松尾ミユキ「nagoyaショップ」

雑誌や書籍、雑貨などをフィールドに幅広い活動を続けるイラストレーター・松尾ミユキさん。もみじ市の“象徴”である、tico moonのCDアルバムのジャケットも、松尾さんが描いたイラストです。

もうすぐ4歳と2歳になるお子さんがいる松尾さん。子どもが生まれてから、描くイラストの雰囲気が変わって来たそうです。
「それまでは、雑貨や食器、インテリアなど無機物なイラストを好んで描いていました。とんがったカタチのものも多く、色も寒色を使うことが多かったんですよね。でも、子どもが生まれてから、植物や自然、動物など有機物を描くことが多くなりました。まるみのあるものを描くことも多くなり、暖色を使うことも増えました」

東京で6年間暮らしていた松尾さんですが、実は今年、東京以前に活動の拠点としていた名古屋に戻りました。そして今回、松尾さんはもみじ市に参加するにあたり、いま松尾さんの周りにいる“カラフル”な仲間たちの力を借りて何かをしたいと、なんとも楽しそうなたくらみを考えました。ここで、早速ご紹介しましょう。「白」「青」「ピンク」「赤」が似合う、カラフルな仲間たちと織り成す作品の数々をどうぞ!

白:コロンブックス

ポストカード

名古屋にあるブックサロン「コロンブックス」に松尾さんが抱くイメージカラーは「白」。松尾さんと滝村美保子さんとのユニット「les duex」が編集・制作をしていた伝説のリトルプレス『なごやに暮らす』のデザインや印刷を手がけていたコロンブックス代表の湯浅哲也さんは、紙やインクの組み合わせやデザインで、いつも表現を自在にしてくれるとのこと。「湯浅さんに頼めば間違いない!」と、湯浅さんの印刷技術やセンスに絶大な信頼を寄せている松尾さん。節目節目の大切なときには、必ず湯浅さんを訪ねるといいます。今回、そんな湯浅さんとのコラボ作品がもみじ市にやってきます。活版印刷で刷られた猫のイラストのポストカードは、猫の毛並みを確かめようと、思わず手を伸ばしてしまいます。

青:ミルブックス

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

名古屋出身の藤原康二さんが主宰を勤めるブックレーベル「ミルブックス」と松尾さんのコラボ商品は、いつも魅力的。今回は人気のコーヒー缶シリーズに、白熊・猫・白鳥の動物が加わり、多摩川河川敷へやって来ます。
(写真:手ぬぐい)
ミルブックスはスタートした当初「1000部限定」という出版スタイルをとっていました。松尾さんにとっては、その当時、出版していたきれいな青い本のイメージが強いそう。そんな鮮やかなイメージのような、空・大地・海の物をモチーフにした手ぬぐいもお楽しみに。

ピンク:suirenco

suirencoコラボ

名古屋で活動を続ける「suirenco」の西尾淳子さんは、松尾さんの高校時代からのお友達。イベント等で、手づくりのお菓子を販売しています。今回、もみじ市のために松尾さんと西尾さんが作ったのは、かわいいイラストの箱に入った「贈り物クッキー」。素材を活かしたお菓子が得意なsuirencoが手がける、ほろほろ・ザクザク・プチプチと食感の異なる3種類のクッキーを包むのは、松尾さんのイラストが描かれた箱。松尾さんにとってのsuirencoのイメージカラーである「ピンク」をアクセントにして描かれました。ずっと居心地のいい関係が続いている松尾さんと西尾さんのように、クッキーを食べた後も傍にあったらうれしい贈り物になること間違いなし。イラストは2種類あるので、贈り物用・自分用にどうぞ。

赤:自家焙煎喫茶店「milou」(ミル)

ミルコラボ布巾着

手作りの懐かしい空間で、極上の深煎りコーヒーを楽しめる「milou」とのコラボレーションは、コーヒー豆の巾着袋。春になるとmilouの駐車場にやってくるツバメをモチーフにしたイラストの袋には、深煎りコーヒーの魅力にすっかり深入りしてしまったmilouの店主・鈴木義弘さんが厳選した珈琲豆が入っています。珈琲豆は、鈴木さんを自らが焙煎したもの。

ミル

店内のところどころにある「赤」が、松尾さんにとってmilouのイメージカラーです。

魅力的なカラー(個性)をもった、4組の作り手のコラボレーションは、松尾さんだから実現できること。ワクワクしないわけにはいきませんね。

いまの松尾さんの暮らしの周りにいる作り手と一緒に生み出される作品、いまの松尾さんの暮らしの中から生まれて来るイラスト。松尾さんの描くイラストは、松尾さんの“暮らしの挿絵”なのかもしれません。

【松尾ミユキさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
こんにちは、松尾ミユキです。雑誌や書籍を中心にイラストの仕事をしています。その他雑貨を作ったりもしています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
自分の色のイメージ ふつふつと燃えたぎる炎のような赤でしょうか。でも白でありたい、と思っています。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
テーマが「カラフル」ということで、今年はいろいろな人とのコラボレーション作品を用意しています。

私がずっと好きで通っている名古屋の喫茶店「ミル」のコーヒー豆と、それを入れるイラストを施した布の巾着のセット。

名古屋のお店やイベントなどでお菓子を販売しているsuirenco(スイレンコ)の3種類のクッキーをイラストボックスに入れた贈り物クッキー箱。

名古屋出身の藤原氏が主催する出版社ミルブックスとのコラボレーションで作ったコーヒー缶とてぬぐい。

作っていたリトルプレス、「なごやに暮らす」を印刷してくださっていたコロンブックスの湯浅さんに、イラストに合う紙やインクを選んでもらい作ったポストカード。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いては、日曜日にしか開かないあのお菓子屋さん! もみじ市では土曜日にもオープンしてくれるらしいですよ!

文●小木曽元哉

岡崎直哉 「フジカラー+紙」

雲ひとつない、よく晴れた日。遠くに富士山の姿を見つけると、なんだかちょっとすがすがしい気持ちになる。季節によって表情を変える、美しい円錐型の富士山。遠くに見えただけでも嬉しくなってしまうのは、きっと私だけではないはず。

富士山の美しさに魅せられ、富士山の写真を撮り続けている人がいる。デザイナー・写真家の岡崎直哉さんだ。冬の富士山、春の富士山、銭湯に描かれた富士山さえも、岡崎さんにとっては愛すべき被写体だ。

撮影した富士山の写真は、自ら暗室でプリントし、デザインをし、工作をし、ポストカードにしたり、冊子にしたり……。写真家・岡崎直哉さんの写真を、デザイナー・岡崎直哉さんが加工するわけで、その完成度は非常に高く、「紙の可能性」を感じさせてくれるのだ。

PH7岡崎さん手づくりの箱

今年、『紙をたのしむ工作のアイデア100』という著書を著した岡崎さん。作品を作るときは、できるだけ手で作ることを心がけているという。
「機械のクオリティまではいきませんが、手づくりでも同じくらいのレベルを目指しています。いつの日か機械超えをしたいです!(笑)」

PH6カラフルな箱がたくさん

 今年のもみじ市でも、岡崎さんが自ら作った作品がたくさん並ぶ予定。富士山のポストカードは、ひとつひとつ角が丸く加工されており、ちょっと渋い表情の富士山もかわいらしく見える。“カラフル”な箱の数々も、岡崎さんが組み立てたもの。また、岡崎さんの代表作「カラートラベルガイド」から抜粋された、各地の風景を切りとったポストカードも並ぶ。

