成城・城田工房「自家製ハム・ソーセージ」

いつもそこにいてくれるからほっとする人。それは、毎日顔を合わせる家族だったり、あるいは友だちや恋人だったり。誰もがその存在に助けられ、支えられ、生きている。そして、その存在のために何かをしたい、してあげたいと想う。手紙社にとって彼は、まさにそんな存在だ。

もみじ市をはじめとする手紙社のイベントでは、必ずと言っていいほど彼の笑顔に会うことができる。あ、今回もいるな。それがわかると、私はつい嬉しくなってしまう。そして、いつものようにこう言うのだ。

「うずまきちゃん、ひとつください!」

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彼はニコっ、ともニヤっ、とも言える笑顔で、手際良くうずまきちゃんを炭火の上の網に乗せる。うずまきちゃんが焼ける香ばしい匂いが漂ってくる。あぁいい匂いだな、お腹空いたな。そう思いながら、ちらちらと匂いのする方に視線を向けつつ彼とおしゃべり。そろそろ焼けたかな? まだかな? せっかちな私のきもちが伝わったよう。炭火の熱といい匂いをまとった焼きたてのうずまきちゃんが手渡される。あつあつのそれを頬張ると、ぱりっとした歯ごたえの後に、じゅわーっと溢れんばかりの肉汁が口の中に広がり、ニヤっとせずにはいられない。生きてて良かった! 大袈裟なようだが、ついついそう思ってしまうほど幸せな瞬間なのだ。

みんなを幸せにしてくれるアイドル、うずまきちゃん。それは、長い1本のソーセージをぐるぐるに巻いて棒にさした、まるでキャンディーのようにかわいらしいソーセージのこと。見た目のかわいらしさとは裏腹に、おいしい豚肉がぎゅっと詰まっていて、ボリュームたっぷりの1本なのだ。このソーセージの生みの親が、「成城・ 城田工房」の城田豊仁さん。狛江市にハムとソーセージの専門店を構えながら、手紙社のイベントや地域のお祭りに出店しては、その笑顔と共にうずまきちゃんを私たちに届けてくれる。

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城田さんの作るハムやソーセージは、とことんおいしい。朝ごはんのパンにも合うし、ビールのお供にもなる。そのおいしさの秘密のひとつが、“時間”。私たちがスーパーなどでよく見かける一般的なハムは、「ファイブラスケーシング」と呼ばれるケーシングで整型・製造されている。そして専用機械を使い、数日間という短期間で、綺麗な丸型のハムを大量に作ることができるという。しかし、城田さんはそれを使わない。昔ながらの「布巻き」と呼ばれる手法を用い、2週間以上という長い熟成時間と手間隙をかけて、丁寧にハムを作っている。

「布で作ると形は少しいびつになってしまうんですけどね。でも、布で作ることで、肉の風味が増して、味わいもしっとりと良くなるんです。布でしか作り出せない、おいしいハムになるんですよ」

そう言いながら見せてくれたハムは、まん丸ではなくて少し楕円の形をしている。けれど、お肉の味をぎゅっと閉じ込めているピンク色と、口に入れたらとろけてしまいそうな脂身の白色がとてもきれいで、時間と手間をかけて大切に作られたていることがわかる。おいしそうなのだ。

群馬県吾妻郡の片桐農場から毎週お店に届けられる原料の豚肉は、農大時代の友人が井戸水と安全な飼料で丁寧に育てているもの。それを、約半分はハム類に、残り半分はソーセージに加工している。お肉の下処理から、加工・燻製まで自らの手で行っており、保存料・増量剤・着色料などはいっさい使用しない。

「とにかく、安全でおいしいハムやソーセージを作りたいんです。ただそれだけなんです」

シンプルなその想いが、城田さんのハムやソーセージに込められている。だから、城田さんのハムやソーセージを食べると、おいしいのはもちろん、贅沢な感じがするのかもしれない。

実家が喫茶店を営んでおり、自分も商売の道を進むのだろうと考えていた城田さん。大学を卒業してからは、大手ハムメーカーや日本各地のお店でハムやソーセージの作り方を学んできた。その後、念願のお店を構え、今年の7月で5周年を迎えた。

お店がオープンした3日後に手紙社のメンバーと出会い、その年から毎年もみじ市に参加してくれている城田さん。手紙社にとっても、もみじ市にとっても、城田さんとうずまきちゃんは、なくてはならない大切な存在なのだ。

5周年のお祝いには、「ありがとう」の気持ちを込めて、手紙社のメンバーが巨大うずまきちゃんをプレゼント! 今では、城田さんが出店するところには相棒のように連れて行くというこのうずまきちゃん。もちろん、もみじ市にもやってきます! 広い会場でも目立つこと間違いなしのこの大きなうずまきちゃんを目印に、城田さん特製の、もみじ市でしか食べることができない“カラフルうずまきちゃん”を食べに来てくださいね。

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【成城・城田工房 城田豊仁さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
群馬県吾妻郡で、学生時代の友人が大切に育てた安全な豚肉を使わせていただき、必要最低限の添加物で、じっくり熟成させ、手間隙かけて、「生きていくため」ハム&ソーセージを作っています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
うずまきちゃん色です。うずまきちゃん色に染まって、生きていくためにしゃかりきに売っちゃいますよ~!

