noyama「Bottled Foods Shop」(20日)

もみじ市に欠かせないものは、何だろうか。もちろん、最高の作り手・表現者である出店者の方々が集まってくれて、足を運んでくれるたくさんのお客さまがいるからこそ、こうして続けられている。ライブステージでの演奏があるから会場には一体感が生まれるし、手前味噌だけれどスタッフ(事務局とボランティアのみんな)がいなければ始まらない。それだけだろうか? まだ、重要な何かを忘れている気がする。もみじ市で感じた、喜び、感動。その記憶を呼び起こすと、同時に沸き上がってくる感覚がある。風のにおい、太陽の光、草の感触。青空はとびきりの舞台セットになり、芝生は柔らかな観客席になる。太陽の光を受けてキラキラ輝く川面は、どんな特殊効果が束になっても敵わない。一日の終わりに日が沈んで行く様子は、まさにエンディングにふさわしい演出だ。そうだ、いつだって、もみじ市は自然の中にあるのだ。

もみじ市が自然の中で行われていること。noyamaの4人に会って、私はそのことに改めて気づかされた。それは、noyamaの活動のテーマのひとつが「自然の楽しさ・美しさ」を伝えることであり、今回その舞台となるのが、我らが「もみじ市」だから。

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noyamaのメンバーは、自然の素材をモチーフに制作をする木工アーティスト・しみずまゆこさん、食・住・自然に関する企画やライティングを行う編集者・高橋紡さん、山を撮ることをライフワークとする写真家・野川かさねさん、玄米菜食を得意とする料理研究家・山戸ユカさんの4人。それぞれ、違うジャンルながら表現することを仕事としている。ユニット結成のきっかけは、アウトドア関連の仕事で、高橋さん、野川さんと一緒になることが多かった山戸さんの発案から。

「当時はまだ、女性のアウトドアがここまで定番ではなくて。私たちが山や川に行く時に着たい服がなく、女性目線の提案をしている雑誌もありませんでした。『そういう本を作りたいよね』って私が野川さんと高橋さんに声をかけて、本を出したいと書籍の企画をたてたんです」

3人の思いが一致し、noyamaとしての活動がスタートしたのは、”山ガール”ブームより少しだけ早い2008年。

「それぞれ、アウトドア雑誌の編集やメーカーと関わりがあったので、『自然と、もうすぐそういうブームが“来る”だろうな』という感じはありました。やりたいことが本になるタイミングと、流行がマッチしたんですね」

1年以上の歳月をかけ、出来上がった1冊目の本のタイトルは『つながる外ごはん』。初心者に向けた「外ごはん」のアドバイスや、毎日の暮らしにも役立ちそうな料理のレシピが盛り込まれている。章ごとに、3人のアウトドアにまつわる小さなストーリーが綴られていて、読み進めていくうちに心が山へ、海へと旅立って行き、体も後を追いたがってうずうずとしてくる。

「料理本は短い期限の中で撮影をすることが多いんですよね。でも、この本は期限がなかったので、季節を追いかけながら撮影していたら、自然と1年以上経っていました。四季折々の変化がちゃんと写りこんでいるので、写真の質が全然違うんです」

このときは、モデルやスタイリングなど撮影の手伝いをしてくれていたしみずさん。撮影に同行する機会も多く、同じ感覚を持っていたことから「一緒にやろう!」とメンバーに。そこから現在に至るまで、4人で活動を続けている。

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アウトドアと聞くと、道具をそろえるのがたいへんそう、と躊躇する人もいるだろう。けれどnoyamaが提案するのは、もっと簡単に、日常のすぐそばにある自然との関わり方だ。

「私たちの中でのアウトドアは、インドアに対してのアウトドアなんです。もちろん山や川で遊ぶことも楽しいんだけれど、もっと広い意味での野外。ちょっとした公園だとか庭だったり、身近なところにある自然を感じることを提案しているんです。身近に自然を感じたら、もうちょっと豊かな暮らしができるんじゃないのかなと」
今年の4月に発売された2冊目の本のタイトルは「noyamaのおつまみいろは」。お酒好きという共通点も持つ4人らしく、酒のつまみがテーマの本だが、ページをめくると目に飛び込んで来るのは、彩り豊かな野菜を使った料理の数々だ。
「おつまみの本だけど、五感で感じられたらいいなと思って章分けをしています。野菜の色がきれいとか、はごたえが楽しいとか」

大きくレイアウトされた色鮮やかな料理の写真に心が躍り、随所に差し込まれたしみずさんのイラストが料理の楽しさを引き立てている。1冊目とはまた違った角度からの提案。けれどnoyamaらしいと感じるのは、4人が共に抱える、創作に対する姿勢にブレがないからだろう。

