DOM.F..「会場装飾」

もみじ市初日の朝、多摩川河川敷に様々な植物を積み込んだボックス型の軽自動車が一台到着し、ひとりの男性がそこに降り立つ。まだ、テントの設営も始まっていないころ。河川敷は、無言で彼の前に広がっている。そこで彼は何を聞くのだろう。何を見るのだろう。会場に着いた瞬間から、頭の中で渦巻いていた彼のインスピレーションは外に開かれる。彼にとっての、もみじ市の幕が上がる瞬間だ。 

彼とは、小田急線の喜多見駅で「DOM.F..」という名の花屋さんを営む迫田憲祐さんのこと。第1回のもみじ市から、会場の装飾は全て迫田さんとその仲間たちの手によってほどこされている。

迫田さんが事務局スタッフと打ち合わせをすることは、ほとんどない。テーブルを囲み、図面と資料を広げて、「では今回の会場の説明から…」なんてことは、全くしない。直接会って話すことがあっても、迫田さんのお店で立ち話をするくらいで、電話だけですますことも珍しくない。テーマと装飾してほしい場所だけ伝えて、あとはただ「任せる」。それだけだ。どんなものができ上がるかは、当日、完成した装飾を目にするまで、事務局の誰も知ることはない。不可能だ。なぜなら、迫田さん自身が明確な完成像を描いていないのだから。先に頭の中で考えてしまうと、現場で思った通りのものが作れなかったときに、一度イメージを全て壊して組み立て直さないといけないのだそうだ。だから、現場に行って、その場で考える。事務局の誰もが迫田さんのインスピレーションを信頼し、期待している。

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もみじ市が1年なかった間に、もみじ市の運営母体である手紙社は数々のイベントを主催した。そこでも、迫田さんの装飾が会場を彩った。 

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例えば「東京蚤の市」。11月に開催された回では、クリスマスにちなみ、もみの木を切り出して会場まで運んだのだそうだ。そしてそのもみの木を、会場の中央に立てた……のではなく寝かせたのだ。そのインパクトは強烈で、会場の中でひときわ存在感を放っていたのは言うまでもない。 

いつも手紙社のイベントに関わってくれながらも、手紙社の中にはまだ、迫田さんとまともに会話をしたことがないスタッフもいるらしい。風のように現れて装飾を仕上げ、完成した後は風のように去っていく(実は会場にいることもあるらしいが、姿を見ることはない)。たぶん、どうやら、シャイらしい。

「いつ話しかけても、『ふーん』『へー』という返事なんだよね。『これは作るの大変だったんじゃないですか?』という質問をしても『まあねー』って。いつもペースが変わらないの。でも、誰よりも早く来て植物を組んでいる横顔は、すごく真剣なんだよね」(事務局M) 

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前回、2年前のもみじ市のテーマは「末広がり」だった。会場には神社が登場し、迫田さんには入り口に鳥居を立ててもらうようにお願いした。どんなテーマにも対応してくれる、発想の幅の広さ。普段、街角でディスプレイなどの装飾を見かけると、足を止めて観察するようにしているそうだ。努力家。仕事熱心。本人にそんな言葉を投げかけたら、どんな反応をするのだろう。「まあね」と、やはりそっけないのだろうか。

そして今年、事務局が迫田さんに提示したテーマは「カラフル」。装飾してもらうのは、これまでと同じ会場の入り口と、ステージ周りと、手紙の木。(※手紙の木の原稿にリンク貼ってほしいです)ただ、いつもと違うのは、会場が今年から2カ所に増えたこと。そして、ステージの装飾には、ある作家さんが作った、あるもの(今年、最後の紹介ブログで登場します)を使うこと。

「課題が与えられて、楽しいみたい。一年お休みしたことで、もみじ市スイッチが入りなおしたのかも」(事務局W)

はたから見れば無茶なお願いも、しぶしぶ引き受けてくれる迫田さん。「しょうがないな」と言いながらも、心の中では楽しんでくれているのだ。もみじ市を愛してくれていることは、完成した装飾を見れば、誰にだってわかるから。

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もみじ市まで、あと3日。いま、迫田さんの頭の中に渦巻いている様々なイメージ。それがどんな形になって現れるのか、それは、当日になるまでは本人にもわからない。10月19日の朝、2年ぶりに多摩川の河川敷に迫田さんが立つ。そのとき、河川敷はどんなインスピレーションを彼に与えるのだろうか?

ぜひ、もみじ市の会場で、確認してほしい。

【DOM.F.. 迫田憲祐さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
(* ̄ー ̄)y-


Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
(* ̄ー ̄)y-~~~~~~


Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
(*ー_ー*)zzz

さて、続いてご紹介するのは、日本刀のように研ぎ澄まされた木工作品を生み出すあの人です!

文●吉田茜

近藤康平 「ライブペインティング」

「色、そのものを持っていきますね」

もみじ市を1週間後に控えたある日、彼は私の前でこう言った。グラスを持つその手には、落ち切っていないアクリル絵の具がついたままで。楽しみだな、早くお客さんに会いたいな。そう、穏やかに微笑みながら。

彼との出会いは、去年の8月。あるアーティストのライブを観るために行った、江ノ島の小さなライブハウスで、初めて彼に出会った。彼は、音の中で、音に反応しながら、全身で絵を描いていた。私は、次から次へと色が変わっていく大きなキャンバスから目が離せないまま、音に色がついていく光景に夢中になっていた。

それから約半年後。近所のカフェで、偶然にも彼と隣り合わせた。江ノ島で絵を描いていた彼だと気がつかないままおしゃべりをし、彼がお店をあとにした数分後、あの時の彼だと気がついた。江ノ島での空間や絵が鮮やかに思い出されて、ふとこう思った。もし今年、もみじ市があるなら、絶対彼を呼びたい。彼に出てもらいたい、と。ひとつ夢ができた。ドキドキしながら、真冬の帰り道を急いだ。

そしていま。あの時の夢が叶った。彼がもみじ市にやってくる。真っ白な大きいキャンバスと、たくさんの絵の具を持って。青空の下で、思いっきり絵を描くために。

彼の名前は、近藤康平さん。ライブペインティングパフォーマー、絵描きだ。彼は、ひとりで黙々と描くのではなく、様々なミュージシャンの演奏に反応・同期しながら、即興で絵を描いている。

