もみじ市 in 神代団地,出店者紹介,ジャンル:ILLUST&DESIGN

大森木綿子

【大森木綿子プロフィール】
心に浮かんだ情景や、四季折々の風景をモチーフとしたイラストを描く、イラストレーター・大森木綿子さん。水彩絵具や色鉛筆、クレヨンなどのさまざまな画材を使ったみずみずしい表現はそのとき聞こえた音や香り、温度までも思い起こさせてくれるような不思議な感覚です。様々な絵柄のポストカードは、いつもより大事に気持ちを届けたくなる素敵な一枚。丁寧な気持ちを届けられるように、一つひとつ帯に包まれています。
https://omoriyuko.com/
Instagram:@momenmemo

【商品カタログ予習帳】

【大森木綿子の年表・YEARS】

【大森木綿子さんインタビュー】
お話を伺いにご自宅を訪れると、元気に迎えてくれたのは大森木綿子さんの愛犬・ポン太郎。ポン太郎をはじめ、人や音楽、植物など、一体どんなものに囲まれて、大森さんはイラストレーターの道に進むことになったのでしょうか。今までの道のりを担当・永井が聞いてきました。

たくさんの刺激を受けたギャラリースタッフ時代

ーーーいつから“イラストレーター”になりたいと思っていたのですか?
大森:いつからと聞かれると……初めはまったく「イラストレーターになりたい!」と思っていなかったんですよね(苦笑)。イラストレーターという職業に就きたいというよりも、絵を描いて発表したり、何か別の仕事をしながら絵を描く生活ができたらいいなと思っていました。イラスト以外でそのとき興味があったものをメインの仕事にして、グループ展やイベントに参加できたらいいなという感じでした。

ーーーそうだったんですね!
大森:なので、短大を卒業してからは、イラストレーターの道を進むというよりかは、地元のギャラリーとレコード店で働きながら小さな展示をちょこちょこやるといった生活です。上京後も地元にいたときと変わらず、ギャラリーとレコード店で働きながらの生活でした。

ーーーギャラリーとレコード店はセットだったんですね!
大森:絵と同じくらい、音楽が好きだったんですよね~。レコード店で働いていた時は、セルジュ・ゲンズブールから入り、ワールドミュージックとジャズが好きでした。ジャンル問わず、広く浅くなんでも興味津々で聴いていましたね。

ーーー絵を描くときや作業をするときはどんな曲を聴いているんですか?
大森:最近は、ジャズと阿部海太郎さんの曲を良く聴いています。深夜の作業ではラジオも流したり。窓の外の音だけで、静かな時間もいいですよね。

ーーーたしかに、作業をしているときにぴったりですね。では、イラストレーターになりたいとか、絵を仕事にしたいと思ったのは、何がきっかけだったんですか?
大森:上京後にイラストレーションを中心としたギャラリーで働いたり、友人達が絵を仕事にしている姿を見たりしたことがきっかけでした。以前はただ絵を描くことが好きなだけで、これを仕事にできるとは思ってもいなかったんですが、ギャラリーで働いているうちに私も絵を仕事にしたいと思うようになったんです。

ーーーギャラリーでの出会いがたくさんの刺激をくれたんですね。

きっかけはポン太郎

ーーー転機は2008年なんですね。この年の引越しを機に、この可愛らしいポン太郎が家族に!
大森:そうです。念願だった犬と暮らすことが嬉しくて、絵本の収入でポン太郎の成長を記録するためにカメラを買いました! そして毎日撮った写真1枚と合わせて一言日記をつけていたんです。残念なことに、日記をつけていたWEBサービスが終了してしまい、記録はなくなってしまったのですが……。ポン太郎の成長記録を描き始めたこの頃から、身の回りのものをモチーフにして描くようになりました。

大森さんの愛犬・ポン太郎。

ーーー残念! その日記、とても見たかったです。それにしても描きたいものが決まったきっかけが、ポン太郎だったとは!
大森:犬を迎えて、家族や暮らしのことを大切にしたいと思うようになったのが、大きな心の変化でした。

ーーーちなみにですが、犬のイラストを描くことはないんですか?
大森:ポン太郎の絵も初期は描いていました。実は、密かにカードも1つあるのです……。今は空想の世界や自然のものなど、抽象的なモチーフや模様を描くことに惹かれているので、描くことはないですが。スタンプなど、何か別の媒体で描いたら楽しいかもしれませんね!

