houti「かわいい古雑貨のお店♬」

お盆が過ぎたある夏の終わりの日、僕はhoutiのふたりに会いに行った。僕の住む西東京から電車で約2時間、千葉県の木更津駅で乗り換えてさらに1時間と少し。久留里線(くるりせん)という、なんともかわいらしい名前の電車に揺られながら彼らの住む町を目指した。

houti_1

昨年の7月、ふたりは狛江にあったお店を閉め、房総半島に引っ越した。古い一軒家を買い取って、自分たちで改装をすることにした。その様子をぼくは、日々更新されるブログで楽しく眺めていた。「どんな家になってるのかな、きっと素敵な家なんだろうな」。想像は膨らんで、イベントのお誘いなどで連絡をする度に、いつか行きたいという思いを募らせていた。だから今回、もみじ市の取材を口実にふたりの元へ行けることがうれしかった。

これぞローカル線、と言わんばかりの久留里線は、線路脇に生えている草やら、飛び出している木の枝やらをかき分けて進む。ようやく目的の駅に着くと、遠目からでもひと目でわかるカラフルな装いのふたりが車で迎えにきてくれていた。houtiのイシクラシンジさんとマキコさんだ。

新しいhoutiは、山の中の、のどかな集落にあった。周りには家もあるが、その距離は遠い。車を降りて周りを見渡してみる。遮るもののない空は広く、高く、小鳥のさえずりと風に揺られる草木の音しか聞こえない。とても気持ちが良い。

houti_2

houti_3

ずいぶんと広い。狛江にあったお店よりもかなり広いな。それが建物を見たときの第一印象。そして、中に一歩足を入れた時に、僕は思った。このふたりをもみじ市に呼んでよかったな、と。

houti_4

新しいhoutiは、ふたりの感性の全てが反映されているようだった。他の誰でもない、ふたりが作り上げた空間だった。壁を全て取り払い、柱や天井を白く塗った居間の床には、カラフルな絨毯が敷かれている。そこに家具やガラス類、木の小物など、古ものがジャンル分けされ、きれいに整えられている。壁にはさまざまな布やドライフラワー、手作りの雑貨が吊り下げられている。アジアンテイストよりだけど、北欧のような雰囲気でもある。ふたりの好きなもので溢れている空間はあまりにも素敵で、僕は夢中でカメラのシャッターを切った。

houti_5

houti_6

houti_7

料理が得意なマキコさんがお昼をごちそうしてくれるというので台所に案内された。その空間がまた良い。食器棚には、カラフルなお皿が並び、壁面には、さまざまな種類、大きさのタイルが貼られている。

houti_8

「計画性がないから、バラバラなのを寄せ集めでしか貼れなくて」と冗談めかしてシンジさんは言うけれど、それが本当に素敵だった。こんなの、いままでに見たことがない。好きなものをいろいろ寄せ集めて、“なんとか”する。この大らかさが他のどこにもないhoutiの魅力だろうと思う。houtiに並ぶものはみな平等で自由だ。ふたりが集める家具、器、などは、年代も国も問わない。手作りのドライフラワーや手芸の小物、多肉植物など、自分たちが“かわいいな”と思った感覚だけを頼りに、商品を集めている。

「かわいいと思えば、高級品だろうと普通のものだろうと全然気にしないで並べてるんだよね。女の子の感覚に近いかな」

今は店舗営業はせずに、インターネットでの販売と、週末に各地で行われるイベントに出店している。新しい拠点は自宅、兼アトリエ、兼倉庫といったところだろうか。店頭に立ちながらではないからだろう、広々とした開放的な家の中でふたりは今まで話したどの時よりもリラックスしているように見え、いろいろな話を聞くことができた。

houti_9

シンジさんは昔、DCブランドのモードな服で全身を固めていたこと。雑貨屋さんが好きで学生時代は自転車で下北沢や渋谷や青山のほうに足繁く通っていたこと。大人になってから手塚治虫や、藤子・F・不二雄のまんがに夢中になったこと。マキコさんは編み物をしたり、多肉植物の植え替えをしたり、ドライフラワーを作ったりしながら日々を過ごしていること。それから、ふたりでお店を始めてからのエピソードもいろいろ話してくれた。

話しているふたりはとてもキラキラと輝いていた。今、このふたりは本当に自分の好きなことをやっているんだろうなというのがわかる。「今は幸せですか?」という問いかけに、ふたりは顔を見合わせて「本当に幸せだね。」とうなづいた。

「もともと、ふたりとも自分でなにかをやりたいタイプだったんだよね。人に言われてやるのも好きじゃないし、やってって言うのも好きじゃないから。だから、今はふたりで好きにやれているから本当に幸せ。お店を始めたころなんて何も考えずに始めたから、本当にお客さんが来なかったし、お金のこととかそういう意味では大変だったけど、全然苦にはならなかった。なんとかなるだろうって思ってたよ」

houti_10

そんなバタバタもふたりにとっては笑って話せる良い思い出で、そんな大らかなhoutiがぼくは大好きなのだ。自らの感性を信じてキラキラと真っ直ぐに生きているふたりの姿に、言葉に、心が洗われるようだった。そんなふたりが、初めてもみじ市にやって来る。新しいhoutiから、自分たちが“かわいいな”と思い集めた、選りすぐりの古道具や雑貨を、たくさん車に積み込んで。

【houti イシクラシンジさん、マキコさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
かわいい雑貨や家具、多肉植物、ドライフラワーが好きな夫婦の古道具屋さんhoutiです!

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
赤!が好き。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
houtiが好きな食器や家具、布、毛糸、また多肉植物も沢山持って行きます♬

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて続いては、文具好きをうならせる、ちょっぴりビターなあのステーショナリーブランドの登場です!

文●藤枝大裕