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彼は、筆をほとんど使わないで絵を描く。アクリル絵の具を直接手に取り、ものすごいスピードで真っ白のキャンバスを色の海に染めていく。圧巻なのだ。頭が真っ白になるとか、言葉が出ないとか、ありきたりだけど、まさにその感覚に自分自身が深く深く潜っていくのがわかる。

数分の間で、みるみる絵が変わっていく。海が、森に。夜が、朝に。女の子が現れ、猫が横切り、クジラが泳いだりもする。瞬きをする余裕さえも与えてくれない。いや、正確には、瞬きをすることがもったいないのだ。

次は何色に変化するのだろうか。次は何が現れるのだろう。想像してみるけれど、彼の手は、私が想うところをはるかに超え、また違う色の世界を描いていく。

「直接手で描くのは、感動の伝わる加減が違ってくるような気がしているからなんです。筆を使うと、その分タイムラグが発生してしまう。観てくれるお客さんも、ミュージシャンも、そして自分自身も、ずっと感動していたいし、させたいんです。驚かせたいんです。だから、一瞬たりとも無駄にしたくないんです」

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ライブペインティングをする人の多くは、最初から最後までずっと描き続け、1枚の絵を完成させる。けれど、彼のライブペインティングは違う。描きはじめた数分後には絵が出来上がり、さらに数分後にはまた違う絵になっている。彼の絵には “完成” という言葉がない。描きはじめたときからすでにひとつの作品でもあるし、その場で描き終えたあとも、まだその世界が続いているような気がしてくる。

「絵を届けたい人にちゃんと届けるためには何がいいかと考えた時、このライブペインティングがいちばんだと思いました。生身で、直接、同じ空間を共有して届けたいなと。観てくれている人と、その場を共有したいといつも思っています。物語を共有したいんです。その場にいてよかったという強烈な思いを味わってもらいたいし、僕自身も味わいたいと思って描いています」

“共有” 、彼の中でずっと大切にしている大きなコンセプトだという。そして、共有するための大事な役割を担っているのが、彼の絵の中に登場する、動物や人などのモチーフだ。

「抽象画であれば、その模様だけでも成り立ちます。でも、観てくれている人との距離を縮めたい。そう思ったとき、人や動物を入れることで物語ができ、絵を通してコミュニケーションが生まれるんです」

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アトリエにこもって、自分の世界に潜り、ひたすら描き続ける。絵描きと聞いて多くの人が想像するのは、きっとそんな姿。けれど彼は違う。絵を届けたい人がいて、観てくれる人がいて、その空間があって、初めて彼の絵が呼吸をする。

彼の絵が呼吸を始めると、観ている私たちは、森の中へ、海の中へ、どこへでも自由に行ける。ひとりにもなれるし、誰かと一緒になることもできる。そして、気がつけば、いつか見たことのあるような、どこか懐かしい景色の中にいる。

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近藤さんは、絵を学んだことがない。すべて自己流、独学なのだ。

「学んでいない分、学んだ人には絶対できないような発想ができると思って。絵の描き方、絵描きとしてのスタイルも、自分が思うままにやっています。モデルケースはありません。だって、絵を描きながら全国ツアーなんて、聞いたことがないでしょ? すべて、実験中なんです」

ゆっくりと穏やかな口調で、話してくれた。

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週末、多摩川河川敷の晴れた空の下に、色の森が現れます。一緒にその森に迷い込んでみませんか? どこか懐かしいような、いつか夢の中で見たような。楽しくほっとできるその場所に、ご案内します。

< 近藤康平 「ライブペインティング」のご案内 >

開催日時:
10月19日(土)12:00頃 約40~50分間
10月20日(日)12:00頃 約40~50分間

演奏:原田茶飯事

参加方法:当日、直接ブースへ起こしください。

 【近藤康平さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
はじめまして。近藤康平です。絵描きです。今、「color power spot」という個展をしています。ひとつの色が、僕等の日常をパワースポットに変えてくれるような、そんな気がします。

もみじ市は、そんな色や、音や、食べ物や、飲み物や人たちが集まるのだと思います。みんなが多摩川河川敷をパワースポットに変えてくれるのだと思います。みんなで癒されましょう。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
青です。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
“色そのもの” を持っていきます。そして、盟友である原田茶飯事くんという最高のミュージシャンとライブペインティングをします。真っ白の大きなキャンバスにカラフルな絵を描きます。真っ白な服や靴できてくれた方、ご希望があれば直接絵を描きますよ!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、三角マークが目印の万能調味料の開発者。今回はどんなお食事を用意してくれるのでしょうか?

文●高松宏美

井田耕市「立体会場マップ」と「カラフルHOUSE」

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「はるちゃん」
井田さんは、私のことをそう呼んでくれる。苗字でもなく、はるなちゃんでもなく、はるちゃん。井田さんの呼びかける声に、私はいつも親しみを感じて、嬉しくなる。

「どうしましょうねぇ」
井田さんは、いつも問いかけてくれる。考えを押し付けるでもなく、ただ聞いてくるだけでもなく、問いかけて、そして一緒に考えてくれる。これが井田さんのスタイルなのだなぁと思う。

「設計は100%黒子なんです」
井田さんは、あまり前に出ようとしない。だけど、後ろにいてしっかりと支えてくれる、そんな感じがする。手紙社のふたつのカフェ「手紙舎つつじヶ丘本店」と「手紙舎 2nd STORY」、この設計をしたのが井田さんなのだ。「出来上がったものには、自分のにおいよりも、施主さんのにおいが付くように、半年位経ってから行ってみて、その人のにおいになっていたらいいなと思う」と言う井田さんは、何気ない会話の中から、その人が叶えたいと思っている要望や好みを汲み取って、それを形に変えていく。

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雨の日は、「手紙舎にいきたいな」と思う。テーブルに座ってコーヒーを飲みながら外の景色を眺めていると、とても心が落ち着く。

