Chappo「リネン、ウール、フェルトいろいろ帽子」

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今でもあの時のことをよく憶えている。僕がChappoのふたり、須田英治さんと舩越由紀子さんに初めてお会いしたのは、少し遅れて参加した2010年のもみじ市の決起大会のときだった。

「浅草橋に拠点を構える帽子工房、須田制帽の4代目、Chappoの須田英治さんとパートナーの舩越由紀子さんです!」

着いたときは、出店者さんひとりひとりを紹介している最中で、ちょうどふたりが呼ばれて挨拶をするところだった。「浅草橋」。その時に僕が勤めていた会社のあった場所である。当時、こういう世界にはまだまだ疎くて、何度かお手伝いをしていたにもかかわらず、いつもドギマギしていた僕はその単語を聞き逃さなかった。「あ、共通点がある」と思ったのだ。挨拶が終わってからすぐにふたりに声をかけた。大らかな須田さんと元気でよく笑う舩越さん。その時、もみじ市に初参加だったふたりも若干の緊張をしていたように思う。その後、偶然訪れた手づくり市で会ったり、職場の近くで一緒にお昼を食べたり、一緒にカレーを食べにいったりと親しくさせてもらっていた。

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手紙社に入ってからは、さらにいろいろなところでお世話になっている。調布PARCOにあった手紙社のお店ででChappoの作品を取り扱うときは、引っ越したばかりの平井の家を訪ねて帽子を見させてもらった。ニセコで行われた「森のカフェフェス」では旅するもみじ市の一員として、北海道まで来てくれた。今年初めて行った2月の「かわいい布博」にも出てくれた。いろいろご一緒する中で、Chappoは僕にとって、とても特別な作り手となっていった。

そんなChappoのふたりに今回あらためてじっくり話を聞いて感じたことは、出会ってからの3年間でふたりは作り手としての道をしっかりと着実に進み続けてきたんだということ。そして、今まさに次のステージに向かうところなのかもしれないということだった。

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Chappoの作る帽子は、いまや手紙社のイベントや各地で行われている青空市では絶大な人気を誇る。もみじ市に出店してくれている作家さんをはじめ、クリエイターの中にも愛用をする人は多い。今年7月、蔵前のカワウソで行われた展示には、たくさんの作り手がChappoの帽子を被って、大沼ショージさんのポートレートに収まっていた。どれも映画の登場人物のように“決まって”いる。身に付ける人の着こなしや写真もさすがだと思うけど、それを引き出しているのは間違いなくChappoの帽子だ。

ふたりはどんなイメージから帽子を生み出しているのだろう。「デザインはどうやって考えてるんですか?」と尋ねてみた。そうしたらはっきりと「デザインはしてないし、できないよ」という答えが返って来た。

「昔の製品を新しくかぶりやすく直してる感じ。デザインはできないからさ、映画を見て、登場人物がどんな帽子をかぶっているかずっと見ていたりするよ。外国の人は、かぶり方がすごくかっこいい。ただ乗っけてるだけなのに様になってて、こんな風に格好良くかぶれる帽子が作りたいなって思うんだよね」

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自分のデザインを誇示したいわけではない。はっきりとそう答えるふたりは、自らのものづくりのスタンスについて、こんな風に話してくれた。

「作家って感じじゃない、かといって職人ともすこし違う。ただの帽子を作る人、かな。沖縄の言葉で帽子を組む人を『帽子くまー』っていうんだけど、それが一番すんなりくる。あぁ、こうなりたいんだなって」(須田さん)
「デザインとかが凝ってるっていうよりは、シンプルですごくいいなっていう帽子を作りたい。製品に近い帽子を作りたい。だから作家とは少し違うのかな」(舩越さん)

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その言葉の奥に、ふたりと出会った時にはまだなかった作り手としての確固たる自信のようなものを感じることができた。言葉に深く強い意思を感じたのだ。「迷走中」とも言っていたけれど、このふたりは迷ってなんかいないと思う。“何か”を掴みかけているだけなのだ、きっと。

