パンと器 yukkaya 「自家製酵母の季節のパン+粕谷修朗の陶器」( 20日)

新しくオープンしたお店のカフェスペースでひと休みしていると…このお店、さまざまなお客さまが訪れます。ガラスの引き戸を開けて、お年を召されたご夫婦がお二人。「天然酵母のパンなのですか?」

yukkaya_01

そんなふうに地元の方がふらっと訪れることも多いそのお店とは、「パンと器 yukkaya」。東京都府中市、京王線・JR分倍河原駅から徒歩5分ほどの場所に今年(2013年)6月にオープンしたばかりの、器とパンのお店です。陶芸家・粕谷修朗さんの器と、粕谷奈津子さんの焼くパンを買うことのできるお二人のスペース。店内は奈津子さんが焼く香ばしいパンの香りに包まれ、そしてそのすぐ隣には修朗さんが作った器が並んでいます。

お店がオープンしてから2ヶ月後のこの8月、さらにイートインスペースも始まったことによって、おふたりの夢はようやく実現した、といいます。その夢とは、奈津子さんの焼いたパンを修朗さんの器で提供できること。それは、自分たちの生活に合わせて場所と形態を少しずつ変え、試行錯誤しながら、それでも“二人でできることを大切に”しながら歩んできたお二人にとって、いつか実現したい夢でした。

「ちょっとずつ夢に近づいていった感じですね。器とパンを作っているので、一緒にお皿に盛りつけて食べてもらえる空間が、ずっとほしかったんです。そういう場所がいつかできたら、と思っていて」

yukkaya02

そんなふうに話す修朗さんの作る器は、ご本人の柔らかな雰囲気がそのまま伝わってくるような、温かみの感じられる器。絵を描くように作られた、美しい形でありながらもそっと生活に馴染む、素朴な雰囲気をあわせ持っています。「もともと、仕事をしながら日本画を描いていたのですが、沖縄に住んだことがきっかけで陶芸の道へ進むことになりました。それが、とっても気持ちの良い場所だったんですよ。空が広くて青くて、緑がいっぱいで。そしてまた、そこで教えてくださった方がよかった。そんな親方や職人さんたちが建てた、大きな工房の中で働いていたんです」と語る修朗さん。東京へ戻った現在は、沖縄に住んでいた頃に培った技術をもとに、日々作陶にいそしんでいるそう。

そして奥さまの奈津子さんが作るのは、旬の果物や野菜をつかった自家製酵母のパンや、素材そのものだけが持つ謙虚な滋味が感じられる味わい深いパン。けれど、時にハッとする組み合わせのパン(あずきとシナモン!)で、私たちを新鮮な味覚で楽しませてくれます。

「一昨年まで営業していた東京都日野市のお店では、薪窯でパンを焼いていたのですが、東京で薪でパンを焼くことの難しさを実感しながらの日々でした。焼くこと自体は楽しいかもしれないけれど、毎回の焼き上がりが違うこと、薪を調達して保管することの難しさ、それに広い土地もあったら……と感じていました。イートインのスペースを作ることができなかったので、パンと器はそれぞれで販売だけを行っていて」

日野のお店はオープンしたものの、早い段階からお二人の間ではすでに次の場所へと気持ちが動いていて、新たな場所を探していたお二人。二年ほど過ぎたころ、ようやく見つけたというのが、現在の場所です。

「ここでは薪窯はできないけれど……。薪窯でも電気の窯でもどちらでも、もっとおいしいパンを焼けるようになりたいと思ったんです。道具はどちらでもいいのだなぁと。カフェスペースがきっかけで器に興味を持って下さる方がいらしたり、普段バゲットを召し上がらない方がカフェで食べたサンドイッチがきっかけになってバゲットを帰りがけに買って下さる方がいらしたりするのが今はうれしいです」

そんな「パンと器 yukkaya」へ訪れてガラスの引き戸を開けると……正面のカウンターには奈津子さんの焼いたパンが並び、左のスペースには修朗さんの作った器。そして、右にはオープンしたばかりのイートインスペースが。ずっと前から“二人でできることを大切に”しながらお二人が見ていた風景が、ここにありました。お二人の優しく温かい人柄が作り出す、心地よい空気がここには流れています。

yukkaya03

私が訪れた短い時間のあいだにも、地元のお客さまが「まだパンはあるかな?」とのぞいていったり、いつものお客さまがワンちゃんと一緒に訪れて、店先でお話ししている光景があったり。修朗さんの器で提供されるパンとドリンクを注文したお客さまが、一人ゆっくり休んでいる姿も。「パンと器 yukkaya」はもうすっかりこの街に溶けこんで、すでにここに暮らす人たちみんなのお店になりはじめています。

「今はお皿とカップだけだけれど、スープを出すようになればスープ皿も使うようになるし、スイーツもあったら少し小さなお皿も使うようになるだろうし。お皿からメニューがふくらむこともある。楽しみですね。」

夢をかなえたそんなお二人の物語は始まったばかり。もみじ市には、そんなお二人の手から作られた器とパンがやってきます。多摩川の河川敷に来たら、お二人とぜひお話ししてみてくださいね。

【パンと器yukkayaのお二人に聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
今年6月お店を府中へ移転し、名前も「薪窯パンと器ユッカ屋」から「パンと器 yukkaya」になりました! 夫が陶器、妻がパンを焼いています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
修朗さん:あお(ずっと昔から好きな色です)
奈津子さん:からし色(からし色の洋服が多いんです)

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
修朗さん:いつもは白と黒の器がほとんどですが、カラフルというテーマに合わせて青い器などを考えてみようかなと思います。沖縄の空と海の色を思い出すような……沖縄色を入れてみようかな?

奈津子さん:旬の果物や野菜を使ってカラフルなパンを焼いていきます!紫芋、かぼちゃ、ブルーベリーなどを使って作ろうと思っています。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは今回が初出店となる木工作家さんです!

文●増田千夏