晴れた日には、中庭から眺める空がいい。四方を囲われた空間は、空しか見ることができなくて、それが良い。

秋の夕暮れどきには、開け放たれた窓から虫の声を聞くのがとても良い。明日も頑張ろうという気持ちになれる。

手紙舎つつじヶ丘本店は、昭和40年代に立てられた歴史のある団地の一画に突如現れるごはんとカフェのお店だ。2009年、私は手紙舎が出来上がっていく工程を見る機会に恵まれた。徐々に出来上がっていく空間には、はっとさせられるような細かな仕掛けがたくさんあった。それは例えば、飲食店スペースからキッチンへ向かう間にあるちょっとした段差、ちょっと低めに設置されたトイレのドア、壁いっぱいの木製の本棚、天井からぶら下がる棚と天井とをつなげる細かな細工。随所にちりばめられた仕掛けを見つけたくて、行くたびに次はどんな発見があるだろうと思ってワクワクしたのを今でも覚えている。

井田さんに聞くと、それにはやっぱりひとつひとつ理由があって、団地の広場に向かって長くつながった建物の空間を分けるための要素と、全てが別々になりすぎてしまわないように、つなげるための要素を組み合わせることで、それぞれの空間をつくりながらも、 全体としてのまとまりを出すように設計している、のだそうだ。例えば、段差は空間を分けるための要素。トイレのドアも、本棚の奥の秘密の部屋に入っていく雰囲気を強調するための要素。そして壁いっぱいの本棚は、個々の空間をつなげて統一感を出すための要素、といった感じだ。

井田さんは、空間を切り取るのがとても上手なのだと思う。あまり広くはない店内に、フレームに納めたくなるシーンがたくさんある。それはもちろん偶然ではなくて、どう活かすかを綿密に考えて、読み取った結果だ。そしてそこに、手紙舎がもつ空気感が合わさって、だからやっぱり何度行っても次はどんな発見があるだろう、どんな出会いがあるだろうと思ってワクワクするのだ。

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さて、今年のもみじ市で井田さんは、もみじ市の会場全体を表す「立体会場マップ」、そして出店者のみなさんが手づりしたお面を飾る「カラフルHOUSE」を設置してくれることになった。その設計にあたっても、何度も手紙舎に足を運び、もみじ市事務局のメンバーや大工の山口佳子さんと打合せの時間を設けてくれた。そして、そのコミュニケーションの中から、どういうものにしていくかを読み取っていくのだ。

当日、井田さんは「立体会場マップ」と「カラフルHOUSE」のそばにいるはずだ。リフォームでお悩みの方、お店を始めたいとお考えの方、是非井田さんに相談してみてください。井田さんとの会話の中から、ひょっとしたら、なにかヒントが見つかるかもしれません。

え? 井田さんの「立体会場マップ」と「カラフルHOUSE」、何を目印に見つけたら良いかって? 心配には及びません。それこそが、会場全体の目印になっているはずですから!

【井田耕市さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
設計を行っている井田です。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
背景色です。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
会場マップを考えております。たくさんの色がより映えるようにがんばります!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、三重県からやってくるあの和菓子職人です!

文●上村明菜

ウィスット・ポンニミット「タムくんの青空似顔絵」(19日)

「ものづくり人が集う、世界一のイベントにしよう」

そんな掛け声とともに、半年前に準備がスタートした今年のもみじ市。“世界一”という言葉は、人によってはまったくの冗談に聞こえるかもしれません。でも、今年のもみじ市は一味も二味も違います。“日本一”を越えたイベントになるのでは……。なんと9回目の開催となる今回、初めて海外からゲストがやってきます! 

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彼の名前は、ウィスット・ポンニミット。タイ・バンコク在住のマンガ家・アニメーションアーティストです。日本では「タムくん」の愛称で親しまれています。1998年にタイでマンガ家としてデビューした後、2003年から3年間日本に留学。彼の描くマンガが単行本として2004年より日本でも出版され、「SAKEROCK」や「くるり」といった著名なミュージシャンのプロモーションビデオやアートワークも手掛けています。

buranko(C)ウィスット・ポンニミット/小学館

タムくんの描くマンガには、“こども”の自分と“大人”の自分、どちらにも響く不思議な力があります。初めて彼の作品に触れたのは、『月刊IKKI』というマンガ誌で連載されていた『ブランコ』という作品。だれかの傷を自分に移して治したり、過去の記憶を見ることができたり、不思議な力をもつ「ブランコ」という少女が主人公のお話です。家族や恋人、宇宙人や記憶を預かる不思議なおばちゃんなど、ユニークなキャラクターとともに主人公が時を越え、宇宙を越えて生きる壮大なストーリー。こんな風に書くとファンタジーばかりの物語に聞こえるかもしれません。確かに、未来の街やタイムマシーン、ビームの出るタバコ、魔法のような主人公の力に子ども心がドキドキします。でも、それだけではありません。彼の描くストーリーや、登場するキャラクターたちが体験する世界、彼らがそこで感じる思いやそこから溢れ出る言葉には、現実に大人として生きる自分たちへのメッセージが詰まっています。たとえばこの作品では、まさに「ブランコ」のような人生が主題となっています。振り返りたくない過去の記憶を消したり、望まない未来をいろんなものを犠牲にして変えようとしたり。過去と未来、それぞれに振り回されてなかなか上手くいかない主人公たちですが、最後に主人公・ブランコがこんな風に思うのです。

「現在に、今だけじゃなくて昔と将来も重なってる。ブランコに乗るみたいに、昔の懐かしいことを思ったり、夢のある将来を思ったり。ブランコは揺れて楽しい。楽しくて、また揺らしたくなる…。私達はいつから揺れてきたのかな。私達はいつまで揺れていくのかな。いつかそこから降りられて、平和な気持ちになれるといいな」

今生きているその時間を大切にしたい、そこで一緒に生きる人との幸せを願いたい。それは、ブランコをたくさん漕いできた大人の皆さんだからこそ、きっと感じられるメッセージです。

家族や友人、恋人同士など、人のつながりが描かれた日本のマンガにも影響を受け、自身もそうした関係や人となりを好んで描くというタムくん。そんな“人”好きな彼の個性が光る活動が行われています。東京・渋谷のギャラリー「SUNDAY ISSUE」とのコラボレーションで行っている「Myday Portrait 2013」というオンラインの似顔絵プロジェクト。Skypeや写真を使って、バンコクにいるタムくんが日本にいる人の似顔絵を描くのです。