PH8カラートラベルガイドから抜粋されたポストカード

カラートラベルガイドは、岡崎さんにしか作れないであろう“トラベルガイド”で、岡崎さんによって切り取られた何気ない町の風景が、見る者になんとも言えない旅情を呼び起こす。岡崎さんの撮る写真は、“瞬間” を切り取っているわけではない気がする。いつも目の前にあって、自然すぎるがゆえにちゃんと見つめられていなかった、ずっとそこにある “時間” を切り取っているのだと思う。何気ない風景だったり、古びた建物だったり。すぐご近所にありそうなそれらを、岡崎さんがましかくのフレームに収めると、それまで止まっていた “時間” が動き出すよう。ブルーがかっていて、美しく計算された構図の岡崎さんの写真は、一見涼しいようにみえるけれど、そこで切り取られているものは、私たちの奥の方にある、あたたかくて、なつかしいものたちを思い出させてくれるのだ。

さて、もみじ市ブログを熟読されている方はもしかしてお気づきかもしれないが、今回、岡崎さんは、ある作家さんとコラボレーションをする。その相手は、陶芸家の小谷田潤さん。

PH1岡崎さん作 フジカラーセットの箱

PH2小谷田さん作 富士山調味料入れ

PH3富士山調味料入れ+箱

 コラボレーション作品のタイトルは「フジカラー」。「富士山」と「カラー」をテーマに、岡崎さんは紙で、小谷田さんは陶器で、富士山とその色を表現している。富士山を愛してやまない岡崎さんが、小谷田さんの器をみて「富士山っぽいな」とふと思ったことから、このテーマに決まったとのこと。

小谷田さんが作る富士山型の調味料入れは、季節や時間によって異なる表情をみせる富士山を、色や雪のつもり具合(色のセパレート)で表現している。ころっとしていてかわいらしく、持ちやすさや使い勝手も考えられたこのかたちは、食卓にすっとなじむ。

その調味料入れがすっぽりおさまる箱を作るのが岡崎さん。見る場所によって異なるかたちの富士山。そのいろいろなかたちをちりばめてデザインされた、カラフルな箱。互いの試作品を持ち寄り、大きさや傾斜について何度も打ち合わせを重ねた。小谷田さんの作る富士山にぴったり合うように計算された箱を、岡崎さんがひとつひとつ作っている。

PH4富士山ポストカード

PH5フジカラーセットのペーパーバッグ

フィールドがまったく異なる2人。今回どうして一緒にやることになったのだろうか。
「小谷田くんの個展で器をみて、いいなと思っていたんです。後日またお会いしたときに、小谷田くんがちょうど発売したばかりの僕の本を見ながら、『もみじ市、よかったら一緒にやりませんか?』って誘ってくれて。もちろん、やろうやろう!って、すぐに決まりました」

PH10無料スタンプもあります

隠れたコラボ作品がもうひとつ。それは、もみじ市当日、岡崎さんが持ってきてくれる季節の富士山スタンプ。そのスタンプを押せる台も、なんと小谷田さんの手づくりなのだ。スタンプはどなたでも自由に押すことができるので、どうか見逃さないよう。

PH9 フジカラーのチームロゴ

今回のコラボレーションに向けて、早い段階からもみじ市に向けて動き出していたふたり。打ち合わせは数回に及び、私も同席させてもらった。
「富士山のこの傾斜が岡崎さんの好みに合うかどうか」
「箱は、小谷田くんのに合わせて作るよ」
「これを全部手で作るなんて、デザイナーの域を超えているよ」
飛び交う会話の端々に、お互いに寄り添う姿勢と、作品への敬意があらわれる。それは、気を遣った言葉でもなく、お世辞でもない、心底相手を尊敬し、信頼していることが伝わる言葉たちだ。
「コラボは、信頼かな」
岡崎さんは、照れながら、でも嬉しそうにそう話してくれた。

もみじ市では、たくさんの素敵な作家さんたちの作品に出会える。その中で作家さん同志も出会い、そしてその出会いで生まれた作品が、次のもみじ市をさらに彩ってくれる。黄色と青が混じり合い、緑が生まれるように。赤と青が混じり合い、紫が生まれるように。ひとつひとつの色が重なって、つながって。9回目のもみじ市は、よりカラフルになって、あなたを待っている。

【岡崎直哉さんに聞きました】 
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
デザイナー・写真家の岡崎です。日本をテーマに、紙雑貨や小冊子などをつくっています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
やや緑がかったレモン色が好きです。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。カラフルなフジカラーセットを持って行きます。組み合わせ自由なので、自分好みの富士山をみつけてくださいね! コラボ作品以外にも、たくさんの箱とポストカードを持って行きますので、どうぞお楽しみに!

追伸:小谷田くん。よろしくね!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、街の小さな花屋さん…とは思えないダイナミックな装飾で私達を驚かせてくれるあの人たちです!

文●高松宏美

makomo「おもしろい本、紙、布、その他」

じわじわ。にやにや。ふふふ。えっ。くすくす。へー。ぷっ。

いま、私はmakomoさんの本を読んでいます。makomoさんは、イラストレーターです。makomoさんがつくる本は、とてもおもしろい本です。で も、このおもしろさを言葉でどう説明したらいいかわからないので、読みながら感じた気持ちを擬音にしてみました。これは、声には出さない音です。顔にはきっと、出ています。鼻息も少し出ているかもしれません。読み終わってページを閉じた後、もう一度開きたくなりました。何回か見返しました。何度見ても、 やっぱりおもしろかったです。

makomoさんが本を作り始めたきっかけは、「”自分がどんな人間か”を伝えるため」でした。大学を卒業してからは、ぼーっとしていたというmakomoさんは、友人に誘われて「若手アーティストと中学生をつなぐ」ことをテーマにしたフリーペーパー作りに携わります。そこにイラストを描いたことから、イラストレー ターとしての道を歩み始めます。そして、編集とイラストの両方を手がけていたことが注目されて、あるとき、トークイベントに参加することになりました。

「トークだけでは心もとないなと思って。自分がどんなイラストを描いているのか。どんな人間なのか感じてもらえるものを、お土産として渡せればいいなと思いました」 

makomo1おもしろ絵本シリーズ。これ以外にも全部で10種類あります。

 そこで生まれたのが、代表作の「おもしろ絵本シリーズ」でした。「うらしまたろう」や「かぐや姫」などの昔話をモチーフに、独特の世界が展開されます。 makomoさんの面白さは絵だけでなく、文章にもあります。思わずつっこみたくなるような、心の隅をつついてくるようなストーリー。makomoさんの 頭の中はいったいどうなっているのでしょう? 

makomo2展覧会風景① 壁一面を使った展示

個展も精力的に行っているmakomoさん。

「最初に個展をしたギャラリーがすごく広くて、小さな絵だと壁面が埋まらないので大きな絵を描くようになりました」

大きな絵には、迫力や強さと言った魅力があるといいます。また、個展には文章は用いず、絵だけを並べるという徹底した姿勢も。展示を行ったギャラリーの人たちからのアイデアで、Tシャツやハンカチなどのグッズが生まれることも多いそう。最近ではiPhoneカバーなど、次々と新しい商品が生まれています。

makomo3展覧会風景② 文章がない分、自由にストーリーを想像したくなる絵

makomo4展覧会風景③ ポストカードなどのグッズも並びます

「ものをつくるときには常に、おもしろいものをつくりたいと考えています」

仕事としてイラストを描くときも、クライアントの意向を踏まえながら、どこまで自分の考えるおもしろさを出せるか、に常に挑み続けているそうです。その中で学ぶことも多いといいます。

「自分で勝手につくっている本は、クライアントが自分なので、思ったままのものを出すことができます。その分、自分が何をおもしろいものと考えているのかをすごく意識しながらつくっています。締切りを決めるのも自分なので、なかなか完成しないですけど。それでも、絵本はまだまだつくり続けたいと思っています。できた本がみなさんに楽しんでもらえてるのを見ると、やっぱり何よりうれしいので。あと大きい絵を描くのも楽しいので、ギャラリーでの展示も続けていきたいと思っています。少しは期待もされてると思いますし。大きい絵はあまり売れないですけどね。何で売れないんでしょう(笑)」

makomoさんにとってのおもしろさは「ふつうと少しちがう」ということです。笑ってほしいというよりも、その違いを感じることで、見た人の心が動くこと。その動いた感情に名前をつけるならば、それが「おもしろい」という言葉になるのだと思います。 

makomo52013年のカレンダー。10月は柿の背中を押してあげています。 

もみじ市には今回が初参加となるmakomoさん。おもしろいものをたくさん抱えて、みなさんの感情をくすぐりにやってきます! 今回のもみじ市で、2014年のカレンダーが初売りされるようですよ。2013年のカレンダーは、「しんせつな人が色々なもののせなかを押す」ことをテーマに(このテーマだけでもすでにおかしい)12カ月が綴られていましたが、果たして今回はどんな内容になるのか、乞うご期待です。ほかにはもちろん、絵本、ポストカード、グッズなど、makomoさんのエッセンスが詰まった商品が多数並びます。

ひとりで楽しむもよし。友達と眺めるもよし。買って持ち帰って、誰かに見せるもよし。自由におもしろさを味わってください。誰もが楽しい気持ちになれること、間違いなしです!

