bocca「陶木」

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拝啓:山口佳子さま

佳子さんと初めて挨拶をしたのは、たしかちょうど2年前、2011年もみじ市の時でした。kata kataが描いてくれたメインビジュアルの富士山を、立体にして、木でつくって持って来てくれたときでしたね。その前にも、もみじ市で何度か顔を合わせているかもしれませんが、初めてきちんと挨拶したのはあの時だったと思います。

それから、佳子さんとは頻繁に顔を合わせることになりましたね。雑貨店で使う什器をつくったり、つつじヶ丘店の机をつくったりという細かい仕事から、手紙社のふたつ目のお店である手紙舎 2nd STORYをつくるという大きな仕事まで、どんな仕事でもお任せできてしまうとても頼りになる存在です。東京蚤の市では毎回、古材を使ったワークショップを考えてくれて、普段はノコギリを握ることも無いような女性や子どもが楽しんで工作をする風景は、あのイベントの名物になりつつあるのではないでしょうか。

以前、一緒にお昼を食べていた時、「カフェをやるのが夢なんだよね」と話してくれたこと憶えていますか? 佳子さんと会うと、よくその時のことを思い出します。

2nd STORYをパートナーの前川さんとふたりでつくっている背中をみながら、いつか自分がつくるお店を思い描きながらつくってくれているのかな、なんてことを思っていました。

僕たちにとって、とても思い入れのある2nd STORYですが、佳子さんがつくってくれたカウンターは、その中でも特に僕が大好きな場所です。点灯式の日、カウンターに座って前川さんとビールを飲みながら、佳子さんが愛おしそうに座っている姿をみて、僕はなんだか心が暖かくなりました。

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今回のもみじ市では仲間である、水口比佐子さん、吉越佐知子さん、松岡良美さんと一緒に女性4人で「bocca」というユニットを結成して、出店してくださるのですよね。

水口さんは、吉越さんと一緒にフォルツァートという会社をやっていて、そこで造形の仕事だったり、陶のものを焼いていたり、お菓子を作っていたりと幅広く活動されている方でしたね。例の富士山の上に乗っているスエヒロガリーノというキャラクターをつくってくれたのも水口さんなのですよね。発泡スチロールを使って見事なまでに、kata kataの絵に描かれていたスエヒロガリーノが立体になっていて、思わずみんなで歓声を上げたものです。

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もみじ市では、水口さんと吉越さんでカラフルな陶のものをつくり、佳子さんと松岡さんで手づくりの木のものを販売したり、木工のワークショップをやったりと実にいろいろなことを企画してくれていますよね。そうだ、それとは別に、事務局からお願いしたあの件もあるんでしたね。楽しみだなぁ。

取材に訪れたとき、仲間と一緒に笑ったり、冗談を言ってる佳子さんがとても自然で、楽しそうで、印象的でした。佳子さんが心を許した仲間といる姿を見るのは初めてで、とても新鮮だったのです。そんな様子を見て、boccaはとても愉快で楽しいブースを作って、もみじ市を盛り上げてくれると確信しました。

佳子さん、いつもありがとう。お世話になっているのに普段はなかなか面と向かってお礼を伝えることもできていなかったから、こうして機会がつくれたことがうれしいです。もみじ市、楽しみにしていますね。boccaのみなさん、どうぞよろしくお願いします。

敬具

<bocca「カラフル木っ端を使った木工ワークショップ」のご案内>

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開催日時:
 10月19日(土)11:30〜15:00
 10月20日(日)11:00〜14:30

参加費:300円(当日のお支払い)
定員:材料がなくなり次第終了
お申し込み方法:事前のお申し込みなしでご参加いただけます。

【boccaのみなさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
ものづくりに興味があった私たちはそれぞれに違う分野の仕事をしてまいりました。あるとき、お互いのしたい事でコラボができたら楽しいのでは? と言う誰かの提案に皆がうなずき、数年後現実になった次第です。自分たちが楽しもう! のコラボですが気に入っていただけたら幸いです。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
山口:黃色
水口:だいだい色
吉越:透明
松岡:青

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
いろいろな木で作ったお皿や小さなイス、お膳と、陶で作った小物やオブジェを合わせて、カラフルなブースを作りたいと思ってます。
あとカラフルに色をぬった木で誰でも簡単に作れる表札や小物の工作ができるワークショップをします。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは9回を重ねるもみじ市の歴史の中でも初めてとなる“漆”の作家。淡く輝く宝石のような作品が並びます。

文●藤枝大裕

kata kata「型染め・注染・プリント」

松永武さんと高井知絵さんによる型染め・注染のユニット「kata kata」。手ぬぐいをはじめとして、風呂敷、日傘、クッションなどのテキスタイルにまつわる作品を作っている。第1回のもみじ市から参加してくれているふたりは、今ではすっかりもみじ市の顔。今年のもみじ市で前回に引き続きkata kataを担当させてもらうことになった私のもとに、知絵さんからこんなメールが届いた。

「前回のもみじ市ブログを改めて読んだよ。私たちは、上手く言葉にできないからモノを作っている気がするのだけれど、こうやって力強く、完結に言葉に変えてくれるから、なんだか自信をもってもみじ市に参加できるし、kata kataとはこうなんだ! ってことを気づかせてもらってます。ありがとう」

敬愛してやまない一流の作り手が集うもみじ市において、私たち事務局メンバーが担ういちばんの大仕事は、作り手の想いや作品の素晴らしさをより多くの人に伝えるために“ことば”で表現すること。あえて“ことば”にしなくても作品をみればその素晴らしさは一目瞭然で、作品自体がその想いを物語っているのに、それを私の拙い言葉で表現することに、どこか申し訳ない気持ちを抱えていたところもあった。けれど、決して上手ではなくても、“ことば”でしか伝えられない側面や想いがある。だからこそ私たちの役割があって、これこそがもみじ市なのだと改めて気づかされ、背中を押してくれたメールだった。とてもとても嬉しくて、同時に背筋がしゃきっと伸びた。

だから今回も、もみじ市にとって大切なkata kataを、“ことば” で紹介させていただきます。どうぞこの機会に、作品の向こう側にあるおふたりの顔を、想いを、ちょっとだけ覗いてみてください。 

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 kata kataは、“静と動”

“静”は、武さん。「今回はこれに挑戦しよう!」と明確な目的意識を持ち、その姿勢は決してぐらつかない。少しずつ書き溜めたスケッチや断片的な落書きから、その時作りたいモチーフを選ぶ。それはヘビだったり、オオカミだったり、クジラだったり。自分が納得出来るまでじっくりと向き合って完成するデザインは、繊細だけど力強い直線で構成されている。静かで、美しい。

武さんと対照的な知絵さんは“動”。くるくると変わる彼女の表情のように、知絵さんのデザインはとても賑やか。描きたいモチーフがひらめくと、持ち前の集中力を発揮してぱっと勢いよく描きあげてしまう。知絵さんの手によって命を吹き込まれたサーカス団、人形や鳥たちは、今にも手ぬぐいから飛び出してきそうな躍動感に溢れている。作品の作り方も向き合い方も、とても対照的。ふたりの“静と動”の絶妙なバランスから、kata kataの手ぬぐいは生まれている。

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kata kataの、“陰と陽”