今回のもみじ市ではなんと、タムくんがバンコクから、多摩川河川敷にやって来ます(本物ですよ!)。「タムくんの青空似顔絵」と題して限定16組で似顔絵イベントを行ってくれます! タムくんは「似顔絵を描いていると、描かれる方は笑ってくれる。うれしい」といいます。家族で、恋人と、友だちと、ぜひご参加ください。もちろんおひとりでも大丈夫。あなたのとびきりの笑顔を、タムくんがきっと描いてくれます。

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<ウィスット・ポンニミット「タムくんの青空似顔絵」のご案内>
開催日時:
10月19日(土)
①11:30~12:30(4組)
②13:00~14:00(4組)
③14:00~15:00(4組)
④15:00~16:00(4組)
定員:各回4組(事前お申し込み制)
お申し込み方法:件名を「タムくん似顔絵イベント申し込み」とし、ご希望の時間帯、人数、お名前、お電話番号、メールアドレスを明記の上、【workshop06 @momijiichi.com】へメールでご連絡ください。
お申し込み開始日: 定員に達しましたため受付を締め切らせていただきました。たくさんのお申し込みありがとうございました!

参加費:
1名様 4,500円
2名様 8,000円
3名様 10,000円
*幼児は1名様まで無料です
*すべて1枚に描く場合の参加費です
*ご予約のキャンセルはお受けいたしかねますので、予めご了承の上お申し込みください
所要時間:1組 約15分

【タムくんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
タイ人のマンガ家です。日本にも住んでいたことがあります。マンガを描いたり、アニメーションつくったり、音楽の活動をしています。今回は似顔絵屋さんをやります。似顔絵屋はタイでも日本でもずっとやっていて、プレッシャーがなくていい。みなさんもゆっくりした気持ちで来てくださいね。あとマムアンちゃんっていうキャラクターかいたりしていて、そのマムアンちゃんのグッズをいろいろつくってるので、今回はグッズを売ったりもします。

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Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
あまりこの色っていうのはないかな。好きな色は、ぼくのキャラクターに「したくん」っていうのがいるんだけど、そのボディースーツの色の緑かなあ。ぼく自身は透明な感じでいて、みんなのいろんな色感じれたらいいなあと思ってます。

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Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
もみじ市でみなさんの似顔絵をかけるの楽しみにしてます。「カラフル」というと似顔絵をカラフルに描くしかない!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、異なる分野で活躍する4人の女性が結成したあのアウトドアユニットです!

文●柿本康治

早稲田大学ジャグリングサークル〜infinity〜「infinityジャグリングパフォーマンス」

もう何年も使っていない言葉を文字にしたら、なんだか照れくさくなった。
「青春」
彼らを見ていると、そんな言葉が思い浮かぶ。照れくさい? いや、本当はうらやましいのかもしれない。だって彼らは、キラキラ輝いているから。

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待ち合わせの場所に指定されたのは、早稲田大学のキャンパスからすぐのところにある戸山公園。制服や部活のユニフォームを着た学生、小さな子どもを連れたお母さん、昼下がりを楽しむおじいちゃん。都会の真ん中とは思えない緑溢れる環境の中で、それぞれの時間を穏やかに過ごす、微笑ましい風景があった。早稲田大学ジャグリングサークル〜infinity〜のメンバーたちが集う一角を除いては。

テンポのいい音楽と、公園いっぱいに響き渡る笑い声。ボール、ボックス、コマなど、舞うはずのないものが空を駆け巡る。
「何だ、あれ?」
通りすがりの人も、ついつい足を止めてしまう、インパクトのある光景だ。

「授業がない時間にふらっと来てみるといつも誰かがいるんです。練習するのは、木曜日と土曜日って決めているんですけどね、いちおう」

そう話してくれたのは、早稲田大学3年生の藤森壮也さん。彼らのジャグリングを見るのが初めてだった私に、彼はいろんなことを教えてくれた。サークルとして結成されたのは7年前で、当時のメンバーは5人しかいなかったこと。現在の部員数が70人を超えていて、OBだけでも100人以上いること。そしていま、ジャグリングに夢中であるということを。

藤本さんが、早稲田大学に数あるサークルの中でジャグリングを選んだのは、友人が入っていたから。ジャグリング未経験だった彼は、最初はものを投げることも受けとることもできなかったという。でも、ジャグリングが楽しかった。ここに来れば仲間もたくさんいる。練習が苦になることはなかった。

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「サークルに入る人の半分が経験者、半分が未経験者なんです」

どの競技においても言えることだけど、努力をすればするほどできることが少しずつ増えていく。藤本さんも日が経つにつれて、空にいろんなものを飛ばせるようになった。だんだんとジャグリングの魅力にはまっていった。

「合宿に行く時は、大きな体育館を借りて1日中ジャグリングをやっています!」

テレビの出演、企業、保育所、老人福祉施設のイベントなど、あらゆる方面からオファーがあるという。アマチュアと言えども、プロ並みの活躍だ。実際、彼らからは“アマチュア感”は漂って来ない。もっとうまくなりたい、たくさんの人を楽しませたい。そんな熱い想いが、しっかりと伝わってくる。

「1曲を通して、やってもらうことってできますか」
練習風景だけでも、「おー」「わー」「すごーい」とはしゃいでいたけど、やっぱり最初から最後まできちんと見ておきたいと思った。音楽が始まり、手に持った道具がリズムと一緒に宙を舞う。道具ひとつで人を愉快にさせたり、驚かせたりできるジャグリングっておもしろい。

「ジャグリングの魅力ってなんですか」
最後に問いかけてみた。
「どんなやつでも、ヒーローになれるんです」
なんてこった! 予想以上にイキイキと、キラキラとした答えが返ってきた。ひとことで言えば……、やっぱり青春だ。

【早稲田大学ジャグリングサークル〜infinity〜さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
早稲田大学ジャグリングサークル〜infinity〜です。コマやボールなど、ものを投げたり、取ったりしながら、常に1つ以上のものを浮かせた状態を保つパフォーマンスを披露します。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
赤、青、黄色など、あらゆる色を持つ虹色です。使う道具や人によって、全く違うカラーのジャグリングを披露します。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
自由にパフォーマンスをすることで、当日にしか見られないジャグリングが生まれると思います。楽しみにしていてください。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのはもみじ市では毎回大人気の手彫りはんこのあの人の登場です!

