wato kitchen ×ナカキョウ工房「スープとブローチ」(19日)

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スープとブローチ? この屋号に「?」マークが頭に浮かんだ方も多いのではないでしょうか? でもどうかご安心を。私もそのひとりでしたので。「wato kitchen × ナカキョウ工房」という組み合わせは、2012年に手紙社のイベントである「パンフェス」そして「東京蚤の市」でも拝見していました。ですが、正直に申し上げると、この組み合わせって何なんだろう? そんな疑問がいつも私の頭の中を駆け巡っていたのです。

だから、是が非でもそこを聞いてみたかった。聞かずにはいられませんでした。私は挨拶も早々に、ふたりにこんな問いかけをしてみました 

「どうして、この組み合わせなんですか?」

その問いかけ、待ってましたと言わんばかりのニヤリとした表情のwatoさん。開口一番にこのセリフ。
「ひとことで言うと、仲良し!」
続けて中澤さん。
「そして同級生!」 

意外…、いや、むしろ期待通りと言うべきでしょうか。返ってきたのはそんな答え。私の目の前には無邪気に笑い合うふたり。この取材、長くなりそうだな…。こんな思いを抱えながら、ふたりへのインタビューは始まりました。

結論から言います。取材を終えた時の私の気持ちは、とてもシンプルなものでした。
「このふたり、素晴らしい作り手だな」
この想いに辿り着いた経緯、それはひとまず置いておいて、まずは、おふたりのご紹介から始めましょう。

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watoさんは、フードコーディネーターであり、管理栄養士でもあり、イラストレーターでもある多才な人。主宰するケータリングサービス「wato kitchen」は、今年の9月15日に11周年を迎えました。雑誌やラジオなどで活躍の場を広げているwatoさん。ご存知の方も多いのではないでしょうか? 今回、もみじ市にご参加いただくのは、2011年に続いて2回目となります。

そして、ナカキョウ工房として活動をされている中澤京子さんは、今回、もみじ市初参加。ブローチやピアスなど、身に付けられる作品(アクセサリー)を中心に制作する作家さんです。柿渋布や皮革を使い、色鮮やかな糸で刺繍を施した作品は、今年のもみじ市のテーマ、「カラフル」にぴったり。現在は、鬼子母神で開催されている手作り市が活動のベースとなっており、制作と並行して、多いときには月3回ほど様々な手作り市に参加するなど、多忙な日々を過ごされています。

そんなふたりの出会いは13年前、2000年にまで遡ります。同じイラストスクールに通っっていたことがきっかけで仲良くなり、その後バリで1カ月一緒に暮らしたそう(周囲が“怪しむ”ほど仲良しだったとのこと)。バリから帰国後まもなく、ふたりは創作ユニットを結成します。

「一週間に何度も会っていましたね。一緒にものを作ったり、友人の誕生日にプレゼントを作ったりしました」(watoさん)

「作ること自体はもちろん好きだったんですけど、とにかく人が喜んでくれることが嬉しかったんです。ニヤニヤさせたかったんです」(中澤さん)

その後、ユニットの活動をよそに、先んじて公の活躍の場に恵まれたのはwatoさんでした。2002年にフードコーディネーターとして独立し、「wato kitchen」としてケータリングサービスを立ち上げたことが、そのきっかけです。対して中澤さんは、持ち前の人見知り(中澤さんはご自身のことを「もじ子」と呼びます)が邪魔して、なかなか活動の場を広げられずにいました。作ってはいるけど、ただ作っているだけ。そんな日々が続いていました。中澤さんは、もみじ市が狛江市の泉龍寺で開催されている頃、お客様として、足を運んでくれていたこともあったそうです。

「一緒に行った友人と、いつか自分達もこんなイベントに参加できたらいいねって言いながら、相変わらずもじもじしていました」

転機が訪れたのは、2009年の11月のことでした。watoさんが、自身が主宰するイベントに中澤さんを誘ったのです。

「ずっと、制作を続けていることは知っていたし、やっぱりその作品が純粋に好きだったから、おこがましい言い方になってしまうかもしれないけれど、応援したかったんです」(watoさん)

