Chappo「リネン、ウール、フェルトいろいろ帽子」

Exif_JPEG_PICTURE

今でもあの時のことをよく憶えている。僕がChappoのふたり、須田英治さんと舩越由紀子さんに初めてお会いしたのは、少し遅れて参加した2010年のもみじ市の決起大会のときだった。

「浅草橋に拠点を構える帽子工房、須田制帽の4代目、Chappoの須田英治さんとパートナーの舩越由紀子さんです!」

着いたときは、出店者さんひとりひとりを紹介している最中で、ちょうどふたりが呼ばれて挨拶をするところだった。「浅草橋」。その時に僕が勤めていた会社のあった場所である。当時、こういう世界にはまだまだ疎くて、何度かお手伝いをしていたにもかかわらず、いつもドギマギしていた僕はその単語を聞き逃さなかった。「あ、共通点がある」と思ったのだ。挨拶が終わってからすぐにふたりに声をかけた。大らかな須田さんと元気でよく笑う舩越さん。その時、もみじ市に初参加だったふたりも若干の緊張をしていたように思う。その後、偶然訪れた手づくり市で会ったり、職場の近くで一緒にお昼を食べたり、一緒にカレーを食べにいったりと親しくさせてもらっていた。

Exif_JPEG_PICTURE

手紙社に入ってからは、さらにいろいろなところでお世話になっている。調布PARCOにあった手紙社のお店ででChappoの作品を取り扱うときは、引っ越したばかりの平井の家を訪ねて帽子を見させてもらった。ニセコで行われた「森のカフェフェス」では旅するもみじ市の一員として、北海道まで来てくれた。今年初めて行った2月の「かわいい布博」にも出てくれた。いろいろご一緒する中で、Chappoは僕にとって、とても特別な作り手となっていった。

そんなChappoのふたりに今回あらためてじっくり話を聞いて感じたことは、出会ってからの3年間でふたりは作り手としての道をしっかりと着実に進み続けてきたんだということ。そして、今まさに次のステージに向かうところなのかもしれないということだった。

Exif_JPEG_PICTURE

Chappoの作る帽子は、いまや手紙社のイベントや各地で行われている青空市では絶大な人気を誇る。もみじ市に出店してくれている作家さんをはじめ、クリエイターの中にも愛用をする人は多い。今年7月、蔵前のカワウソで行われた展示には、たくさんの作り手がChappoの帽子を被って、大沼ショージさんのポートレートに収まっていた。どれも映画の登場人物のように“決まって”いる。身に付ける人の着こなしや写真もさすがだと思うけど、それを引き出しているのは間違いなくChappoの帽子だ。

ふたりはどんなイメージから帽子を生み出しているのだろう。「デザインはどうやって考えてるんですか?」と尋ねてみた。そうしたらはっきりと「デザインはしてないし、できないよ」という答えが返って来た。

「昔の製品を新しくかぶりやすく直してる感じ。デザインはできないからさ、映画を見て、登場人物がどんな帽子をかぶっているかずっと見ていたりするよ。外国の人は、かぶり方がすごくかっこいい。ただ乗っけてるだけなのに様になってて、こんな風に格好良くかぶれる帽子が作りたいなって思うんだよね」

Exif_JPEG_PICTURE

自分のデザインを誇示したいわけではない。はっきりとそう答えるふたりは、自らのものづくりのスタンスについて、こんな風に話してくれた。

「作家って感じじゃない、かといって職人ともすこし違う。ただの帽子を作る人、かな。沖縄の言葉で帽子を組む人を『帽子くまー』っていうんだけど、それが一番すんなりくる。あぁ、こうなりたいんだなって」(須田さん)
「デザインとかが凝ってるっていうよりは、シンプルですごくいいなっていう帽子を作りたい。製品に近い帽子を作りたい。だから作家とは少し違うのかな」(舩越さん)

Exif_JPEG_PICTURE

その言葉の奥に、ふたりと出会った時にはまだなかった作り手としての確固たる自信のようなものを感じることができた。言葉に深く強い意思を感じたのだ。「迷走中」とも言っていたけれど、このふたりは迷ってなんかいないと思う。“何か”を掴みかけているだけなのだ、きっと。

「まだまだ中途半端、頭の中に思い描くイメージに追いついてない」
ちょっと悔しそうに須田さんはこういうけれど、その帽子は、どんどんと魅力に深みを増していると思う。

Exif_JPEG_PICTURE

今回、僕はChappoのふたりと話している中で感じた“何か”を言葉にするつもりでこの原稿に臨んだ。真摯なものづくりのその先に宿すものをどうにか言葉にしようとしてみた。でも、それはどうやら難しそうだ。その“何か”は一つひとつの作業を自らの意思で積み重ね、努力を続ける人が生み出す「もの」にだけ、ただ宿るから。

だから、みなさん。ぜひもみじ市の会場でChappoの帽子を手にとってみてください。きっとあなたの心を掴む“何か”が、そこにあるはずだから。

【Chappo 須田英治さんと舩越由紀子さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
Chappo(シャッポ)と申します。東京下町で帽子を作っています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
茶色と思います。(須田)
白です。(舩越)

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
秋冬のあったか帽子や通年被れるリネンの帽子など、いろいろな生地でいろいろな形の帽子を持って行きたいと思います。一見シンプルな外見でも裏地がカラフルだったり派手だったりの帽子があるので、お手に取って楽しんでいただけたらと思います。僕はいつも服装も土色なのですが、当日はがんばって色付き衣装で楽しみたいと思います!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、栃木からもみじ市に初参加するあのカフェです。屈指の名カフェが名を連ねる栃木県の中にあっても輝く存在感はまさしく栃木の“至宝”。

文●藤枝大裕