古書モダン・クラシック「秋の青空ふるほん屋」

偶然とは、時に喜びだ。
たまたま通りかかった道で懐かしい友人に再会したり。たまたま空いた時間に入ったお店でお気に入りの曲が流れていたり。たまたま見た時計が好きな人の誕生日と同じ数字をさしていたり。
偶然の中で見つけた喜びは、私たちの生活を彩ってくれる。

本とは、そういうものだと思う。

偶然の出会いの中から生まれる“知る喜び”を伝えるために、本と私たちをつなげてくれる人たちがいる。オンライン古書店「古書モダン・クラシック」の古賀大郎さん・加代さんだ。

つつじヶ丘にあるカフェ手紙舎には、壁一面を覆うほどの大きな本棚がある。焦茶色の長方形に区切られた棚には、少し色褪せた『暮しの手帖』や『クウネル』、数十年前の写真集や料理本が並んでいる。今では見かけなくなった書体やモノクロの写真で構成された表紙が、古いはずなのに新しく映る。ここは過去なのか未来なのか。タイムスリップしているかのような、不思議な錯覚をおぼえる。

「手紙舎に合ういい本が入ったら、ここに並べています。好きなようにやらせてもらっていますね」

持ってきた本を並べながらそう話す加代さん。ここは、実店舗を持たないオンライン古書店である「古書モダン・クラシック」がセレクトした本を直接買うことができる、唯一の場所でもある。

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これだけ魅力的な本がたくさんあるなら、自らお店を構えることもできるのでは?

「実店舗をやる気は、今のところまったくないんです。オンライン古書店ということを大切にしたくて。店舗だと、来てくださるお客さまが限られてしまう。でも、インターネットだと、24時間、日本中、世界中の人が買えますよね。営業時間が関係ないので、どんな時間帯の仕事の人でも本が買える。それがいちばんの魅力だと思っています」

より多くの人が古書に出会える場所として。古書モダン・クラシックは、インターネット上でのみ、開店している。

かつては会社員だった加代さん。オンライン古書店に魅了されたのは今から十数年前のこと。

「はじめてオンライン古書店の存在を知ったんです。当時、私が住んでいる街には古本屋さんがなくて。そんな時、インターネットで女性向けのテイストの古本屋さんを見つけて。その中に、古い『暮しの手帖』の表紙の写真が並んでいて、それに感動して買ってみたんです。それからちょくちょく買うようになりました」

すっかりオンライン古書店にはまってしまった加代さん。いつかひとりで古書店をやろうとひっそりと計画を立てていた中、特集やテーマがおもしろく、気がつけば常連になっていた古書店があった。それを運営していたのが、のちに一緒にオンライン古書店を立ち上げることになる大郎さんだった。それから時はすぎ、2007年元旦に、「古書モダン・クラシック」は誕生した。

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神田神保町に、日本中の古書店が買い付けにやってくる古本市場がある。数百冊単位の本が紐で結ばれ、束となり、売られている。それをまるごと買い付けた古書店主は、膨大な数の本の中から選び抜いた本をお店に並べていく。はるか昔からずっと変わらないこの古書の流通の中で、どんな本に出会い、どれを選んでいくか。そこに、古書店の個性が見えてくる。

古書モダン・クラシックには、大郎さんと加代さんそれぞれがじっくりと厳選した本だけが並ぶ。大郎さんは主に写真やデザイン関連、哲学や文学の本を。加代さんは、料理などの女性の暮らしにまつわる実用書を中心に選んでいる。

「作られたお話より、実際にあるものが好きなんです。筆者の普段の暮らしぶりがわかるエッセイとか。どんな暮らしをしているのかすごく興味があって。自然とそういった本を選んでいます」

膨大な数の古書の中で、ふたりと偶然の出会いを果たした1冊1冊が古書モダン・クラシックに並び、再び誰かと出会い、旅立っていく。本を人の手から人の手へ。古書モダン・クラシックは、その橋渡し役なのだ。