 【makomoさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
大阪でイラストレーターなどをやっている

makomoと言います。よろしくお願いします。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
肌色ですね。好きなんです、肌色。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
テーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。

ちょっとだけおもしろい絵本や、紙もの、布ものなどを置かせてもらいますが、目玉は今回のもみじ市にて初出しの2014年版カレンダーです。無駄に多い看板を用意してお待ちしてます。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、美しい鋳物のアクセサリーの作り手です!

文●吉田茜

祖敷大輔と根本真路「絵と雑貨」

緊張をまぎらわせるために大きく深呼吸し、息をととのえる。ゆっくりとトビラが開き迎えてくれたのは、もしかしたら私よりもちょっと緊張しているかもしれないふたりだった。 

雑誌・書籍の表紙や挿絵を手がけるイラストレーターの祖敷大輔さん。書籍のデザインなど印刷物のデザインを手がけるデザイナーの根本真路さん。フリーランスとしてそれぞれ活動をするふたりは今、三鷹にあるビルの一室を事務所とし、同じ空間で仕事をしている。 

いつかは、オリジナルのグッズを作りたいと思っていた祖敷さんに、もみじ市事務局のスタッフが出店の声をかけたのは2年前。その話を受けて祖敷さんが協力を求めたのが、一緒に仕事をしたことがある根本さんだった。

「グッズを作るからデザインを担当してほしいと誘ってもらったんです」

もともと祖敷さんのファンだった根本さんは、この案件をふたつ返事で快諾。初めてふたりで作ったポストカードやメッセージカードは、多摩川の河川敷に並ぶことになる。 

01

根本さんが、祖敷さんの存在を知ったのは、現在ポストカードにもなっているゴリラのイラストだ。ある雑誌の1ページにドンと掲載されているのを見て「これ、いい!」とひと目惚れ。そのページを丁寧に切り取り、部屋に飾っておくほど気に入ったのだという。

「いつか一緒に仕事がしたい」

根本さんの中で生まれた野望が叶うのに、時間はそれほどかからなかった。当時、別の雑誌のデザインを担当していた根本さんは、祖敷さんに挿絵を依頼した。 

「根本くんは、仕事を依頼してくれる人の一人でしたよ。だけど、年齢が近かったので話がしやすかったんです」 

何度か仕事をするうちに、ふたりの関係性が少しずつ変わっていく。

「グッズのデザインの話をいただいてから、祖敷さんとの距離がものすごく縮まりました」

もみじ市の出店が、ふたりの大きな転機となったのは言うまでもない。 

02

グッズを作る上で、根本さんの存在は必要不可欠だと祖敷さんは言う。

「フリーのイラストレーターになる前は、新聞社の広告局で働いていました。その時の習性といいますか、自分の描くイラストをディレクションするように見てしまうんです。仕事の依頼を受ける時も、イラスト部分がぽっかりと空いたラフが送られてきます。文字が横組だから顔の向きは左がいいとか、全体のバランスを考えて描くことが多いんです。だから、グッズを作るときも『文字とかのせなくて大丈夫? 』って心配して聞いたりしてました」 

03

なんとも控えめな祖敷さんの発言に根本さんはいつもこう話す。

「祖敷さんのイラストがいいんです。他は何もいらないんです。それだけでいきましょう!」

絵を描くことに真面目な祖敷さんと、その魅力を誰よりも理解している根本さん。このふたりだからこそ作り出せる世界観がそこにはある。 

04

「ここ最近、仕事で依頼があったイラストしか描いていなくて『これではいかん!』と思い、プライベートでも絵を描き始めたんです。その矢先に、今年のもみじ市出店の話をいただきました」

その絵を見せてもらった根本さんはすぐさま、こう答えた。
「すごくいいと思います。今回のグッズはこの絵を使いましょう」

オイルパステルを使って描いた、祖敷さんの絵をいくつか見せてもらった。風景、乗り物、建物、人物。新たに描かれたものには動物以外のものが多くあった。新しく生まれるグッズには、この中のどれかが使われるかもしれない。今あるグッズとはまるっきり違ったものがきっと生まれるんだ。私は、目撃者になった気がして鳥肌が立った。 

個性も役割も異なるふたりが一緒にものづくりをした時、それぞれがそれぞれの力を認め、高め合ったとき、奇跡が起こるのかもしれない。枠にとらわれることなく、自分の殻を破ってしまえるのは、ひとりじゃなく、ふたりだから。久々に制作するというグッズには、ふたりの奇跡がしっかりと刻まれているに違いない。 

【祖敷大輔さんと根本真路さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
イラストレーターの祖敷大輔とデザイナーの根本真路です。2011年から二人でグッズの制作を行っています。 

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
祖敷:白(絵を描くときに大切にしている色) 

根本:青(今年の気分) 

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
書き下ろしのイラストを使ったグッズを販売する予定です。紙もの雑貨以外にも、布を使ったアイテムも用意したいと思っています。もみじ市が、お披露目の場となるのでぜひ見に来てください。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、代々木八幡のあのパン屋さんですよ!

文●新居鮎美

Naoshi「キラキラ砂絵」

naoshi1The Honey Cafe -The butterfly girl-

今年のテーマが「カラフル」に決まった瞬間、真っ先に思い浮かべたのは彼女の作品だった。カラフルな砂を使い、個性的なキャラクター、世界を描きだす砂絵アーティストのNaoshiさん。

カラフルな砂とは対照的に、Naoshiさんのモチーフとなるキャラクターの表情は”真顔”が多い。

「笑顔の人はそれなりに描くけれど、やはり真顔の表情が好きだ。顔に出さずとも感情があふれてしまうこともあったりして、そんな不器用な感じがたまらなく好きである(例えば、悲しいのに悲しくないふりをしたり、嬉しいのに嬉しくないふりをしてみたり)。まぁ、自分自身は喜怒哀楽が隠しきれない人なので、作品とのつじつまが合わないのですが。そんなもんです」

Naoshiさんが日々まっすぐな言葉で日常を語るブログには、作品に込めた思いがこんな風に綴られていた。 

naoshi2満員タルト 

彼女との出会いは2年前のもみじ市に遡る。もみじ市は有志が集まってつくりあげるイベントで、中心となるメンバーは事務局と呼ばれ、その年のテーマや企画を決めたり、出店者さんを探したり。また、それぞれが出店者さんを“担当”し、取材に行き、いまみなさんが読んで下さっているブログを書き上げるのだ。3年前にはじめてもみじ市に足を運び、その翌年事務局に参加した私は、右も左も分からないことだらけ。それでも、自分が訪れたもみじ市で感じた高揚感を(秋晴れの下聞こえてくる音楽、子供の笑い声、ただよってくる美味しいものの匂い、キラキラ光る川面、走り抜けていく電車、会場中のすべての要素が溶け合い包み込む言いようのない幸福感)、奇跡の瞬間を、もっと多くの人に知ってほしい、届けたいと、活動に取り組んだ。