ずらっと並ぶ手ぬぐいはカラフルで、まるで絵の具のパレットのよう。鮮やかな水色、ぱっと目をひく赤、眩しい黄色。今までの手ぬぐいのイメージを気持ちよく裏切ってくれる色合いは、描かれるモチーフやデザインによって決められている。この色はどうやって決めているのだろう。

「実は、この水色にはグレーが混ざっています。綺麗な色にグレーや茶色を混ぜることで、その色がぐっと際立って、深みが出るんです。派手に見えるけど、実はいろいろ混ぜているんです」

原色の染料に濁った色をほんの少しずつ混ぜる。そのままの色は使わず、すべて少しずつ濁す。手先を動かして絶妙なさじ加減で、kata kataの色は作り出されている。相性の良い染料、悪い染料。型染めに向いた色合いと、注染の方が表現しやすい色。多くの条件の中で、その色は生まれている。明るくカラフルに見える色でも、それだけではその色の本当の魅力に気づけない。陽の裏には陰がある。陰が陽を引き立てる。そうすることで、鮮やかさがより際立つ。私たちを惹きつけてやまないkata kataの色には、長年の経験から生まれた“陰と陽”の魔法が、ひっそりとかかっている。

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kata kataと、“制約と自由”

「型染め」と呼ばれる染色技法では、下絵に合わせて彫った一枚の大きな型をもとに布を染める。型は繋がっていなければならないため、その中でデザインを決めるという制約がどうしても出てきてしまう。

「ここは途切れないように上手く繋げて、とか、このモチーフとこのモチーフは色を変えたいから離しておかないと、とか、常に頭の中で考えながらデザインをしています。大変だけど、それが型染めの魅力だから、楽しいんですよね」

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型染めを始めてまもなく10年が経とうとしている今年、kata kataは型染めとはまったく異なる技法、プリントの作品を発表した。自らの手で染める作品を中心に作ってきたふたりが、なぜ今プリントなのか。

「型染めや注染で手ぬぐいを作ろうと決めてしまうと、思考も縛られてそれ以上広がらなくなってしまう。もうちょっと考えたら、もっとおもしろいものができるんじゃないかと思いながら作っていたいんです。何を表現したいか、何がいちばん楽しいかをいつも考えています」

そこから生まれたのが、ニワトリ、オオカミ、そしてアホウドリ柄のオリジナルプリント作品。細かなドットが重なるようにして描かれたニワトリは、型染めでは表現することがとても困難なデザイン。少し厚めの生地も、プリントならでは。

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「ワクワクする布を作りたいんです。技法や用途も大事だけれど、まずは絵がある。だから、こういうのはプリントに任せた方がいいなとか、型染めがいいなとか。何を表現したいかによって技法を選んでいるんです」

型染めにある制約とプリントにある自由の中で、布を作りたいという想いに正直に、今日もkata kataはより楽しく表現する方法に想いを巡らせている。 

kata kataは、“来年で10周年!” 

一生懸命に、でも楽しむことを決して忘れずに作り続けてきたkata kata。活動を始めてから10年が経とうとしている。

「作品が受け入れられて売れることは嬉しいです。でも、自分たちも楽しくいたいっていう気持ちもあります。常におもしろいものを作っていたいんです。自分たちが楽しければ、それが伝わって周りも楽しいと思ってくれるんじゃないかと信じてます。自分たちが楽しく熱中出来ることが大事で。それは、この10年ずっと変わっていないし、これからも変わらないと思います」

もみじ市は大人の文化祭だという武さん。来てくれたお客さまの心の中に、少しでも多くの楽しい思い出が残って欲しい。そう願うふたりは、毎回のように楽しい仕掛けを用意してやってきてくれる。今回もいろいろと考えてくれているとのこと。

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いつまでたっても楽しいことに夢中になっていたい。このふたりに会うといつもそう思う。

「カラフル」とは「色彩に富んだ」「華やかな」という意味。いつでも楽しむことを忘れないふたりが作るものは、私たちの生活をより華やかにしてくれる。これまでも、これからも。

 【kata kata 松永武さんと高井知絵さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
型染めと注染と、最近はプリントによるオリジナルの染布を制作しています、kata kataです。布を広げた時に、ものがたりを想像できるような、会話が生まれる作品作りを心がけています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
じゃあ、染料の名前で答えてみようかな。

武さん : グリーンBA (緑)

知絵さん : S・ターキスブルーFBLL 167% (水色)

です。どんな色かは、当日聞いてくださいね。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
今年のテーマ、カラフルですよね。どんぴしゃすぎて困ります! 逆にモノトーンとか作りたくなっちゃいます! というのは冗談ですが、(テーマをおいといて)いつも通りやりたいことやろうと思います。カラフルにとらわれて小さくまとまってしまうことなく、好きなことをやらせていただきます。でも、必ずあなたのこころをカラフルにしますよ。ふぉっふぉっふぉ。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

続いてご紹介するのは、イラストレーションとグラフィックデザインの見事なコラボレーションを実現するあのおふたりです!

文●高松宏美

うずまき堂「手づくりせっけん・うずまき堂」

(みず)(かき)(あさ)蘇芳(すおう)薄桜(うすざくら)江戸(えど)(むらさき)……これは「日本の伝統色」の名前だ。赤にしても、青にしても、微妙にニュアンスの異なる色ひとつひとつに(おもむき)のある名称が付けられている。さまざまな色の表情を敏感に読み取る感受性は、日本人ならではのものかもしれない。

「きものには、着るものの季節というのがあるんです。(あわせ)があって、単衣(ひとえ)があって、夏物があって、また単衣の季節がめぐってくる。そういうローテーションですが、春の単衣と秋の単衣では、色味が違うんです。同じオレンジ色であっても、夏の一重は枇杷(びわ)のようなさわやかなオレンジに心惹かれるし、秋の一重なら柿のような深みのあるオレンジがふさわしい。色を深く意識するようになったのは、日常的にきものを着るようになってからですね」

和のモチーフを取り入れた手づくりせっけんでおなじみのうずまき堂・鈴木万由香さんは大のきもの好き。それだけに、普段から色に関しても敏感だという。

「せっけんの材料となるオイルも、パーム、ココナッツ、アボカド、お米、アーモンド、それぞれに固有の色がありますからね。それに顔料をどのくらいの割合で入れるのがベストなのか、毎回、試行錯誤です」と笑う。

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左から定番の「松風」「墨流し」、季節のせっけん「しゃぼん玉」

鈴木さんがうずまき堂の屋号で、本格的に手づくりせっけんをはじめたのは2008年のこと。「まわりを見てもヨーロッパとかアメリカンテイストの手づくりせっけんしかなかったので、あえて自分の好きな和テイストにした」という。

「せっけんって、そばに置いて毎日使うものでしょ。真四角で単色の素っ気ないものより、かわいらしいものがいい。それに季節のモチーフが加われば、もっと楽しくなる。遊び心と季節感がうずまき堂のテーマです」

和菓子をモチーフにしたシリーズは遊び心いっぱい。シリコンの型でひとつひとつつくる「たいやき」は、うずまき堂のヒット商品だ。

p02右下がもみじ市でも人気の「たいやき」

もともと肌が弱かったことがきっかけではじめた手づくりせっけんですから、合成界面活性剤や合成防腐剤など余計なものは一切使っていません。今回のもみじ市では手づくりせっけんを販売するだけじゃなくて、『せっけんってナニ?』っていう素朴な疑問にもお答えするトークイベントを予定しています。せっけんにまつわるアレコレ、ぜひ聞きに来てください」

CIMG6653うずまき堂は今年から浅草がホームベース

この春、鈴木さんはそれまで渋谷にあったうずまき堂の作業場を浅草に移した。「渋谷の街って、ガチャガチャいろんな色があふれているけど、背景がコンクリートの汚い色でしょ。だから色が埋没しているんです。それに較べると、浅草は色がクリアー。ストレートにこっちに伝わってくる」

新しい作業場から、どんな手づくりせっけんが生まれてくるのか、いまから楽しみだ。

<「手作りせっけんトークイベント」at うずまき堂ブースのご案内>

知ってるようで、実は意外と知らなかった「せっけんアレコレ」についてお話します。

・せっけんを使うと、いいことあるの?
・ナゼ、せっけんをオススメするのか!
・そもそも、せっけんって何?!