文●新居鮎美

HammockRefle Kikuya「ハンモックにくるまれてリフレクソロジー + お休み処 はんもっく」

ハンモックリフレ

自然と口がぽかん、と開き、反対にまぶたがするするとおりてきた。ゆら、ゆら、心地いい揺れに身体をあずける。「ハンモックは、リラックスモードのスイッチがすぐ入る」と、菊川さんが言ってたのは本当だな。パチッ、とスイッチが入った私の体から、力が抜けていく。さらに抱き枕とひざ掛けの登場で意識が遠のくのだけど、菊川さんの手に包まれた足裏への刺激で、意識の一部はクリアに目覚めていた。眠りと覚醒の境界線上をふわふわと漂っているような感覚は、初めてだった。

JR武蔵境駅からのんびり歩くこと20分。玉川上水を越えて空気が変わったのを感じる頃、大きな木のある、緑の濃い一区画に到着。築150年の古民家「和のいえ櫻井」の敷地内にある「HammockRefle Kikuya」のサロンで、菊川太さんと相方(と菊川さんが呼ぶ奥さん)の真琴さんが迎えてくれた。平屋を改装したサロンには、チェア型のハンモック、柱にもハンモック、施術用ベッド、そして縁側。日本人のDNAが反応するのか、早くもくつろいだ気分になる。

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サロン内ハンモック

「Kikuyaの雰囲気は相方が作ってるんです」と菊川さん。棚に並ぶ雑貨や絵本は、ひとつ一つ選ばれたことがわかる物ばかり。お勤めしている真琴さんは「私が一緒に施術できるようになれば、いちばんいいんでしょうけど、やらないの。私は受ける専門だから」と明るく笑う。ふたりを見ていて、バランス、という言葉が浮かんだ。

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リフレクソロジー(Reflexology)は「reflex=反射」と「-logy=学問」のふたつの言葉からできていて、身体の臓器や器官の反射ゾーンを刺激し、血液やリンパの流れをスムーズにする。足裏のイメージが強いけれど、手のひらや耳、目にも反射ゾーンがあるそう。足もみはエジプト文明の頃から存在し、壁画にもその図が残っているんだとか。

菊川さんがリフレクソロジーの道へ進んだきっかけ。

「スーツに憧れて営業の仕事もしたけれど、これは違うと思って辞めて。学生の頃、バレーボールをやってて、ケガの治療で接骨院でもんでもらうのが好きだったから、自分がして欲しいことをしようと思って。そのタイミングでリフレを受ける機会があって、ハマっちゃったんですよね」

その後、リフレクソロジーの学校に通い、サロンで経験を積んだ。ハンモックはどこから?と聞くと、「子どもの頃から旅に憧れがあって。旅=リゾート、といったらハンモックだった」と笑う。

吉祥寺のハンモックカフェに行った時のことだ。「楽~な椅子でリフレ、ええなって、ハンモックに座ってすぐに言いだしたんですよ。私は猛反対!だってハンモックなんて、ゆらゆらして安定しないし」と真琴さん。2010年に独立する際、どうオリジナリティを出すか?と考えた時、菊川さんのハンモックへの情熱がふつふつと再燃した。ハンモックカフェにて店員の足を借り、いろいろ試させてもらううちに「月に1回ここでやってみない?」とオファーがあり、HammockRefleが誕生した。

菊川さんのハンモックの野望。ヘッドスパやハンドリフレ、オイルリフレもチェア型ハンモックで出来るように、ハンモックを改良すること。もっとコンパクトなチェア型ハンモックスタンドを作ること。本業はリフレなのに、ハンモック屋みたいですけど、と笑いながら話してくれた。

「使い始めてわかったことやけど、脱力感がたまらない。暑い国では寝具だし。けど、ちゃんとした寝かたを知らないと、落っこちたり気持ちよく寝れない。ハンモックにいいイメージのない人にこそ、寝てみてほしい」

お休み処はんもっくイメージ

今回初参加となるもみじ市では、ハンモックでのんびりできる「お休み処 はんもっく」のスペースも用意してくれるそう。ひざ掛けがあるので、スカートの方もご安心を。そして、ハンモックリフレは10分1,000円から。体験したい人は10分、ちょっと休みたい人は20分、お疲れの方は30分。もみじ市の会場を歩き回った後で素足になるのは…という方もご心配なく。靴下、ストッキングのままでもOK。

多摩川河川敷の大きな木の下、ハンモックにくるまれて青空を見上げるあなたのもとに届くのは、音楽と笑い声と、幸せな時間。

【HammockRefle Kikuya 菊川太さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
座った瞬間、なぜか笑顔になってしまう魔法のイス、ハンモック。

そのハンモックにくるまりながらリフレクソロジーを受けていただく、HammockRefle Kikuya 菊川太です。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
好きな色は明るい緑。芝生みたいな色。黄色も今年は好き。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
ハンモックで会場を彩ります!!子どもも大人も楽しくくつろげる空間をつくります。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、色鮮やかなイラストで会場を彩ってくれるあの人です。使う画材は赤や黄色のカラフルな“砂”

文●小澤亜由美 

tupera tupera「カラフル人工場」

「カラフル人を増産します!」
tupera tuperaの亀山さんは、言ってくれた。

写真① PHOTO RYUMON KAGIOKAPHOTO RYUMON KAGIOKA

2013年4月下旬、もみじ市事務局のメンバーは10月に開催が決定したもみじ市のメインビジュアルをお願いするイラストレーターさんについて話しあっていた。

「やっぱり、tupera tuperaさんにお願いしたいね」

今年のもみじ市のテーマが「カラフル」に決まり、当日のドレスコードも“カラフルな出で立ちに”と決まって以来、私はちょっとした不安を抱えていた。あれ、もみじ市に来てくださるお客さんって、そんなにカラフルだったっけ…? でも亀山さんの力強い言葉を聞いて「うん、これできっと今年も大丈夫だ」と心から思えた。

tupera tuperaは、亀山達矢さんと中川敦子さんのユニット。絵本や、イラストレーションをはじめ、日本各地で、それはそれはカラフルで愉快なワークショップを開催するなど多方面で大活躍をしている。最近ではNHK Eテレの工作番組「ノージーのひらめき工房」のアートディレクションの担当もしており、目にしたことのある方も多いのではないだろうか。

今年10年目を迎えるtupera tuperaのおふたり。多方面からひっぱりだこで大忙しの中、今年のもみじ市では当日の出店だけでなく、もみじ市のサイトやポスターなどに使われている、メインビジュアルの話を本当に快く引き受けてくれた。どうしてそんなにお忙しいのに、引き受けてくださったのですか?