その中の大切な仕事のひとつが、新しい出店者さん探し。事務局の先輩たちが話す、「何度ももみじ市に参加してくれている方はまぎれもなくもみじ市に欠かせない大切な人たちなのだけど、初出店の人の存在も、もみじ市には欠かせないものなんだよね。その人たちとの新しい出会いが、出店者にもスタッフにも刺激を与えてくれるんだよ」という言葉に、わたしも新しい風を吹かせるお手伝いがしたいと声をかけた方が、Naoshiさんだった。

naoshi3Sweets Typhoon -食べちゃおう-

国内外で砂絵のワークショップや個展の開催をしていたNaoshiさんだが、当時は、もみじ市の存在は知らなかったという。そんな彼女に新米事務局の私が会いに行く。いま考えるとかなり周囲の方々をはらはらさせてしまったのではないだろうか。もみじ市を知らないNaoshiさんにその魅力をしっかりと伝えて、本気を出してもらいたい。Naoshiさんが全力で安心して参加できるようにサポートしたい。自分に課せられた任務に一気に高まる緊張と責任感。その時になってはじめて作家さんの担当をもたせてもらうことの重要さを痛感した。それでも、何より心強かったのは、幾度となく交わすメールのやり取りの中で常にポジティブな言葉を送ってくれ、実際にお会いした際にも、私のつたない説明を聞いて「やるからには全力でやりたいです」と言い切ってくれた彼女の一言だった。

Naoshi4Candy girls  -あめふるまち-

そして迎えた当日。これでもかというくらい強烈な日差しが照りつける中、Naoshiさんは終始笑顔で元気いっぱいにワークショップを行ってくれた。実は直前までアメリカで個展を開いていて帰国したばかり。十分な休みを取っていない状況での炎天下の作業。砂絵には決して向いているとは言えない屋外でのイベント。本番を迎えてどんな感想を抱いたのか、正直聞くのが怖い部分もあったのだが、もみじ市が終わったあと、Naoshiさんからもらったメールが、すべてを吹き飛ばしてくれた。

「正直準備の時間があまりにも短くて大慌てな部分もあったんですが、空間全体がハッピーに包まれていてもみじ市すごい!の一言でした!参加できて本当によかったです!お誘いありがとうございました!!」

naoshi5

naoshi62011年のもみじ市の様子

昨年、もみじ市は開催されなかった。それを、誰よりも惜しんでくれたのがNaoshiさんだ。実は今年の冬、NaoshiさんはLA(ロサンゼルス)へ留学したのだが、「もみじ市があるなら、参加してからLAへ行きたい」と、予定を調整しようとしてくれていたほど。先月行われた、もみじ市2013の決起大会(出店者とスタッフが集った会)の後のご自身のブログでは、こんなことを書いてくれている。

「2年前に初めて参加したとき、こんなお客さん・作家さん・事務局の方々、すべてがアットホームなイベントがあるのだろうか! と一緒にイベントに参加してきた姉と興奮気味に話したのを今でも覚えている。LAに行こうと決めたときも、もみじ市が終わってからにしよう! と思うほどであった(去年は結局開催されなかったのだけど)。決起大会で事務局の方が、もみじ市は世界一のイベントだと思っています、とおっしゃっておったが、その言葉は、大げさではなく本当にその通りだと思う。わたしももみじ市の一員として盛り上げられるよう、がんばります」

2年ぶりのもみじ市のテーマは「カラフル」。Naoshiさんの作品を見て欲しい。これ以上、彼女に相応しいテーマがあるだろうか?LAへの留学を経た彼女はますますパワーアップ、海外をはじめ活動の場所もかなり増えている。

「日本で、海外で、と特にこだわりはなく、お声をかけていただいた展示には、100%納得のいく作品を作ることを心がけています。特に海外の展示はお客さんの反応がわからないので、全ては作品次第。一期一会のチャンスを逃さぬように。という想いで制作しています。それでまた展示のお誘いやいいお話をもらえたら、やったー!となりますね。

あと、海外では”アーティスト”がひとつの職業としてきちんと評価されているのがいいなぁと感じました。語学学校で職業についての授業があったのですが、教科書に”医者” “弁護士” “先生”と代表的な職業が並ぶ中、”アーティスト”という文字を見つけた時は『うわぁっ!』と感激しました。(最後の方でしたが。笑)これは日本にはない感覚だなぁと思いますね。日本でも全力ですが、海外に向けても同じように全力で向かっていきたいです。」

活動の場所は関係ない。ひとりのアーティストとして制作を続ける彼女。強い意志のもと、活動の拠点はどんどん広がっている。イギリス発のブログで作品が紹介されたり、もみじ市の後には台北でのアートフェアが待っている。

Naoshi72013年3月にLAのQpop shop and gallryで開催された展示『Human Flower』

Naoshi82013年8月に台湾のKaohsiung Design Festival 2013 Leading Exhibitionsのイベントで開催された砂絵ワークショップ

グローバルに成長を続けるNaoshiさん。今回のもみじ市では「キラキラ砂絵」というタイトルで、事前予約なしで参加できるワークショップの開催を行ってくれます! Naoshiさんが事前に用意している数種類の絵柄の中から好きなものを選び、好きな色の砂を4種類選んでカラフルな作品を作ることができますよ。また当日は、新作のステッカーや砂絵キットの販売も。ワークショップ、物販以外のお楽しみも用意してくれているとのことなので、是非皆さんの目で確かめてくださいね。

そしてみなさん、この紹介記事のいちばん下にある、Naoshiさんからのメッセージ動画をぜひご覧下さい。絶対顔が引きつるからと、なんとか顔を出さないようにと練られた作戦の結果をぜひご覧いただきたいと思います。お面にあわせた服装を考え、撮影場所の下見までしてくれた人は、彼女をおいて他にはいません。やるなら徹底的に自分が納得できるまで。日本で、世界で、闘う砂絵アーティストNaoshiさんがお届けするカラフルな時間を、みなさまどうぞお楽しみに。

naoshi9花束サラリーマン -今すぐここを抜け出そう-

<Naoshi「キラキラ砂絵」のご案内>

開催日時:
10月19日(土)

①11:30~12:00
②12:10~12:40
③12:50~13:20
④14:00~14:30
⑤14:40~15:10
⑥15:20~15:50

10月20日(日)

①11:00~11:30
②11:40~12:10
③12:20~12:50
④13:30~14:00
⑤14:10~14:40
⑥14:50~15:20 

所要時間:20~30分
参加費:800円(当日のお支払い)
定員:各回12名
お申し込み方法:事前のお申込みなしでご参加いただけます。当日、ブースまで直接お越しください。 

【Naoshiさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
砂を使って絵を描いております。一コマ漫画みたいな絵だね。とよく言われます。作品展示やワークショップを通じて、砂絵の楽しさを広めるべく日々活動中です。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
黄色と黒ですかねぇ。前向きと言えば聞こえがいいのですが、『ま、いっか。』とすぐ切り替える(開き直る?)ところがあるので楽観的なイメージの色で黄色かなぁと。あと小さい頃からお笑いと漫画が大好きで、中でもシュールなブラックユーモアの世界観がたまらなく好きなので、そこは黒かなぁと思いました。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
もともとカラフルな絵を描いているのですが、至上最強のカラフルな空間づくりに挑戦したいです!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて続いてご紹介するのは、年代も国も問わず、自分たちが“かわいいな”と思った感覚だけを頼りに、商品を集めるお二人です。きっとあなたのお気に召す一品が見つけられるのではないでしょうか。