そんな疑問にお答えします。

日時:
10月19日
13:00〜
15:00〜

10月20日
13:00~
15:00~

話し手:エステサロン講師・島田可奈子さん
参加費:無料 事前申し込みは必要ありません。

【うずまき堂 鈴木万由香さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
手づくりせっけんの「うずまき堂」鈴木万由香です。今回で3回目のもみじ市出店になります。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
好きな色は赤と藍。赤は女性らしさ、藍は清楚。自分の高校時代の制服を思い出すんです。大好きでした。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
定番の商品に加えて、「ストライプ」「金平糖」「カラー」3種類のせっけんをひとつのパッケージにした「もみじ市オリジナルセット」を販売します。それと、せっけんのトークイベントは19日(土)20日(日)両日、13時と15時の2回。事前の申し込みは必要ありませんから、ぜひ遊びにきてください。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いては高知からやってくるあのイラストレーターさんです! 今回は四国の紙ものまつりでお世話になったあの方とはるばる高知からやってきてくれます!!

文●秋月康

feltico 麻生順子「羊毛アクセサリー」

「みんな、おかえり」 

夕暮れ時になると、外に遊びに行っていた猫たちがようやく帰ってきたようだ。器用に自分で網戸を開け、家に帰ってくる猫たちに麻生さんは、母のようにやさしく声をかけ、迎え入れた。飼っている猫はぜんぶで四ひき。みんな外と中を自由に行き来し、日中は家のすぐ裏にある自然豊かな公園に遊びに行ったりして、とても自由に暮らしている。

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我が家にも猫がいるけど、まだまだ若いやんちゃ盛り。毎日私のアクセサリー箱を漁っては、なにやら目ぼしいものを見つけては、ぐちゃぐちゃに噛んで転がして遊んでいる。それを見つけるたびに怒るけれど、その数分後にはやっぱりまた、漁っている。

なかでも一番のお気に入りが、麻生さんのフェルトの花のブローチだ。どうやら、ふわふわした「小動物」に見えるらしい。ある日、うっかり箱を開けっぱなしにしていたら、少し離れたところで猫がフェルトを口にくわえて逃亡する姿を目撃。必死に追いかけたけれど、時すでに遅し。猫はフェルトを一瞬でぼろぼろにしてしまった…。悲しすぎて、麻生さんにはすぐに言えなかった。だけど、やっぱりそのフェルトの花たちをまた身につけたかった私は、申し訳ない気持ちになりながらも、麻生さんに相談した。すると、麻生さんはカラっと、どうってことないという風にこう言ってくれた。

「基本、猫が絡むように作ってあるので合格です。今度お直しするよ!」

お直しが、できるんだ。猫のいる家でフェルトを扱う難しさを誰よりも知っているからこその、とっても頼もしい言葉だった。私はほっとして、またこの花を身に付けられる喜びに心が弾んだ。それは、このフェルトの花を買った日の気持ちと、何ら変わることのない嬉しさ。むしろ、この花への愛おしさは、日ごとに増していくばかりだ。

写真2お直しをお願いしたfelticoの作品「hidamari」を初めて付けたときに撮った写真

麻生順子さんは、「feltico(フェルティコ)」という名で活動している羊毛フェルト作家。「feltico」とは、「フェルトのこども」という意味で、「ひとつひとつ時間をかけた手しごとは、想いのこもった自分の分身」というところから付けられた造語である。ひょんなことから参加したハンドメイドフェルトのワークショップをきっかけにして、2004年に作家活動を開始。国内外のギャラリーで展示やイベントに出店するほか、オーダーでブライダルのヘッドドレスを制作したり、ミュージシャンのライブ衣装として、コサージュやピアスを提供したりと、年々活躍の場を広げている。

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ピアス、髪留め、ブローチ、バッグやマフラーにいたるまで、たくさんの種類の作品を制作しており、そのすべてが“手しごと”の一点もの。羊毛を、お湯と石鹸をかけて手で圧縮しながら、何層にも何層にも重ねて、一枚のフェルトをつくり、いろいろな形に変え、作品にしていく。ゆっくり丁寧に時間をかけるため、一日に数個しか作ることができないという。

felticoの並んだ花を目の前にしたときの幸福感は、普段アクセサリーを付けることが少ない私にも、「おとめの心」があることを思い出させてくれる。どれにしようかな? どれがいちばん、私に似合うかな? 初めて身に付けるのは、特別な日にしよう! そうして私は、最初につけるその瞬間を想像するだけでつい、ほっぺがゆるんでしまう。

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9月末。秋の風が少し吹き始めた頃に、麻生さんのご自宅兼アトリエにお邪魔した。駅から歩いて間もなくすると、たくさんの緑に囲まれた公園がある。そこでは、春に桜や白木蓮の花がきれいに咲くこと、麻生さんの飼っている猫と外でばったり会っても他人のふりをされてしまうことなど、楽しそうに話してくれた。白木蓮の清楚な花は、麻生さんのもっとも好きな花で、鳥が一斉に羽ばたくときのような音をさせながら散る風景が、とても美しいそうだ。

ご自宅に入ると、アンティークの家具や扇風機、近所から採ってきたという草花に迎えられる。窓際には、まるで“標本”のようにガラスケースに保管された花のコサージュや、海で拾った海草が並んでいた。海草は、羊毛のフェルトにどことなく似ている。

「自然の形とか色って、すごいよね」

眺めていると麻生さんは、目を輝かせてひとつずつ解説してくれた。年季が入り味の出たものが好きで、毎月あちこちの骨董市に行っては気になるものを買い、コレクションする。麻生さんの「好き」で埋め尽くされた空間は、懐かしく、ちょっと不思議で、ファンタジーのにおいがする。私は、どこか異国のちいさな博物館に来たような気分になった。

麻生さんのフェルトの作品も、身近な植物などのモチーフを作品にしているけれど、色使いや雰囲気がファンタジックで、普段の何気ないTシャツにブローチを付けるだけでも、胸元のアクセントとなり、ひとつの「物語」が生まれるように感じられる。フェルトが詰まっているため、思ったよりしっかりしているけれど、羊毛だから軽くて、肌にやさしくて、繊細で儚げ。手のひらに乗せれば、まるで「生き物」のような温もりがある。

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アトリエは、“生活の真ん中”にあった。麻生さんはいつも、キッチンのすぐ横のダイニングテーブルで作業をしていて、制作の途中、ご飯の準備をしながら、とか、庭で寝ている猫を微笑ましく眺めながら、とか、日々の生活のなかで作品が生まれているという。

