高野寛「ライブ」(19日)

風の強い“土曜”の午後がポッカリ空いた
僕はギターを持って“多摩川”へ♪

2008年10月25日、土曜日の午後3時。ギターを持って登場した高野寛さんは、名曲『相変わらずさ』を歌い始めた。並んで聴いていたぼくと渡辺は顔を見合わせて、こう言い合った。
「いま、“多摩川”って歌ってたよね? “土曜”って歌ってたよね?」
ふたりとも、この曲なら歌詞カードを見なくても歌えるほどなのだ。高野さんのさりげない“しかけ”を聴き逃すはずはなく、ふたり同時に顔を見合わせた。

高野寛

もちろん、これはもみじ市での風景だ。ちなみに、本来の歌詞は「土曜」ではなく「月曜」、「多摩川」ではなく「公園」であることは、高野さんの楽曲を愛する人には説明するまでもないだろう。

このとき、高野さんの演奏を聴いていたぼくと渡辺をうしろから見ていた事務局のスタッフによると、“なんとも幸せそうで声をかけられなかった”そうで、正直、あのときは自分たちがこのイベントの主催者であることを忘れていたかもしれない……いやちがうな、自分たちが主催するイベントに、高野寛さんが出演し、歌ってくれたことが、ただ、ただ嬉しかったのだ。

高野さんのことを、「日本のポップ・ミュージック・シーンを語る上で欠かせない存在」と、音楽関係者の人は言う。もちろんそれは間違っていない。しかし、それ以上に、ぼくたちにとって高野さんの音楽は、ぼくたちの人生のシーンに欠かせない存在なのだ。

1990年に発売された『虹の都へ』を聴けば、就職1年目で“希望”しかなかったあの頃を思い出すし(あの頃はまだバブルだった)、1996年の『KAORI』 を聴けば、仕事も恋もうまくいかなくて悶々としていたあの日々を追い出す(今聴いても胸が締め付けられるようだ)。そして、『相変わらずさ』を聴けばいつも、もみじ市のことを思い出す。「散歩ついでにちょっと歌って行くよ」みたいなかっこよさで、ギター1本で歌ってくれた高野さんのあの姿を。

あれから5年。20周年の年に初めてもみじ市で歌ってくれた高野さんは、今年25周年を迎える。2013年10月(つまり今月)からの1年間は、デビュー25周年アニバーサリー・イヤーなのだという。記念するべき高野さんの区切りを、多摩川河川敷で目撃できるということ。きっとその風景は、ぼくたちのこれからの毎日に、人生のシーンに、“お金では買えない小さな宝石”のように刻まれるはずだ。


<高野寛ライブ>

10月19日 15:00〜
川を背にしたステージにて

【高野寛さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
高野寛です。10月でデビュー25周年を迎えて、めでたい盛りです。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
先日虹を見たので「虹色」ということで。

Q3 今回はどんな演奏をしてくださいますか?
25周年中&カヴァーアルバム発売中でもあるので、新・旧・自作・カヴァー織り交ぜていこうかなと思います。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!
通りがかりの方も、足を止めて束の間楽しんでもらえたら。
もみじ市のノドカな雰囲気、大好きです。
晴れますように!

高野寛公式サイト
http://www.haas.jp/

さて、続いてご紹介するのは、富士山と工作をこよなく愛するあのグラフィックデザイナーさんの登場です!

文●北島勲