文●市川史織

柴田ケイコ×drank「柴田紙もの商店と古もの道具」

今年の夏、日本でいちばん暑かった高知県。太陽がさんさんと輝く高知県から、約12時間かけて、太陽のようなふたりがもみじ市にやってくる。イラストレーターの柴田ケイコさんと、drankの塚地久雄さんだ。

shibadra1

柴田ケイコさんは、私たち手紙社にとって特別な存在だ。例えば私たちが新しいイベントのイメージビジュアルを作ろうとするとき、例えば私たちが著書の挿絵を誰かに描いて欲しいとき、例えば私たちが新しいテキスタイルの生地をつくろうとするとき、イラストの描き手の候補として真っ先に名前が挙がる作家のひとりが、柴田さんだ。

実際、手紙社が主催するイベント「カフェ & ミュージックフェスティバル」のメインビジュアルを描いてくれたのは柴田さんだし(先月行われた「海のカフェフェス」のビジュアルも)、先月発売された「活版印刷の本」の挿絵を描いてくれたのは柴田さんだし、8月に発表した「手紙社テキスタイル」の生地のひとつをデザインしてくれたのも柴田さんだ。その他にも、カフェ手紙舎の珈琲豆の袋のイラストを描いてくれたり、年賀状替わりのポスターのイラストを描いてくれたり。手紙社のメンバーはみな、“柴田さんにお願いしたくてしょうがない”のだ。

shibadra2

その理由は、ふたつある。まずひとつは、なんと言っても柴田さんが描くイラストが素晴らしいこと。かわいいのは当たり前。アイディアとユーモアがあり、一度そのイラストを見た人の心をとらえて離さない。しかし、どれだけかわいくてユーモアがあっても、そのイラストが素晴らしいとは限らない。柴田さんのイラストは、ビシッと“決まっている”のだ。グラフィカルデザインとしてバランスが良く、色の配色が美しい。要は、とても力があるイラストなのだ。

shibadra3

柴田さんのもうひとつの魅力は、その、太陽のような人柄だ。

「来ちゃいましたー!」

いつものように甲高い声とともに、柴田さんが手紙舎に来てくれたのは今年の4月のこと。「紙ものまつり」というイベントに合わせて、和紙でだるまを作るワークショップを行うために、遠く高知からやって来てくれたのだ。東京までの“足”は夜行バス。早朝東京に着き、そのまま大きなリュックを背負って手紙舎に来てくれて、この元気。いつも周りを明るく照らしてくれる柴田さんのことが、私たちは大好きなのだ。

SONY DSC

柴田さんがみんなを明るく照らす夏の太陽なら、drankの塚地久雄さんは、春の太陽だ。塚地さんと話していると、春の日だまりの中にいるような気分になる。

塚地さんと初めて会ったのは、昨年12月のこと。「紙ものまつり in 高知」というイベントのため、高知県いの町の「いの町紙の博物館」を訪れたときだ。手紙舎が販売するたくさんの“紙もの”を車に積んで高知まで行ったのだが、そのとき、それらをディスプレイするための什器を、それはそれはたくさん貸してくれたのが塚地さんだった。什器と言ってもただの什器ではない。drankの商品である、古き美しきものたちだ。

SONY DSC

聞けばdrankは、店を持たない古道具店で、本当にごくたまに、こういったイベントのときだけ古道具を販売するのだそう。それにしても、である。「紙ものまつり in 高知」にやってくる人たちや関係者から、とてもよく声をかけられる。実は塚地さんはもう7年も前からこのスタイルで営んでおり、高知のクリエイターの間では、「良い古道具を手に入れるならdrankの塚地さんから」というのが浸透しているという。

SONY DSC

実は私たちも、「紙ものまつり in 高知」が終わり東京に帰る時、塚地さんからたくさんの古道具を買った。高知に来る時より荷物が多くなったのではないかと思うくらい。なかには、塚地さんが自ら修理をしてアレンジしたものもある。

塚地さんが高知のクリエイターの方々から声をかけられる理由は、彼が素晴らしい古道具を取り扱っているから、だけではない。4日間のイベント期間中一緒にいてわかったことがある。面倒見が良いのだ。それが押し付けがましいものではなく、さりげない感じ。例えば私が新しい商品をディスプレイしようとして、それを立てかけるものがなくてちょっと困っていると、「これとかどうですか」と、小さな箱を貸してくれる感じ。いつもニコニコ。後ろからさりげなくみんなを見守っている塚地さんは、春の穏やかな太陽のようなのだ。

夏の太陽と春の太陽、柴田ケイコさんと塚地久雄さんがタッグを組んで、もみじ市へやって来る。塚地さんの麗しい古道具をディスプレイにして、柴田さんの美しくユニークな作品が並ぶ。もちろん、古道具は購入可能なものばかりだ。高知の人が聞いたら、「ちょっとそれは贅沢すぎるタッグでは?」というのではないだろうか。今回だけは、その羨望を甘んじて受けよう。

高知県のふたつの太陽が、2日間限りのタッグチームを結成する。舞台は、もみじ市。会場は、秋の太陽が降り注ぐ、多摩川河川敷だ。

【柴田ケイコ×drank 柴田ケイコさんと塚地久雄さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
イラストレーターの柴田ケイコです。広告全般、出版物などのイラストを中心に活動中。ジャンルに囚われず、自分の中のイメージ感を表現し制作する事を大切にしています。土佐和紙を使用した立体物や、紙もの雑貨にも展開中です。(柴田)

 高知のdrankです。(塚地)

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
白、水色、黄色、赤(柴田)

浅葱色 (塚地)

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
土佐和紙を使った立体物や小物、紙ものグッズを販売します。私が描くイラストそのものは結構カラフルなので、肩の力を抜いていつもどおりの私らしいイラストを使った紙グッズをお見せします。楽しい、ワクワク、ドキドキ、うっとり、ゆったりが沢山つまった作り手たちのもみじ市をぜひ堪能してください。皆さんとお会いでいるのを楽しみにしています! (柴田)

今回は、テーブル、椅子、什器を若干作る予定です。私は本来地味ですが、せっかくなのでカラフルな事を考えたいと思っています。 (塚地)

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてはゆらゆら揺れるハンモックでみんなを癒やすあの人たちの登場ですよ!

文●市川史織

すげさわかよと木下綾乃「絵描きのこまもの店」(19日)

「もみじ市では、他ではやれないことをやりたいなぁっていつも思う」

「ふたりで一緒にできるから、それぞれやりたいことをアイデア出して、ふだんできないことをやるのがたのしいよね」

すげさわかよさんと木下綾乃さんとお話をしていると、晴れた日にピクニックに来たような気分になる。それはおふたりの柔らかくて優しい雰囲気のせいなのか、おふたりが描く暖かみがあってかわいらしいイラストのせいなのか。お話を伺った日はあいにくの雨空だったけど、それでもなんだか、ぱっと明るくて暖かくて嬉しい気持ちになった。

①グリーティングカード(すげさわさん)_1

すげさわさんと木下さんは、仲良しイラストレーター。すげさわさんは柔らかい線とカラフルな色使いで、北欧や東欧をイメージさせるようなぬくもりのあるイラストが印象的。もともと旅行が好きということもあって、外国っぽい建物や風景を描くのが好きなのだとか。今回作っていただいたお面も、どこかの国の民族衣装をイメージするようなカラフルでかわいいもの。

②木下さん_1

木下さんは、インクの線が印象的なイラストで、クマや男の子、そしておじさん(!)をモチーフにすることが多いのだとか。かわいらしいイラストのイメージの木下さん、でも実はおじさんっぽい物が好きなのだそうで、イラストを書いているとだんだん可愛くなってくるからせめてモチーフをおじさんとか変なものにしないと、と思っているのだそう。そんなおふたり、普段はそれぞれ個人でお仕事をされているけれど、もみじ市となるといつもふたりで仲良く駆けつけてくれる。

前回のもみじ市は「のはらのこまもの店」、その前は「紙と木のこまもの店」、と毎回「~のこまもの店」という名前で出店するおふたり、今年は「絵描きのこまもの店」での出店となる。そしてまさに「絵描き」らしく、おふたりのイラストを使ったもみじ市限定のギフトボックスをご用意いただけるのだとか! しかも内容がまた魅力的。おふたりのイラストを使った包装紙や、タグカードなどがセットになるのだそう。これはまさに、もみじ市ならでは! わたしもこっそり覗きに行ってしまいたい! 