私は、麻生さんの家に、猫にぐちゃぐちゃにされてしまった、お気に入りの三つのアクセサリーを持って行った。それを麻生さんに手渡すと、麻生さんはニードルを取り出し、すばやくサッサッサッサとフェルトに刺して、ほんの数分で元のかたちに戻してしまった。

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「フェルトは、ボロボロになってきても、また新しいフェルトを足して分厚くして、形を整えてあげれば、長く使うことができます」

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「元気でやってるかな。楽しくやってね」。フェルトが麻生さんの手元から離れたときから、麻生さんは、我が子を想うように、「その子たち」を想う。felticoは、フェルトのこども。想いがたくさんこもった、麻生さんの、いとおしい子どもたち。

「もみじ市は、いろいろなものを作ってきて、毎年、自分の成長を見てもらう場所だと思っていて。二年間、いろんな人に出会って、できたものがいっぱいあって。その間に出会った人の数を、みんなに見せることができる場所が、もみじ市」

麻生さんはこの二年間で、どんな人と出会い、どんな色を見つけ、どんな美しい景色を見てきたのだろうか。今回は、そんな二年間の記憶や思いがぎゅっと詰まった、色とりどりの羊毛の花をたくさん持ってきてくれるという。

多摩川緑鮮やかなの芝のうえに、生まれたてのfelticoの花が咲いたら。

それは、小さなファンタジーの、はじまり、はじまり。

【feltico 麻生順子さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
羊毛作家のfeltico(フェルティコ)です。ふわふわの羊毛から花や植物モチーフを中心とした1点もののアクセサリー小物を手しごとで制作しています。日常のきゅんとくるものをカタチに。温度を感じられるものづくりを目指しています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
「黄色」かな。黄色のような、温かみとクールさとPOPさを両方持った人でありたいし、そういう作品をつくっていきたいです。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
秋の川原に羊毛のお花がカラフルな彩りを添えるような小春日和gardenにしたいです。わくわくとしながら作ったものが、温度となって少しでもみなさんに伝わればうれしいです。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、東京で真摯に野菜を育てるあの農家さん。すくすくと育った美味しい野菜が並びますよ!

文●池永萌

Siesta Labo.「手作り化粧石けん」

仕事帰りの電車の中、窓に映る自分の疲れきった顔に気づいてハッとする。そんな日は、帰ったら何をするよりもまず顔を洗う。メイクを落として、石けんを泡立てる。両手いっぱいの泡で顔を包み込んだら、全てをさっぱりと洗い流す。そう、汚れだけじゃなく、今日起こったあんなことやこんなこと、何もかもさっぱりと。そうして洗い終わったら、鏡に映る自分の顔は、すっかり優しくなっている。心も丸くなっている。Siesta Labo.の附柴彩子さんが作るのは、そんな、魔法のような石けんだ。

siestalabo1色とりどりの紙に包まれた石けんたちは、お菓子のように可愛らしい。

色紙にハトロン紙が重ねられた淡い色の包み紙。開くと現れるのは、少し白みがかった穏やかな色の石けん。四角い形は手のひらにすっぽりとおさまるサイズ。Siesta Labo.の石けんは、洗い心地はもちろん、何から何までとても優しい。

「女性にとって、石けんで顔を洗うのは “ほっ” とする瞬間です。作っているのは石けんだけれど、届けたいと思っているのは、”ほっ” とする時間なんです」

「Siesta」はスペイン語で「お昼寝」を意味する。うたたねをする時のように、心からくつろいでほしいから、素材はなるべく天然のものを使っている。ベースとなるのは、ヤシ、パーム、オリーブなどの植物オイルにアルカリ成分を加えたもの。そこに、蜂蜜やヤギのミルク、ハーブなど、肌のタイプに合わせた素材をブレンドし、商品のコンセプトによって、エッセンシャルオイル(精油)で香り付けをする。余分なものは一切入れない。そして、40日間という時間をかけて “熟成” する。さらに、完成した石けんに型を押すのも、紙で包むのも、全てをひとつひとつ手作業で行っている。伝統的な技法を選び、手間をかけることで、時間はかかるけれど、その分だけ、肌に優しい気持ちのこもった石けんができあがる。

siestalabo2 熟成開始から何日で型を押すか、そのタイミングは石けんの種類によって違うという 

石けん作りと聞くと、ほんわかと可愛らしい様子を想像するかもしれない。しかしながら、Siesta Labo.の石けんが生まれる場所は、実験室のような部屋だった。白衣に袖を通し、ビニールの帽子を被って部屋の中へ入る。大きな鍋やレードルが置かれた流し場。磨き上げられたステンレスの台。壁一面に備え付けられた頑丈そうな棚には、熟成中の石けんが業務用のケースに入れられて、びっしりと並んでいる。 

siestalabo3Siesta Labo.の石けんのサイズに合わせて特別に作られた器具で、カットしていく

「私がもともと理系出身なのもあって、やるんだったらきっちりやりたくって」

附柴さんが初めて石けんを作ったのは、大学院生のとき。市販の石けんが肌に合わなくなり、試しに自分で作ってみたところ、その工程がすごく自分に合っていると感じたという。

「これを仕事にした方がいい! と思いました。全く違う素材を混ぜ合わせることで、新しいものが生まれるという現象が好きなんです。オイルと様々な材料を混ぜ合わせることで、新しい石けんができあがる。その工程が、すごく楽しい。それに、石けんをカットしたり、四角いものをいっぱい並べるという作業も、とても好きなんです(笑)」

大学卒業後、製薬会社で何年か働いた後に、化粧石けんのレーベルを立ち上げる。附柴さんが製作の拠点に選んだのは、地元ではなく、大学時代を過ごした北海道だった。

「何年か住んでみて、北海道がすごく好きになりました。道内には良い素材がたくさんあるんです。でも、その良さを活かしきれていないと感じる部分もあって、それを伝えていきたいと思いました。だから、Siesta Labo.の石けんは、道産の素材を使うことを大切にしています」 

siestalabo4何だか落ち着く、少しくせになる不思議な匂いのアズキ石けん。

一番のロングセラーである「アズキ石けん」(肌がすべすべになると評判の石けんだ)に使われているあずきも、もちろん北海道産。また、素材の生産者にはなるべく直接会いにいくという。例えば、乾燥肌の人向けの「白樺石けん」、材料となる白樺の芳香蒸留水が作られているのは、道北の下川町という小さな町。北海道に住んでいる人でもピンと来づらい地名だが、「最近は若い人たちが増えていて、とっても活気があるんですよ」と、まるで自分のことのように、うれしそうに、附柴さんが教えてくれた。

附柴さんのお話を聞いていると、素材選びや作業工程、お客さんに対する姿勢など、その全てから真摯さが伝わってくる。優しい石けんを作る附柴さんの眼差しは、やわらかでとても強い。

「石けんを作るのではなく、生活を作っている。そう思っています」

Siesta Labo.の商品は石けんだけに留まらない。シャンプーやバスソルト、ルームフレグランスなど日々を穏やかに過ごすためのアイテムが並ぶ。さらにお店では、しばしば、靴やアクセサリーなど、他の作家さんの展示会や販売会が開かれる。すごく多忙なはずなのに、とてもきらきらとした表情の附柴さんとお会いして、これから先、さらに大きく活動の場を広げていかれるような気がして、とても楽しみになった。

siestalabo5新作のルームフレグランス。優しい香りが部屋をつつむ。

siestalabo6”カラフル” に合わせて作られたもみじ市オリジナルの石けん。お試しサイズなのもうれしい。

Siesta Labo.の石けんは、とても優しい色をしている。そしてエネルギーに満ちている。それは、自然の素材から作られているから、そして、附柴さんの思いが込められているから。ぜひ手にとって、眺めて、匂いをかいでみてほしい。それだけでとても、優しい気持ちになれるはずだから。

