小学生の時に「将来の夢」について書く作文があった。たしか私は、「学校の先生になりたい」と書いたように思う。しかし、1年後には、「ラジオのアナウンサーになりたい」と言っていた。大学の進路を決める時、ちょうど月曜21時にフジテレビで放送していたドラマ「やまとなでしこ」を観て、「空港で働く仕事に就こう」とエアライン科のある専門学校を探し進学。卒業後の就職先は、空港ではなく、地元・徳島県にある出版社だった。思い返せば、私の夢は毎年変わっていて、30歳になった今もやっぱり変わり続けている。
現在、フリーのメイクアップアーティストとして活動するきんのむつみさん。メイク、ヘアスタイル、ファッション…中学生の頃からオシャレに敏感な、いわゆる「ませがき」だったそう。出身は、岩手県。当時から都会に、東京に、強い憧れをいだいていたという。ファッション雑誌を読んでは、制服のスカートの丈を短くしたり、ルーズソックスを履いたり、厚底のブーツを履いたり。美容雑誌を読んでは、近所にある化粧品売り場に足を運び、マスカラ、アイシャドウ、グロスなど、あらゆるメイク道具を買いそろえていたのだとか。今のきんのさんからは、想像もできないけれど、ギャルメイクやヤマンバメイクにも挑戦していたそう。
「流行のものは、すべてトライしたように思います。やんちゃでしたね。先生には、よく怒られていたし、ポーチなんかも没収されていました」
そんな彼女が、美容師やスタイリストではなく、メイクアップアーティストの道を選んだのには理由がある。
「肌が好きなんですよね。当時、肌荒れがひどくて、スキンケアにも興味があったんです。肌をキレイにすることが楽しくて。そこからメイク道具を使ってキレイにするということにつながっていったんだと思います」
メイクで新たな魅力を引き出す。いつもは、広告、雑誌、舞台などのヘアメイクを担当しているきんのさんは、モデルさんや役者さんと接する機会が多いと言う。
「美しい方をより美しくする。もちろん、それはそれでやりがいがあります。だけど、一般の方も同じように美しくしたいんです」
そんな金野さんが、一般の方を対象にペインティングを始めたのは、子ども向けのイベントに誘われたことがきっかけだ。
「最初は、ペインティングなんてしたことがなかったから、どんな道具を揃えたらいいかもわからなかったし、何を描けばいいかも…それに、絵を描くことが苦手なんです。でも、やってみたら楽しかった。赤ちゃんや子どもの顔にペインティングすることが多いんですけど、肌がもうツルツルなんです。ペインティングをする時も、すーっと筆が入って」
きんのさんは続ける。
「子どもたちはかわいいし、癒されます。それと、顔に描かれることが嬉しいみたいなんですよね。『この絵描いて』とか、『描いてもらったものが消えた…』と泣いてしまう子もいて。自分が思っている以上に、みんなが喜んでくれているから、私でよければ描きますよ! って」
ペインティングを始め今年で6年。細い筆や太い筆、100円ショップで買ったもの、画材の専門店「世界堂」で購入したもの、いつのまにか15本以上もの筆を使うようになった。赤ちゃん、子ども、お父さん、お母さん、さまざまな人たちの顔に絵を描くことで、どの筆が適しているかを厳選していったそう。
使う絵の具は9色。色と色とを混ぜ合わせて使うことはない。その色が持つ、その色の個性をしっかりと生かしてペインティングをしてゆく。原色だからこそ表現できるカラフルな世界。それぞれが持つ肌の質感に絵の具が馴染み、その人だけが持つカラーへと変化するのだ。
「絵は苦手」と言いながらも、顔に描くデザインはきんのさんがすべて一人で考えている。メイクをすることで、いつもと違う自分に出会える。モチベーションが上がる。ペインティングもそうであってほしい。
一人の少女が、夢を叶えた。時には、悩み、とまどうことあるけれど、自分の夢は「これだ!」と疑うことなく言い切れてしまう姿がとてもかっこよかった。もみじ市は、プロのメイクアップアーティストであるきんのさんにフェイスペインティングをしてもらえる貴重な機会。カラフルな出で立ちで、カラフルな顔で、もみじ市のカラフルタウンを闊歩しよう!
【きんのむつみさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
メイクアップアーティストのきんのです。もみじ市当日は、みなさんの顔に模様やイラストを描きます。ぜひ遊びに来てくださいね。
Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
白です。何色にも合うことと、肌色がよく見えます。それと、女性らしい色な気がしています。
Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
もともと「カラフル」な色使いを意識していますが、さらに「カラフル」にできればと思っています。皆さんの顔がよりカラフルになるように、描くデザインも増やします。
Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!
続いては、もっちりとした食感が病みつきになりそう。美味しいベーグルを携えて、あの方がやってくる!
文●新居鮎美