③ガーランド風さんかくカード_すげさわさん_2

他にも、今回のカラフルというテーマに合わせて、色々な物を持ってきてくださる予定。例えば、すげさわさんはパーティーなどで見かけるガーランド。手描きで作られたガーランドは、ひとつならメッセージカードに使えて、いくつか並べると自分で好きな組み合わせができるカラフルなガーランドに。しかもその場でリクエストに応えてイラストも描いてくださるそう! 木下さんは、クマの絵のポストカードのシリーズ。クマが持っている本の色が全部異なり、全部で16色もあるのだとか。虹を超えるカラフルさなのだ。

④木下さん_2

そして注目なのが、木下さんによるイラストの描きおろし! 以前のもみじ市でお客さんの似顔絵を描いたのが楽しかったそうで、今回も3組限定の予約制で、オーダーメイドでイラストを描いてくれるそう。オーダーメイドでイラストを描くというのは、普段やっていないそうなので、まさにもみじ市ならでは。木下さんと相談をしながら描いてほしい絵柄を決められるそうなので、とびっきりの想い出ができそう(詳細は下記をご覧ください)。

「描いていると、ちょっと人だかりができてうれしいよね」(木下さん)

「ふだんは家でひとりぼっちで絵を描いているから、人に会ってリクエストを聞いて描けるのがたのしい」(すげさわさん)

もみじ市ではどんどん話しかけてほしいそう。もともと知っていた方、たまたま通りかかって初めて目にしてくださる方、そしてお子さん連れや家族で来てくださる方、ふだんなかなか話す機会がない方、そんなさまざまなお客さまとの会話ももみじ市の楽しみのひとつなのだそう。

河原で開かれるこまもの店は、まさにおふたりの雰囲気にぴったり。たくさんのカラフルなこまものが河原に並ぶ姿は考えただけでもワクワク。おふたりはまるで、河原に咲くカラフルな花の周りをとぶチョウチョウのようだと私は思う。かわいいものの周りをフワフワ、楽しい会話に花を咲かせながらフワフワ。ぜひあなたも一緒に、楽しい会話に花を咲かせてくださいね。

なお、出店日は19日(土)の1日のみとなるので、日にちに気を付けてお越しくださいませ。

<木下綾乃さんイラストオーダーのご案内>

●描くイラストは下記の2種類からお選びいただけます。

① クリスマスカード、年賀状などはがきに使える大きめのイラスト=12,000円…1名さま
② フレーム切手、名刺、はんこに使える小さなイラスト=3,500円…2名さま

●描いてほしいものを事前にメールでご応募いただき、その中から抽選にて3名さまを選ばせていただきます。応募方法は下記をご確認ください。

●カラー/モノクロどちらでも同じ値段となります。

●お打ち合わせ時間は下記の通りになります。ご応募の際はくれぐれもご都合をお確かめください。お打ち合わせにかかる時間は1組 10~15分程度となります。

 10月19日(土)13:15~①大きめイラスト
 10月19日(土)14:00~②小さなイラスト
 10月19日(土)15:00~②小さなイラスト

●イラストの納品は出来次第で、遅くても11月10日までにはお送りします。

●応募方法
件名を「木下綾乃イラストオーダー」とし、ご希望のイラストサイズ(①or②)、描いてほしいもの、ご希望のお打ちあわせ時間(小さなイラストの場合)、お名前、お電話番号、メールアドレスを明記の上、【workshop03@momijiichi.com】へメールでご連絡ください。

●応募締切日
締切日を過ぎましたので応募を締め切らせていただきました。たくさんのご応募をありがとうございました。

【すげさわかよさんと木下綾乃さんに聞きました】

Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
イラストレーターすげさわ かよです。旅や手作りをテーマにした本を作ったり、雑誌などでイラストを描いています。趣味は旅行で、1歳になったばかりの娘がいます。(すげさわ)

イラストレーターの木下綾乃です。雑誌や書籍の挿絵のほか、手紙や文房具の本を執筆しています。(木下)

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
むらさき色かな。好きな色で、よく身に着けているので。服やバッグ、娘のベビーカーまで、むらさき色ばかり選んでしまいます。(すげさわ)

グレーかな? 白に憧れつつ、なれない感じです。(木下)

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
ひとつずつ手作りで、グリーティングカードやポストカードをいろいろ作る予定です。

まずは、三角形の手描きのカード、「ガーランド風さんかくカード」。一枚でカードとして使ったり、いくつかひもにつなげてガーランドにして飾ったりしてください。

ふたつめは、「ポップアップ・グリーティングカード」。お誕生日やご出産おめでとう、メリークリスマスなどいろんな種類のカードです。お気に入りを選んで、大切な方へ贈ってください!

「カラフル」にちなんで、木下さんとふたりで作る作品は…、一個ずつテーマカラーを決めて絵を描いた、限定10色の小さな箱!!中には、タグカードとふたりのイラスト入り包装紙が入っています。カラフルに箱が並ぶようすを、ぜひ見に来てください♪ もみじ市当日は、その場でご希望のイラストを描くこともしますので、ぜひお声をかけてくださいね!(すげさわ)

今回は予約制で、イラストを描きおろししたいと思います。もみじ市でお打ちあわせ~後日納品というかたちです。出来上がったイラストは、クリスマスカードや年賀状、名刺、フレーム切手、などなどお好きに使ってください。雑貨は、シロクマと、「ポス山ポス夫」というなまけものの郵便屋さんのカレンダー&ポストカードをつくっています。ポス夫はフレーム切手も!

すげさわさんとのコラボは、ギフトボックスです! 手描きのイラストが描かれた箱の中に、ギフトタグが3つ入っています。それぞれ、好きな色をテーマにつくったので、ずらーっと並んだらカラフルになると思います。大切な方へプレゼントをわたすときや、宝箱としてつかってくださいね。(木下)

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

続いてご紹介するのは、ほっこり愛らしい人形を作るあの方です。今回もニードルパンチで作るキュートな動物を披露してくれますよ。

文●上村明菜

堀口尚子「よもやま店」(19日)

手紙舎 2nd STORYの雑貨スタッフふたりに、「手紙舎の歴史上、最も売れた雑貨を3つ挙げよ」という質問をしたら、おそらくふたりとも、この商品を3つのうちのひとつに入れるのではないか。堀口尚子さんの包装紙「tutumu+」。

hori13枚で1セットの「tutumu+」。もみじ市では組み合わせを新しくして販売する予定

A3サイズの3枚の包装紙がくるっと丸められ、薄い茶色の紙でパッケージされ、タグがつけられた商品(パッケージもタグも、堀口さん本人の手によるもの)。手紙舎で人気があるのはもちろん、大阪・京都・高知で行った紙ものまつりのときも完売した商品。3枚の包装紙は、堀口さんが切り絵で“描いた”絵をレトロ印刷で印刷したもの。大きな猫、植物、“形”をモチーフにした絵は、圧倒的な存在感があり、ロマンチックで、ノスタルジックで、極めて自由で、だけどバランスが絶妙に取れている描線によって描かれている。そして、レトロ印刷独特の鮮やかな色彩。

hori2毎年作っている「ieカレンダー」。製本も自分の手で

レトロ印刷で印刷物を制作したことがある人ならおわかりかと思うが、入稿(印刷の元となる版下データやイラストを印刷所に渡すこと)する際、イラストの原画をそのまま渡したり、スキャンしたデータをそのまま渡せばいいわけではなく、色の指定をしなければならない。例えば、堀口さんの植物の包装紙の場合7色のインクを使っているわけだが、入稿するイラストは黒一色のもので、それに、花の部分は青のインク、茎と葉っぱの部分は赤のインクと、7色分指定していくわけだ。言ってみれば、色をオーダーメイドするようなもので、実際の色味は印刷物が納品されるまでわからない(特にレトロ印刷の場合、完成のイメージを想像するのは難しい)。印刷の出来上がりをイメージするために、入稿前に、試しに色付けをしたりするのだろうか?