「自分たちにとって大事な部分っていうのがある。大事なひと、大事な出版社、大事なイベントというのがある。この先の10年は、今までの10年を一緒に作ってきた人達と色々やってきたい。そういう人とのことは、どういうことであれ“やるぞ”と思う。もみじ市もそのひとつ。その先は、それまでの人と作って行く、かっこ良くいえば。かっこ良いでしょ。」

はい、カッコ良いです。

新しい人との出会いも新鮮でもちろん大切にされるけど、これまでの10年を一緒にやってきた人=大事な人、を大切にしていかなくてはという姿勢がとても頼もしくて、そしてそこにもみじ市が含まれていること、とても嬉しく誇りに思えた。

もみじ市で恒例となったワークショップは「色々な人と関わりながら作るのが楽しくなったきっかけ」になったのだそう。そして、今年のもみじ市では「カラフル人工場」というお面作りのワークショップを開催してくれる。子供はもちろん、大人も楽しめるワークショップ、しかも当日の飛び込み参加が可能となっているので「あれ、今日ちょっと地味だったかな?」と思った人も、もっとカラフルになりたい人も、カラフル人になりに行ってみてくださいね。

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「パンダのシッポ、実は白いんですよ。おしい。だから90点!」
パンダの出っ張っているところは全部黒いと思われがちだけど、実はシッポだけは白いのだそうだ。だから90点。

これは、tupera tuperaさんの新しい絵本『パンダ銭湯』(絵本館)を見せて頂いた時のはなし。亀山さんは出来たてホヤホヤの絵本を読み聞かせしてくれた。

亀山さん:「チャ」(絵本の中に出てくるフレーズ)
私:「アッ!!」
思ってもいないまさかの展開だ(ぜひ、本を読んで下さいね)。

tupera tuperaさんは、いつもクスッと笑っちゃうような何かをどこかに仕掛けている。だから私はその「クスッと」を見つけたくて、じっくりじっくりtupera tuperaさんの絵を見入ってしまう。

今年のメインビジュアルのポスターの中にも、あれ、どこかでみたことがあるような…もしかして…、そんな顔がいくつも隠れている。このメインビジュアルは、個性豊かでカラフルなもみじ市出店者の皆さんをイメージして作ってくださったのだとか。うずを巻いているあれとか、さくさくっと美味しいあれとか…あなたはいくつ見つけられたでしょうか?

tupera tuperaさんの出店は19日・20日の両日です。どのブースから周ろうか迷っているあなた、まずは「カラフル人工場」でtupera tuperaさんとお面を作って、とびっきりのカラフル人になって、もみじ市を楽しんでみませんか?

<tupera tuoeraワークショップ「カラフルお面を作ってカラフル人になろう!」のご案内>
開催日時
10月19日(土)11:00~15:00
10月20日(日)10:30~14:30
※両日とも開催時間中は随時受け付けいたします。

参加費:500円(当日のお支払い)
定員:各日150名
お申し込み方法:事前のお申し込みなしでご参加いただけます。

 【tupera tupera 亀山達矢さんと中川敦子さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
亀山達矢と中川敦子、二人合わせて tupera tupera です。絵本、工作、ワークショップなど、とにかくいろいろな事をやっています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
亀山「グリーン」
中川「オレンジ」
補色です。ハレーションです。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
カラフル人を量産します。みなさま、ぜひカラフル人工場にお越し下さい。とびっきりののカラフル人になりましょう!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、東林間にある、とっても素敵な焼き菓子店。開催時間中のおやつに、お持ち帰りのお土産に、お一ついかがですか?

文●上村明菜

キノ・イグルー「テントえいがかん」

スクリーンの前で、人は自由だ。 

あなたは普段、誰かのお母さんで、誰かの子どもで、誰かの上司で、誰かの部下で、誰かの先輩で、誰かの後輩で、もしかしたら村長かもしれないし、どこかの国の王様で、お姫様かもしれないけど。映画の上映中だけは、肩書きを忘れ、私たちは何者でもなく、ひとりの人間になる。

“彼ら”はいつだって、映画を通してそんなことを教えてくれる。

8月18日。日曜日。快晴。日差しが痛いほどジリジリとして、とっても暑い夏の正午。井の頭公園にあるカフェで待ち合わせをした。空は青く、高く、公園の緑は生命力に溢れ、蝉の声は、さらに勢いを増しているようだった。

大粒の汗を流しながら、待ち合わせのカフェに向かう途中、いつものように青いギンガムチェックのシャツを着た渡辺順也さんに出会った。眩しそうな表情で、こちらのほうへ歩いてくる。

「どこ行くんですかー?」

不思議に思って声をかけると、公園の売店を指さして、

「だって、暑くない?」

そう言いながら、ソーダ味のソフトクリームを買って、食べ始めた。自由だ。待ち合わせの時間まであと数分だけど、食べ終わるのだろうか…。そんな心配をよそに素早くソフトクリームを食べた渡辺さんとカフェに入ってからしばらくすると、いつものように青いボーダーのTシャツを着た有坂塁さんがふらっと現れ、にこやかに渡辺さんの横に座る。

注文を終えると真っ先に、「あの映画観た?」と、当たり前のように最近観た映画の話を始めた。どうやら、早速“スイッチ”が入ったようで、その映画の話でひとしきり盛り上がった。私は、彼らと映画の話をしている時間がとても好きだ。話しているとき、その表情からは映画に対する愛が滲み出ていて、こちらまでにやにやしてしまう。そうして、話した後は決まって、無性に映画を観たくなるのだ。映画について語り合っている光景はまるで、少年のように純粋で、きらきらした目の輝きが眩しかった。