もみじ市に、Siesta Labo.の石けんが並ぶ。それは附柴さんにとっての夢であり、私たちにとっても、夢のような光景なのだ。

【Siesta Labo. 附柴彩子さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
札幌で手作り石鹸の工房を開いています。北海道のハーブや、小豆などの素材を使い、じっくりひと月以上時間をかけながら石鹸を作っています。ブランド名のシエスタはスペイン語でお昼寝。お昼寝をするようなゆったりとした気持ちを過ごしていただけるような、いい香りだったり、ホッとする素材を選んで制作を行っています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
穏やかな晴れた海のような人になりたい、とずっと思っていました。だからなのか、青がとても好きです。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
青、ピンク、グリーン…色とりどりの石鹸を作って参加します! そのほかにも、スキンクリームや、ルームフレグランスなど…もみじ市のために特別に作った、手のひらサイズの石鹸も持っていきます。はじめてのもみじ市、とても楽しみにしています。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてはいつ訪れても多くの人で賑わうあのビストロの登場です!

文●吉田茜

緒方伶香「糸屋+テノリシロクマ」

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ぼくは、ペン吉。皇帝ペンギンのヒナです。もみじ市というイベントで羊毛作家の緒方伶香さんが羊の毛から作ってくれたんだ。どうやってあのふわふわした毛からぼくができるのかって? それはニードルパンチという針を使ってチクチクと固めるんだよ。ひと針ひと針愛情を込めて(なんて、自分でいうのもおこがましいけどね)、少しずつ少しずつ固めるんだ。

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 ぼくを作ってくれた緒方さんは、「羊毛のしごと」や「羊毛フェルトの教科書」っていう本も出している人で、糸を紡いだり、フェルトでバッグや小物ケースを作ったりする人なんだよ。緒方さんは毎年、もみじ市に出ていて、ぼくの他にも手のひらサイズのハリネズミやパンダやうさぎ、ひつじなんかも作ったことがあるんだ。どれもとってもキュートで(ぼくほどではないけどね)、たくさんの人に作り方を教えてるんだよね。ワークショップって言ってね。みんなが緒方さんの作った人形(ぼくみたいなスマートなやつね)をお手本にして、チクチクと一緒に作っていくんだ。

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みんなで作ってくれると一辺にたくさんの仲間ができるからぼくは嬉しいんだ。その場ですぐに離れ離れになっちゃうけど、離れていても心はひとつっていうかさ、同じ場所で、同じ日に生まれた兄弟がどこかにいるんだと思うと、なんだか嬉しいんだよね。

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この間、緒方さんが、もみじ市の事務局の人に「毎年、もみじ市のために一生懸命準備をする」って言ってたよ。定期的にみんなで人形を作れて、たくさんの人に触れてもらえる大事な機会なんだって。たくさんの人に作って欲しいから、緒方さんは毎年、新しい、キュートな子を連れて行くんだ。でも、どんな子にするか考えるのがとっても大変だから、学校の宿題みたいって言って笑ってた。

もみじ市はそんな特別なイベントなんだけど、じつは、去年は開催されなかったんだ。でも今年は2年ぶりに開催できて、新しくスタートするから緒方さんもとても楽しみにしているみたい。

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実はこの前、緒方さんにニューヨークまで連れて行ってもらったんだよ。すごいでしょ? 向こうで、もみじ市用のお土産も買ってきたよ。ついでにMOMAやジャクソン・ポロック、建設中のセント・パトリック寺院とかいろいろな場所に行って記念写真も撮ったんだ。

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休んでいる間に緒方さんもいろいろ考えたみたいで、今年からはぼくみたいな絶滅危惧種に指定されている動物を作ることにするんだって。それを聞いた時、ぼくはとっても嬉しかったな。だって、このままだったらぼくの仲間は地球からいなくなってしまうかもしれない。けれど、こうやって、ワークショップでたくさんの人に作ってもらえたら、ぼくの仲間は地球上に確かにいるんだって思ってもらえるでしょ。ぼくみたいに一緒に旅行に連れていってくれたりしたら、一層ぼくの仲間も大切にしてもらえるような気もするよ。

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緒方さんにとっても新しいスタートになる今年のもみじ市では、シロクマくんを作るんだって。もちろんシロクマ君も、絶滅危惧種なんだよ。お手伝いにアナンダっていうお店で一緒に働いている仲間たちも参加してくれるよ。みんな手でものを作るのが大好きだから、きっと楽しいワークショップになるんじゃないかな。たくさんの人に作ってもらえたらいいな。

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<緒方伶香「ニードルパンチでつくるテノリシロクマ」ワークショップのご案内>

開催日時:
10月19日(土)11:30〜15:30
10月20日(日)11:00〜15:00

参加費:2,300円(材料費込み、当日のお支払い)

定員:材料がなくなり次第終了とさせていただきます。(各日50名程度)

 お申し込み方法:当日ブースにて直接お申し込みください。

製作所要時間:約1時間程度
※人によって大きく差が出ますことを予めご了承ください。 

【緒方伶香さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
毎回、もみじ市では手のひらサイズの動物を羊毛フェルトで作るWORKSHOPをやってます。本来は、食べること、寝ること、映画を観ること、そして音楽を聴きながらぼんやり糸を紡いだりするのが好きなのですが、この時ばかりは、みなさんに楽しんでいただくべく、マトリックスのような早さで、みなさんの作品作りを手伝うことに集中します。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
白、と言えたらいいのですが、墨色です。白や黒ほどはっきりしてなくて、でも濃淡の中に幅広い寛容さがある、優しさと厳しさがある。私の色というより、私の願望です。墨の匂いも落ち着きますし。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
白い氷の世界に住むシロクマ。白は色のはじまりのような気がします。だから、カラフルだけど敢えて白。絶滅危惧種の第一弾として、シロクマを作ります。「もみじ市」という、どんどん大きくなっていく舞台で私も何か役に立ちたい、地球の平和を祈ってみんなで作りたいという気持ちです。他にも、白をはじめ、いつものカラフルな手紡ぎ糸やフェルト小物を持って行きます。2年ぶりのもみじ市、どんな色になるのか、楽しみです。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

続いてご紹介するのは、遠くニセコの地からやってくるあのお店。羊蹄山の透き通るような湧き水と厳選された食材のベーグルを届けてくれます!

