、絵本やまんが本『かきくけおかきちゃん』(大福書林)の出版など、子ども向けだったり、お話の本がふえていますね。
ニシワキ:「あげたてコロばやしくん」は現在も毎日小学生新聞で連載をしていて、生活の一部というか、自分でも楽しく描いています。お子さんからの反応ってなかなかいただく機会がないのですが、展示やイベントでお会いして直接伝えてくださるのはうれしいですね。設定を一生懸命お母さんに説明していたり、切り抜いてスクラップしてくれていたりする子とか。

ーーーご自身の娘さんも「あげたてコロばやしくん」を楽しまれていますか?
ニシワキ:前は仕事で描いていると寄って来て、読み聞かせをすると楽しんで見てくれたり、一度Photoshopで色塗りを手伝ってくれたりしました。最近は忘れたのか、興味を持ってくれていないですね(笑)。

ーーー書籍では、今年は『くらべる・たのしい にたことば絵辞典』(PHPエディターズ)が発売ということですが、どんな内容の辞典なのでしょう?
ニシワキ:オノマトペ1つに対して、音やリズムがにている言葉を選んで対比させながら楽しめる絵辞典です。「おっとり」と「ねっとり」とか、「すっぽり」と「つっぱり」とか……。英訳も入れていて、結構ボリュームのあるものになりそうです。最初、擬音語・擬態語でお話をいただいたんですが、それだけだとしんどくなりそうなので「つっぱり」とか入れてもいいくらいゆるくしていただいて。もみじ市にも並べられるように頑張っています。

ーーー2020年版の「しりとりのカレンダー」もそうですが、絵のタッチも徐々に変わっていっていますね。
ニシワキ:最近はとても小さく絵を描いているんです。

ーーー本当に小さいですね!
ニシワキ:これは万年筆のようなペンで、下書きなしで描いて、コピックで着色しています。小さく描く方が自分が思う線よりいびつな線になって面白いと思って。ずっと仕事で手に馴染む大きさで描いていると次第に上手になって線がきれいになっていくと思うのですが、ちょっといびつな方が、イラストとしてはいいな、面白いなと思います。

ニシワキ:オリジナルでSNSにアップしている絵は自由に、落書きに近いような感じで、仕事の絵とは別で楽しく探りながら描いています。

ーーー今回、お話の中で何度か「自由に」という言葉がでてきて、ふと『えBOOK』の帯を思い出しました。「絵は自由でいいのです」という素敵なメッセージで……。
ニシワキ:そうですね、結局、美大に行ったり、専門学校に行ったりしていてもしていなくても、出来上がった絵を見て他の誰かが「いいな」と思ってくれたら十分良い絵だなと思います。絵って答えがないと思うので、例えば誰かに「こうしたほうが良い」と言われたとしても、まず自分がよしとしていればそれを信じたいなと。

ーーー最初の転機から約20年間、イラストレーターとして活動してきた中で、これからについて目標などはありますか?
ニシワキ:イラストを仕事にしてからは20年近く、フリーランスでも15年くらい続けているんですね。イラストレーターは、依頼があって初めて成立する仕事でもあるかなと思っています。自分から発信できるものもあれど、依頼を受けてお仕事をしている部分が大きくて。ただどうしても流行り廃りがあるというか……新しい良い方がでてくると興味が集まりますが、ちょっとするとまた新しい方がでてきて。そんな中で、すこし客観的な目も持ちつつ、長く続けていけるイラストレーターになれたらいいなと思います。自由に自分が好きなものとか、描けるものとかをつづけていきながら、好きになってくれる方が増えていったらうれしいです。

ーーー本日はありがとうございました! これからのイラストもますます楽しみになりました。

《インタビューを終えて》
今回はニシワキさんのこれまでのお仕事や作品を振り返り、“自由”な発想で“自由”に描いてきたからこそ生まれるイラストやキャラクターが魅力なんだな、と改めて感じました。そしてじっくりお話を伺うなかで、一つひとつ真摯にお答えくださる姿がなんともニシワキさんらしく、楽しいひとときでした。完成したばかりの「しりとりのカレンダー」も見せていただきましたが、めくると思わず笑ってしまうナイスなページばかりです。表紙のイラストは1月1週目の絵ですが、どんな言葉が入るかわかりますか? 答えは……こちら!

(手紙社 梶みのり)

【もみじ市当日の、ニシワキタダシさんのブースイメージはこちら!】