「まったくしないんですよね。自分の頭の中でイメージするだけ。最初はインクの濃淡がどのように出るかわからなかったり。でも、そういうのも含めて、面白い。自分がイメージしたものがどのように出来上がってくるのか、という楽しさがありますね」

hori3段ボールをキャンバスにしたコラージュ作品

「偶然性」とどう向き合うか、というのは作り手にとって重要だ。それを愛せる人と、愛せない人がいる。堀口さんは間違いなく前者だ。例えば、段ボールをキャンバスにして作品を作ってみようと思い立ったとき、まずはその上に色紙を置いてみる。自作のゴム判をポンと押してみる。そこからイメージが広がっていく。下書きは一切しない。もちろん、“描けない時”もある。そういうときはしばらく放っておく。その後しばらくして、何気なくいたずら描きをしたときに、良いものが描けたりする。

堀口尚子の強さはここにある。自由なのだ。表現というものに対して純粋に向き合いながら、だけどそれにとらわれてはいない。つくりたいものを、つくる。つくりたいから、つくる。彼女と話しているときに、「仕事だからこういうことをやっている」という雰囲気は微塵も感じられない。

hori4手紙社の著作「レトロ印刷の本」のカバーは、堀口さんのイラストです

「絵だけを描いてゆく、とも決めてないですね。この素材だったらこういう表現方法があるかな、とか。この色だったらこういう素材を使ったら面白いかな、とか、自由でありたいですね」

hori5絵だけでなく編み物も。隠れた人気のムササビマフラー

作り手として自分を“何か”に例えるなら? という質問を堀口さんにしたことがある。
「水」
と彼女は答えた。
「形が定まっていない感じ。何にでも、注いだものにちゃんと収まる感じ。かたまるけど、また戻る。決まっていない感じが好き」

そんな堀口さんに今年、“表現の神様”が降りて来た。
「テキスタイルだ! と思ったんです。これ、私やりたいって。今までなんで気づかなかったんだろうって」
信じられないような本当の話なのだが、まさに堀口さんがそう思ったタイミングで、フィンランドのテキスタイルブランド・カウニステ社から一本のメールが来る。贈答用の包装紙に用いる図案を考えて欲しいと。堀口さんの答えは、もちろん「Kyllä!」(フィンランド語で「yes」)。堀口さんが描いた包装紙は、近々本国でお目見えする予定。

カウニステ以外にも、ヨーロッパの人々から連絡をもらうことが多い。つい先日は、デンマークの方から、どうしてもポストカードの図案として使わせて欲しいという連絡が来た。才能のある人は“世界”が放っておかないのだ。

さて、はじめに紹介した包装紙「tutumu+」。包装紙と言いながらも、それを包装紙として使っている、という声はほとんど聞かない。購入したお客様に聞くと、圧倒的に多いのが「部屋に飾ります」という答え。もちろん、それは自由だ。自由な表現で作られた作品が作家の手を離れたとき、それは更なる自由の海へと旅立つ。堀口尚子というよどみなく流れる水は、多摩川へ、そして世界中の海へ、何にも邪魔されることなく、自由に流れてゆくのだ。

【堀口尚子さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
表現方法にこだわらず何でも創ってみるをモットーに活動中。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
玉虫色。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
「tutumu+」「ieカレンダー2014」などの「紙もの」と、「ことはな」という花の種とことばを合わせた楽しいくじ引きをご用意しております。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

続いてご紹介するのは、栃木の生んだ伝説のフレンチベジタリアン! もみじ市のスペシャリテ・にんじんフライが帰ってきます!!

文●北島勲

イシイリョウコ「不思議の人形とカラフルな小さなもの」

「キタジマさん、あのとき、怒ってませんでした?」
イシイリョウコさんが言う“あのとき”とは、いまから8年前の、あのときだ。

ishii1水玉の少女。こんな子がそばいにいたら、毎日はきっと幸せ。
頭の“彼”は、取り外し可能

当時ぼくは「カメラ日和」という雑誌を立ち上げたばかりで、そのなかで写真を使った雑貨を作ってくれる作家さんを探していた。そして、イシイさんにファーストコンタクトをとったわけだ。今考えてみると、イシイさんに写真ありきの雑貨制作を依頼するのは失礼も甚だしいのだけれど、とにかく、イシイさんと何か仕事をしたかった。イシイリョウコという人に会ってみたかった。言って見れば、その目的のために、自分がつくっている雑誌を利用したのだ(編集者とはそういうものなのです)。

ishii2頭にトリを乗せた少女。スカートの柄が素敵。まさにカラフル!

あの頃、イシイさんの作品とその存在を知ったばかりで、初めて彼女がつくる人形を見たときに、「なんという奇妙な作品なのだ」と思った。かわいい、という要素も、ある。寂しい、という要素も、ある。しかしやはり、奇妙なのだ。ストレンジで、ミステリアスなのだ。そのオリジナリティと魅力は強烈で、この“才能”を自分の眼で見てみたい、と思った。

怒っているように見えたのは間違いなく緊張していたからで、あのころのぼくはイシイさんのような作家さんとはあまりお付き合いがなく、あれだけの才能を持った人で、あのような奇妙なものを作る人だ、いかにもアーティスト風な、気取った人だったらどうしようと、会う前からとても構えていたのだ。

ishii3船ボーイ! 手に持っているのは冒険小説か、宝島の地図か

しかしその期待(?)は、序盤に裏切られた。「朗らか」という言葉はこの人のためにあるのではないか。とにかく、よく、笑う。ぼくの周りにこんなに笑う人はいないのでは? と思うくらいよく笑う。だから次第にこちらも愉快になって来る。都合、みんなイシイさんのことを好きになってしまう。あんなに素敵なものを作っている人がこんなにも朗らかな人なのだ。好きにならないわけはない。

ishii4小さなトリオ。左の少女に注目。体が富士山、頭も富士山!
おめでたいにも程があります

あれから8年。今回初めてイシイさんを担当することになり(もみじ市の出店者さんひとりひとりに、事務局のスタッフが「担当」としてつきます)、手紙舎でインタビューを行った。こんなにきちんと話をしたことはこの8年の間にはなく、初めて知ることもあった。イシイさんが美大の油絵科に在籍していたこと。初めて自分の作品を売ったのは大学の学園祭で、その作品とは手描きの(!)ポストカードだったこと。一社だけ就職活動をしたこと。しかし、就職はせずに、卒業してすぐに作家活動を始めたこと。ほかにもいろんな話をする中で印象的だったのは、今ではイシイさんの代名詞ともなっている「人形」が生まれた背景。それは、大学を卒業した年の8月、初めて個展を行ったときのこと。

ishii5イシイさんの作品には珍しい、粘土でつくったミニミニブローチ。
その右はリング

「“手に持つ絵”が作れたら面白いなって。裁縫とかは苦手だったのですが、見よう見まねで人形を作って、これに絵をつけたら楽しいかもしれない、と思いました。おそるおそるギャラリーの人に、こんなの作ってみたんですけどって見せたら、面白い! と言って下さって。初めて人形を展示しました」
イシイさんは続ける。
「人形を作るという感覚とはちょっと違います。人形作家の方は他にもたくさんいますし、人形自体にはさほど興味がないんです。人形を作りたいのではないんですよね。普通の絵だったら壁に飾るだけですが、人形だったらテーブルの上に置いても良いし、天井から吊るしても良いし、鞄にもかけられる。やっぱり、手に持つ絵ですね」

ishii6天井からも吊るせる“絵”。やっぱりすごい才能だなぁ、と思う

つまり、イシイさんにとっては、人形は絵である、と。人形に絵をつけたかったわけではない。演出家イシイリョウコは、絵を手で持てるようにするために、人形という名の役者をキャスティングしたのだ。

ishii7今年のもみじ市の目玉。靴作家UZURAさんとのコラボ作品。
乙女ならずとも、おじさんにもたまりません。欲しすぎます

手紙舎の雑貨売り場に、「てがみバッグさん」という人形が“いる”。あるときはポストカードの棚にまぎれてさりげなく、あるときはテーブルの上で他を寄せ付けない感じで、あるときはレジの横でここが自分の居場所とでも言いたげな顔で。これは、手紙舎ができた4年前に、イシイさんがプレゼントしてくれたもので、この4年間、手紙舎を見続けてくれた人形だ。不思議なもので、彼女の瞳は、あるときは嬉しそうに見えるし、あるときは悲しそうに見える。恋のはじめの少女のような表情でもあり、伴侶を失った老婆のような表情でもある。

ishii_tegamibagてがみバッグさん。その瞳が見つめるのは、手紙社の未来…?