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
今年も、もみじ市オリジナルのうずまきちゃんをたくさん持っていきますよ! カラフルかぁ、何がいいかな。トマトの赤、黒こしょうもいいし、カレーの黄色もいいよね。楽しみにしていてください。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

続いてご紹介するのは、パンとワインをこよなく愛するあのチームです!

文●高松宏美

サカヤカフェマルヨシ「栃木カラー(colour)」

「料理をつくる上で大切なことですか? そうですね…やっぱり“愛”ですかね。真ん中に“心”があるじゃないですか、愛という字には」

まるで芸能人のように格好をつけてインタビューに応えるので、こらえきれずにお互い笑ってしまった。これからご紹介するお店の店主は、手紙社のイベントではいつもうるさいくらいに場を盛り上げてくれる、自称「栃木のピエロ」。どこまでが本気で、どこまでが冗談か、たまにわからなくなるので取材のときに少し困ったことは、ここだけの話だ。 

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栃木県宇都宮市。 最寄りのバス停に着き、これから取材を行うお店へ向かって、 夏の日射しを受けながらふらふらと歩いていく。同じように日の光を浴びながらも、どこか涼しげな田園の緑を横目にしばらく進むと、 「光が丘団地商店街」という郷愁感の漂う小さな商店街に入った。この商店街に「サカヤカフェマルヨシ」はある。1階には天然酵母パンとスイーツの店「RhythBle」、2階には栃木産の食材をふんだんに使った“栃木イタリアン”を提供する「クッチーナ ベジターレ マルヨシ」。2つのお店をあわせて、「サカヤカフェマルヨシ」と呼ぶ。この場所を訪ねるのはこれで2度目だが、あらためて感じたことがある。店とこの町の境を感じない、といえばよいのだろうか。互いの空気がよく調和して、隔たりをまったく感じないのだ。

そんなことを考えながらカフェの入り口へ向かうと、ひときわ大柄の男性が待ち構えていた。店主の笠原慎也さんだ。開口一番、「今日は泊まり込みの取材でしたよね?」とジョークを言う。今日はまともに取材できるだろうかと多少不安になりつつ、店内に入る。よし、まずこのお店の“始まり”を聞いてみよう。

「祖父の代からこの場所で『マルヨシ酒店』という酒屋をやっていました。僕は高校卒業後、何となく人と違うことがやりたくて、大阪の専門学校を出た後、イタリアンレストランで10年間料理修行をしていたのですが、父親が体調を悪くして、栃木に戻って酒屋を継ぐことになったんです。自分が小さな頃には活気のあった商店街も、当時はほとんどお店がなくなっていて、うちの店に来るのも近所のご年配の方ぐらい。人が集まる場所をつくろう、と決意して、店で販売していたお香典袋やみりんなどをすべてどかして始まったのが、サカヤカフェマルヨシです」

店舗がオープンしてから9年の歳月が経ち、商店街には若い店主が切り盛りする雑貨店やベーグル屋、お好み焼き屋など、まるで昔からあったような気配を漂わせながら、違和感なくマルヨシとともに並んでいる。お店がオープンした後は、順調にやってこれたのだろうか。

「店を始めた当初は、この街を自分が変えるんだ、と意気込んでいました。というのも、修業時代に過ごしていた大阪の南船場という街が『CAFE GARB』というカフェによってどんどんと栄えていく様を目の当たりにして、じゃあ自分もやってやろう、と。大阪から栃木の片田舎に戻ってカフェを開いた自分のことを“栃木の宝”だと思い込んでいましたね。ですが、『CAFE SHOZO』『starnet』『日光珈琲』など、栃木にすでにある素晴らしいカフェのことを知ったとき、ガラガラと音を立てて僕の妄想は崩れ去りました。とはいえ、先人の店を見て、なおさら良い店をつくろうと思ったんです。でも、オープンしてしばらくは、来てくれるのは町内会のバレーボールの後にブルマで来るお母さんたちだったり、ここはラーメンないの、漬け物ないの、ボトルキープできないの、と平気で尋ねてくるおばあちゃんだったり…。自分が思い描いていた店のイメージとはだいぶかけ離れていましたね」