もみじ市ではどのような本をセレクトして持ってきてくれるのだろうか。

「いま、ラストスパートで準備中です! もみじ市のために少しずつこつこつと集めています。いつものように絵本が中心ですが、今回は、どんな年代の人が来ても何かしら好きな1冊が見つけられるようにしたいと考えています。大郎さんが選ぶ古い男性向けのものや、私が選ぶ女性の生活にまつわる実用書だったり。絵本もエッセイも小説も、いろんなジャンルをご用意して、みなさんに楽しんでいただけたらと思っています」

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子どもの頃にお母さんに「読んで」とせがんだ絵本。今にもおいしい湯気が出てきそうな料理本。異国の風景を写し出す写真集。そんな、懐かしい本に出会える喜び。そして、もしかしたら一生出会わなかったかもしれない古き良き本に“偶然”出会える喜び。そんな喜びを提供するべく、古書モダン・クラシックは、多摩川河川敷でみなさまをお待ちしています。古賀夫妻は、あなたがまだ知らない、あなたが思うよりもずっと鮮やかで楽しいこの世界を、きっと教えてくれるはずです。

【古書モダン・クラシック 古賀大郎さんと古賀加代さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
オンライン古書店の古書モダン・クラシックと申します。インターネットで、店主は男性向け、相棒のカヨは暮らしに根ざした女性向けの古本をセレクトして販売しています。
そして、つつじヶ丘の手紙舎さんの本棚でも古本を販売しております。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
店主の色は「オレンジ」で、相棒のカヨの色は「パウダーブルー」です。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
本の中で「カラフル」といえば、やはり絵本。写真は、黄色の表紙の絵本を集めてみました。他にも、青や赤や緑色などもたくさんありますので、色別に並べてみようかと考えています。
今年も子どもたちの大好きな絵本をたくさん持って行きます。大人の皆さんにも懐かしい一冊を見つけていただけましたら幸いです。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、なんとタイからやってくるイラストレーターです!

文●高松宏美

houti「かわいい古雑貨のお店♬」

お盆が過ぎたある夏の終わりの日、僕はhoutiのふたりに会いに行った。僕の住む西東京から電車で約2時間、千葉県の木更津駅で乗り換えてさらに1時間と少し。久留里線(くるりせん)という、なんともかわいらしい名前の電車に揺られながら彼らの住む町を目指した。

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昨年の7月、ふたりは狛江にあったお店を閉め、房総半島に引っ越した。古い一軒家を買い取って、自分たちで改装をすることにした。その様子をぼくは、日々更新されるブログで楽しく眺めていた。「どんな家になってるのかな、きっと素敵な家なんだろうな」。想像は膨らんで、イベントのお誘いなどで連絡をする度に、いつか行きたいという思いを募らせていた。だから今回、もみじ市の取材を口実にふたりの元へ行けることがうれしかった。

これぞローカル線、と言わんばかりの久留里線は、線路脇に生えている草やら、飛び出している木の枝やらをかき分けて進む。ようやく目的の駅に着くと、遠目からでもひと目でわかるカラフルな装いのふたりが車で迎えにきてくれていた。houtiのイシクラシンジさんとマキコさんだ。

新しいhoutiは、山の中の、のどかな集落にあった。周りには家もあるが、その距離は遠い。車を降りて周りを見渡してみる。遮るもののない空は広く、高く、小鳥のさえずりと風に揺られる草木の音しか聞こえない。とても気持ちが良い。

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ずいぶんと広い。狛江にあったお店よりもかなり広いな。それが建物を見たときの第一印象。そして、中に一歩足を入れた時に、僕は思った。このふたりをもみじ市に呼んでよかったな、と。

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新しいhoutiは、ふたりの感性の全てが反映されているようだった。他の誰でもない、ふたりが作り上げた空間だった。壁を全て取り払い、柱や天井を白く塗った居間の床には、カラフルな絨毯が敷かれている。そこに家具やガラス類、木の小物など、古ものがジャンル分けされ、きれいに整えられている。壁にはさまざまな布やドライフラワー、手作りの雑貨が吊り下げられている。アジアンテイストよりだけど、北欧のような雰囲気でもある。ふたりの好きなもので溢れている空間はあまりにも素敵で、僕は夢中でカメラのシャッターを切った。

