春先の夕暮れの帰り道、Ruiさんのレースをふわり、と纏ったら。
薄着の後悔はすぐに消え、口元に笑みが生まれるだろう。おへその上あたりにはりついていた人間関係のモヤモヤも、ふっ、と一吹きで綿毛のように飛んでいきそうな気持ちになる。
晩秋の駅のホームで、Ruiさんのフェルトの帽子をぽん、とかぶったら。
日が短い心細さは羊の毛の中に溶けていき、肩の力が抜けるだろう。自信がなくて曇っていた心も、シャワーの後のようにすっきり、視界良好な気持ちになる。
Ruiさんの作品に触れると、体の奥のぐっとした結び目がゆるむ。そして気がつくと、明日が来るのが楽しみになっている。
Ruiさんの第一印象は「すくすく育つ夏の植物みたい」。派手でなく地味でもなく、土から栄養を得て太陽の下、つるを上下左右にぐんぐん伸ばしていくへちまや朝顔のような人。私は、すぐにRuiさんを好きになった。
Ruiさんが織りの道へ進むのを決めたのは高校1年生の時。「身に着ける布がいい。一から布を作るなら、織りだ」。大学でテキスタイルデザインを学び、アパレル企業に入社。トップス専門としてスタートしたブランドでディスプレイ担当だったRuiさんは、商品に合わせる帽子やスカートを作り始める。そこからレースとフェルト、2つの道が開けていった。
Ruiさんのレースの作り方はおもしろい。水に溶ける特殊なシートに、絵を描くように布や糸を置いていく。そしてミシンで自由にステッチをかけていく。水につけてシートを溶かすと、糸が縮んでくしゅっとした手触りの、世界でひとつのレースが現れる。魔法のように。
一方、フェルトは地道な作業。色とりどりの羊毛に温かい石鹸水をかけてごしごし擦る。棒を縦、横、表、裏、約800回も転がして一つの生地を作りあげていく。大変ですね、と思わず目を丸くした私にRuiさんは、「そう大変!でもよろこんでもらえるからやれるんだよね」と笑った。
今回のもみじ市には、これからの季節にアクセントとなるような、ぴかっ、と明るい色のフェルトのブローチやリング、帽子、ストールが中心に並ぶ。身に着けて多摩川河川敷を歩く姿を想像する。きっと背すじが伸びて足どりは軽く、ついスキップしてしまうかもしれない。作品が放つエネルギーに、体が反応するのがわかる。
淡く、繊細で美術品のようなレースと、カラフルで身近な存在のフェルト。対照的な “静” と ”動” の空気をもつ2つの作品を、Ruiさんが作り続ける理由。その答えは、「やめられないの、どっちも」と困った笑顔で返ってきた。
やめられなくてよかった、と思う。私たちはこれからもRuiさんの作品に出逢い続けることができるから。
【Ruiさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
手づくりのレースとフェルトを作っているRuiです。
Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
朝日色?ちょっと元気なかんじ。
Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
小石柄、リース柄のストールのカラフルバージョンと、新作アクセサリー!!
Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!
続いてご紹介するのは、自由ヶ丘のあのお店。カラフルな海外の文房具をずらりと並べて迎えてくれるはず。
文●小澤亜由美