ニシワキタダシ「ポストカードといろいろ」

彼の描くキャラクターは、なんだかとんでもないことをしていたり、言っているのに、思わずふふふっと頬を緩めてなごんでしまうのはなぜでしょう。そんな、全てを許してしまえる絶妙な“空気感”を描くイラストレーター、ニシワキタダシさんのご紹介です。

「なんともいえない」

「昔、求人誌の専属イラストレーターをしていて、そのときに笑顔のイラストをたくさん描いていたんです。そのときの反動で、今は笑顔のイラストが少ないかもしれませんね」

ニシワキタダシさんのイラストを見ると、思わず頬が緩んでしまうものだから、なぜかニシワキさんの描くキャラクターもニコニコしたものが多いという印象を持っていました。展示会のたびに作っているというポストカードだって、どれも鮮やかでかわいくて楽しいものばかりだから、「まさかぁ」と思いつつ、改めて作品を見てみると……

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あれ? 笑顔はおろか、表情がない……。おもわず「どうしたの?」と話しかけたくなる表情のこどもやおじさんやどうぶつや……えーっと、謎の生命体たち。熱心に取り組んでいるような……でも、なんとなーくやらされているような。困っているような……でも、何か達観したような。考えはじめると、頭の中が不思議でいっぱいになって気になってしまいます。ニシワキさんの作品から沸き上がるこの気持ちはなんだろう? 思春期とはちがう、心のざわつき。ただ間違いなくいえる一言……それは、「なんともいえない」。

「なんともいえない」かけ算の使い手

そんな「なんともいえない」イラストたちはニシワキさんの言葉を纏うことでさらにパワーアップして1コマまんがに変身します。関西のことば約200語を、ゆるくてクスッと笑えるイラストで解説した大人気の書籍「かんさい絵ことば辞典」も、元を辿れば自身のwebサイトで定期的に公開していた1コマまんがが原点です。その後に出版された『あたらしいことわざ絵辞典』も『日々かるたブック』も、ニシワキさんのイラストと言葉で生み出された1コマが満載です。このイラストと言葉の組み合わせが絶妙で、例えば「かわいらしいサル×言葉=とてもしらじらしいサル」になったりと、パッと見の印象とのギャップがたまらなく、これまた「なんともいえない」気持ちになるのです。このかけ算を使わせたらニシワキさんの右に出るイラストレーターはいないのではないでしょうか。

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「なんともいえない」をなんとかいいたい

あまりにも「なんともいえない」気持ちになってしまい、「なんともいえない」をなんとかいいたくなってしまった私は、ついに思い切って「ニシワキさんの頭の中を見せてください」とご本人に頼んでみちゃいました。そんなリクエストを受けてニシワキさんが用意してくださったのは、A4のコピー用紙の束。「いつもこれで考えているんです」と広げられた用紙を見てびっくりしました。謎のキャラクターのスケッチでいっぱいなのかな、と思って覗いてみると、そこにはイラストのようなやさしいタッチでスラスラと言葉がたくさん書いてあり、スケッチは少しだけだったのです。

「『かんさい絵ことば辞典』を出してから、言葉を添えたイラストのお仕事をいただくことが増えたんです。まず言葉で書いてみて、良さそうだなと思ったものを描いてみます。なので、実際にイラストを描く時間より、言葉を書いている時間の方が長いですね」

ふっと思いついた言葉から着想してイラストへと広がって行くニシワキさんの世界は、ひょっとしたら言葉を思いついたニシワキさんすらわからない未知なものなのかもしれません。クスッと笑えてクセになる予測不能なニシワキワールドにますます心奪われてしまいました。

結局、「なんともいえない」については、なんともいえないけど、この心のざわつきのことを人は「虜」っていうのかも知れません。みなさんも是非、ニシワキワールドに触れてください。ひとたびクスっときたら、それは、虜になっちゃった証拠です。

【ニシワキタダシさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
イラストレーターのニシワキタダシと申します。
なんともいえないかんじの絵を描くのがすきです。
「もみじ市」への参加は二回目になります。
二回目なので、当日もそれほど緊張せずにブースに立てているのではないでしょうか。もし緊張していても、二日間出店するので二日目の終わり頃には、もう緊張していないはずです。よろしくお願いします。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
黄色でしょうか。色に例えるとというより、好きな色かもしれません。小さい頃は青が好きだったんですが、大人(20歳頃)になったら黄色が好きになっていました。この流れで、もし20年くらいごとに好きな色が変わるとしたら、あと何年かで好きな色が変わるかもしれません。そんな流れに負けず、黄色が好きでいたいです。 

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
日頃から作っているポストカードをメインに持っていこうと思っています。新作やテーマ「カラフル」に合わせた作品もあたらしくつくることができればいいのになぁと思っているところです。『かんさい絵ことば辞典』などの著書本も販売予定です。本の中にイラストも描かせてもらうので気軽に声をかけてくださいね。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、結城市にある美しすぎる雑貨店。異国情緒溢れるお店が河川敷にやってきます。

文●小木曽元哉