岡崎直哉 「フジカラー+紙」

雲ひとつない、よく晴れた日。遠くに富士山の姿を見つけると、なんだかちょっとすがすがしい気持ちになる。季節によって表情を変える、美しい円錐型の富士山。遠くに見えただけでも嬉しくなってしまうのは、きっと私だけではないはず。

富士山の美しさに魅せられ、富士山の写真を撮り続けている人がいる。デザイナー・写真家の岡崎直哉さんだ。冬の富士山、春の富士山、銭湯に描かれた富士山さえも、岡崎さんにとっては愛すべき被写体だ。

撮影した富士山の写真は、自ら暗室でプリントし、デザインをし、工作をし、ポストカードにしたり、冊子にしたり……。写真家・岡崎直哉さんの写真を、デザイナー・岡崎直哉さんが加工するわけで、その完成度は非常に高く、「紙の可能性」を感じさせてくれるのだ。

PH7岡崎さん手づくりの箱

今年、『紙をたのしむ工作のアイデア100』という著書を著した岡崎さん。作品を作るときは、できるだけ手で作ることを心がけているという。
「機械のクオリティまではいきませんが、手づくりでも同じくらいのレベルを目指しています。いつの日か機械超えをしたいです!(笑)」

PH6カラフルな箱がたくさん

 今年のもみじ市でも、岡崎さんが自ら作った作品がたくさん並ぶ予定。富士山のポストカードは、ひとつひとつ角が丸く加工されており、ちょっと渋い表情の富士山もかわいらしく見える。“カラフル”な箱の数々も、岡崎さんが組み立てたもの。また、岡崎さんの代表作「カラートラベルガイド」から抜粋された、各地の風景を切りとったポストカードも並ぶ。

PH8カラートラベルガイドから抜粋されたポストカード

カラートラベルガイドは、岡崎さんにしか作れないであろう“トラベルガイド”で、岡崎さんによって切り取られた何気ない町の風景が、見る者になんとも言えない旅情を呼び起こす。岡崎さんの撮る写真は、“瞬間” を切り取っているわけではない気がする。いつも目の前にあって、自然すぎるがゆえにちゃんと見つめられていなかった、ずっとそこにある “時間” を切り取っているのだと思う。何気ない風景だったり、古びた建物だったり。すぐご近所にありそうなそれらを、岡崎さんがましかくのフレームに収めると、それまで止まっていた “時間” が動き出すよう。ブルーがかっていて、美しく計算された構図の岡崎さんの写真は、一見涼しいようにみえるけれど、そこで切り取られているものは、私たちの奥の方にある、あたたかくて、なつかしいものたちを思い出させてくれるのだ。

さて、もみじ市ブログを熟読されている方はもしかしてお気づきかもしれないが、今回、岡崎さんは、ある作家さんとコラボレーションをする。その相手は、陶芸家の小谷田潤さん。

PH1岡崎さん作 フジカラーセットの箱

PH2小谷田さん作 富士山調味料入れ

PH3富士山調味料入れ+箱

 コラボレーション作品のタイトルは「フジカラー」。「富士山」と「カラー」をテーマに、岡崎さんは紙で、小谷田さんは陶器で、富士山とその色を表現している。富士山を愛してやまない岡崎さんが、小谷田さんの器をみて「富士山っぽいな」とふと思ったことから、このテーマに決まったとのこと。

小谷田さんが作る富士山型の調味料入れは、季節や時間によって異なる表情をみせる富士山を、色や雪のつもり具合(色のセパレート)で表現している。ころっとしていてかわいらしく、持ちやすさや使い勝手も考えられたこのかたちは、食卓にすっとなじむ。

その調味料入れがすっぽりおさまる箱を作るのが岡崎さん。見る場所によって異なるかたちの富士山。そのいろいろなかたちをちりばめてデザインされた、カラフルな箱。互いの試作品を持ち寄り、大きさや傾斜について何度も打ち合わせを重ねた。小谷田さんの作る富士山にぴったり合うように計算された箱を、岡崎さんがひとつひとつ作っている。

PH4富士山ポストカード

PH5フジカラーセットのペーパーバッグ

フィールドがまったく異なる2人。今回どうして一緒にやることになったのだろうか。
「小谷田くんの個展で器をみて、いいなと思っていたんです。後日またお会いしたときに、小谷田くんがちょうど発売したばかりの僕の本を見ながら、『もみじ市、よかったら一緒にやりませんか?』って誘ってくれて。もちろん、やろうやろう!って、すぐに決まりました」

PH10無料スタンプもあります

隠れたコラボ作品がもうひとつ。それは、もみじ市当日、岡崎さんが持ってきてくれる季節の富士山スタンプ。そのスタンプを押せる台も、なんと小谷田さんの手づくりなのだ。スタンプはどなたでも自由に押すことができるので、どうか見逃さないよう。

PH9 フジカラーのチームロゴ

今回のコラボレーションに向けて、早い段階からもみじ市に向けて動き出していたふたり。打ち合わせは数回に及び、私も同席させてもらった。
「富士山のこの傾斜が岡崎さんの好みに合うかどうか」
「箱は、小谷田くんのに合わせて作るよ」
「これを全部手で作るなんて、デザイナーの域を超えているよ」
飛び交う会話の端々に、お互いに寄り添う姿勢と、作品への敬意があらわれる。それは、気を遣った言葉でもなく、お世辞でもない、心底相手を尊敬し、信頼していることが伝わる言葉たちだ。
「コラボは、信頼かな」
岡崎さんは、照れながら、でも嬉しそうにそう話してくれた。

もみじ市では、たくさんの素敵な作家さんたちの作品に出会える。その中で作家さん同志も出会い、そしてその出会いで生まれた作品が、次のもみじ市をさらに彩ってくれる。黄色と青が混じり合い、緑が生まれるように。赤と青が混じり合い、紫が生まれるように。ひとつひとつの色が重なって、つながって。9回目のもみじ市は、よりカラフルになって、あなたを待っている。

【岡崎直哉さんに聞きました】 
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
デザイナー・写真家の岡崎です。日本をテーマに、紙雑貨や小冊子などをつくっています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
やや緑がかったレモン色が好きです。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。カラフルなフジカラーセットを持って行きます。組み合わせ自由なので、自分好みの富士山をみつけてくださいね! コラボ作品以外にも、たくさんの箱とポストカードを持って行きますので、どうぞお楽しみに!

追伸:小谷田くん。よろしくね!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、街の小さな花屋さん…とは思えないダイナミックな装飾で私達を驚かせてくれるあの人たちです!

文●高松宏美