彼らの名前はキノ・イグルー。“究極の映画ファン”である。

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有坂塁さんは、もともとは映画が嫌いだった。幼い頃から二十歳を越えるまで、サッカー一筋で、本気でプロを目指していた。しかし、ある一本の映画と出会い、衝撃を受けたときから、しだいに映画との距離が縮まっていく。そうしてある時、サッカー人生に終止符を打ち、映画の道に進むことを決意。中学の同級生である渡辺順也さんを誘い、2003年「移動映画館」を始めた。

とは言っても、最初から「移動映画館」として活動していたわけではなかった。彼らの活動の原点は、友人が運営する「まちの小さな映画館」。そこから始まり、今では全国各地のカフェや雑貨屋、書店、パン屋、美術館、ホテルや百貨店の屋上、森の中など、さまざまな空間で、世界各国の映画をジャンルにこだわることなく上映している。その上映スタイルはどこまでも自由で、独創的。想像もしなかったような環境で観る映画は、まるで別の世界を旅しているような気分にさせてくれる。

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「みんなの心のどこかにある“映画スイッチ”をONにしたい」

有坂さんはそう話す。心のどこかに眠っている一人ひとりの“映画スイッチ”にさりげなく触れ、目覚めさせてくれる。それが、キノ・イグルーの活動なのだと思う。

映画上映後、その余韻のなかで、有坂さんはみんなの前に立ち、「お話」をする。「お話」とは、映画の単なる「解説」や、「評論」をすることではない。その映画をもっともっと好きになってほしい、知ってほしいという思いに溢れた、プラスアルファの情報である。有坂さんの穏やかな口ぶりには、一本の映画に対する深い「敬意」を感じる。そこには、あくまで“映画ファン”として映画と関わることを大切にし続ける、結成時から10年間変わることのない、キノ・イグルーの姿がある。

2012年の夏に行われた、キノ・イグルーが主催するルーフトップシネマの風景が、忘れられない。とても暑い夜だったけど、ホテルの屋上には、ほてった体をやさしくいたわるように風が吹いて、気持ちがよかった。有坂さんが選んだ、夏の夜にぴったりなBGMが会場を包み込む。この日は、もみじ市の事務局何人かを誘ってみんなで観に行ったのだ。仕事が終わって、次々と集まってくるメンバーは、ウッドデッキの上で靴を脱ぎ、ねころがってぼんやり星空を眺めたり、お酒を飲みながらゆっくり話をしたり、思いおもいに、映画の前の、ゆるやかに広がる時間と空間を楽しんでいた。

足を伸ばして。風を感じて。映画を待つ。心はしだいに、とき放たれていった。

上映作品は、フランスのミュージカル「フレンチ・カンカン」。リズミカルな展開と、圧倒的なラストシーンに心が踊ったのは、私だけではなかった。野外の空気に開放された、そこにいるお客さん全員が、まるで映画の世界に入ってしまったかのように、もしくは、映画が、こちらの世界に飛び出してきたかのように、映画と一体となり盛り上がって、指笛を吹いたり、拍手をしたり、声を出して笑ったりしていた。そして前方には、主催者としてではなく、いち観客として、私たちと一緒になって映画を楽しむ、キノ・イグルーの姿があった。

私は、あの風景を一生、忘れないとおもう。映画がこんなにもみんなを「ひとつ」にして、心が震えるほど感動したのは、生まれて初めてだった。映画が終わっても、私たちはすぐに帰りたくなくて、しばらくデッキの上でぼんやりと、余韻に身を委ねていた。

普段、映画を観る環境ではない場所で、あえて「みんなで映画を観る」ということ。みんなが足を伸ばして、自分らしくそこにいられて、自分らしく映画を楽しみ、帰り道には、映画の話をして帰る。映画と私の距離が、ぐっと縮まったような、そんな気持ちにさせてくれる。私は当時、そこまで映画を頻繁に観るほうではなかったというのに。どうしてだか、家に着く頃にはもう、次の映画を観たくなっていた。私のなかの“映画スイッチ”がONになった瞬間である。

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もみじ市にはもはや欠かすことのできない存在となったキノ・イグルー。青いテントの映画館で、今年もみんなを待っている。上映作品は、当日までのお楽しみ。今回は、私たちをどんな世界に連れて行ってくれるのか、とても楽しみだ。

もみじ市に来たなら、おいしいものを食べて、飲んで、素晴らしいものづくりの作品に出会い、作家さんとたくさんお話をして、ライブを堪能し、そうして、この小さなテントで映画を観てほしい。一本の映画を観た後、余韻の残る心で、テントの外へ出て、またその目で、もみじ市の世界を、じっくりと見渡してみてほしい。そこにはきっと、さっきまでとは違う、もっともっとカラフルな世界が、あなたを待っているはずだから。

キノ・イグルーのテントえいがかん、まもなく上映時刻です。

【キノ・イグルー 有坂塁さんと渡辺順也さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
カフェ、雑貨屋、パン屋、ホテルの屋上など、ありとあらゆる場所を、わくわくする映画館へと変えてしまう、移動映画館のキノ・イグルーです。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
トリコロール!(反則?)

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
もみじ市でしか体験することのできない「テントえいがかん」が、今回もオープンします! 目印は、ブルーのかわいいテント。カラフル!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、益子からやってくるあの陶芸家さん! テーマカラーは料理の美しさを引き立たせる“白”。

文●池永萌

きんのむつみ「フェイスペイント」

小学生の時に「将来の夢」について書く作文があった。たしか私は、「学校の先生になりたい」と書いたように思う。しかし、1年後には、「ラジオのアナウンサーになりたい」と言っていた。大学の進路を決める時、ちょうど月曜21時にフジテレビで放送していたドラマ「やまとなでしこ」を観て、「空港で働く仕事に就こう」とエアライン科のある専門学校を探し進学。卒業後の就職先は、空港ではなく、地元・徳島県にある出版社だった。思い返せば、私の夢は毎年変わっていて、30歳になった今もやっぱり変わり続けている。

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現在、フリーのメイクアップアーティストとして活動するきんのむつみさん。メイク、ヘアスタイル、ファッション…中学生の頃からオシャレに敏感な、いわゆる「ませがき」だったそう。出身は、岩手県。当時から都会に、東京に、強い憧れをいだいていたという。ファッション雑誌を読んでは、制服のスカートの丈を短くしたり、ルーズソックスを履いたり、厚底のブーツを履いたり。美容雑誌を読んでは、近所にある化粧品売り場に足を運び、マスカラ、アイシャドウ、グロスなど、あらゆるメイク道具を買いそろえていたのだとか。今のきんのさんからは、想像もできないけれど、ギャルメイクやヤマンバメイクにも挑戦していたそう。

