切り絵作家・イラストレーター。武蔵野美術大学建築科卒。
設計事務所へ勤務後に「人がにっこりする絵」をテーマにした切り絵作品をつくり始める。
2007年より東京を中心に各地で個展〈ちょっきんきりえ展〉を16回開催し作品を多数発表。
フライヤー/ショップカード/店舗シンボルマーク/CDアートワーク/書籍の装幀・挿画/ウェルカムボードなど幅広く制作活動を行う。
2013年からは「ハーマンミラーストア」やイベント「太陽と星空のサーカス」などでマッチラベルやコースターをつくるワークショップを開催している。
民藝・フォークアートが好きで、国内の民藝スポットを毎年旅している。
ブラジル音楽や1960年代グラフィックデザイン、古道具が好き。
Q.1. 今回のテーマに込めた思いを教えてください。
テーマ:「ちょっきんきりえ展 in もみじ市2014」
ここ数年、日本国内の民芸スポットを巡る旅をしています。
そこで出会ったもの(人・もの・風景・空気)は、自分の作品に大きく影響を与えつつあると思っています。
自然体で自由に作為のない素直な気持ちで作品に向かいたいと日々思っている中で制作したのが、この切り絵作品「たのしい秋の日」。もみじ市は初めての参加となりますが、普段の個展とはまた違った、手に取ってもらう手軽な作品やグッズを販売したいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
Q.2. 当日はどのようなディスプレイで楽しませてくれますか?
●ブロックチェック×古道具×自分の作品
ぼくは古いマンションの一室で、自分が気に入ったいろいろな古いものに囲まれて暮らしています。
作品をつくる作業机、骨董市で買ったガラスのペンダントライト、木の本棚、使い込まれた北欧の丸テーブル、世界の民芸品の動物たち…。
自分にとっては、ぴかぴかでツルッとした最新のものより、時間が経過して生まれたざらっとした質感が好きで心地よく感じます。 そうしたモノに似合う作品でありたいと思いながら、日々制作しています。
今回のもみじ市では、テーブルに紺×白のブロックチェックの布をかけ、古い木の箱や板などの古道具を少し置き、そこに自分の作品やグッズを展示したいと考えています。 それは、自分の部屋にどこか似た空間なのかもしれません。
Q.3. もみじ市へお越しくださる皆さまへメッセージをお願いします。
思いがけずお声がけいただいた、今回のもみじ市。出展できる機会をいただいたこと、ぼくはとても感謝しています。だから、みなさまに見ていただくために精一杯の気持ちを込めた作品を作り、当日(28日のみ)を迎えたいと思っています(1日だけの参加ですが、気持ちの上では今までの個展並みに…いや、それ以上かもしれません)。青空の下でみなさまにお会いできること、とても楽しみにしています。
そして、今回のもみじ市では切り絵の原画も見ていただこうと思っていますが、いままで作ったことのないグッズをいろいろ作ってみたいと思い、準備をスタートしました。布や印刷物への加工は、紙の切り絵と違った風合いと楽しさがあるなあ、と実感しています。これを書いている時点でまだまだ作成中ですが…。
作品原画、てぬぐい、マッチ箱、紙のコースター、一筆箋、を出展する予定です。
◎作品原画
今までの個展では、会場の壁に飾ることが多かったのですが、今回はテーブルの上に置ける少し小さいサイズの作品を中心に制作しています。切り絵の原画は自分が慣れている表現方法でもあり、そのときに考えたこと、見たものがダイレクトに作品に表れるものだと思っています。
◎てぬぐい
今回メインビジュアルとして作った鳥の切り絵を加工し、てぬぐいになったときのモチーフの密度とバランスを考えて、色、形ともデザインし直しました。とても親切にご対応していただいた香川県のてぬぐい工房で染めていただき、青とグレーの2色を各50枚限定で作りました。
◎マッチ箱
