「立体図鑑を作りたいんです! 彫刻動物図鑑を!」
目を輝かせながら、はしもとみおさんは言いました。
「全世界にいる動物たちの立体図鑑を作りたい。今はまだ200種類くらい。虫や鳥や魚も彫っていたら、一生が一瞬で終わりそう」
動物を彫ることに人生をかける彫刻家はしもとみおさん。かつては、「動物に関わる仕事がしたい」という想いから獣医や飼育員を考えたこともあったそうです。
はしもとさんは、15歳のときに阪神淡路大震災を経験しました。兵庫県にある実家の被害は大きく、近所のかわいいペットたちも、みんないなくなってしまいました。「形を残したい」。そう強く思ったはしもとさんは、17歳で美術を始めました。
美術は「術」だと話すはしもとさん。訓練で身に付くものなので、反復練習が大切だと言います。はしもとさんは、あまりにもたくさんのスケッチを繰り返しました。描いて来たものは、もちろん動物です。そして、そのスケッチをよりリアルにするため、立体にすることを考えました。鉄や石、陶器などで動物を作ることを試し、結果、彫刻を選択しました。毛並みを表現するには、木が最適だったそうです。
スケッチした動物たちを彫る作業は、体力勝負でもあります。丸太を購入し、チェーンソーで切り出し、こつこつ彫っていきます。使うのは主に楠の木。すうっとハッカのような香り。虫がつきにくく、国産のものが手に入るから、というのも楠の木を使う理由のひとつ。地産地消にもなるからです。木を彫り、造形が出来たら、アクリル絵の具を中心に、漆やカシューを塗って仕上げて行きます。
はしもとさんは、目の前に生きている、あるいは生きていた、名前がある動物たちをモデルにして彫っています。その名も「肖像彫刻」。ただの柴犬だったり、ただのチワワではなく、世界に1匹だけの、“その子”を彫るということ。
「自分はアーティストではなく、職人。その子自身をどれだけリアルに残せるか、というお仕事です」
お客さまの依頼を受けて、実際に会いにいき、スケッチをする。そして、アトリエに戻って、彫る。結婚して嫁いでくる妻に、妻が長年かわいがっている実家の犬の彫刻をプレゼントしたい、という男性からの依頼もあったそう。はしもとさんが彫った動物を見て、「■■動物園の●●ちゃんだ」と、わかる人もいるそうです。
私は、知人にはしもとさんのブログを読むことを勧められ、はしもとさんを知りました。ブログには、はしもとさんが日々感じたことや考えたことが、惜しみなく刻まれていました。あまりにも純粋で、強く、心の奥の方から絞り出されるような言葉の連なりは、私の心の大切なところを、でもふだんは自分では気づいていない大切なところを、きゅっとつかまれるような感覚。こんな感覚をおぼえたのは、生まれて初めてだったと思います。
「大切なことは、自分の目を信じること。目の前の見えるものに素直になること」
はしもとみおさんは、車に積める限りたくさんの動物たちを連れて、三重県から多摩川河川敷にやってきます。その名も「木彫りの移動動物園」。2日間だけの、はしもとみおさんの動物園に、どうぞお越し下さい。
<「はしもとみおの、木で寝ている柴犬を彫ろう!ワークショップ」のご案内>
開催日時:
10月19日(土) 13:00~15:30
10月20日(日) 13:00~15:30
両日とも満席となりましたので、申し込みを締め切らせていただきます。たくさんのお申し込みありがとうございました。
参加費:4,200円(材料費込み)(当日のお支払い)
定員:各回15名(事前お申し込み制)
持ち物:あれば彫刻刀、汚れてもいい服装、エプロン、バンドエイド(手を切ってしまった時などに)、筆記用具、彫りたい柴犬の資料
10歳未満の子供のかたは保護者同伴でお願いします。
彫刻刀はこちらでも用意してありますので、なくてもかまいません。
【はしもとみおさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
三重県にアトリエを構え、主に木彫りの動物たちの肖像彫刻を作っています。
Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
空色になれたらいいなと思っています。
Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
今回は羊さん、ヤギさん、犬たち、たくさんの等身大の彫刻たちも連れて行きます。ご自由に写真とかも取っていただけるように、移動動物園を開催したいと思います。
また、ちいさな動物たちは販売できるものも連れて行きます。動物たちそれぞれに、個性といういみでの「カラー」がたくさんありますので、ちいさくてもおおきくてもその彫刻の中にある「カラフル」を探して楽しんでいただければと思っています!
Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!
さて、続いてご紹介するのはお菓子とグラフィックの甘い、甘いコラボレーション。女の子の好きがぎゅっと詰まったお菓子に紙ものをご用意してくれます。
文●鈴木静華