しかし、しばらくすると雑誌やホームページを見て遠方からマルヨシを訪ねる若い方々が増えていく。今思えばとても失礼なことと思いつつ、店に合わないと感じた地元のお客さんの入店をやんわりとお断りすることもあったという。そんなことを重ねるうちに、少しずつ地元の人との関係がぎくしゃくとしていった。そんな中、2011年3月に起こったのが、東日本大震災だ。店舗の2階部分が壊れ、お皿もすべて割れた。今まで大切にしていた遠方のお客さまがパタリと来なくなり、愛想を尽かした地元の人も当然来ない。来客が無い日が、1カ月ほど続いた。このままではいけない、とパンを焼いて、隣のベーグル屋と一緒に自転車で隣町まで行き、出張販売を始めた。そこで気づいたことは、8年間ほど店をやっているのに、店があることが近場の人々にほとんど知られていないことだった。

「それから、パンの販売がきっかけで近隣の方が店に足を運んでくれるようになりました。イタリアンもやってるんだね、と少しずつ店のことを知ってもらえましたし、僕もこの町の人を知るようになったんです。その頃からはもう、ブルマで来る人はいなくなりましたね」

遠方から訪れる人、よく顔を出してくれる地元の人。マルヨシに、活気が戻ってきた。ようやくお客さんが増えてきた頃、複数のお客様から、同じような質問をされるようになった。

「おすすめは何ですか、と聞かれるんです。遠方から楽しみにして来られる方からは、特に。心からおすすめできるもの、食べてほしいものはなんだろう、と考えて出した答えが“栃木イタリアン”です。イタリアンをつくっている身ですが、本場のイタリアには行ったこともありません。でも、自分が美味しいと感じる栃木の素材を使った自分なりのイタリアンを提供してこそ、この場所でお店をやる意味があるのではないかと思います」

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そんなマルヨシのメニューの中で、これぞ栃木イタリアン、という料理がある。今はディナーコースのメインにもなっている「パスタシモツカレ」というオリジナルメニューだ。シモツカレとは、鮭を頭と骨ごと煮込み、旨味のきいた出汁に季節の野菜と酒粕を入れて煮あげた栃木県民なら誰しもが知る郷土料理。その鮭の代わりに栃木県産のヤシオマスという魚を使用し、仕上げにチーズを入れてショートパスタに絡めてマルヨシ流にアレンジしたのが、パスタシモツカレだ。

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「ヤシオマスという川魚は、サーモンに近い味わいですが、脂っこくなくてさっぱりとしているので、四季を通して様々な野菜と相性が良い素材です。お店を続けることはやはり大変で、一方で良いことはなかなかありませんが、こうした良い素材に出合えたときは、よし、美味しいものをつくってやろう、その良さを伝えてやろう、と励まされますね」 

そんな笠原さんの言葉を受け、栃木の素材を使って料理をつくるときに大切にしていることは何だろう、と思い尋ねてみると、この文章の冒頭の言葉が返ってきた。ひとしきり笑った後、笠原さんはこう続けた。

「素材の味や香りはしっかり伝えてやりたいですね。ヤシオマスならヤシオマス! 食べたら良くも悪くも、味わった人の印象に残るものがつくりたいです。僕もそうです。人とコミュニケーションする時は、まず自分をぶつける。もみじ市の決起大会のときに、酔っぱらった演技をして近所の飲み会のようにたくさんはしゃぎましたが、あれも僕という人間を印象づけるための作戦です」

笠原さんが話す、もみじ市の決起大会とは、スタッフと出店者がこのイベントをつくる仲間として集った夜のことだ。演技というのはもちろん冗談に違いないが、「愛」という答えは結構本気かもしれない。冗談ばかり言っている笠原さんだが、その目の奥には、いつも“純粋さ”が溢れていることを、ぼくは知っている。

もみじ市初出店のサカヤカフェマルヨシ。出店のおさそいの連絡をした後、笠原さんは男泣きをしたそうだ。彼にとってもみじ市は、ずっと目指していた理想の場所だという。自分をぶつける最高の舞台。マルヨシが用意してくれるメニューは、「パスタシモツカレ」だ。