「まだまだ中途半端、頭の中に思い描くイメージに追いついてない」
ちょっと悔しそうに須田さんはこういうけれど、その帽子は、どんどんと魅力に深みを増していると思う。

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今回、僕はChappoのふたりと話している中で感じた“何か”を言葉にするつもりでこの原稿に臨んだ。真摯なものづくりのその先に宿すものをどうにか言葉にしようとしてみた。でも、それはどうやら難しそうだ。その“何か”は一つひとつの作業を自らの意思で積み重ね、努力を続ける人が生み出す「もの」にだけ、ただ宿るから。

だから、みなさん。ぜひもみじ市の会場でChappoの帽子を手にとってみてください。きっとあなたの心を掴む“何か”が、そこにあるはずだから。

【Chappo 須田英治さんと舩越由紀子さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
Chappo(シャッポ)と申します。東京下町で帽子を作っています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
茶色と思います。(須田)
白です。(舩越)

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
秋冬のあったか帽子や通年被れるリネンの帽子など、いろいろな生地でいろいろな形の帽子を持って行きたいと思います。一見シンプルな外見でも裏地がカラフルだったり派手だったりの帽子があるので、お手に取って楽しんでいただけたらと思います。僕はいつも服装も土色なのですが、当日はがんばって色付き衣装で楽しみたいと思います!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、栃木からもみじ市に初参加するあのカフェです。屈指の名カフェが名を連ねる栃木県の中にあっても輝く存在感はまさしく栃木の“至宝”。

文●藤枝大裕

アノダッテ「栗色、マロンダッテ」

誰にとっても大切なものがある。「これまでの編集者のキャリアのなかで、もっとも大切な仕事は何か?」と問われたら、ぼくは迷いなく「もみじ市です」と答える。そして、もみじ市の歴史はぼくにとって、アノダッテとの歴史でもある。

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2006年夏、もみじ市前夜。ぼくたちは、初めて行うイベントに参加してくれる作り手を捜していた。「ぼくたち」というのは、ぼく北島勲と、渡辺洋子と、増田千夏。3人で始めたもみじ市。小さな青いジムニーに乗って、3人でどこまでも行った。素晴らしい作家さんがいると聞けば、どこまでも。 そんなある日、ふと手にした雑誌の中に、とても印象的なジャムの瓶があった。家をかたどった手描きのイラストと、「アノダッテ」の文字。この瞬間から今に至るまで、ぼくはずっと恋に落ち続けている。恋の相手はもちろん、アノダッテだ。

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プロの編集者や書き手にとって、「禁句」と言うべき言葉が存在する。そのひとつが、優れた作り手やアスリート、表現者を評するときに用いる「天才」という言葉。しかし、アノダッテのお菓子を食べたとき、それを生み出すふじもとようこさんのことを思い浮かべるとき、ぼくの頭にはいつも、この漢字二文字がよぎる。

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もみじ市の2日間だけ販売する「もみじ市公式ガイドブック」のなかに、「もみじ市名言集」というページがある。これまでのもみじ市の歴史のなかで、出店者やスタッフが発した“名言”をまとめているのだが、そのなかにキノ・イグルーの有坂塁さんの言葉がある(アノダッテのふじもとさんの名言も掲載しているので、ぜひご覧下さい)。

『信頼関係かな』
(キノ・イグルーの有坂塁さんの言葉/「もみじ市って聞いて、ぱっと出てくる言葉は何ですか?」という問いかけに対して)

信頼関係。自分で言うのはちょっとおこがましい気がするけれど、ぼくとアノダッテとの関係は、これにつきると思う。「アノダッテなら大丈夫だ」。ぼくはいつも、こう思っている。アノダッテが作るものなら、とびきりおいしいものに違いない。アノダッテがつくる小屋なら、きっと素敵なものに違いない。アノダッテなら、ぼくが表現したいことをわかってくれるはずだ。アノダッテなら、大丈夫だ。7年前に初めて会った日から今日まで、その思いが汚れたことは一度もない。

