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【特別編/紅組:椿野恵里子】近くにある美しさを切り取る
2008年の夏、手紙社のwebマガジン『今日のお手紙』で取材させていただきたいと、椿野さんのご自宅兼アトリエを訪ねた。当時はまだ大阪市内に住んでいて、古い集合住宅の一室の白い漆喰の壁の前が、撮影場所なのだと教えてくれた。撮影の対象は、自分が暮らす中で、自然に出合ったもの。
今年で16年目を迎えるという長細いカレンダーには、道ばたや森で拾って来たような植物たちが、ありのままの姿で静かに佇む姿が写し出されていた。すらすらと軽快に踊る手書きの文字が、ところどころでアクセントになっている。ただ美しいというだけでなく、暮らしの匂いと手作業の温度が感じられる、魅力的なカレンダーだと思った。
陶芸家の安部太一さんと結婚されて、いまは島根県松江市に住んでいる。移り住むと聞いたときから、椿野さんが写し出すものがどのように変わっていくのか、興味深く思っていた。
8月の島根県松江市。予想に反して、椿野さんのアトリエにもなっている住まいは、街の中にある集合住宅の一室だった。勝手な妄想では、山の麓の静かな村にある平屋の一軒家で、、、みたいなことだったが。そこは、小さなベランダから明るい光がさす、居心地のよい場所だった。そのベランダは緑でいっぱいで、植物に手が入りすぎていない姿が、椿野さんの庭らしく思えた。
「ここで撮影しているんです」。そう教えてくれたのは、漆喰の白い壁と古い長細い机のある一角。そこはまるで、大阪の部屋と変わっていなかった。この場所で優しい光がさす時間を見計らい、いまだというタイミングでカメラを構える。撮影対象の植物は、散歩の途中でであったり、庭で育てたものを摘んでくる。季節はすぐに変わるから、いつでも出会いの準備をしている。だから、移動はもっぱら自転車が都合がよいのだという。
椿野さんの写す世界は、あの当時と変わってはいなかった。カレンダーのスタイルも、フィルムで撮影したプリント写真を使っているということも変わってない。ただ、季節ごとに出合う植物は同じものは存在しないし、お子さんが生まれ、歩く場所も見えているものも変わっているだろう。ベランダの植物たちも少しずつ出番が増えているようだ。いずれは庭のある家に移り住み、自分が育てた植物でカレンダーを作りたいという夢もある。
そうして16年目となる2016年のカレンダーが、もみじ市でお披露目となる。
もしかすると、あの美しく切り取られた写真は、けして特別なものでなく、自分たちの周りにもあるのかもしれない。ただ気づかないだけ、見ようとしていないだけで。椿野さんのカレンダーは、ふとそんなことを気づかせてくれる存在でもあるのかもしれない。
文●渡辺洋子
椿野恵里子さんのご紹介ページは、こちら。