前髪がのびて重くなってきた。そろそろかな? そんなふうに、いつも私は「マールコ」に出かけます。
マールコは、穏やかな日差しが差し込むマンションの一室にそっとたたずむ、代官山のちいさな美容室。お店を営むのは、店主のしょうたさん。2008年9月にオープンし、今年で6年目を迎えます。私がはじめてマールコを訪れたのは、今から2年半ほど前。冬も終わりのころで、すこしあたたかい日だったことを憶えています。
じつはマールコに出会うまでは、同じ美容室に長く通ったことがあまりなく、いろいろなお店へ足を運んでは転々としていました。もしかしたら、美容室という空間がすこし苦手だったのかもしれません。にぎやかなフロア、華やかな会話、なんだか気の休まらない感じというか…。
でも美容室で過ごす時間というのは、ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、のびた髪を切ってさっぱりするということだけではなく、心を整えるひとときでもある、と思うのです。マールコに通いはじめてから、そんなふうに感じるようになりました。
お店を訪れると、いつも変わらない笑顔で迎えてくれるしょうたさん。
「こんにちは。今日はどうしますか?」
そんな調子で始まります。茶色の椅子に深く腰をかけて、背筋をまっすぐにのばすと、とてもリラックスした気分になります。
「今回はどのぐらい髪を切ろうかな?」
「前回イメージを変えた髪の色は少しなじんできただろうか?」
「よく見ると、1カ月のあいだにずいぶん日焼けしてしまったような……?」
「この間はお互いの仕事の話をしたけれど、あれから自分は何か変わっただろうか……?」
マールコの大きな鏡の前に座ってしょうたさんとお話ししていると、ふだんは気がつかなかった自分自身に気がついたり、いつもは思い過ごしてしまうようなことをなぜかふと考えたり。不思議と自分自身と向き合い、ゆっくりと考える時間になるのです。
ときには、どんな髪型にしたいか、自分でわからなくなることもあります。そんなときは、
「似合う髪型というのは、その時の気分や表情で変わることもありますよ。持って生まれた顔つきにその髪型が似合うかどうかというよりも、その人の今の気分や、笑顔かどうか、そういったことが大きいんじゃないかな」
しょうたさんはさりげない会話をしながら雰囲気を感じとってくれて、髪の色、長さなどを、すこしずつ“今の自分”らしいと思えるイメージに近づけていってくれる。そんな自然な気遣いが、髪型だけでなく、心までそっと整えてくれるのかもしれません。
前回のもみじ市では、ヘアアレンジをいつもと違うスタイルにしてもらえるという、「アレンジサロン 青空マールコ」をオープンしてくださったしょうたさん。 2回目 の参加となる今回は、なんと前髪をつくる専門店、その名も「マエガミマールコ」をオープンしてくださることに!
「みんな視界良好にして、世の中を明るく見渡してもらえたらいいな、って。だから、大人もこどもも前髪をつくって、もみじ市を歩いてもらいたいんです」
そう、マールコに出かけるのは、ただ前髪がのびて重くなったからだけではなく。毎日を過ごしていくなかで、見えづらくなりがちな未来のありかを確認したいからであって。そんなわけで、男性も女性も、もちろんちびっこたちもご遠慮なく! 前髪をつくって視界良好にして、もみじ市を、そしてふだんの毎日を颯爽と歩いてみませんか? しょうたさんが、うんとかわいく、かっこよくしてくれちゃいますよ。ご来店、お待ちしています!
【マールコ しょうたさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
代官山にあるプライベートサロンマールコです。今回で二度目の参加になります。よろしくお願いします!
Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
白です。染まりやすいから…
Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
前髪のヘアカットをします。今までにない自分を発見して下さい!演出等は考え中です。
Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!
さて、5組目にご紹介するのは、福島のあのパン屋さん。食べる人への想いが詰まったたくさんのパンをご用意してくれています。
文●増田千夏