「打ち合わせは真剣です。ビールを飲みながらしたいけど、飲んじゃダメよ。まだダメよ、と。で、終わったらプシュッと(笑)。やっぱり、みんなそれぞれの世界のプロになりたいと思っている。本は自分たち以外に多くの人の手を借りてはじめて出版できるものだし、買ってくださった方からはお金もちょうだいしています。趣味のつもりでやっていたらばちがあたる。満足してもらえる質が高い読みものを作りたいし、本を通じて楽しいことを多くの方とシェアしたいんです」(高橋さん)

「noyamaはそれぞれ得意とすることのジャンルが違っていて、尊敬できる人たち。普段はひとりで料理家として仕事をしていますが、3人から『すごくいいね』と言ってもらえる料理を提案しないといけないし。そうできなかったらいやだし。その辺の妥協ができないから、話し合いも長くなる。自分ひとりじゃ出来ないことですね」(山戸さん)

「(noyamaのメンバーは)友達というだけではなくて、仕事のつながりだけでもなくて、”自然がつないでくれた仲間”というのが一番しっくりくるかもしれないです」(しみずさん)

「マイペースに、そして今回のもみじ市のように色々な方たちと関わりあいながら、たのしく、ながく活動を続けていきたいと思っています」(野川さん)

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本だけを見ると料理の印象が強いnoyamaだが、自然をテーマにした様々なワークショップも行っている。

「毎年出させていただいているキャンプフェスのイベントでは、写真を展示したり焚火をしたり、料理教室をしたり、色々なことをやらせていただいています。出るイベントによって、『前回は料理だったから今回は違うのにしようか?』など、内容を考えています。しみずさんのものづくりや野川さんの写真のワークショップをすることも。イベントに出ると、『本を読みました』と言って来てくれる人もいて。出版の仕事をしているとそんなに読者の人とお話することってないから、すごくうれしいですね」(高橋さん)

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そして今回、もみじ市でnoyamaの4人が提案してくれるのは、簡単にできる外ごはんのすすめ。カレーペーストや季節のスープなど、4種類ほどの「外ごはんの素」となる瓶詰めが登場!

「テーマがカラフルということもあって、色のきれいな旬の野菜を使った、目にも鮮やかで口にもおいしい瓶詰めを販売します。それをもって出かければ、バーナーなどで温めるだけでどこでも食べられます。お手軽だけれど、化学調味料や保存料は入っていない。ちゃんとつくったものを食べようという提案です」

さらに、シングルバーナーを使って瓶詰めのスープを温めるワークショップも開催。山戸さんによる、ダッチオーブンのデモンストレーション付き(メニューは、チキンと野菜のダッチオーブングリル!)。漫談や小咄も飛び出すという、楽しいこと間違いなしのワークショップ。外ごはんを始めるきっかけがつかめない人の、入り口になるような内容になっている。

「文化系だった私もnoyamaがきっかけで外遊びの幅が広がりました。興味ないな、私には関係ないな、という人にこそ来ていただけると、新しい扉が開くと思います。小さいお子さんと一緒でも遠慮しないでください。老若男女問わず、下は0歳から、上は100歳まで来ていただきたいです!」(高橋さん)

青空の下、風のにおい、草の感触を感じながら、ぜひ、noyamaのテントを訪ねてみてほしい。ここで感じたことは、きっと、あなたの記憶に鮮やかな色をともなって、刻まれるはずだから。

<「noyamaの外ごはんworkshop」のご案内>

開催日時:
10月20日(日)12:00~13:00
参加費:2800円
定員:10組
お申し込み方法:件名を「noyama外ごはんworkshop申し込み」とし、ご希望の時間帯、人数、お名前、お電話番号、メールアドレスを明記の上、【workshop07@momijiichi.com】へメールでご連絡ください。
お申し込み開始日:10月15日(火)午後12:00から受付を開始いたします。

※参加費は1組あたりの値段です。料理を分けるということであれば、1組複数人でご参加いただけます。

【noyamaのみなさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
木工アーティストのしみずまゆこ、編集者の高橋紡、写真家の野川かさね、料理研究家の山戸ユカからなる出版、イベントユニット。日本中の野や山へでかけ、その土地の空気を吸い、食べ物をいただき、お酒を飲む。そんなふうに「食を通じてその土地とつながる」ことをテーマに活動しています。著書に『つながる外ごはん』(小学館)、『noyamaのおつまみ いろは』(大泉書店)があります。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
山や木々、花々、空、雲など自然の中にある色。でも、緑や茶色など地味目……。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
オレンジ、緑、赤など野菜たっぷりの美しい色のスープを作ります。材料をじっくり炒めたり煮込むことで生まれる、自然な美しさを味と共にお楽しみ下さい。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、動物を彫ることに人生をかける彫刻家。もみじ市に初出店です。

文●吉田茜