「初めは絶対無理だって思っていたんですけど、watoが言うならと思って、思い切って参加してみたんです。そしたらその時に用意した、エスキモーインド人とパンジーのブローチが全部売れたんです。自分が作ったものを、お金を出して買ってくれる人がいるんだなって。素直に嬉しかったですね」(中澤さん)

それ以降、中澤さんは積極的に手作り市に参加するようになります。参加を繰り返していくうちに、手もどんどん動いていきました。その段階で、(手を抜かない)プロへの自覚が芽生えたと言います。

「やっと、楽しいお店ができたな」

これはwatoさんの言葉。2012年のパンフェスと東京蚤の市に「wato kitchen × ナカキョウ工房」として参加したいただいたとき、watoさんはこんな想いを秘かに抱いていたそうです。

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watoさんはケータリングの魅力についてこのように話してくれました。

「相手の要望にいかに応えるか。それがケータリングの醍醐味です。その場所、人に合った食事を、ちゃんと提供をしたいですね。身体はもちろん、それと一緒に、気持ちも元気で健康になってほしいんです」

ときに、watoさんは、思わず誰もが幸せになってしまうあるイタズラを仕込みます。 

「料理を仕込んでいるときに想像するのは、もちろん喜んでもらう姿なわけだけど、そのときに、ひとつ自分なりの企みを忍ばせるんです。要望されたこと以外にこうもやっちゃえ! とか。全ては明かさずに現場に行くんです。そうすると、皆の驚く反応が嬉しくて、ひとりでニヤニヤしちゃうんです」 

一方、ナカキョウ工房と言えば、ブローチ。ユニークでカラフルなキャラクターが特徴的。そんなイメージが、もしかしたら定着しつつあるのかもしれません。けれど、中澤さんは自身が制作するブローチに対する想いを、このように話します。

「とにかく身に付けたかったんです。そうすれば、作品を自分の傍に置いておけるじゃないですか。ブローチってピンをつければ成立するものなので。それに私、イラストの学校に通っていたんですけど、工作とか手芸のように、手を動かして切ったり貼ったりすることの方が好きだったんですよね」

もともと、気に入ったものがあればずっとそればかりで、いわゆるアクセサリーを積極的に楽しむタイプではなかったという中澤さん。正確には、身に付けたいと思えるようなアクセサリーがなかったというのが正しいのかもしれません。そんな中澤さんが、自分が身に付けたいなと思えるもの、そして、自身の作品をそれと照らし合わせたとき、「ブローチ」として見事に当てはまったのです。

「ブローチじゃなきゃダメってことでは全くないんです。希望をいただければもっと色々なものを作ってみたいし。ヘアピン、ヘアゴム、バッグチャームとか。身に付けている人が嬉しそうにしてくれることが、一番嬉しいので」

 「スープ」と「ブローチ」。作るジャンルこそまるで違うけれど、ふたりの創作の先には、必ず、楽しんでもらいたい“相手”が存在しています。話を聞いているだけで、こちらも自然と笑顔がこぼれてきます。

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インタビューもそろそろ終盤。最後に私は、おふたりにお互いがお互いに感じている作品の魅力を聞いてみたくなりました。 

「もうね、常に身につけていますよ。だって、純粋に可愛いじゃないですか。洋服を買いに行くと、店員さんからすごく羨ましがられるんですよ。それを誇らしげに思ったり(笑)。それに、ただの友達だからっていう理由だけだったら、もみじ市には絶対誘いません」(watoさん)

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「食べると本当に元気になるんです。もう、“本当に”元気になるんです!!」(中澤さん) 

中澤さんは、1年程前に一度、制作に没頭するあまり、食事は主に食パンという、そんな生 活が続く日があったそうです。倒れそうなくらいへとへとになってしまった時、あるスープに手を伸ばしました。何を隠そう、それはwatoさんからもらっていたスープ。大切に大切に少しずつ飲んでいた冷凍ストックの、最後のひとつだったのです。口にした瞬間、エネルギーがみなぎって、思わず走り出したくなる程だったそうです。

