事務局スタッフが語る、もみじ市の本当の魅力⑱
もみじ市事務局のメンバーがそれぞれ感じた「もみじ市」の魅力についてお伝えします。もみじ市で起こる、2日間だけの“奇蹟”。それは日常をより慈しむ人々の静かな、それでいて強い想いが引き起こす、と藤井道郎は信じています。
「戦争に反対する唯一の手段は、各自の生活を美しくして、それに執着することである」
90年代東京発の音楽シーンをエレガントに彩った、ピチカート・ファイヴというサウンド・ユニットのリーダーにして現在はプロデューサー、編曲家としても活躍する小西康陽氏がよく引く、昭和の英文学者吉田健一の遺した言葉だ。
戦後日本の礎を築いたパワフルなリーダーとして活躍した時の首相、吉田茂の長男にして、政治家を継がないという規格外な自由人のコンテクストだけに、そのとらえられ方はさまざまのようだけれど。個人的には判断に迷ったときに自分にあてがう物差しとして、常に心のどこかにしまってあるようなフシがある。
そりゃあ仕事に学校に家庭にと、たくさんのことに忙殺される日々の中、「神は細部に宿る」と大上段から啓示されても、生活のディティールを追求する呼び水にはならないだろう。なにより、リアリティがない。
だが、ここにはそんな桃源郷に本気で手をのばそうとしている人たちが居る。出店者として、スタッフとして、お客さんとして。そう、みんな信じているのだ。戦争とはいわずとも、それぞれの日常をていねいに慈しむことで、目の前に広がる世界をアップデートすることはいくらでも可能だということを。そして、それはいつだって、その掌に握りしめた静かな想いこそが着火剤になっていることを。
「もみじ市」という場所にそっと、だが確かに強く灯るそんな熱が起こす奇蹟を、ぼくは本気で信じている。