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料理が得意なマキコさんがお昼をごちそうしてくれるというので台所に案内された。その空間がまた良い。食器棚には、カラフルなお皿が並び、壁面には、さまざまな種類、大きさのタイルが貼られている。

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「計画性がないから、バラバラなのを寄せ集めでしか貼れなくて」と冗談めかしてシンジさんは言うけれど、それが本当に素敵だった。こんなの、いままでに見たことがない。好きなものをいろいろ寄せ集めて、“なんとか”する。この大らかさが他のどこにもないhoutiの魅力だろうと思う。houtiに並ぶものはみな平等で自由だ。ふたりが集める家具、器、などは、年代も国も問わない。手作りのドライフラワーや手芸の小物、多肉植物など、自分たちが“かわいいな”と思った感覚だけを頼りに、商品を集めている。

「かわいいと思えば、高級品だろうと普通のものだろうと全然気にしないで並べてるんだよね。女の子の感覚に近いかな」

今は店舗営業はせずに、インターネットでの販売と、週末に各地で行われるイベントに出店している。新しい拠点は自宅、兼アトリエ、兼倉庫といったところだろうか。店頭に立ちながらではないからだろう、広々とした開放的な家の中でふたりは今まで話したどの時よりもリラックスしているように見え、いろいろな話を聞くことができた。

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シンジさんは昔、DCブランドのモードな服で全身を固めていたこと。雑貨屋さんが好きで学生時代は自転車で下北沢や渋谷や青山のほうに足繁く通っていたこと。大人になってから手塚治虫や、藤子・F・不二雄のまんがに夢中になったこと。マキコさんは編み物をしたり、多肉植物の植え替えをしたり、ドライフラワーを作ったりしながら日々を過ごしていること。それから、ふたりでお店を始めてからのエピソードもいろいろ話してくれた。

話しているふたりはとてもキラキラと輝いていた。今、このふたりは本当に自分の好きなことをやっているんだろうなというのがわかる。「今は幸せですか?」という問いかけに、ふたりは顔を見合わせて「本当に幸せだね。」とうなづいた。

「もともと、ふたりとも自分でなにかをやりたいタイプだったんだよね。人に言われてやるのも好きじゃないし、やってって言うのも好きじゃないから。だから、今はふたりで好きにやれているから本当に幸せ。お店を始めたころなんて何も考えずに始めたから、本当にお客さんが来なかったし、お金のこととかそういう意味では大変だったけど、全然苦にはならなかった。なんとかなるだろうって思ってたよ」

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そんなバタバタもふたりにとっては笑って話せる良い思い出で、そんな大らかなhoutiがぼくは大好きなのだ。自らの感性を信じてキラキラと真っ直ぐに生きているふたりの姿に、言葉に、心が洗われるようだった。そんなふたりが、初めてもみじ市にやって来る。新しいhoutiから、自分たちが“かわいいな”と思い集めた、選りすぐりの古道具や雑貨を、たくさん車に積み込んで。

【houti イシクラシンジさん、マキコさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
かわいい雑貨や家具、多肉植物、ドライフラワーが好きな夫婦の古道具屋さんhoutiです!

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
赤!が好き。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
houtiが好きな食器や家具、布、毛糸、また多肉植物も沢山持って行きます♬

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて続いては、文具好きをうならせる、ちょっぴりビターなあのステーショナリーブランドの登場です!

