丸林佐和子「こども工作」(19日)

「子供とお母さんの気持ちを、いちばんわかってあげられる造形作家になりたいんです」

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丸林佐和子さんは造形作家。その経歴は、児童館での工作の先生に始まり、雑誌付録のアイデアプランナー、 NHK教育テレビ『つくってあそぼ』の造形スタッフなど、多岐に渡ります。現在では著書を手掛けたり、全国各地で子供たちのための工作のワークショップも開催するなど、とにかく忙しい日々を送っています。そんな丸林さんが、子供に教える楽しさに目覚めたのは、大学一年生の時。画家になろうと美術大学に通っていた頃に、友人に誘われて、児童館で工作の先生をしたことがきっかけでした。

「子供って作ったときに、ものすごい笑顔になるんです。自分が教えたことでこんなに喜んでもらえることってあるんだ! って、ものすごい嬉しくなっちゃって」

丸林さんの父親は学校の先生。それも、休日のたびに生徒が家に遊びにくるような先生でした。子供と対等に話すことができる人だったと言います。そして、そんな父の姿を幼い頃から見ていたからでしょうか。丸林さんもまた、自分が子供の声を受け止められるタイプである人間だということに気付きます。

「そういうことが当たり前だと思っていたので、子供とすぐに馴染めたんです。自分では普通に接しているつもりでも、子供からしてみたらそれが接しやすかったのかもしれませんね。今思えばですけど。本当に合っていたんだと思います」

絵を描いて、観てもらうよりも、より直接的に伝わる“教える”という作業に、丸林さんは、いつしか自然とのめり込んでいきました。
ここまでは「子供」の気持ちをわかってあげたいと願う、丸林さんの一つ目の側面。そしてここからは、もう一つの側面である「お母さん」の気持ちをわかってあげたいと願うお話です。

大学を卒業してから、早い段階で子供を授かった丸林さんは児童館の先生を離れざるをえませんでした。子育てに奔走する日々の中で、お子さんが通う幼稚園でバザー係になった丸林さん。ふたを開けたら、例年と比較にならないくらいものが売れたそうです。そりゃそうだ。なんたって丸林さんが作ったものがバザーに出てるんですよ。木のリースを糸ノコで作れる主婦なんて、めったにいない。

そのことは、たちまちお母さんの間で話題になり、手作り教室をやろうということになりました。丸林さん、なんと市役所に掛け合いに行ったんです。

「とにかくお母さんが楽しめる場所を作りたいんです!」

丸林さんの熱意がよっぽど伝わったのか、ひとり、そしてまたひとりと巻き込んで行き…、結果、託児所付きの教室を開催できるようになりました。

お母さんが子育ての合間に、どんなことをやりたいか。当時の丸林さんは、そんなことばかりを考えていました。お洒落なこともしたいし、自分の趣味の時間も持ちたい。もちろん子供とも遊びたい。そんな気持ちをどうやって解消してあげられるかを。その結果、カフェご飯を作ったり、ちょっとおしゃれなバーベキューをやったり、果てはフラワーアレンジメントまでも。とにかく、お母さんが興味を持ちそうなことは全てその教室に盛り込んだそうです。

「だから私、子供のこと大好きだけど、それと同じくらい、お母さんのことも大好きなんです」

丸林さんの工作といえば、見た目の可愛さはもちろん、シンプルでとってもわかりやすいものばかり。自分でも作れるかも! そう思わせてくれます。それにもかかわらず、その作品のクオリティーはとても高いことが大きな特徴です。それには、今まではあまり語ってこなかった真意があるようです。

「見た目をよくしてるのは、子供だけでなく、出来た作品が、お母さんにも愛してもらえるようにしているからなんです。お母さんが喜んでくれると、子供も参加もしてくれるし、子供が苦手でもお母さんが参加しようとしてくれるし、一緒に作ったものを飾ってもらえれば、家にあたたかい空気ができたりして、全てが良いほうに向かって行くことに気付いたんです。作品を綺麗なものにすることで、すごく広がりが生まれるんだなって」

さらに丸林さんは続けます。

「工作って一緒にやってもらえると、楽しいだけじゃなくて、間近で子供の成長を見ることができるんです。それに、何が一番良いって、お母さんも一緒に作ってくれると、家に返って、それをもう一回やってくれるんです。さらに、他の友達にも伝えてくれようとするんです。広がりができて、お母さんの楽しみになっていくんですよね」

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子供がなにが好きで、なにがほしいのか、お母さんがどんな場所を求めているか。丸林さんが作品よりも大事にしていること。それは、子供の気持ちとお母さんの想いを汲み上げること。自分がやるべきことはそこなのだと、彼女はわかっている。

「だから、私の工作は、何を作るかじゃなくて、どんな場所を提供できるかなんです」

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テレビや書籍など、今となっては活躍の場が山ほどある丸林さん。それでも彼女が、ワークショップをやりたがる理由。この人はよっぽど子供に教えることが好きなんだなあ。今まで私は、その程度の認識でしかありませんでした。でもそれは大きな間違いでした。ワークショップは、丸林さんにとって最も大切にしている日常であり、ライフワークだったのです。

「教える仕事が一番初めだったということもあるんですけど、とにかく、子供とお母さんに会いたいんです。仕事しながら子育てするのも大変だし、子供と一日中いるのももちろん大変。ただ、私は幸運なことにそのどちらも経験しているので、お母さんとたくさんお話して、お友達になりたいんです。私のワークショップは、そういう場所にしたい」

最後に、丸林さんのこんなぼやきをひとつ。

「ワークショップの後に、お礼のメールをたくさんいただくんですけど、誰も先生って呼んでくれないんですよ。冒頭の書き出しは必ず『佐和子さん』なんです(笑)」

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そう嬉しそうに話す丸林さんは、誰よりも優しい工作の先生だ。

唯一無二の造形作家・丸林佐和子さん。彼女は多摩川河川敷の青空の下で、子供たちが来てくれることを、そして、その子供に手を引かれたお母さんが来てくれることを、誰よりも、誰よりも願っている。

〈丸林佐和子「カラフルなチョウチョをとばそう!!」ワークショップのご案内〉
開催日時:
10月19日(土)11:00〜15:30
(19日が雨天の場合は、以下に変更となります)
10月20日(日)10:30〜15:30

参加:900円
定員:とくになし(材料が無くなり次第終了)
お申し込み方法:当日ブースにて直接お申し込みください。

【丸林佐和子さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
造形作家の丸林佐和子です。わくわくさんの『つくってあそぼ』の造形スタッフを3月に卒業して今は、べねっせの『ぽけっと』の造形あそびの監修をしています。
沢山の子供達に会えるのを本当に楽しみにしています!!

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
私の色は…、なんだか、ちっとも思いつきませんでした。工作の作品も色を多く使いますので、多くの色に囲まれて生きていますが、自分はなんだろう?? 土の色かな?? 農婦でもありますのでそんな大地の土の色かもしれないです。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
今回は。色とりどりの『ちょうちょ』をつくります。ちょうちょを棒につけて、ゆらゆらと飛ばしながら、瓦を子供達が遊んでくれたらいいなぁと思っています。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、未来を担う若きパフォーマー集団の登場です!

文●加藤周一