【サカヤカフェマルヨシ 笠原慎也さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
もみじ市に初参加となります!サカヤカフェマルヨシと申します。栃木県の材料のみを使用した「栃木イタリアン」と栃木県産地粉を使用した焼き菓子やパンを作っています。栃木県の「おいしい」を是非皆様に食べていただきたいです。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
情熱の「赤」です。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
栃木の魚「ヤシオマス」を使用した、真っ赤なトマトソースのパスタを作ろうと思っています。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、三重からやってくるあのパン屋さん。毎年、このパンを求めて多くの人がもみじ市へと足を運びます。

文●柿本康治

uguisu × organ「uguisu × organの青空デリカテッセン」

紺野真さんにとって“みんなで何かをすること”は、人生を豊かに生きるために欠かせないことなのかもしれない。

紺野さんは、2005年にはじめた三軒茶屋の「uguisu」と2011年に西荻窪にオープンした姉妹店「organ」を切り盛りするオーナー兼シェフ。どちらのお店もなかなか予約を取ることがかなわない人気のレストラン。雑誌やメディアで取り上げられることも多く、味にうるさいお客さん、常連さん、仕事帰りにワインを一杯飲んで帰るお客さんが、絶妙な味付けのビストロ料理と作り手の顔が見える選りすぐりの自然派ワインを楽しみに訪れる。先日uguisuを訪れた時は、40〜50代くらいの方々が優雅に食事を楽しんでいた。大いに食べて、笑い、ワインをたしなみ、「また来るよ」と言って去っていく。仲間たちとここで幸せな時間を過ごし、また明日から頑張ろうというエネルギーをもらって帰っていく、そんな光景に見えた。

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紺野さん率いる「uguisu×organ」チームにとって、もみじ市は今年で2回目の参加となる。前回は青空のもと、炭火で焼いたブーダンノワール(豚の腸詰)や、キャロットラペ、ジャガイモと玉ねぎ、オリーブを使った前菜など、ライブ感あふれる“青空デリカテッセン”というフランス料理店をオープンしてくれた。

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私が紺野さんと何度かお話をするうちに気がついたことは、紺野さんはいつだってサービス精神にあふれ、とてもポジティブな考え方の持ち主だということ。なにかを相談すると、こちらの期待に応えようと、真摯に対応してくれようとする姿勢がすごく伝わってくる。初めてお会いした時からその印象は変わらない。アイディアをいくつも挙げて、積極的に関わってくれようとするのだ。

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しかし連日予約でいっぱいのお店を営みながら、もみじ市の準備をするのはどんなに大変なことだろう。スタッフの体力、お客さまのこと、設備の整わない会場でのオペレーション、さまざまな不安要素をかかえながらの準備……。きっと、軽やかでポジティブにみえる紺野さんにとっても、簡単なことではないと思う。紺野さんが、それでももみじ市に参加してくださる理由は何だろう。多忙な日々を過ごす紺野さんが、こんなふうに語っていたことがある。

「僕はもともと料理をつくるのではなく、楽器をかき鳴らしていたんですよ。バンドを組んでプロを目指していた時もあったのですが、挫折してしまいました。自分には才能がなかったみたいで……。でもその間勤めていた飲食店でのサービス経験が今の仕事に結びついています。そしていつからか、自分でお店をやりたいと思うようになったのです」

また前回のもみじ市が終わったあとには、こんなふうにも。

「本当に大変だったけれど、みんなで一緒に汗をかいて、楽しかったです。片付けが終わった後、夕日のなかでみんなで写真を撮ったんだけど、それがとってもいい写真だったんです」

そう、紺野さんは、信頼できるメンバーとともに、なにかひとつのことを一緒にやりたいのだ。好奇心に満ちた少年のように。バンドもお店もきっと同じ。個性あふれる仲間たちと、一緒にひとつの空間で、汗をかきたいのだ。

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そしてそれは、私たちが「この作家さんに参加してもらいたい、このアーティストに参加してもらいたい、そして一緒にひとつのものを作りたい」という思いから始めた、もみじ市と同じような気がしてならない。全国からやってくる、料理人、作家、アーティストたちが集まる舞台。その舞台に、思いを同じくした「uguisu × organ」という名のバンドが上がってくれる。こんな誇らしいことが他にあるだろうか。

最近ではスタッフたちと畑を借りて野菜を作っているという紺野さん。料理への尽きない探究心、そして、これだけ知れ渡っているにもかかわらず、新しいことに果敢にチャレンジする姿勢。私たちはいつだって、そんな紺野さんと「uguisu×organ」のメンバーに刺激を受ける。

舞台の幕が開くのはもう間近。今年はどんなステージを見せてくれるのか? もみじ市に訪れたら、ライブ感あふれる「uguisu × organ」のお店を、ぜひ訪れてほしい。

【uguisu × organ 紺野真さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
三軒茶屋の小さなワインカフェuguisuと、その姉妹店である西荻窪のorganです。
フランスの市場で売られている様な素朴で美味しいお惣菜と、青空の下で身体に染み入るような優しい味わいのワインを紹介したく思います。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
紺色です。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
場所は河川敷になりますが、お店の雰囲気そのままに、みなさんに楽しんでいただけるよう、
自分達も楽しみながら本気でやります。その様子をぜひ見に来てください。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、栃木県からもみじ市初出店のあのお店です!