文●藤枝大裕

フォトノスタルジア「旅するカメラ屋」

取材の本題そっちのけで話が盛り上がり、その人に興味が出てきてしまって、聞かなきゃいけないことを忘れてしまったりする時がたまにある。でも、これ、すこぶる楽しいんです。今回の取材は完全に、このパターンでした。

今回ご紹介させていただくのは、フォトノスタルジアを営む金子洋一さん。フォトノスタルジアは35mm、中判カメラ、二眼レフカメラ、トイカメラなどのフィルムカメラを販売するフィルムカメラ専門店。今、お店の移転を計画中で、現在は手紙舎2nd storyでの販売とイベントでの販売などをメインにしています。

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金子さんにお店を始めたきっかけを尋ねると、軽やかに当時のことを語ってくれました。

「うちの実家は八百屋さんだったんです。それで、当時これからくるぞと思ったコンビニの展開を始めました。それから、子供が生まれたこともあって写真を撮るようになって、フィルムの現像に出す機会が増えました。それで、これはいい商売になるぞ! とフィルムの現像のチェーン店の経営をしました。根っからの商売人なんでしょうね(笑)。でも、当時は現像なんかしたこともなかったし、お客さんから現像のことを教えてもらったりしてね。そうこうしてるうちに、写真に詳しくなっていきました。そして嫁さんの実家にヤシカのカメラがあって、古いのにすごくキレイに撮れてびっくりして、ヤシカを集めるようになりました。それでお店にもカメラを置くようになって、お客さんと盛り上がっていって…」

と、ここまでが、売るものが「野菜」から「カメラ」になるまでの物語。さらに話は続きます。

「それから友達がビレッジバンガードのFCをしていて、これもいいなと思ったんですけど、資本がたくさんいるからって諦めて(笑)。でも、その友達がきっかけでビレッジバンガードに古いカメラとか珍しいトイカメラなんかを卸すようになったんです。それがうけてね」

当時はまだ、トイカメラとかカメラ女子なんていう言葉がない時代。金子さんはいち早くその可能性に気づいたのです。

「その後、カメラ女子ブームの火付け役となった雑誌『カメラ日和』のライターさんから取材の連絡が入り、トイカメラなどの珍しいカメラを紹介する連載が始まって、通販も始めたら反響が大きくてね。今に至るわけです」

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どうですか、このバイタリティ。時代の流れをキャッチして、それをおもしろがり、自分のものにしていく。

「最近ね、車を買ったんですよ!」

嬉しそうに携帯のアルバムを見せてくれる金子さん。そこにはレトロなフィアットチンクェチェントが。とってもかわいい!

「レトロカーも好きでね。古いものはいいですよ。古い物こそ修理すれば直りますし、残していけます。壊れることもありますけど、それはご愛嬌。便利さだけではおもしろくないですからね」

興味が尽きませんねと金子さんに言うと、

「結局ね、僕は人が好きなんですよ。フィルムカメラにしても、レトロカーにしても、それ自体もちろん魅力に溢れてますけど、それを好きでいて、いろいろな所に行くと人と繋がっていく。それが一番楽しいんですよ」

金子さんの真骨頂がこれなのだなと納得。フィルムカメラをどんなモノとして捉えるかは人それぞれだと思いますが、フィルムカメラも、レトロカーも、つまりは人との繋がりを広げてくれ、楽しみを増やしてくれ、自分の世界を広げてくれる、人生を楽しむためのきっかけなのかもしれないと思いました。

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おっと! 取材につられて、本題を忘れるところでした。もみじ市では、金子さんが集めたフィルムカメラたちの他に、周辺機材、そして、アンティークなフィルムカメラにぴったりのトランクも。オリジナルのストラップも持ってきてくれるとのことなのでお楽しみに。フィルムカメラはもちろん。もみじ市で大好きなものを見付けて、それをきっかけに人の輪が広がって、みなさんの人生が豊かなものになりますように!

【フォトノスタルジア 金子さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
フィルムカメラ専門店「フォトノスタルジア」です。今は移動販売やイベントを中心に展開しています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
お店のロゴもそうなのですが、テーマカラーにもなっているグリーンです。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
フィルカメラ、三脚などの機材とフィルムカメラに合うアンティークトランクを販売します。カメラは黒かシルバーの単色なので、オリジナルのストラップを制作して、カラフルなものを用意しようと思っています。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのはメインビジュアルを手がけてくれたあの人たちですよ! さぁ、みんなあつまれ〜!

文●竹内省二