水縞「文具屋台」

果たして、私なんかが担当していいのだろうか。

水玉好きのプロダクトデザイナー植木明日子さんと、縞模様好きの「36 sublo」店主の村上幸さん。今回のもみじ市で文具ブランドの「水縞」のふたりを担当することになった時、素直に嬉しかった。だけど、戸惑ってもいた。だって、憧れている人たちだから、とても。

メール一通送るのにも緊張した。取材の日は、水玉を着ていくか、ボーダーを着ていくか心底迷った。取材中、聞こうと思っていたリストが頭の中からスーッと消えた。こんなことなら、メモ帳に書いておけばよかったと、取材帰りの電車で泣きそうになりながら悔やんだ。原稿を書いている今も、何をどう伝えたらいいのか迷っている。だって、大好きな人たちだから、とても。

01

私が水縞の存在を知った日のことは、今でもよく覚えている。上京して1年が経ったころ、西荻窪に引っ越しをした友人の家を訪ねた。そのとき、彼女が連れて行ってくれたお店が「nombre」だった。「水縞」の商品が並ぶ直営ショップだ。私のことをよく知る彼女は言った。

「絶対、好きだと思うんだよね!」

彼女の予想は、ズバリだった。店内に入った瞬間、私は恋に落ちていた。動物、自動車、果物、地図のハンコ、水玉と縞模様のレターセット、数字だけがデザインされたカラフルなポストカード……水縞がテーマにしている、ちょっぴりビターなアイテムは、もうどれも私好みだった。その日、私はたくさんの買い物をした。友人の家に遊びに行ったのに、内心は自分の家に早く帰りたいと思っていた。紙にハンコを押したい。ポストカードを部屋に飾りたい。その日の私は、終日舞い上がっていた。アイテムひとつで、こんなにも楽しい気持ちにさせてくれる。そんな商品って、そう簡単にあるわけじゃない。

どんな人が作っているのかを知りたくて毎日欠かさず水縞のホームページをチェックするようになった。「ナンバー」「ハウジング」「ゲーム」、1年に1回テーマを決めて登場する新作をいち早く見たくて、展示会には必ず足を運んだ。水縞が出店するイベントにもほぼ欠かさずに行くし、ふたりが行うワークショップにも参加した。こんなに何かを夢中で“追える”のは、本当に久しぶりのことだった。

02

水縞が誕生して、ことしで7年目になる。「36 sublo」のお客さんだった植木さんが、村上さんと仲良くなり「ふたりでなんかやろうよ」ということからスタートした「水縞」。ブランドを立ち上げた時から今に至るまで、新商品を生み出す作業は軽快だ。現在、1週間に一度は顔を合わせ、商品について打ち合わせをしているというふたり。打ち合わせといっても、どうやら固いものではないらしい。某コーヒーショップで待ち合わせをし、そこでアイディアを出し合う。きっと、端から見ている人には打ち合わせをしているようには見えていないんじゃないかな、と話を聞いて思った。とにかくふたりは、いつも楽しそうだから。

今年の新作のテーマは、「日本列島」。ふたりの手にかかった「日本列島」が早く見たくて、すでに私はうずうずしている。

「もみじ市にも少し持っていければと思っていますよ」

とふたりはニヤニヤ。間違いない。今回もものすごく良いものが出来上がっているのだ。私は、毎年ふたりが生み出す、最高にビターなアイテムに、これからもきっとやられてしまうんだ。

この原稿をここまで書いてみて、ふと思い出す感情があった。昔一度だけ書いたことのあるラブレター。あの時とよく似ている。書いては消し、書いては消し、何日もかけて私はそのラブレターを書いた。出来上がったものは、結局何を伝えたいのか自分でもよくわからないものになっていた。“好き”という気持ちが大きすぎると、たくさんの思いを伝えたくなって、たくさんの言葉と文字を並べたくなるものなのかもしれない。ロマンチックとは言いがたい、不細工なラブレターだった。それでも、私の“好き”という気持ちは彼にちゃんと伝わっていた(両想いにはなれなかったけど)。植木さんと村上さんは、私の原稿を読んでどう思うだろうか。すでにドキドキして、胸が少し痛い。だけど、もみじ市当日、私は誰よりも早くふたりに、そして私を夢中にさせる文房具に会いに行こうと思う。

【水縞 植木明日子さんと村上幸さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
クラフト紙やグラシン紙といった、味のある紙を使った紙ものアイテムを作っています。私たちの目線を通して製作、セレクトする少しビターな文房具をぜひ見に来てください。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
モスグリーン、楠んだ緑です。商品につける帯やタグ、パッケージなどにもよく使用しています。黄色っぽい緑、深い緑、黒に近い緑など、一言では言えないですが好きなモスグリーンはたくさんあります。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
水縞が、デザインを担当させてもらった阿佐ヶ谷の老舗和菓子店「釜人 鉢の木」さんの和菓子をもみじ市限定パッケージに入れて販売する予定です。また、定番のカレンダーや秋の新作もずらりと並びます! 普段は販売していない商品、デッドストック、もみじ市限定で作ったハンコなどを詰め合わせた「もみじ袋」も用意しますので、みなさん是非のぞきに来てくださいね。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは八王子からやってくるあのパン屋さん。もみじ市ではどんなパンを持ってきてくれるのでしょうか。

文●新居鮎美