文●増田千夏

アンリロ「秋空レストラン」

アンリロが生まれ変わった。

営業時間が変わり、ディナーがなくなった。その代わり、ランチタイムとカフェタイムを今まで以上にゆっくりと過ごせるように、時間を延ばした。メニューにお子様ランチも加えた。キッズルームと呼ばれる座敷席は、スタッフで力を合わせて、丸2日で作った。新しい仲間は、主婦や妊婦の方を積極的に迎え入れることにした。そう、アンリロは子どもがいる環境にある全ての人に対して、大きな“いたわり”を持つお店に生まれ変わったのだ。

「世の中を動かしているのは主婦の人たちだからね。いちばん頑張っているし、気合いが違います。昔から続いているお店を見ても、やっぱり頑張っているのは主婦の方ですし」

きっかけは、オーナーシェフである上村さん自身の環境の変化によるものだった。3年前、第一子を、そして今年、第二子目を授かった。楽しいけれど、決して一筋縄にはいかない育児の日々の中で芽生えた想いが、彼を変化させていったのだ。

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アンリロとは、上村真巳というひとりの男の人生そのものなのだと思う。自身の環境の変化に合わせてお店自体も変化させていく。その姿勢には、潔さと人間らしさがあふれている。その中で、ただひとつ変わらないこと。それは、自分が行きたくなるお店をつくり続けてきたことだ。

2005年、上村さんは栃木県鹿沼市に、野菜をおいしく食べるフレンチベジタリアン「アンリロ」をつくった。地元で採れた野菜を美味しく食べてもらいたい。そんな願いのもとでつくられた料理が、多くの人を魅了するのには、さほど時間はかからなかった。そして、2008年、31歳の年齢を数える年、2号店である「ル・ペリカン・ルージュ」をつくった。そこは地元の食材を使用したお料理とおいしいワインが楽しめるビストロ。男性が行けるお店をつくりたかったのだという。掲げたテーマは「30代以降の大人が居心地のいい、遅くまで開いているお店を目指そう」だった。 

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そして、今回の大きな変化。アンリロに足を運ぶ客層は9割が女性だ。もちろん、その中には妊婦の方も多い。だからこそ、そんな方々が子どもを産んでからも「行きたい」と思ってもらえるようなお店にしたいという結論に至ったのは、ごく自然なことだったのだろう。

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インタビューを続ける中で、私はアンリロを初めて訪れたときのことを思い出していた。それは今年の1月のこと。手紙社の一員として、数名のスタッフと共に上村さんに会いに行ったときのことだ。どうせならと、アンリロのランチを予約していた。お店に到着すると、用意してくれていたのはポカポカとした冬の木漏れ日が射し込むテーブル席。そこに並ぶ料理の色鮮やかさといったら…。陽の光を受けてキラキラと輝く、鹿沼の採れたての野菜を使った料理の感動は今でも色褪せることなく覚えている。ひと皿ひと皿が、とにかく美しい。そして、きちんと演出されている。料理が提供される度に皆、感嘆の声を上げた。純粋に料理を、そして食事を楽しむ。そんな体験だった。夕食は、ル・ペリカン・ルージュを予約した。カウンターに座っている常連と思わしき年配の男性と楽しそうに会話をしている上村さん。それが、初対面の瞬間だった。この時にどんな言葉を交わしたのかは、正直なところ、緊張のあまりほとんど覚えてはいない。それでも、そのとき話してくれた、マクロビに対する考え方。地元の野菜を使うことに対する想い。そして、何よりも料理をする自分自身が楽しむということ。その場で話を聞いていた私達は、噛み締めるようにその言葉を心に刻んでいた。そして、前菜の盛り合わせが、本当に美しくて美味しかった。これは余談になるが、同行していた手紙舎のカフェのスタッフもいたく感銘を受けていたようで、「地元の野菜を使う」という上村さんの考えに影響された結果、現在、手紙舎のカフェで使用する野菜は我々の地元である調布で採れたものを使っている。

