そこは、少女たちの生活に寄り添う“かわいい”が詰まった特別な空間。hinataboccoとは、そんな店だ。
JR多治見駅を降りて、目的の店、hinataboccoまで歩く。天気のよい週末の昼間だったけれど、人通りは少ないのんびりとした道のりだ。大通りから少し入り、壁面をタイルで覆われたその建物に入ると、空気は一変した。女性客でいっぱいで、明らかに外とは違う世界が拡がっていた。
あたたかみのある木のテーブルと、レトロな雰囲気の椅子やキャビネット。ゆったりとしたふかふかのソファ席には、おばあちゃんの家で昔見かけたようなかわいらしいニット編みのクッション。店内のそこかしこに置かれた小さな雑貨やドライフラワーは、どの席に座っても視界をにぎやかに彩る。
唯一の男性客であろうことに少々気後れしたが、幸運にも空いていた一席に案内されて腰を下ろす。ボリューム満点ではじめから持ち帰り用の袋まで付いていると噂の「野菜畑のフォカッチャプレートセット 」は残念ながら売り切れとのこと。
パンケーキが気になりつつも、名前に惹かれて「アフタヌーンティーセット」を注文。手持ち無沙汰に任せて壁に掛けられていた「今月のごはん」の説明をしげしげと眺める。「香ばしくグリルした3種のキノコとレンズ豆をたっぷりのせた秋のカレーライス」というのがなんとも魅力的だ(結局デザートを食べた後に我慢できず注文してしまうこととなる)。
しばらくしてベレー帽を被った女性スタッフが何やら大きな物を抱えてこちらのテーブルにやってきた。その正体は大きな籠に入って出てきたかわいらしい茶器とデザートのセット。目の前に置かれたそれを見て、でかい身体の自分の身なりとのギャップに、他の人の目を気にして周りを見渡してしまった。
当然、私の照れなど誰も気にしていない。おのおのが好きなデザートを食べながらおしゃべりに夢中になっている。ちょっと耳を傾けてみる。後ろのテーブルの女の子は、将来自分が開きたいという雑貨屋について夢中で語っているのが印象的だった。横のテーブルではつきあいはじめの恋人のことを熱心に相談しているようだ。
店内をよく観察してみると、なるほどこの店の世界観が好きであろう女の子グループのみならず、ギャルっぽい(死語?)女性ふたり組や、年配の女性グループもいる。私が注文したアフタヌーンティーセットが特別ボリュームがあるわけではなかったようだ。他のテーブルでも、料理が運ばれて来た時にはちょっとした歓声があがっていた。
“かわいい”が詰まった驚きのある盛りつけ。この店のご主人・近藤数敏氏さんは、人を驚かせることが好きで「お客さんに『わっ』と言ってもらわないとここに来てもらった意味はないと思うくらいなんです」と言い切る。食べることが好きな近藤さんが「自分が出されてうれしい料理」を提供する。それがhinataboccoの基本コンセプト。大きな皿を使った料理の見せ方は、大阪での修行時代に勤めていた店から学んだこと。この紹介ブログの動画撮影時には、「自分は表に出るタイプではないので」とスタッフに任せていた近藤さん。決して自分が自分が、と前に出るタイプではないのだが、店の料理のことを語る口調は静かだが力強い。ホールに出ることは少ないが、「お客さんはちゃんと驚いてくれているかな」と、いつも厨房から様子を伺っているのだそうだ。
“かわいい”で溢れた空間での楽しいおしゃべりと店からの嬉しいサプライズ。この店のことを噂に聞いて、はるばる県外から訪れてくるお客さんも少なくないという。みな、この店の世界観を求めて、気のおけない人たちとやってくるのだ。日常の延長にあるこのちょっと特別な空間で、ちょっとした夢を見て、良い気分になって、またそれぞれの日常に戻っていくのだろう。
そんなhinataboccoがもみじ市の会場でどんな驚きをみせてくれるのか。私は期待せずにはいられないのだ。
【hinatabocco 近藤さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
岐阜県多治見市のhinataboccoです。季節の野菜を中心にした料理と旬の果物を使ったデザートをお出ししていますを毎年メニューは変化させていて前の年よりもよいものを提供できるよう努力しています。
Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
水色です。店名の「ひなたぼっこ」からも繋るんですが、太陽が出て晴れた青空がイメージできる好きな色なんです。
Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
「モンブラン」や「キャラメルソースとナッツ」などを使ったパンケーキと自家製ジャムのソーダをお出しします。これらに加えて土曜日はキッシュもお持ちしようと思っています。
Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!
さて、続いてご紹介するのは、子どもを夢中にさせるワークショップを行なってくれるあの方です!
文●尾崎博一