文●藤枝大裕

夜長堂「いとし紙店」

「夜明けています」

その奇妙な看板を見つけたら、「姿は見えねど」がモットーの夜長堂の店主が、珍しく店を開けているという合図。そこは、懐かしく、妖しく、だけどたまらなく愛らしい古い図柄の並ぶ店。レトロモダンな図柄を使った紙ものや布もののほか、古道具やこけし、妖怪グッズなどもある。ひと月に数回ほどしか開いていないその店はまるで、子どものころ、暗くなるまで遊んでいるうちに迷い込んだ、見知らぬ町の玩具店のようだ。

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では、店を開けていないとき、夜長堂は何をしているのかというと、「いつなんどきも営業しております」という。夜長堂の店主・井上タツ子さんは、大正・昭和の着物や千代紙に使われていた図柄を復刻し、紙雑貨や布小物の企画・販売を行っている。大阪・天満橋にあるアトリエを兼ねた店を開けているとき以外は、展示やイベントを行ったり、出店したりと、全国津々浦々を飛び回る。さらに、古いビルや妖怪史、地方の祭や風習などの取材に赴き、執筆や編集、商品企画まで手がけるのだから驚きだ。クリエイターであり、プランナーであり、編集者であり、アキンドでもある「夜長堂」という不思議な存在。

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だけど、井上さんの心惹かれるものたちにはすべて、揺るぎない世界観がある。かわいいけれど、なんだか少し怖くて、妖しげで、覗いてみたい。初めて一人で留守番をした少女が、おばあちゃんの和箪笥をこっそり開き、着物を纏ってみるような。縁日で父親とはぐれた少年が、鳥居のそばで狐のお化けに出会うような。夜長堂の発信するものからは、そんな秘密めいた魅力がある。

「”怖さ”とか”懐かしさ”って、実際に見たから感じるんじゃなくて、自分の中にあるんです。昔の図柄や、妖怪やこけしって、そういう内側にある恐怖や郷愁を呼び起こす。トントンって扉をノックされるような、そんな気がして」

井上さんのその言葉を聞いて、ハッとした。子どものころ、夜のお風呂で一人、髪を洗うのが怖かった。そんな経験は誰にもあるだろう。わたしたちは、”見たこともないもの”に怯えているのだ。逆にいえば、なんて、人間の心は繊細で想像力豊かなのだろう。

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井上さんが昔の図柄に惹かれる理由はもう一つある。

「情報のない時代、見たことがないものを想像だけで描き上げている。その発想の豊かさ、自由さ。そして、”作家”としてではなく、生きるため、食べていくためにものづくりをしていた人たちの、純粋さ。今見るとすごく新鮮なんです」

現代に生きるわたしたちなら、本物の象を見たことがなくても、象がどんな生き物かわかるだろう。本やテレビはもちろん、今やインターネットで画像検索すれば簡単に写真を探せる時代。だけど、それらがなかった時代に、異国の動物や植物、さまざまな意匠を描いた人がいる。想像力を駆使して、時にユーモラスに、時にロマンチックに。彼らは”作家”として讃えられることはない。着物や千代紙を作ることで、生活の糧を得ていた名もなき人たち。けれど、何の情報にも頼らないその想像力こそ、わたしたちの心の奥底にある「見えないものを見る力」なのだ。

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だが、井上さんは「古き良きものに光を当てる」などといった定型句の使命感にかられて、古い図柄を復刻しているわけではない。井上さんもまた、「作家」と名乗るよりも、かつての意匠に想いを巡らせ、その時代とその時代を生きた人々の心模様を想像する人だ。

「実は、他人の描いた絵で商売をすることに罪悪感を感じたこともありました。でも、『乙女モダン図案帖』という著書を発行したことで、記録されることのなかったものが一冊にまとまり、国内はもちろん海外の人たちにも、日本の古い図柄の魅力を知ってもらうことができた。これって、今の時代にしかできなかったことですよね」

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約100年前の無名の職人が、その本を見たらどんなに驚くだろう。もちろん、過去も未来もわたしたちは見ることはできない。だけど、見えないものに想像を巡らせるのは自由だ。恋心、郷愁、滑稽さ、愚かしさ、おっかなさ、そして愛しさ。夜長堂の図案には、100年前から変わらない人間の心模様が、想像力たっぷりに描かれている。それらはきっと、手に取った人の心の扉も、トントンとノックするはずだ。多摩川河川敷で2日間だけ現れる、夜長堂の「いとし紙店」。どうぞ、ごひいきに。

【夜長堂 井上タツ子さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
大正、昭和のモダンな図柄を復刻して紙ものやハンカチなど様々な雑貨の企画、販売、卸をしています。その他、こけしや郷土玩具の紹介や、ビル好きの仲間5人とともにBMC(ビルマニアカフェ)として、高度経済成長期に建設されたビルの魅力を紹介する「月刊ビル」や「いいビルの写真集」などの発行、もとキャバレーなどを会場にイベントを開催したりと、多方面で活動しています。こんな感じで自分が好きなものを追いかける事が仕事のような毎日を送っています。 好きなものを追いかける事は決して楽ではないですがとにかく気合いで何でも乗り越えています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
クレヨンのカラフルな色を使って色を塗り、その上から黒色を重ねます。 黒を削ると下からカラフルな色が出てきます。その時出てくる虹色みたいな色。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
「カラフル」というテーマに夜長堂的ニッポンのおみやげもの屋さん要素を加え、カワイイ妖怪グッズや張り子やこけしなど謎の品揃えです。お楽しみに!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

続いてご紹介するのは、四季折々の素材を使ってさまざまな酵母をおこすパン屋さん。その数年間50種類! もみじ市にはどんなパンを持ってきてくれるのでしょうか。

文●増田 知沙

石川若彦「colorful+waka style」

まだ蝉の鳴き声の止まぬ残暑のころ、栃木県益子町にある、陶芸家・石川若彦さんの工房「waka studio」を訪ねた。秋葉原から早朝の高速バス、やきものライナーに乗って2時間半。夏休みの終わりに、一人で小さな遠足に出かける子どものような気分だった。ワクワクするけど、緊張する。うつわが好きでさまざまな作家のものを少しずつ集めてはいるけれど、まだまだ知識も見聞も足りない。尊敬する作家を前に、うまく話ができるだろうか。

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工房は、木漏れ日がさんさんと降り注ぐ林の中にあった。入り口には白い看板。木立を抜けると、小さなギャラリーと作業場がふたつ並んで建っている。ギャラリーの窓辺には、石川さんのシンプルなうつわが並んでいる。作業場の奥から、トレードマークの眼鏡に手ぬぐいを巻いた石川さんが作業の手を止め、「やあ、こんにちは」と出迎えてくれた。その隣で、ニコニコと笑う奥さまの綾子さん。「ああ、ここで、若さんのうつわが作られているのだ」と思った。益子の緑も、小さな白い看板やギャラリーも、蝉の声も土の匂いも、石川若彦さんのうつわから感じる空気そのものだった。

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シンプルで、凛としていて、だけど温かみがある。若さんのうつわは、何気ないのに美しい。テーブルに置くと、ボウルの底からすっと立ち上がる直線や、小さな一輪差しの柔らかな曲線が描き出す輪郭が、清々しく空間に溶け込む。とりわけ、わたしの一番のお気に入りは若さんの作る「白」。白銀のような冷たさではなく、生成りのようなくすみもない、包み込まれるような柔らかい白。この白色の魔法にかかれば、どんな料理もとびきりおいしく彩られる。

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「うつわは、これから色が描かれていく画用紙のようなものだから、盛りつける料理が映える形や色を考えて作ってる。それに、白だって一つの色だからね」

作業場で素焼きの終わったうつわに釉薬を掛けながら、若さんはそう答えた。若さんの作るうつわの色は、質感の違う白が数種類と深みのあるグリーン。どれも料理や飲み物が映える色だ。

「創作をはじめたころは、具象的なものや絵付けの作品も作っていたんだよ。だけどだんだん、『使うこと』を考えるようになった。作品に自我を表現するのではなくて、使われることによって完成するような形を」