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ふいに、将来の展望を話す時間が訪れた。その内容は、海外のとある国でお店をつくりたいという話だった。自身が独立前にお世話になったオーガニックレストランのオーナーが住んでいるということもあり、上村さんは家族で、その国へ幾度かの旅行を重ねてきた。ベジタリアンが多く、どこのお店に入ってもベジタリアンメニューが必ずある。エステも盛んだ。内側と外側から身体を綺麗にできる国。それはインドネシア。ただ観光地化しているのではなく、自然をふんだんに活かしたお店づくりが成されていて、そこには昔の日本の風景を感じるのだとも言う。例えば、山あいの渓谷の中のお店。窓なんて無くて、全てが開放感にあふれている。清流の流れる音、そこにある自然全てがインテリアとして成立しているお店。

「作られた造形も好きですけど、自然が作り出した造形には敵わないなって思うんですよね。なによりも本当に気持ちが良いんですよ。そんな空間で、モダンな料理なんか出したら、絶対素敵だと思いません?」

はい、そう思います! そんなロケーションで楽しむ上村さんの料理。楽しみだなあ。そんな日がいつかきっと来る。将来の自分のご褒美がまたひとつ増えた瞬間だった。 

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インタビューもそろそろ終わりの時間を迎える頃、上村さんは自身の生き方のテーマをこのように紡いでくれた。

「常にベースにあるのは“自然体”という言葉。自然の流れに逆らわず、無理をしないで生きていきたいですよね。」

そして、その言葉は料理に対する想いへと繋げるように続いていく。

「それじゃあ、自然体な料理って何かって聞かれたら、やっぱり、地元で採れた食材でつくることだと思うんです。それが自分には向いているし、好きなんですよね。そう考えると、なんかもう、何処でも生きていける気がします」

栃木県鹿沼市、その土地で暮らしを営む一員として、誇りを持って、上村さんはシェフであり続ける。野菜を料理し続ける。上村さんがつくったお面を是非見てもらいたい。太陽の朱色と、地球の緑。それはどちらも野菜の色だ。

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2年ぶりのもみじ市。アンリロは鹿沼の野菜をたっぷりと使ったパスタを用意してくれる。使う野菜は新鮮で色とりどり。正にカラフルだ。もちろん、みんなが大好きな、もみじ市名物と言っても良い、あのにんじんフライもあるので、どうぞお楽しみに。新鮮な素材と、プロフェッショナルな料理。そして、今のアンリロにはそれ以上の“何か”が存在している。新生アンリロは、これまでにないくらい、子供と家族に優しいフレンチベジタリアンとして、多摩川河川敷にやってくる。

【アンリロ 上村真巳さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
栃木県鹿沼市のアンリロです、栃木県は全国的に寒暖の差が厳しい土地でもあり特に野菜は美味しくなる気候なんですよ! そんなお野菜をふんだんに使ったフレンチベジタリアンがアンリロです! 美味しいおやさい食べに来てくださいね!

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
太陽のオレンジと葉っぱの緑!

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
今回は定番の人参フライはもちろん、パスタもサラダもカラフルにしあげます!もちろん屋台もお花でいっぱいにします!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

続いてご紹介するのは、人気イラストレーターのあのお二人です!

文●加藤周一

café tojo(カフェ・トホ)「自家製天然酵母パンとスイーツ、スープ」

「青木さんからはじまって、次はイボンヌさん、そしてウーさん、4代目はエノモトエミリさん、5代目は小野田さん」

これ、何の話だかわかりますか? これらはすべて「café tojo」(カフェ・トホ)さんが歴代育ててきた天然酵母に付けられた名前なのです。

「カフェトホといえば天然酵母のパン」と思い浮かべる方も多いと思いますが、お話を聞いてみると、はじめは意外にもドライイーストのパンを焼いていたとのこと。それが天然酵母のパンへと移行していったのは、東條モニカさんが長女桃花ちゃんを出産した際の助産師さんとの出会いがきっかけ。お世話になった助産師さんがかつて静岡に住んでいた時にパン屋を営んでいた方で、「酵母菌を育てるのは子育てと一緒よ、ご主人むいてそうだからやってみたら?」と言われたことがきっかけで天然酵母を用いてパンを作るようになったのだそうです。

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東條さんは「どちらかというと天然酵母のパンは硬くて酸っぱいという印象を持っていた」のですが、試行錯誤しながらパン作りをつづけていく中で、酵母の種類や配合、発酵の状態をコントロールすることで酸っぱくないパンを作ることができるようになったといいます。

酵母菌を育てはじめて、「あ」の「青木さん」から順番に50音順に名前をつけていて、今育てている1番新しい酵母には「し」ではじまる名前の(巨峰酵母の)「シューベルト」と名付けられました。単純にいついつ作った酵母というと記憶に残らないけれど、酵母に毎回名前を付けることで「オノダさんはあのときこうだったよね~」と今でも当時の酵母菌の状態、パンの出来上がりの状態を思い出すことができるそうです。