インタビューが終わった。階段を下りるイシイさんを見送り、事務所へ戻ろうとするとき、レジの横の壁に寄りかかっているてがみバッグさんと目が合った。しょうがない、彼女を手に取ると、その瞳は何か言いたげだ。
「イシイリョウコの作品を、君は理解できたのかな?」

理解、ね。残念ながら、ぼくはイシイさんの作品を理解できそうもないな。でも、感じることはできる。イシイさんが描く絵は、美しくて、可笑しい。優しくて、厳しい。喜びに溢れ、悲しみに満ちている。これは疑いようもない、確かな感覚だ。そしてそれは、まるで人生そのものだ。ストレンジでミステリアスなサムシングに、ぼくたちの人生は彩られているんだ。

【イシイリョウコさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
ちくちくと手縫いで作る一点ものの人形作品や絵など、 あれこれと制作しております、イシイリョウコです。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
赤と紺、赤と緑、この組み合わせが不動の好きな色です。 反対色のような色合い、自分の性格もそうなのかもしれません…。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
元気で楽しくなれるカラフルな一点ものの人形作品や、 お出掛けのお供にして頂けたら嬉しい小さな人形のブローチなどのアクセサリー、 石粉粘土を使った作品の他、紙ものなど新作をあれこれとご覧頂ける予定です。 また、今回はなんとUZURAさんとのスペシャルなコラボをさせて頂きます! UZURAさんの素敵な靴がクオリティそのままで小さく小さくなって、 小さな人形たちの棲みかに!? もみじ市限定、数量限定の作品となりますので、ぜひぜひご覧下さいませ♪

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いては、大阪よりレトロモダンな雑貨を作る彼女の登場です! 懐かしく、妖しく、だけどたまらなく愛らしい古い図柄の並ぶお店が、河川敷に開店します。

文●北島勲

ニシワキタダシ「ポストカードといろいろ」

彼の描くキャラクターは、なんだかとんでもないことをしていたり、言っているのに、思わずふふふっと頬を緩めてなごんでしまうのはなぜでしょう。そんな、全てを許してしまえる絶妙な“空気感”を描くイラストレーター、ニシワキタダシさんのご紹介です。

「なんともいえない」

「昔、求人誌の専属イラストレーターをしていて、そのときに笑顔のイラストをたくさん描いていたんです。そのときの反動で、今は笑顔のイラストが少ないかもしれませんね」

ニシワキタダシさんのイラストを見ると、思わず頬が緩んでしまうものだから、なぜかニシワキさんの描くキャラクターもニコニコしたものが多いという印象を持っていました。展示会のたびに作っているというポストカードだって、どれも鮮やかでかわいくて楽しいものばかりだから、「まさかぁ」と思いつつ、改めて作品を見てみると……

PHOTO1

あれ? 笑顔はおろか、表情がない……。おもわず「どうしたの?」と話しかけたくなる表情のこどもやおじさんやどうぶつや……えーっと、謎の生命体たち。熱心に取り組んでいるような……でも、なんとなーくやらされているような。困っているような……でも、何か達観したような。考えはじめると、頭の中が不思議でいっぱいになって気になってしまいます。ニシワキさんの作品から沸き上がるこの気持ちはなんだろう? 思春期とはちがう、心のざわつき。ただ間違いなくいえる一言……それは、「なんともいえない」。

「なんともいえない」かけ算の使い手

そんな「なんともいえない」イラストたちはニシワキさんの言葉を纏うことでさらにパワーアップして1コマまんがに変身します。関西のことば約200語を、ゆるくてクスッと笑えるイラストで解説した大人気の書籍「かんさい絵ことば辞典」も、元を辿れば自身のwebサイトで定期的に公開していた1コマまんがが原点です。その後に出版された『あたらしいことわざ絵辞典』も『日々かるたブック』も、ニシワキさんのイラストと言葉で生み出された1コマが満載です。このイラストと言葉の組み合わせが絶妙で、例えば「かわいらしいサル×言葉=とてもしらじらしいサル」になったりと、パッと見の印象とのギャップがたまらなく、これまた「なんともいえない」気持ちになるのです。このかけ算を使わせたらニシワキさんの右に出るイラストレーターはいないのではないでしょうか。

PHOTO2

「なんともいえない」をなんとかいいたい

あまりにも「なんともいえない」気持ちになってしまい、「なんともいえない」をなんとかいいたくなってしまった私は、ついに思い切って「ニシワキさんの頭の中を見せてください」とご本人に頼んでみちゃいました。そんなリクエストを受けてニシワキさんが用意してくださったのは、A4のコピー用紙の束。「いつもこれで考えているんです」と広げられた用紙を見てびっくりしました。謎のキャラクターのスケッチでいっぱいなのかな、と思って覗いてみると、そこにはイラストのようなやさしいタッチでスラスラと言葉がたくさん書いてあり、スケッチは少しだけだったのです。

「『かんさい絵ことば辞典』を出してから、言葉を添えたイラストのお仕事をいただくことが増えたんです。まず言葉で書いてみて、良さそうだなと思ったものを描いてみます。なので、実際にイラストを描く時間より、言葉を書いている時間の方が長いですね」

ふっと思いついた言葉から着想してイラストへと広がって行くニシワキさんの世界は、ひょっとしたら言葉を思いついたニシワキさんすらわからない未知なものなのかもしれません。クスッと笑えてクセになる予測不能なニシワキワールドにますます心奪われてしまいました。

結局、「なんともいえない」については、なんともいえないけど、この心のざわつきのことを人は「虜」っていうのかも知れません。みなさんも是非、ニシワキワールドに触れてください。ひとたびクスっときたら、それは、虜になっちゃった証拠です。

【ニシワキタダシさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
イラストレーターのニシワキタダシと申します。
なんともいえないかんじの絵を描くのがすきです。
「もみじ市」への参加は二回目になります。
二回目なので、当日もそれほど緊張せずにブースに立てているのではないでしょうか。もし緊張していても、二日間出店するので二日目の終わり頃には、もう緊張していないはずです。よろしくお願いします。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
黄色でしょうか。色に例えるとというより、好きな色かもしれません。小さい頃は青が好きだったんですが、大人(20歳頃)になったら黄色が好きになっていました。この流れで、もし20年くらいごとに好きな色が変わるとしたら、あと何年かで好きな色が変わるかもしれません。そんな流れに負けず、黄色が好きでいたいです。 

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
日頃から作っているポストカードをメインに持っていこうと思っています。新作やテーマ「カラフル」に合わせた作品もあたらしくつくることができればいいのになぁと思っているところです。『かんさい絵ことば辞典』などの著書本も販売予定です。本の中にイラストも描かせてもらうので気軽に声をかけてくださいね。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、結城市にある美しすぎる雑貨店。異国情緒溢れるお店が河川敷にやってきます。

文●小木曽元哉