ひなた焼菓子店「焼き菓子と木のモノ」(20日)

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「あんまり役に立ってないんですよコレ」

そう語る店主・森和子さんの視線の先にあるのは、とってもシンプルなメニュー表。そこに記されているのは、『TART、SCONE、ROLLCAKE、CAKE、QUICHE…』。一体どんなタルトやケーキやキッシュが出てくるんだろう? そう思ったあなたは、立派な食いしん坊。頭の中に、ありとあらゆるタルトやケーキやキッシュがぐるぐると駆け巡り始めませんか? 想像力が掻き立てられるこんなメニュー表が客席に置いてある、そのお店の名前は「ひなた焼菓子店」です。

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小田急線の東林間にカフェと家具屋さんを併設したお店がオープンしたのは2010年12月のこと。それまでは、町田市にある一軒家で、店頭販売だけを行っていました。今のお店がオープンしてからまもなく丸3年。その場で食べてもらえるメニューを提供できるようになったことで、お菓子の作り手として、森さんの創作の幅が広がっていきました。

「召し上がったお客さまの反応が、その場で直に感じることができるようになったのがいちばん大きな変化であり、喜びですね」

お店がオープンしてから、新しいメニューも増えています。

「何か食べたいのある?」

森さんがこの言葉をお客さまに投げかけるとき、それは彼女が創作意欲に溢れている何よりの証拠です。もしもそんな場面に遭遇することができたのならば、あなたはとってもラッキーです。森さんが作り手として最大のパフォーマンスを発揮する場面に遭遇できたのですから。

「新メニューの創作に必要であり大切なのは、“心”と“時間”の余裕です。そのどちらが欠けても、魅力的なメニューは生まれません。けれど、両方がそろっているときにお客さまからリクエストを受けると、あ、やってみよう! という気持ちになるんです」

実際、お客さまからリクエストされなければ生み出されなかったものもたくさんあります。季節のフルーツを贅沢に使ったパフェはその代表的なメニューのひとつ。

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森さんは、メニューのレシピをノートに残すことはしません。書き残すとしたら、それはもっぱらカレンダー。ある日生まれたメニューは、その日のカレンダーの余白に書き残します。ただ、少々厄介なことは、カレンダーは一年が終われば処分してしまうこと。だから、お客さまに「去年のアレが食べたいなあ」と言われたときに、アレってなんだっけなあ、と考えることもしばしば訪れるのだとか。

「本当はレシピをきちんと残しておかないといけないんですけどね…」

苦笑いしながら話す森さん。けれどもその瞳の奥からは、その状況を楽しんでいるような、作り手としての無邪気な情熱が伝わってきます。レシピがないのだから、当然お客さまが求めていた味と同じにはならないことも多い。でも、間違いなく美味しい。だからこそ、お客さまもその変化を確かめに、楽しみに、そして味わいに森さんの下へ訪れてしまうのです。

「作るたびに進化しているのかな?」

冗談まじりに話すその言葉。けれどもその言葉の裏に感じる、熱く燃えるその情熱。森さんの菓子職人としての核心を垣間見たような瞬間でした。冒頭にお見せしたあのメニュー表。シンプルなあの体裁を変えない理由も、なんとなくわかったような気がします。

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今回、森さんのご主人である木工作家・鰤岡(ぶりおか)力也さんも数年ぶりにもみじ市に参加されます。そう、「木のモノ」が復活するんですよ。何を隠そう、ひなた焼菓子店の什器も、全て鰤岡さんが手掛けているのです。木の温かさも感じさせながらも、余分なものを全てそぎ落としたシンプルなデザインは、森さんのお菓子とも相性が抜群です。もみじ市では、木のプレートや、カッティングボードなど、暮らし、特に「食」にまつわる場面で、私達を豊かな気持ちにしてくれる品をご用意してくださるそうですよ。

今年、ひなた焼菓子店の多摩川出張所には、カラフルなカップで装った色鮮やかなカップケーキが並びます。森さんは、もみじ市当日が晴れであることを願ってやみません。だって、“ひなた”焼菓子店だから。突き抜けるように澄んだ青空と、そっと手を差し伸べられたかのような心地よい日差し。そんな風景をイメージしながら、森さんはたくさんのお菓子を用意してくれるでしょう。

【ひなた焼菓子店 森和子さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
相模原市の東林間でカフェと家具屋を併設した焼き菓子店です。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
クッキーやタルトの美味しく焼けた生地の色や、季節の栗の色の、茶色です。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
フルーツの彩りが楽しめる焼き込みのタルト、栗のカップケーキ、定番のクッキーなどの他、コーヒーも用意する予定です。また、併設の家具屋さんも木のお皿などの販売もあります。どうぞ楽しみにいらして下さい。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、家族のように大切に酵母を育てるベーカリーカフェ!

文●加藤周一