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とはいえ、シンプルであり続けるということには、途方もない労力と勇気が必要なのだと思う。個性的な形を作ったり、装飾や色を施す方が、表現の手段としてははるかに易しい。でも、ただ単純で素っ気ないものを作っていても、テーブルの空気まで澄み渡らせるような心地よさは生まれない。

一晩中窯の前を離れることができない「本焼き」をしている間、若さんはデッサンを繰り返すのだと言う。自分の左手や、身近にあるものを描くこともあれば、さまざまなうつわのフォルムを繰り返し描いていく。それは、とても孤独な時間だろうけれど、それこそが若さんの創造の原点のようにも思える。端正な輪郭と、包み込むような色、そして使うたびに心を晴れやかにしてくれるうつわは、こうして生まれている。こんなにも手と時間がかけられているのに、そのうつわがテーブルに並ぶとき、その姿はとても自然で気持ちが良い。

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土の匂いのする工房で、たくさんの制作途中のうつわに囲まれながら話をするうちに、わたしはいつの間にか石川さんのことを「若さん」と呼んでいた。親しい人たちの間でそう呼ばれていることは知っていたけれど、遠慮と緊張で呼べなかった。だけど、若さんと綾子さんとの会話は、まるでずっと昔からの友人ように自然体で、飾らず、温かかった。バスに乗り込んだときのあの緊張は、するするとほどけていった。若さんのうつわが生み出す、あの柔らかく澄んだ空気感と、当たり前のようにそばに居てくれる存在感。それは、若さんと綾子さんの人柄そのものだ。

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さりげなくて、何気なくて、多くを語らない。だけど、どんなものでも受け止める懐の深さと、優しさを併せ持つもの。心躍る豊かな色彩の傍らに、わたしたちの暮らしには、そういうものが必要なのだと思う。そしてそれは、どんな色の日々にもずっと寄り添ってくれる。もみじ市で、石川若彦さんの「カラフル」を、ぜひ手にとって見てください。

【石川若彦さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
益子で物作り暮らしも23年、waka studio石川若彦です。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
カラフルが映える「白」です。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
どんなカラフルにも合うシンプルな器です。あとは、当日のお楽しみでよろしくです。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いて、ご紹介するのはイラストレーターであり、人形作家のあの人。カラフルな小人が多摩川河川敷に大集合!

文●増田 知沙

generaL STORE「Antique, Vintage, MORCEAU D’EPOQUE」

「古い映画などを見ていると、街に一軒、必ずgeneral store(田舎の雑貨店)というお店が出てくるんです。村の人がみんな何かを楽しみにやってきて、楽しい会話やたまには小さなドラマまでも生まれてしまうようなお店。そんなお店がいいなと思っていました」

店主の奥澤知恵子さんは店のコンセプトについてこんな風に話してくれた。その店の名は「generaL STORE」。茨城県結城市にあるアンティークショップだ。と言ってもただのアンティークショップではない。「僕らの過ごす世界の豊かさに気づかせてくれるお店」とでも言ったらいいだろうか。

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JR水戸線の結城駅から2kmほど離れた閑静な住宅街の中に、突如として現れる異な世界。初めてこの場所を訪れた人は、胸が高鳴ることを押さえつけるのは困難だろう。フランス北部の片田舎に紛れ込んだような錯覚を起こすには十分な、異国感がある建物。錆びた鉄の質感がなんとも言えない柵を開けると、美しい庭が広がっている。さまざまな種類のハーブが茂り、ベリーが実を付け、チャボが自由に歩きまわる。その傍らには古い自転車とガーデンチェア、そして庭仕事の古い道具。店の扉を開けると、古き良き時代のブラックドレスやアンティークレース、ファイヤーキングなどの食器類、美しい色合いのガラス瓶などが迎えてくれた。たくさんのアンティーク雑貨の他に、奥澤さん自身がデザインをする「MORCEAU D’EPOQUE−モルソードエポック−」の洋服も置いてある。まるで、古い映画の1シーンに紛れ込んだかのようだ。かつて奥澤さんがそう思ったように、僕も思った。

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奥澤さんは以前、ファッション・デザインを学ぶためアメリカに住んでいたことがある。古い時代のものを扱おうと思ったのは、当時アルバイトをしていた店の影響だ。その街で一番古い家を改装したその店は、古着やアンティークを扱う店で、初めて訪れた時から魅了されたという。

『初めて扉を開けた時のあの感覚が今も忘れられない。その街で一番古い家は古着やアンティークの店になっていた。まるで古い映画の中に入り込んでしまったような不思議な感じ。手に取るものごとに昔の人の暮らしが巡り、少しだけ自分もその登場人物になれたような気がしてどきどきした。いつかどこかに場所をつくれたら、誰かにそんな気持ちになってもらえたらいいなと思った』

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ホームページの最初に綴られているこの言葉は、まさにその店のことを指している。しかし、そこでの経験は同時に、ファッションの世界に対する疑念も生んだ。仕入れのために目にする膨大な量の古着を見て、消費されていく最先端のファッションの世界に疑問を感じた奥澤さんは、一度は洋服を作ることをやめたという。

「世の中に溢れているから、私が作らなくてもいいんじゃないかと思って」

そんな奥澤さんが再び作り初めたのは、仕入れで訪れた店で出会った一枚の洋服がきっかけだった。それはおそらく200年近くも前のもので、ドレスではなく一般階級の人が着ていた作業服だったそうだ。汚れてはいたが何か光るものを感じた奥澤さんは、その洋服を買って帰り、きれいに洗濯をしてみた。袖を通してみると、100年以上も前のものとは思えない程しっくりと着心地がよく、「こんな服ならつくってみたい」と思ったという。

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高級な服は丁寧に扱われる分、きれいな状態で残っているものも多いが、一般の人たちの作業着は古い時代のものが残っていることは少ない。けれど、そんな日常の服にこそ、今の時代に通じる魅力を感じた奥澤さんはそれを再現することにした。そして立ち上げたブランドが「MORCEAU D’EPOQUE」だ。それ以来、資料になりそうな本や、昔の日常の風景が写った写真を集めたり、仕入れの時に見つけた昔の洋服を解いたりしながら少しずつ形にしている。「MORCEAU D’EPOQUEの服の売りにしているところはどこですか?」という質問に、奥澤さん自身が着ていたその服を指してこんな答えが返ってきた。

「昔の服は手縫いで縫いしろを始末していたり、なるべく真っ直ぐ無駄なく生地を使うような形になっています。そういう知恵を見習いながらも私はミシンメインで縫っていますので、どうやったらミシンで強度を保ちつつ裏側も美しく縫えるかとか、もう少し今の時代にあった形にとか、少しバランスを整えています。ちょっとマニアックですよね(笑)」

古いものに触れ、その知恵を学び、今の暮しに合うように細やかに気が配られている「MORCEAU D’EPOQUE」の服。奥澤さんにお話を伺った中で一番印象に残っているのは、昔の服の作りについて話しているときのことだ。

「作りを見たり、形を見たりしていると、『なるほど』って思うところがたくさんある。あと、想像が膨らむ。だれがどんな風につかっていたかとか、どんな時代の何に使われていたものだとか。想像を巡らせていると、いろいろな暮らしや物語が見えてくる様な気がするんです。」

生地の質感や縫い代の処理、機能的な形。決して裕福ではなかった当時の人達の服には、今のそれには見られないさまざまな工夫が凝らされており、そんな細やかな部分を知った時には感動すら覚えるのだと、奥澤さんは話す。