ーーー確かに! 大森さんが描くポン太郎とっても気になります。描きたいものが決まったこの頃からポストカードも作り始めたんですよね。
大森:初めは個展に5枚ほどしか並んでいませんでした。実はこのカード、夫にデザインをお願いしたんです。私の思いを汲み取って、素敵な形にしてくれました。普通のポストカードの形とはちがった形にしたかったので横長のポストカードにして、受け取る方へ丁寧な気持ちを届けたいという想いを込めて帯でくるみました。ちなみに封筒もとても気に入っています。封筒から絵が見えて、お客さまが買いやすく、メッセージが見えない工夫ができないだろうかと、何年も試行錯誤した末に出来たものなんです。どの柄にも合う面白い封筒ができました。

ーーーカードは今全部で何種類くらいあるんですか?
大森:200種類くらいですかね! もみじ市では、季節の絵を中心に 150種類の制作を目標にしています。

ーーー……すごい種類! それだけたくさんの絵を描いていて、上手く描けないときはないんですか?
大森:もちろんあります。そういうときは、まず一晩おいてみることにしています。一度寝て、翌朝新しい目で見ると、違った印象を持つことがあるんです。描けない時は、モチーフの題材を実際に観に行ったりもしますね。描きたい木の生えている場所を調べて、訪ねたり。この白樺の木も実際に観に行きました。

白樺の木が描かれたポストカード。

大森:あと、長く辛いときが続く場合は、魔女の宅急便に出てくる画家の女の子の言葉を思い出してます。

ーーー飛べなくなったキキに対して言った、「ジタバタするしかない。描いて描いて描きまくる。それでもだめだったら、描くのをやめる」というセリフですよね。私も大人になった今こそ、あの場面を見て勇気付けられます。

ーーーすごく思い出に残っている絵はありますか?
大森:どの絵にも思い出があるんですが、今思い浮かんだのは昨年描いた「コデマリと月」です。ちょうど絵を描いていた期間に、谷川俊太郎さんの朗読会へ行き、「まり」と「まり また」という2つの詩を聴きました。物語が心に響いて、家に帰って一気に描きあげることができたんです。夜長堂さんで開催された、てまり作家の布仁美さんとの2人展のために描いた作品です。

「コデマリと月」

憧れていたもみじ市を経て、フリーランスの道へ

ーーー絵を仕事にしてからはどんな生活になりましたか?
大森:2014年にもみじ市に初めて参加したことをきっかけに、少しずつイラストのお仕事が増えていきました。全国のお店に紙雑貨を置いていただくようにもなって、徐々に生活が安定してきたのを覚えています。

初めてのもみじ市に出展したときの作品たち

ーーーもみじ市がきっかけとは嬉しいです! 初めてのもみじ市はどうでしたか?
大森:1番のブース番号で、入り口すぐ近くでしたので、沢山のお客さまが並んでいる姿が見えてドキドキしていました。当日はいっぱいいっぱいで全く余裕がありませんでしたが、作品を見ていただけることが嬉しくて、「とにかく楽しくやりきった!」という思い出です。その後の仕事につながる出会いなどもいただきました。

graniphとのコラボレーションアイテム
ちいさく持てるマスキングテープ「KITTA」のイラストを担当

ーーーいろいろなところとコラボして、素敵な作品を生み出されていますよね。
大森:フリーランスになって4年、やっと自分のペースがつかめてきた気がします。

ーーー大森さんの今年のもみじ市は、どんな“ YEARS ”でしょうか?
大森:オリジナルのマスキングテープを作りました。定番の雑貨ですが、新商品にワクワクしています。イベント限定の、他では買えないカードも作る予定です。恒例のカードで作るカレンダーもありますので、楽しみにしていてくださいね。今年の春から続いている、Mellow Glassさんとのコラボ作品も、素敵なものになりそうです!

ーーーオリジナルのマスキングテープに限定カード、コラボ作品。見所がいっぱいですね!

《インタビューを終えて》
イラストレーターという肩書きがつくまでは、「ギャラリー・レコード店 × イラスト」「生地の卸会社 × イラスト」「福祉関連のお仕事 × イラスト」のように、「そのとき興味のあったお仕事 × イラスト」という形で、様々な仕事に就きながら絵を描き続けてきた大森さん。一見イラストと直接結びつくことのないような経験も、今の大森さんの表現の柔軟さに繋がっている気がしました。昨年のもみじ市で、「charan」の山田亜衣さんとコラボした『5つの湖と月』という作品は、山田さんが手がけた丸いブローチが湖に見えてきたから、そこに映りこむ月や植物を、1つの物語を描くイメージで描いたそうです。どの絵にも思い出があるとおっしゃっていたように、1枚の絵からはいろいろな物語が聞こえてきます。「見たことあるかも」と感じる風景に、愛着が湧くことも。大森さんが去年のもみじ市が終わってから、どんなことを感じ、どんな風景を見てきたのか、そんな大森さんの1年をちょっと垣間見られるような素敵な作品の数々、どうぞお楽しみに。

(手紙社 永井里実)