「流行のものは、すべてトライしたように思います。やんちゃでしたね。先生には、よく怒られていたし、ポーチなんかも没収されていました」

そんな彼女が、美容師やスタイリストではなく、メイクアップアーティストの道を選んだのには理由がある。

「肌が好きなんですよね。当時、肌荒れがひどくて、スキンケアにも興味があったんです。肌をキレイにすることが楽しくて。そこからメイク道具を使ってキレイにするということにつながっていったんだと思います」

メイクで新たな魅力を引き出す。いつもは、広告、雑誌、舞台などのヘアメイクを担当しているきんのさんは、モデルさんや役者さんと接する機会が多いと言う。

「美しい方をより美しくする。もちろん、それはそれでやりがいがあります。だけど、一般の方も同じように美しくしたいんです」

そんな金野さんが、一般の方を対象にペインティングを始めたのは、子ども向けのイベントに誘われたことがきっかけだ。

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「最初は、ペインティングなんてしたことがなかったから、どんな道具を揃えたらいいかもわからなかったし、何を描けばいいかも…それに、絵を描くことが苦手なんです。でも、やってみたら楽しかった。赤ちゃんや子どもの顔にペインティングすることが多いんですけど、肌がもうツルツルなんです。ペインティングをする時も、すーっと筆が入って」

きんのさんは続ける。

「子どもたちはかわいいし、癒されます。それと、顔に描かれることが嬉しいみたいなんですよね。『この絵描いて』とか、『描いてもらったものが消えた…』と泣いてしまう子もいて。自分が思っている以上に、みんなが喜んでくれているから、私でよければ描きますよ! って」

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ペインティングを始め今年で6年。細い筆や太い筆、100円ショップで買ったもの、画材の専門店「世界堂」で購入したもの、いつのまにか15本以上もの筆を使うようになった。赤ちゃん、子ども、お父さん、お母さん、さまざまな人たちの顔に絵を描くことで、どの筆が適しているかを厳選していったそう。

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使う絵の具は9色。色と色とを混ぜ合わせて使うことはない。その色が持つ、その色の個性をしっかりと生かしてペインティングをしてゆく。原色だからこそ表現できるカラフルな世界。それぞれが持つ肌の質感に絵の具が馴染み、その人だけが持つカラーへと変化するのだ。

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「絵は苦手」と言いながらも、顔に描くデザインはきんのさんがすべて一人で考えている。メイクをすることで、いつもと違う自分に出会える。モチベーションが上がる。ペインティングもそうであってほしい。

一人の少女が、夢を叶えた。時には、悩み、とまどうことあるけれど、自分の夢は「これだ!」と疑うことなく言い切れてしまう姿がとてもかっこよかった。もみじ市は、プロのメイクアップアーティストであるきんのさんにフェイスペインティングをしてもらえる貴重な機会。カラフルな出で立ちで、カラフルな顔で、もみじ市のカラフルタウンを闊歩しよう!

【きんのむつみさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
メイクアップアーティストのきんのです。もみじ市当日は、みなさんの顔に模様やイラストを描きます。ぜひ遊びに来てくださいね。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
白です。何色にも合うことと、肌色がよく見えます。それと、女性らしい色な気がしています。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
もともと「カラフル」な色使いを意識していますが、さらに「カラフル」にできればと思っています。皆さんの顔がよりカラフルになるように、描くデザインも増やします。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

続いては、もっちりとした食感が病みつきになりそう。美味しいベーグルを携えて、あの方がやってくる!

文●新居鮎美

杉見朝香「絵本読みます。」

あさこちゃんという元気な女の子がいました。
あさこちゃんは本が大好きでした。
色とりどりのちいさい絵本や大きい絵本、
あっという間のみじかいお話、ながいなが~いお話、
楽しい気持ちになるお話、眠れなくなるようなこわいお話、
胸の奥がぎゅっ、となるちょっぴりかなしいお話…。
自分でじっくり読むのも、お父さんお母さんに読んでもらうのも大好きでした。
あさこちゃんのそばには、いつも本がありました。

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あさこちゃんは大人になり、小学校の先生をしています。
大人になった今も、もちろん本が大好きです。
教室でみんなに読んだり、生徒がみんなに読んでくれるのを聞くのも大好きです。
いま、“あさこさん”の本棚には、絵本や紙しばいがぎーっしり詰まっています。

ある時、あさこさんの友達がおもしろそうなことを計画しました。
木や、土や、布、ガラスや金属をつかってものを作る人、
新鮮な野菜やくだものでとびっきりおいしいごはんやおやつを作る人、
なつかしいような、初めて聞くような、体中にじわんとひびく音楽を奏でる人、
そんな、ものづくりの人が集まる「もみじ市」です。
あさこさんはもみじ市で絵本を読むことになり、
青空の下で子どもたち、大人たち、みんなといろんなお話を楽しみました。
もみじ市は、あさこさんにとって待ち遠しい、とても大切なものになりました。

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もみじ市の日、あさこさんはたくさんの絵本や紙しばいをかかえて、多摩川のかせんしきへ向かいます。
わくわくするお話、大笑いするお話、ドキドキハラハラするお話… 子どもも大人も、みんな一緒に楽しみたいな。
気に入ったお話がもみじ市のおみやげになったらいいな。

もみじ市のどこかでお話を読む声が聞こえたら、それはあさこさんです。

【杉見朝香さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
もみじ市、1回目から参加しています。(修学旅行とかぶった時だけ行けなくて、すごく残念だった!)その頃には生まれてなかった娘も6歳になり、最近犬(りんご・♀)を飼いはじめました。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
えー、むずかしいこと聞かないで(笑)柑橘系の色、黄色やオレンジ。明るくて好きな色です。  

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
カラフルな絵本読みます。絵本はどれもカラフル。楽しくなる本、読みますよ~!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは我らが自家製酵母クイーン! 青空パンづくりワークショップも2年ぶりに復活です!!

文●小澤亜由美