ルヴァン「天然酵母パン&パイ」

まるでひとつの大きな家族のようだ。

そのお店とそこを訪れる人々の関係性を言葉にしようとしたらこんな言葉が浮かんできた。

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渋谷区富ケ谷。代々木上原の駅の方から井の頭通りの坂をちょうど降りきったところに、天然酵母パンのお店「ルヴァン」はある。20年以上の歴史を持ち、日本に天然酵母のパンをここまで根付かせた、我が国のパンの歴史を語る上で欠かせないお店だ。

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店内にある石窯で焼くルヴァンのパンは、長い間受け継いできた自家製の酵母と国産の麦を使い、どっしりとたくましく、噛めば酵母の酸味や小麦の香りがふんわりと立ち上る。さらに噛むと甘みが口の中を満たしていく。噛めば噛むほど甘みは増してくる。一度、それを体験してしまったら、もうこのお店の虜だ。

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「こんにちは!」「この間はありがとう」「久しぶり、お元気でしたか?」
店内ではいつも親しげな挨拶が交わされている。ルヴァンを知ってからもう何度もこのお店を訪れているけれど、いつもこんな具合だ。そして、ここで働く人はみんな活力に満ちたとても良い顔をしている。いつ何時に訪れても、帰ってきた家族を「おかえり」と迎えるような、そんな笑顔を向けてくれる。パンの味ももちろんあるけれど、この親密な空気に触れたくてついつい足を運びたくなってしまうのだ。

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オーナーは甲田幹夫さん。家族の長。いつも笑顔の、だけど強烈な求心力の持ち主だ。甲田さんが店にいると、お客様はみんなみんなにひっきりなしに声をかける。お店を訪れる人はもちろん、お店の前を自転車で通り過ぎる人さえも、甲田さんの顔をみて、「あら、こんにちは!」と声をかけていく。東京の真ん中で、こんな光景が繰り広げられていることが、すごいと思う。

IMG_4633隣に併設するカフェ「ル・シャレ」では、パンのプレートや珈琲を楽しめる。

「お店は人だからね」
甲田さんは言う。
「お客さんが来た時に感じる心地よさ。それがなんなのかをいつも考えながらやってるよ。例えば、お客さんがカフェに通う理由って、美味しい珈琲を飲みに行くってことはあるけど、あの人がいるから行くってこともあるよね」

IMG_4651この夏より始めた“かきごおり”。「ずっとやりたかった」という甲田さんが自ら作ってくれた。

「うちの場合、お店に段差がないでしょう? お店の前を通る人も、お客さんも、スタッフもみんな同じレベルで接している。すると、前までお客さんだった人が働いてくれたり、働いていたひとがまたお客さんになっていたりしてくれて、みんなつながってくれる。そういうのが良い空気を作ってくれている気がするな」

働く人もできるだけ、自由に伸び伸びと働けるように考えているという甲田さん。その成果は、ルヴァンで修行し、独立した数々のお店の活躍が物語っているだろう。巣立って行ったお店は両手でも数えきれないほどで、名前を挙げればそうそうたる面々が顔をそろえる。

卒業後も機会がある毎にお店を訪れたり、来てもらえたりと変わらず交流があったりもするそうだ。そんなつながりの深さも「大きな家族」のようだと感じる理由の1つかもしれない。

もみじ市でもたくさんのお客さんを包み込んで、“家族”の輪に加えてくれるのではないだろうか。

ルヴァンに流れるこの親密な空気が、あの河川敷でも流れるのだ。

【ルヴァン 甲田幹夫さん、まこさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
はじめての方も、いつも来てくれている方も、こんにちは。パン屋のルヴァンです。

一口食べると、お口がほろんで、二口食べると、お顔がにっこり、三口食べると大好きな人たちと分かちあいたくなるパン。そんなパンをお届けするのが私たちという気持ちで「おいしいパン焼けました、いかがですか~。」と歌っています。
どんなパン屋かな? 気になりましたら、寄ってみてくださいね。四口目に起こることが…わかるかもですよ。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
私たちは「カンパーニュ色」。カンパーニュ色はパン色でもないし、茶色でもないんです。おいしさの色です。

どんなオイルにも合うし、お惣菜にもあう。彩り鮮やかなジャムにもあう。そうとう、かっこいい色なんです。

幸せな人を彩る色でもあり、人を幸せにする可能性を秘めた色でもあります。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
幸せとおいしさが詰まったパンたち。色は季節の色が、自然の色が表現できたらいいな。お楽しみに…

演出は、自然体のルヴァン。なにが飛び出すやら、かな。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、キュートな笑顔のフードコーディネーターとブローチ作家のあのコンビです!

文●藤枝大裕