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「信頼」とは、一方が信頼し、もう一方が信頼されるという一方通行では決してない。双方に「信頼する」というベクトルが存在し、そのベクトルが同じ値であること、それが本当の信頼関係だと思う。つまりそれは、ある意味勝負なのだ。相手に信頼されうる“力”をこちらも持っていなければいけない。相手のベクトルの値が大きくなった時、こちらもそれに合わせて値を大きくしていかなければいけない。

もみじ市に参加してくれる作り手とぼくたちの関係は、つまりはそういうことだ。単なる出店者と主催者の関係ではない。お互いを表現者として高め合っていく関係。信頼関係のバランスを右肩上がりで保っていく関係。それが、もみじ市なのだ。

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この夏、アノダッテから手紙舎に新しいジャムが届いた。それは、あの定番となっているラベルとは異なる、新しいラベルだった。ふじもとさんの手書きによる英文字のラベル。それを見てぼくは、ふじもとさんにメールをした。
「ジャムのラベル、とっても良いですね。新しいチャレンジ、素敵です。ぼくはこれからも、アノダッテの素晴らしい感性を最も感じられるヤツでいたいです」
ふじもとさんからの返事は、すぐ来た。
「私も、北島さんにほめられ続けるヤツでいたいです」

形があるものはいつかは終わる。もみじ市だって、いつかは終わる。でも、もみじ市が続く限り、ぼくはアノダッテの担当をしたいと思っている。そんな話をしたら、ふじもとさんが言った。
「北島さんが、書くことがなくならないように、がんばらなくちゃ」

そう言うなら、ぼくたちもがんばらなくっちゃ。何を? もちろん、今年のもみじ市を。素晴らしいアノダッテに相応しいイベントに。珠玉のごとき出店者たちに相応しいイベントに。みんなで高め合って来たこの7年間を集約した、唯一無二の場所。それが、もみじ市なのだ。

【アノダッテ ふじもとようこさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
おーきなもみじの木の下でー♪
はじめまして、おやつとジャムのマロンダッテ、 もとい! アノダッテです!

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
もちろん今は、栗色ー!

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
アノダッテらしく、色とりどりのジャムたちでみなさんをお迎えしたいです!
橙色の杏・シックな赤紫の完熟プラム、色も甘みも繊細な白桃・フルーティーな黄金桃・濃い赤紫のまるごといちじく、皮をむいてスモーキーピンクにも変身!
クリーム色した香り高い洋梨・トロピカルイエローのパイナップル・バナナにオレンジ、黒い種までおいしいパッションフルーツ!
真っ赤なりんご・紅東や濃厚な山吹色したパンプキン!
これらのカラフルな色と香りの果物たちを、そのままシンプルに、はたまたさまざまなスパイスや木の実を取り合わせてジャムにしていきます!

そして、
2年ぶりの河原でのライブなおやつは、「モンブラン・パンペルデュ」を!
焼きたてパンペルデュに、その場で絞る自家製モンブランクリームの秋色栗色マロンダッテです!
いつもジャムの隣にちょっこり置いてある焼き菓子は、今回はきなこのような香ばしさがおもしろい、栗粉のクッキーを焼いていきます!
お楽しみにー!
「モンブラン・パンペルデュ」を食べて、栗のお面をつけて、みんなもマロンダッテになろー!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いては、東京の下町で活動を続ける帽子の作り手のあの人たちの登場です。

文●北島勲

福田利之「紙と布」

福田利之、遂に単独名義で出店。

ある年は、tupera tuperaの亀山達矢さんとのコラボレーションユニット「カッパメ」として、またある年には、平澤まりこさん、桑原奈津子さん、山田愛さん、甲斐みのりさんというあまりにも豪華なスペシャルチームを結成して「funchi nu puri(フンチヌプリ)」として。日本屈指のイラストレーター・福田利之さんは、もみじ市に参加してくださる時には必ず、個人名義ではない特別なユニットを組んで私達をワクワクさせてくれていました。

