井田耕市「立体会場マップ」と「カラフルHOUSE」

idasan

「はるちゃん」
井田さんは、私のことをそう呼んでくれる。苗字でもなく、はるなちゃんでもなく、はるちゃん。井田さんの呼びかける声に、私はいつも親しみを感じて、嬉しくなる。

「どうしましょうねぇ」
井田さんは、いつも問いかけてくれる。考えを押し付けるでもなく、ただ聞いてくるだけでもなく、問いかけて、そして一緒に考えてくれる。これが井田さんのスタイルなのだなぁと思う。

「設計は100%黒子なんです」
井田さんは、あまり前に出ようとしない。だけど、後ろにいてしっかりと支えてくれる、そんな感じがする。手紙社のふたつのカフェ「手紙舎つつじヶ丘本店」と「手紙舎 2nd STORY」、この設計をしたのが井田さんなのだ。「出来上がったものには、自分のにおいよりも、施主さんのにおいが付くように、半年位経ってから行ってみて、その人のにおいになっていたらいいなと思う」と言う井田さんは、何気ない会話の中から、その人が叶えたいと思っている要望や好みを汲み取って、それを形に変えていく。

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雨の日は、「手紙舎にいきたいな」と思う。テーブルに座ってコーヒーを飲みながら外の景色を眺めていると、とても心が落ち着く。

晴れた日には、中庭から眺める空がいい。四方を囲われた空間は、空しか見ることができなくて、それが良い。

秋の夕暮れどきには、開け放たれた窓から虫の声を聞くのがとても良い。明日も頑張ろうという気持ちになれる。

手紙舎つつじヶ丘本店は、昭和40年代に立てられた歴史のある団地の一画に突如現れるごはんとカフェのお店だ。2009年、私は手紙舎が出来上がっていく工程を見る機会に恵まれた。徐々に出来上がっていく空間には、はっとさせられるような細かな仕掛けがたくさんあった。それは例えば、飲食店スペースからキッチンへ向かう間にあるちょっとした段差、ちょっと低めに設置されたトイレのドア、壁いっぱいの木製の本棚、天井からぶら下がる棚と天井とをつなげる細かな細工。随所にちりばめられた仕掛けを見つけたくて、行くたびに次はどんな発見があるだろうと思ってワクワクしたのを今でも覚えている。

井田さんに聞くと、それにはやっぱりひとつひとつ理由があって、団地の広場に向かって長くつながった建物の空間を分けるための要素と、全てが別々になりすぎてしまわないように、つなげるための要素を組み合わせることで、それぞれの空間をつくりながらも、 全体としてのまとまりを出すように設計している、のだそうだ。例えば、段差は空間を分けるための要素。トイレのドアも、本棚の奥の秘密の部屋に入っていく雰囲気を強調するための要素。そして壁いっぱいの本棚は、個々の空間をつなげて統一感を出すための要素、といった感じだ。

井田さんは、空間を切り取るのがとても上手なのだと思う。あまり広くはない店内に、フレームに納めたくなるシーンがたくさんある。それはもちろん偶然ではなくて、どう活かすかを綿密に考えて、読み取った結果だ。そしてそこに、手紙舎がもつ空気感が合わさって、だからやっぱり何度行っても次はどんな発見があるだろう、どんな出会いがあるだろうと思ってワクワクするのだ。

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さて、今年のもみじ市で井田さんは、もみじ市の会場全体を表す「立体会場マップ」、そして出店者のみなさんが手づりしたお面を飾る「カラフルHOUSE」を設置してくれることになった。その設計にあたっても、何度も手紙舎に足を運び、もみじ市事務局のメンバーや大工の山口佳子さんと打合せの時間を設けてくれた。そして、そのコミュニケーションの中から、どういうものにしていくかを読み取っていくのだ。

当日、井田さんは「立体会場マップ」と「カラフルHOUSE」のそばにいるはずだ。リフォームでお悩みの方、お店を始めたいとお考えの方、是非井田さんに相談してみてください。井田さんとの会話の中から、ひょっとしたら、なにかヒントが見つかるかもしれません。

え? 井田さんの「立体会場マップ」と「カラフルHOUSE」、何を目印に見つけたら良いかって? 心配には及びません。それこそが、会場全体の目印になっているはずですから!

【井田耕市さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
設計を行っている井田です。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
背景色です。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
会場マップを考えております。たくさんの色がより映えるようにがんばります!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、三重県からやってくるあの和菓子職人です!

文●上村明菜