「『元気か?』と毎日声を掛けて、天然酵母を育てています。毎日変化するので、思うようには行かない。手を掛けすぎてもいけなくて、本当に子供のようでかわいいんですよ」

こう笑顔で話すのは、アフロヘアーの東條吉和さん。吉和さんの手は大きくてあたたかいので、天然酵母のパン生地を捏ねるのにぴったりだそう。

天然酵母のパン以外に、もうひとつの看板メニューである「トホブレンド」の珈琲のドリップも、吉和さんの担当。吉和さんだけが提供できるので、吉和さんのいる時の珈琲の看板は表の「炭火焙煎深煎珈琲トホブレンドあり〼。」いない時は裏の「店主不在のためトホブレンドはありません。」にして、道を通るお客さんに知らせているとのこと。

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珈琲の提供有無を伝えるかわいい手描きの看板は、知人のイラストレーターさんが描いてくれたもの。そのイラストレーターさんは、家族で通う銭湯でこどもたちが仲良くなったことがきっかけで、お店に遊びに来てくれるようになったのだそう。こんなエピソードを伺うと、カフェトホさんはこうやって人との縁の中でゆるやかに導かれて、少しずつ変化しながら、素敵なお店を続けていくんだろうな、とこちらも幸せな気分をお裾分けしてもらったような気持ちになりました。

今回のもみじ市には、東條さんご夫婦、桃花ちゃん、月之助くん、生後6ヶ月の桜ちゃんの家族5人全員で元気に参加してくれます。ライ麦パンとスープがセットになった「ハンカチランチ」、ダークチェリーとダークチョコの入った「黒い森のチーズケーキ」、吉和さんが丁寧にドリップして提供する「トホブレンド」のコーヒーなどを、ご用意していただける予定です。もう一種類、「三日間がかりで作る天然酵母のバターケーキ」は味が変化していくので持ち帰って少しずつ食べてもらうのがオススメとのこと。トーストして食べるのもおいしいということなので、もみじ市が終わってからも楽しみが続きそうなのはうれしいですね。 

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【café tojo 東條吉和さん、モニカさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
笹塚にある自家製天然酵母手ごねパンと炭火焙煎珈琲のお店café tojo(カフェ・トホ)です。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
お店を象徴する色は黒とグリーンです。「黒」はお店の躯体や螺旋階段に使われている鉄の黒。「グリーン」はお客様からは見えないところにあうのですが厨房に敷かれているゴムがゴルフグリーンと言われるきれいな緑色でふたつがテーマカラーになっています。 

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
スープとライ麦パンのセットを「ハンカチランチ」としてご用意します。40センチ四方のお好きなハンカチや手ぬぐいなどを持ってきていただけると包んでお渡しします。キレイな色のハンカチで包んでカラフルハンカチランチになったらたのしいですね。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

「表現方法にこだわらず何でも創ってみるをモットーに活動中」。続いては、“世界”をも魅了するあの人の登場です!

文●尾崎博一

食堂souffle「souffleと京都の仲間たち」

食堂souffleは、京都市の西にある円町という小さな町の、さらに小さな商店街の中にある。ゆるやかな坂道をのぼり、桜の木のある公園を通り過ぎると、やがて鮮やかな黄色いひさしが見えてくる。その黄色は、souffleそのものだ。あたたかく光にあふれ、元気と笑顔をくれる色。黄色いひさしを目にすると、扉の向こうにある“彼女”の笑顔が浮かび、自然と心が明るくなる。

この小さな食堂がオープンするまでの間には、たくさんの物語がある。それは、食堂souffleができるまでの物語でもあるけれど、同時に手紙社とsouffleをつなぐ大切な「縁」の物語でもある。 

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食堂souffleの店主・田中沙由理さん。約1年前まで、京都を拠点にケータリングや出張カフェを中心としたフードデリバラー「souffle」として活動していた。小さいころから、料理上手のお母さんのそばで、気がつけば包丁を握っていたという。そんな沙由理さんが「お店を開きたい」と夢を抱いたのは、近所のお姉さんと一緒に初めてパンを作ったとき。オーブンの中でムクムクと膨らむパン生地にワクワクして、いつまでもオーブンの前を離れなかった。成長したお料理好きの少女は、パン屋さんやレストランで働きながら、いつか自分の店を持つ日のためにフードデリバラーとしての活動をはじめる。