「もみじ市ってお祭りじゃないですか。イラストレーターって基本は地味な仕事なので、もみじ市は外に出ていろんな人と触れ合える絶好の機会。だから、みんなで楽しくできればいいなって思っていたんですけど、そろそろ自分のこともやってみようかなって思ったんです。ちょうど、布も出来上がったので。お祭り気分は変わらないですけどね」 

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福田さんといえばポストカード。今回、もみじ市に合わせて制作していただいた新作もあるとのこと。キャンバスにティッシュペーパーを貼り付け、絵付けをし、インスタントコーヒーとニスを使って仕上げるという、独特の手法。そこから放たれるエネルギーから感じるのは独特の迫力、そして繊細さ。自分が求める質感を求めて、試行錯誤の末、あの表現に落ち着いたと言います。自身を飽きっぽいと自嘲的に言う福田さんも、この技法だけは、自分の手に馴染んだからこそ続けてこられたそうです。 

もみじ市で福田さんがみなさんに発表するのは、ポストカードだけではありません。出店タイトルは「紙と布」。えっ、布? もしかしたらそう思った方も多いのではないでしょうか? そう、福田さんは今年の夏、布を作ったのです。彼のクリエイティビティで様々な種類の布プロダクト製作、発信をしていくブランドとして。その名前は「十布-テンプ-」。十は必ずしも十種類というわけでなく、“たくさんの”という意味を含ませています。布を媒体にして、今後いろんなことにチャレンジしていこうという、福田さんの決意表明なのです。

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第一弾として、大きなガーゼをカラフルな模様で覆った新作「tenp01」を発表しました。そして今後は、刺し子やインドのブロックハンコ、タイシルクなどの展開も考えているとのこと。以前から「布」というジャンルに興味を持っていた福田さん。満を持してテキスタイルの世界に足を踏み入れました。

「布は全くの素人なので初心な感じです。それが面白いんですけどね。慣れないことをやるって面白いです」

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600yellowこれが、「tenp01」の図案。福田さんのイラストをご存知な方ほど、これまでの画風との違いに驚かれるのではないでしょうか? でもね、ちゃんとした理由があるんです。それは、布は布として、絵は絵として使ってもらいたいという福田さんの想いから。

「布を作ることも、イラストレーションの仕事の延長でしかないんです。もともと、一枚の絵を売るというのは、個人的にあまり好きじゃなくて、それよりもプロダクトにして流通させたかった。そうすれば、良いなって思ってくれる人がいたら、遠くに住んでいる人にも持ってもらえるじゃないですか。だからポストカードもたくさん作っているんです。部屋に飾ってもらうのでもいいし、手紙に使ってもらうのでもいいし。ひとりのための一枚の画ではなくて、色んな人のための一枚の絵であってほしいですね」

さらに福田さんは続けます。

「そう考えると、布は、それをカバンにしたり、クッションにしたり、なんでも作れるじゃないですか。だから、ゆくゆくは反物を作りたいんです。たくさんの人の手に渡ってもらえれば、それだけ色々なカタチに変化させてもらえる。そうなったら嬉しいですね。その人の生活の一部になってもらえるといいな、究極は。道は険しいですけどね」

どこまでも先を見据えたような、熱く、強い眼差しで語る福田さん。その瞳にはきっと、自分の布が多くの人の生活に溶け込んだイメージが写っていたに違いありません。

「絵を描く仕事をしている僕らは、ある程度までいくと表現に限界がきてしまう。だから、そこでどうやって違うものにしていくか、そこが勝負の分かれ目。まずは素材を変えてみたり、自分が苦手だなって思うことをわざとしてみる。そうすると、今までにない、違う表現ができたりする。逆に言えば、そういうことをしないと新しいものは生まれない。でもね、表現はそこから広がっていくんです」

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「表現」することに対して貪欲に、そして真っ直ぐな福田さん。彼はこの先、私達にどのような美しい表現を魅せてくれるのだろう。私は最後にこんな質問を投げかけてみました。