長く使われてきたものを愛する奥澤さんは、自ら洋服を作るときも“長く付き合える服”を念頭において作っている。よく使われる生地の1つとして、厚手の丈夫なリネンの生地がある。この生地はデッドストックのベッドシーツだそうだ。長い年月の着用にも耐えられ、使い込む程に味わいが増していく。染めは、化学染料ではなく、藍や泥などの天然染料を使う。そうすると生地はより丈夫になり、長く着られるものとなる。少しずつ染料が落ちて変わっていく色合いの変化も、長く付き合うことで味わえる楽しみのひとつだ。奥澤さんは言う。「一緒に歳を重ねられるものがいい」。

一緒に年を重ねた服は、やがて、誰かの元へ行くかもしれない。そうやって愛でられて来た服はきっと、次の持ち主の元へ行っても、確かなる光を放つだろう。
「古いものを普通にみんなが使えるようになったらいいなと思う。古着とか、古いものとか、みんなに使ってほしいなと思います」

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奥澤さんの言葉はシンプルだ。けれど、その目が見定め、その手が作り出すものには確固たる美意識が宿る。そして、その感性に触れることは僕の知る世界を豊かにしてくれる。僕たちが今いる世界を見回せば、“時”という魔法に彩られたさまざまものが、確かに溢れているのだ。

【generaL STORE 奥澤知恵子さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
雑貨・アンティーク・ヴィンテージの衣類から作家さんの作品、オリジナルまで盛り沢山の店内です。
古いものに囲まれた空間で、昔の映画の中に入り込んでしまったような気持ちになってもらえたら…と思っています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
むかし色

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
アメリカや欧州の1960年代位までのヴィンテージ衣類やアンティーク雑貨を持っていきます。
また、ヨーロッパのデッドストックシーツやオーガニックコットンを使ったMORCEAU D’EPOQUEのプチ受注会を行います。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは皆をにっこり笑顔にしてくれる、お菓子研究家のあの方です!

文●藤枝大裕

点と線模様製作所「2日間だけの青空手芸店」

どんな土地で育つかによって、目にする木々の形や花の色、肌で感じる温度や、光の強さは全く違います。生活していくなかで、そのひとつひとつが体に染み込んでいき、独自の表現が生まれます。「北の人には北の人の、南の人には南の人にしか表すことのできない色や形がある」。学生のころ、先生に言われた言葉。「点と線模様製作所」の岡理恵子さんの布を初めて見たとき、漠然としか感じていなかったその言葉の意味を、私ははっきりと実感しました。そこに描かれているのは、一度も見たことがない模様。なのに、私はこの色を、景色を知っている。そうだ、これは私の色だと思いました。私が生まれ育った、北国の色だ、と。

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雪かきの跡は鮮やかな赤と青で表現され、小さな植物たちはまるで微生物のように布の上を這い、点描によって描かれた森の陰からは動物たちの気配が伝わってきます。北海道に暮らす岡さんが描くのは、雄大な大自然ではありません。生活のそばにある山や川の風景、茂みにひそむ小さな命。短い夏と長い冬。日常に寄り添う自然に耳を澄ませ、そこに記憶や感情を重ね合わせながら、穏やかで美しい模様を作り出していきます。 

「自分と無関係なものを題材にするのは、すごく難しくて。一度心が移ったものでないと形にしづらいんです」

もともと、カーテンやテーブルクロスを取り替えると部屋の雰囲気ががらりと変わる様が好きで、模様に興味を持った岡さん。インテリアを学んでいた大学時代に、先生のすすめで”壁紙”を制作したことが、模様を作りを始めたきっかけとなります。「すぐに取り替えられる”生地”よりも、その中に長い時間身を置く”壁紙”の方が、(今まで模様の勉強をしていない私には基礎ができていないので)模様の基本の基が学べるのではないか」という先生の教えに共感し、図案の勉強をし、自ら木版を作って制作。色によって版を分けるなど行程は難しく、出来はあまりよくなかったと振り返りながらも「木を彫ることや色を混ぜて作るなど、手や目など体で学ぶようにできたことで模様のなりたちを勉強でき、それが今につながっています」とうなずきます。 

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大学卒業後しばらくして、模様作りを仕事にすることを決意。最初のうちは自分で模様を刷るなど、こじんまりと制作していましたが「繰り返しのある模様は、一定の量を量産する役割のあるもの」との思いから、2008年、「点と線模様製作所」という屋号のもと、本格的に生地作りを始めます。

「工場の人も、個人で生地を作るなんていう注文はあまり聞かないようで、最初はなかなか上手くいかず。意思疎通がすこしずつできるようになるまでには時間がかかりました。それは今も同じです」

自らの表現を理解してくれる工場を探し求めた岡さん。例えば、布への刺繍を依頼している工場は、糸をどう繋ぐかで変わってくる細かいニュアンスを、もともとの図案を活かしながら考えてくれるとか。その丁寧な仕事ぶりに惹かれ、刺繍加工をお願いしたそうです。

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そうして作られた生地は「北の模様帖」と名付けられ、ひとつひとつの模様を大切にしながら、少しずつラインナップを増やし続けています。

「オリジナルで販売している生地は、年に2作は新作を作ろうと思っています。少ないですよね。でも、10年経ったら20種類の模様の中からお客さんに選んでもらえる。20年なら40種類。色も含めたらその倍になります。今のお客さんが私と同じように年をとっていたら、その中から選んでもらえるんじゃないかなと考えています。ただそこにあって、気にもならないような、あるのが当たり前のような模様を作りたいんです」

今後の目標をそう語ってくれた岡さんですが、今ある模様は、どれも明るく楽しく可愛くて、見ているだけで幸せになれるような、じっくり眺めたくなるものばかり。

「クッションを作るのに使うくらいかな、と考えていた生地を、ある時お客さんが洋服に仕立てるということを聞いて、それならもう少し可愛らしい生地を作ってもいいのかなと思ったんです。植物らしい植物の絵を描くようになったり、鳥や動物がでてきたり。以前は模様を邪魔するんじゃないかと思って描いていなかったモチーフですが、それまで自分が考えていなかった楽しみというのも生地にいれたらいいんじゃないかと、がらりと考えが変わりました」

お客さんの思いに応えるべく、幅を広げた岡さんの模様はさらに愛され、コースターやカバンなどの小物や、ワンピースやコートなどの服にどんどん形を変えていきます。 

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 「この生地でワンピースを作ろうかしら」

「スカートにしたら可愛いかも」

お客さんのそんな言葉に、岡さんの創作意欲は刺激されます。ぜひ、カラフルな生地を手に取って、何を作ろうかな? と想像してみてください。そして、ぜひ岡さんとその思いを共有してください。そこからまた、新たな模様が生まれるかもしれません。

 【点と線模様製作所 岡理恵子さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
日常の風景や植物などを題材にしながら、北海道で模様作りをしています。その模様をのせて生地を作り各地転々と生地販売の旅をしています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
黄色と青が好きですが、紫と言われたことがあります。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
生地なので普通にしててもカラフルになるのですが
半端切れのセット
缶バッジ
ハンカチ
などを販売したいと思います。特別な演出はいつもできませんが並べるとカラフルになるのでお客様には楽しんでみてもらいたいです。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いては大阪からやってくるあのイラストレーターさんの登場です! 誰もが思わずクスリと笑ってしまう紙ものは必見ですよ!

 

文●吉田茜