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手紙社とsouffleとの出会いはこのころだ。まだ店もなかった頃から手紙社のwebを見ていてくれた沙由理さんは、つつじヶ丘にカフェができたと知って、一人で京都から訪ねてきてくれた。さらにその後、当時の勤め先だったカフェレストランの仲間とともにもう一度。さらにさらにその後、もみじ市のボランティアスタッフとして、京都から夜行バスに乗って駆けつけてくれた。彼女の信念はこうだ。「会いたい人には、自分から会いに行かなくちゃ」。その行動力と、会う人みんなをあたたかい気持ちにしてくれる笑顔で、souffleはあっという間に手紙社にとってかけがえのない存在になった。

ある日、カフェ手紙舎に最大のピンチが訪れる。大人数のディナー予約が入っているというのに、シェフが急病という一大事。このとき、電話を受けてすぐに新幹線に乗り込み、新幹線の中でメニューを考え、わずか数時間でとびきりおいしいディナーを用意してくれたのが、沙由理さんだった。それはまるで映画のようなエピソードだけど、彼女にとっては当たり前の行動だったのだと思う。souffleは、いつでもどこでも誰かにおいしいものを届けたいと願っている。「距離なんて関係ない」と言うだろう。「私のごはんを思い出してくれてうれしい!」と、満面の笑顔で。

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souffleの料理は、沙由理さんの人柄そのもののように優しく、心地よく身体に沁みわたる。洋のメニューに少しだけ和のエッセンスが加えられていたり、季節の野菜や果実をさりげなく取り入れたり、手間と時間を惜しみなく注ぎながらも、気取ることなく自然体だ。だから、一口いただくとほっとして、するすると心がほぐれていくのがわかる。「souffle」とはフランス語で「息」という意味で、おいしいものを食べてほっとする瞬間を作りたいと名付けたという、まさにそんな感覚だ。

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食堂souffleをオープンするまでの間、沙由理さんは何度も落ち込み、涙していた。「物件が見つからない」「両親がお店を始めることに反対している」「工事が間に合わないかもしれない」…。その度に、souffleのごはんに励まされてきたたくさんの人たちからエールが送られた。だから、沙由理さんは「私には作ることがある」と、もう一度顔を上げて笑うことができた。オープンの日には小さな店を埋め尽くすほどの花束が届いた。

オープンしてから半年余り、店には毎日誰かが訪れる。フードデリバラーとして活動していたころからの友人・知人はもちろん、円町に暮らす人々、通勤通学途中に立ち寄る人、ご近所の商店街の人々…。その誰もを、沙由理さんは「おかえり」と言ってくれているかのような笑顔で迎える。

「フードデリバラーをやっていたころは、『souffle=人』でした。でもお店を持って、この場所にみんなが来てくれることがうれしい。『会いたい人には会いにいく』が信念だったけど、今は会いたい人たちがここに来てくれる。だから『souffle=居場所』になれる店を作っていきたい」

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その顔はもう、食堂souffleの店主の顔だ。明るいスマイル印のイエローは、太陽のように強くあたたかい黄金色へと変化し、新たな一歩を踏み出したかのように見える。3年前、もみじ市の会場で汗だくになってテントを運び、「いつか自分も店を持ってもみじ市に出店したい」と語っていた彼女。そのsouffleが、今年多摩川河川敷にやってくる。カラフルで心躍るおいしいごはんと、誰もをあたたかく迎えてくれるハッピーイエローの笑顔とともに。

【食堂souffle 田中沙由理さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
食堂souffleです。スーフルとはフランス語で息。2007年から京都を中心に、出張カフェ、イベント出店、ケータリングなど、ほっとしたりふぅーっと力の抜けるおいしい時間をニコニコお届けしています。隣にいる人が、笑ってくれることが幸せです。2013年春、中学生からの夢を叶えるべく京都の西・円町に『食堂souffle』を開店しました。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
よく みんなに スーフルは黄色だね、と言われます。お店のオーニングが黄色いこともありますが、きっと、声が大きくて元気なイメージだからだと思います。ひまわりとか太陽とかみたいに 明るく元気な人で在りたいといつも思っています。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
souffleのコーヒーと焼菓子、京都市左京区のパンとお菓子と雑貨のお店「ちせ」のtorajam、自家製の果実酒や自家製ジュース、そして1日目は、食堂souffleのカラフル定食をお出ししたいと思っています。京都の友人たちとお揃いの服を着て、青空の下、ニコニコとみなさまを迎えられるよう元気にお待ちしています。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いては、第1回より参加してくれている銅・真鍮を使った雑貨の作り手。河川敷にこの人の笑顔がこぼれるのも2年ぶりかぁ。

文●増田 知沙