ジャンル:CRAFT

ナカキョウ工房

【ナカキョウ工房プロフィール】
目を合わせてしまったら、思わず口元がニヤリと緩む。甘すぎず渋すぎず、なんとも愛おしい作品の数々を生み出すのは、ナカキョウ工房・中澤京子さん。2010年のクラフトマーケットへの出店をきっかけとして作家活動をスタート。今は日々自宅兼アトリエで制作を行っている。「年々細かくなっていって困る」と笑いながら施される緻密な刺繍には、もはや手工芸品としての美しさが漂っており、感嘆の声がこぼれるばかり。すらりとしてクールな外見とは裏腹に、熱いもみじ市愛を胸に秘めた中澤さん。担当2年目の今年は、柿渋染のリンゴブローチを胸に、河川敷までお伴します。
https://www.nakazawakyoko.com/

【月刊 ナカキョウ工房 7月号】
特集「好きから生まれるモノづくり〜ナカキョウコレクション・動物編〜」

動物たちは無表情なのに、どうしてつられるように笑ってしまうのだろう? 見つめているとたまらなく愛おしくなるけれど、単なる「可愛い」では言い表せない独特の魅力。ナカキョウ工房・中澤京子さんの作るブローチの、そのアイディアの源はなんだろうか。「月刊ナカキョウ工房」では、作品作りのインスピレーションの元となっているという愛蔵の品々、“ナカキョウコレクション”を公開。彼女の生み出す作品と、コレクションとの繋がりを発見していく。

机の上にずらりと並ぶ、異国情緒漂う人形、絵本、布地……。ひとつひとつが強烈な個性を放つこれらは、ナカキョウ工房・中澤さんの愛する民芸品の数々。“ナカキョウワールド”を築き上げている品々だ。自宅兼アトリエの作業スペースは、ぐるりと好きなものに囲まれているという中澤さん。そんな彼女の愛する民芸品の膨大なコレクションの中から、今回は特に「柿渋ブローチ」に繋がっているという、「動物にまつわるコレクション」を用意してもらった。

民芸品の風合い。柿渋染との出会い
今やナカキョウ工房の代表作とも呼べる、「柿渋ブローチ」。デフォルメされてはいるが、実際の動物の写真などからスケッチを起こし、ブローチにすべくデザインを行なった上で、型紙を取っている。柿渋染の生地の上に、細やかなステッチを施し、小さなパーツを組み合わせ、職人技とも呼べる繊細さをもってまつり縫いを経て完成。最後にブローチピンを縫い付けて、手刷りの台紙にセットされ、私たちの元へと送り出される。

柿渋染の生地との出会いは、本当にたまたまだったという。あるクラフトマーケットで、隣り合わせで出店していたのが、今も毎日のように中澤さんが手にしている柿渋染の作り手だったそうだ。その生地は、中澤さんが思い描いていた通りの「まさに理想」の仕上がりをもたらしてくれた。愛する民芸品の風合いを醸し、年月を経て少しずつ変化する味わいをもつ素材との出会いが、今の彼女の作品作りを支えている。

ナカキョウコレクション・動物編

コレクションの中でも一際異彩を放っていたネズミ(?)の人形(写真左手の2体)は2001年頃、バリを訪れた際に出会ったそうだ。口を開けると白い歯と赤い舌が覗き、どこか凶悪さを感じてしまう。実は背中にチャックがついていて、中にバッグも入っているのだが、決してエコバッグのような便利なものではなく、人形本体を入れるといっぱいになってしまうという仕様。「この記事では絶対にネズミを写したい」と実は中澤さん一押しの逸品だ。ゆるく微笑むマーライオンのような生き物(写真右下・オレンジ色の動物)は、パナマのモラというパッチワークで作られた手工芸品。緑色のひだに色鮮やかな刺繍の生える布はインドのもの。「この辺の色使いや刺繍のみっちり具合は参考にしている」のだそう。色鮮やかなブリキのオーナメントはメキシコ産、ポシェットの出自は不明だが、どちらも土産でもらったものだという。

大きな目とふわふわとした毛糸の表情が愛らしい人形(画面左手から右手奥にかけて並ぶ6体)は、メキシコで作られたもの。中にハギレが詰まっているのか、みっちりとした触り心地。精巧な刺繍に艶のある生地が美しい5体の人形は、曰くおそらく中国の干支をモチーフにしているのではないかとのこと。なんと手紙社の「関西蚤の市」で出会ったそうだ。繊細な手仕事は、中澤さんのブローチを思わせる。

子供の頃から好きだという世界の民芸品。風合い、施された手仕事、“整いすぎない”魅力。ここに集まった品々が、ナカキョウ工房の作品作りに独特のスパイスを効かせているのかもしれない。

(編集・本間火詩)

次回「ナカキョウコレクション・刺繍編」