charan 山田亜衣「銅・真鍮雑貨」

川原を歩いていると、私にはある風景が見えてきます。それは、はじめて多摩川河川敷でもみじ市を開催した、2008年秋の朝もやのなかで見た風景です。

全国各地から訪れる、陶芸家、料理人、音楽家、アーティスト。自分の手からものを作りだしているさまざまなジャンルのみなさんが、早朝の薄明るい朝もやのなか、次々とやってきて、言葉をかけ合っています。

「おはよう!」「おはよう!」
「ついに、来たね、来ちゃったね」
「久しぶり!」「一年ぶり!」
「今日は一日よろしくお願いします」

久々に顔を合わせる仲間も、つい先日会ったばかりのメンバーも、それぞれに声をかけ合って。そうしているあいだに、霞んでいた多摩川河川敷の空気も澄んできて、明るい日差しが差し込みます。何年たってもきっと忘れられない風景です。

そして毎年、そのなかでひときわ、明るく優しい、いつもと変わらない笑顔で「おはよう!」と声をかけてくれる方がいます。「この、朝がいいよね」と言ってくれる方がいます。

第一回目のもみじ市が始まる前から、これまでずっと支えてくれて、私たちが迷ったとき、苦境に立たされたときにもいち早く駆けつけてくれて、いつもと変わらないその笑顔で「大丈夫、大丈夫」と言ってくれるような、心を奮い立たせてくれる存在です。

今回ご紹介するのは、銅・真鍮雑貨作家の山田亜衣さん。

charan_03

私たちにとって、亜衣さんは、ひとりの作家さんというだけではなく、もみじ市を一緒になって盛り上げようと考えてくれ、楽しんでくれて、そしてこれから先もお互いに刺激し合えるような友であり続けたい、と思う人。

これまで何度となく亜衣さんの笑顔に癒され、その手から生み出される作品から私たちは、元気をもらってきました。

風景を描くように形作られた、お花のかんざし、木の葉のアクセサリー。亜衣さんの作品は、自然のなかに存在する花・葉・枝・雲・月・星・人がモチーフになったものが多く登場します。そしてどの作品にも亜衣さんの繊細なデザインが施されていて、身につけると亜衣さんの明るく温かなエネルギーをもらっているような気持ちになります。

今から4年前、亜衣さんは「大きな作品を作って表現したいという気持ちもあるけれど、お客さんが使ってくれて喜んでもらえるもの、見て楽しんでもらえるものも作りたい。両方大切にしていきたい」と話してくれました。実際、個展へ足を運ぶここ数年のあいだに、大きな作品が登場する機会が増えているように感じていましたが、それ以上に“使って喜んでもらえる作品”の種類も、とても増えているような気がします。

Exif_JPEG_PICTURE

今年7月に訪れた個展では、天井からつりさげられてくるくると回る大きなモビールやオブジェ、ストーリーを感じる絵画のような作品など、ずっと眺めていたいと思うような作品もあれば、本のしおり、新しいデザインのブローチ、髪飾り、アクセサリーなどのこまやかな作品の新作もあり、亜衣さんの作品も亜衣さんご自身も変化し、これまでひたすらに作品と向き合い、走ってきた様子を肌で感じたのでした。

「もみじ市が昨年開催されなかったのはさみしかったですね。ここ数年もみじ市があるのがあたり前だったけれど、なくなってみると、あらためて大きな存在だったのだと感じました。けれどじっくり考える時間ができました。これまでは、自分のことはさておき……仕事に夢中になってしまう節があったのですが、昨年は、今後のことを考えながらゆっくり活動できる時間をもらえた気がします」と語る亜衣さん。

「今まではお仕事にしても何にしても、まずはやってみて、後から “さあ、どうしましょう”と考える方だったのですが、これからは今までのご縁を大切にしながら地に足をつけて活動していきたいですね」

以前は、「一度作り始めると途中の記憶がなくなる程の勢いで、誰とも話さず、何も食べずに作業することがあるんですよね」と語っていたこともある亜衣さんなので心配になる時もありましたが、今年は自分自身を少し見つめ直し、ゆっくり地に足をつけて活動をする年にしたい、と言います。

charan_02

そんな亜衣さんですが、二年ぶりのもみじ市はとても楽しみにされているとのこと。今年のテーマは「カラフル」ということでお話をうかがうと……

「ディスプレイをカラフルにしてみようかな? 銅と真鍮という素材の色をカラフルにすることは難しいけれど、バラエティにとんだ作品を準備していこうかな? どんなふうにカラフルを表現しようかな?」と悩んでいる様子。もみじ市当日はどんな作品が登場するのか、楽しみに待つことにしましょう。

いつもお客さまとお話しするのを楽しみに、もみじ市に来るという亜衣さん。私にはもうすでに、川原の光景が見えています。キラキラ輝く多摩川の河川敷のあの場所で、心地よい秋風がわたるあの場所で、たくさんのお客さまとお話されている亜衣さんの笑顔が見えています。

亜衣さんの手から生み出されるその作品は、形・温度・素材・色など様々な要素を意識しながらも複雑な工程を経て作られるものばかり。もみじ市に来られたら、ぜひ亜衣さんとお話しして、どんなふうに作られているのか、どんな思いでつくられているのか聞いてみてください。

きっと今年も亜衣さんはのどを鍛えて(!?)、たくさんのお客さまとお話をするのを楽しみにやってくるはずです。

【charan 山田亜衣さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
こんにちは。charan 山田亜衣と申します。銅・真鍮の雑貨と、真鍮アクセサリーを作っています。

charan とは、茶欒(ちゃらん)という造語です。ひとりでお茶を楽しむ時間、みんなが集まるお茶の間、団欒。銅の雑貨を飾って、そんなあたたかな空間がつくれたらいいなーと思い、2000年より製作をはじめました。よろしくお願いいたします。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
からし色

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
真鍮アクセサリー、雑貨の定番ものと新作を持っていきます。普段は、素材の色が茶色、黄土色。。と、カラフルな感じではありませんが、私なりにちょっと色をつかって、つくってみようと思います! 真鍮アクセサリー、雑貨の定番ものと新作を持っていきます。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてはあのお菓子のスペシャリストの登場ですよ!

文●増田千夏