「私、たまにwatoのケータリングのお手伝いもするんですけど、その時に、彼女、『美味しくなーれって言えば美味しくなるんだよー』っていいながら、ものすごい速さで食材を切ったり、おにぎりを握るんです。でも、その一件があってからは、本当にその通りだなって思うようになりました。人が愛情をかけて何かを作るっていうことの力を感じましたね」

お互いがお互いを、友として、そして作り手として、尊敬し合っていることを強く感じた瞬間でした。

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カラフルなスープとブローチで、身体の内側と外側から、カラフルに彩ってもらいたい。おふたりはこんな想いを抱いて多摩川河川敷にやってきます。watoさんは前回のもみじ市でも大人気だった、いものこ汁で「カラフルいものこ会」を開催してくれるそう。そして、中澤さんは自身の創作の原点である、エスキモーインド人ブローチとパンジーのブローチを先頭に引き連れて、みなさまをカラフルな装いにしてくれるようなアクセサリーを、たっぷりとお持ちいただけるようですよ。

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イラストスクールで出会ったふたりの女性は、それぞれが信じる道をひたむきに進み、13年という時を経た今、誰もが認める作り手として活躍しています。そんなふたりが、唯一無二の親友として、素晴らしきプロの作り手として、手を取り合って、もみじ市に参加してくれること。そのことを、ただただ嬉しく思います。当日はおふたりの間に漂う多幸感に溢れた空気もぜひ感じてみてくださいね。

「ニヤニヤさせてやろう!」

そんな企みを考えながら、ふたりは満面の笑みで、みなさんを多摩川河川敷で迎えてくれることでしょう。

【wato kitchen × ナカキョウ工房さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
【wato kitchen】
こんにちは、フードコーディネーターのwatoです。栄養士としての病院勤務、スープ専門店のメニュー開発などを経て、現在はフリーランスで雑誌などにレシピ紹介をしたり、wato kitchenの名前でイベントに出向いてごはんを作ったりしています。

【ナカキョウ工房】
ナカキョウ工房の中澤京子です。手刺繍と柿渋布や皮革を使って主にブローチをつくっています。手にした人、見つけた人の口元が思わずゆるむような作品作りを心がけています。もみじ市への出店はこれが初めてです。憧れがつまったもみじ市へ参加できますこと、ドキドキわくわくしております。wato kitchenのスープと一緒に、目でも舌でも『カラフル』を楽しんでください!

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
【wato kitchen】
わかりません…。丸一日考えたけど、自分が何色かはよくわかりませんでした。ごめんなさい!

ちなみに好きな色は、白(生成色)と黄(からし色)です! 白はどんな色も受け止めてくれて、黄色はどんな色もつなげてくれるので。わたしもそうありたい。

【ナカキョウ工房】
好みの青緑を見かけた時、みぞおちがきゅーっとなるときめきがあります。この感覚は独特なので、きっと「わたしのいろ」なんだと思います。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
【wato kitchen】
前回に引き続き、ふるさと岩手の秋の風物詩「いものこ会」を楽しんでいただきたく、「いものこ汁」を用意いたします(いものこ会とは、河原に敷物を敷いてみんなでいものこ汁をつつきながらわいわいする会です)。

また、今回はカラフル! ということで、いものこ汁以外にもカラフルなスープを作る予定です。敷物を敷いてお待ちしておりますので、お客さま同士おしゃべりを楽しみながらくつろいでくださいね♪

【ナカキョウ工房】
ウキウキするようなブローチをたくさんお持ちします。作家活動をはじめてからずっと作っている顔のブローチ(通称インド人ブローチ)がありまして、カラフル人のお面にはご縁を感じずにはいられません。笑

そんなブローチたちをもみじ市仕様でますますカラフルにして、会場にあふれるであろうカラフル人たちの仲間入りをさせたいと思っています。その他は会場でのお楽しみ…です!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

続いてご紹介するのは、活版印刷に魅了された3組の合同出店です!

文●加藤周一