今までの個展でも販売したことがありましたが、いつも印刷した絵を貼ったものでした。今回は、ひとつひとつ、すべて原画で切り絵作品を直接貼って作っています。マッチ箱という本当に小さな紙面ですが、この中にシンプルに、大胆に構図を考えるのは楽しいものです。200個つくると決めたものの、本当にギリギリのスケジュール…。「はたして終わるのか?」と自分に問いかけながら作っています。
◎コースター
自分のワークショップでもよく題材にしてきた、厚紙のコースター。やわらかいゴム板を切ってオリジナルスタンプをつくり、それを押して作っています。スタンプならではの潔い色と形をモチーフに、果物や幾何学のきれいなパターンで、何種類か作りたいと考えています。
◎一筆箋
絵やデザインの仕事をする中で試行錯誤してきた、手描きの線画をもとにPCでデザインする方法。この方法で今回何か作ってみたいと思いました。ちょっとした贈り物に添えてメッセージを伝えるための短い言葉を書ける一筆箋です。絵を入れ替えれば今後も種類を増やしていけるように、フォーマットを統一して4種類つくりました。
YUYAさんの切り絵作品には欧米デザインを意識したモダンなインテリアに馴染む力がある。それでいて民芸の器とも自然と馴染む魅力もある。ほっとする日本的なデザインにも見えるし、いい感じに力の抜けたヨーロッパの洒落た雰囲気もある。それがわたしの考えるYUYAさんの作品の魅力だ。
きっとそれはYUYAさんがポール・ランドやブルーナやサヴィニャックやムナーリなど、偉大な海外のデザイナーやイラストレーターの作品を好み、そして日本の伝統を受け継ぐ民芸の器や世界のフォークアートをこよなく愛し、生活の中に取り入れていることに関係しているのだろう。
YUYAさんが蒐集し、住まいに飾っている民芸品や世界各国の愛嬌のある郷土玩具は、年代も作られた国もバラバラなのに調和していて、洗練されているのだけれど微笑ましいかわいらしさがある。その特徴がそのままにYUYAさんの作品に繋がっているのがよくわかる。
YUYAさんはひとことで言うと健康な絵が描きたいのだという。健康な絵で人を元気にする。女性だけでなくもっと広い人々に向けたスタンダードなかわいらしさでありたいそうだ。
その言葉通り、YUYAさんの作品を見るとにっこりとやわらかい気持ちになり、なんだか励まされる。
もみじ市に出ると決めてくださってから、YUYAさんは並々ならぬ決意をもって作品づくりに向かっているように見てとれた。
事情があって出店は28日の1日だけなのだが、その中で最大限の表現をしようとYUYAさんとしても新たな取り組みをしてくれている。
ひとつにはてぬぐいの制作。もみじ市のメインビジュアル用に製作した切り絵のデザインをベースにてぬぐい用に改めてデザインし染め方にもこだわり、染め工房も様々な選択肢の中から最善のものを選んで製作してくれている。てぬぐいに付けるクラフト紙も特別に製作した。
もうひとつにはマッチ箱作品を合計200個作ること。
これまでは大きな切り絵作品を小さくプリントしマッチ箱に貼付けるという方式だったが、もみじ市のために直接マッチ箱に切り絵をするというスタイルの作品になり、それも200個というとてつもない量に挑戦してくれていた。
その挑戦のために日課であるブログの更新が滞っていたり、いつもはおだやかなコメントも、苦しんでストイックに製作をしていることを感じさせる日もあった。
その様子は彼のブログやインスタグラムから毎日少しずつ知ることができる。
旅先や日常の中での経験を蓄積し、よりよい作品を生み出そうとする真摯な姿勢と出来上がってくる作品をSNSを通じてかいま見ることで、もみじ市の事務局スタッフとしてとても勇気づけられたし、実際にこの目で作品を見ることができる当日への期待は高まるばかりなのである。
先日、ようやく200個のマッチ作品が出来上がったということでその写真とともに報告をしてくれた。
一堂に並ぶその姿はただただ圧巻。
マッチ箱の集合体もまたひとつの贅沢な作品のようであり、これを見るためだけでももみじ市に来る価値があると言い切ってしまいたくなるパワーを感じてにっこりとしてしまうのだ。