「これから、どんな表現をしたいと思っていますか?」

少しの沈黙の後、福田さんは、まずは「ものをつくる」ということについて、話し始めてくれました。

「良いものをつくるって、時間とお金のいちばんバランスの良いところでつくることだと思うんです。それが、永遠のテーマ。だからそのためには、僕もきちんと時間をつくらないといけないし、お金をかけるところもしっかりと見極めないといけない。しかも、それを完璧にできたとしても、成功するのは何%とかなんです。自分がイケるぞって思ったものがお客さんの心には響かないことだってしょっちゅうありますよ。でも、だからこそ、ものをつくるって面白いんです」

さらに、この先の展望について、こう続けます。

「僕も決して若くない歳なので、着地の仕方も考えますよ、正直なところ。会社をやっているわけでもなければ、弟子がいるわけでもない。それでもやっぱり描く仕事は好きなので続けていくつもりです。でも好きじゃなくなったらもしかしたらやめちゃうかも。そのかわり、面白そうなことがあれば、どんなことでもやっていこうと思っています。垣根をつくらずに、やっていこうと思います」

どこまでもチャレンジングなその姿勢。福田利之が初めて個人名義で挑むもみじ市。どうかみなさんには、彼のその“熱い想い”を存分に感じてもらいたいと思います。

最後に、今年の8月に手紙社が開催した「第2回 かわいい布博」に「十布」として出店してくれた福田さんから、数日後に届いたメールの一文を紹介して、この文章を締めさせていただきます。この言葉、久しぶりにシビれたなあ。

「僕にとっては久しぶりのアウェー感、3日間いろいろ勉強になりました。井の中の蛙にならないために、今後も違う分野でも挑戦していきたいと思います」

イラストレーター・福田利之。彼の飽くなき挑戦は続きます。

【福田利之さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
何度かグループで参加させていただいているもみじ市ですが、今回はじめて一人での参加になります。普段制作している紙ものの商品の他、今年の春から十布(tenp)というブランドで布を扱った商品展開をはじめました。

十布−テンプ− http://www.tenp10.com/contents.html

紙もの布ものふくめて、もみじ市で初めて発表する新作を多数ご用意してお待ちしています。お気軽にお声掛けください。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
青です。もみじ市当日晴れますように。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
50種類ほどのポストカードやラッピングペーパー、大きな布や、限りがありますが布の計り売りなど。まじめに地味に気持ちはカラフルにがんばります。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、もみじ市のおやつシーンを支えるあの人たちの登場です! 今年はどんな美味しいものを用意してくれるのでしょうか?

文●加藤周一

杉田明彦「漆工」

自分といっしょに年をとっていく、そんな一生ものの漆の器はいかがでしょうか。軽くて丈夫で、つるんとした上品な佇まいに、心ひかれることと思います。

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「漆」。少し敷居が高く感じるかもしれません。実家にならある、という方もいるでしょう。お正月のおせち料理のお重を思い浮かべる方もいるでしょう。いつ使えばいいのかわからず、仕舞い込んでいる方もいるかもしれません。高級なものだし、手入れもわからないし、どうやって使えばいいのか見当がつかない方もいると思います。

漆器は使っていくと若干の傷はついていきますし、やつれて体積が減り木目が浮いてきます。時間が経つほどに硬化していきます。毎日触れ、口をつけるお椀は、自分の手の脂なども馴染んでいき、つやっとした表情も見せてくれます。

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もみじ市史上、初めてとなる漆の作家さん、漆工の杉田明彦さんをご紹介します。杉田さんは手打蕎麦屋で修行後、「茶の箱」という本に感銘を受け、塗師の赤木明登さんの門をたたきました。4年間の修行と2年間の御礼奉公、計6年の修行を経て、今年4月に独立しました。

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海と山に囲まれた自然豊かな石川県輪島市に、杉田さんの工房があります。神聖なる空気が流れているような気がする薄暗い工房は、漆を塗る場所、乾かす場所など、作業ごとに空間が分けられています。

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塗って、乾かして、塗って、乾かして、を繰り返す作業。下地を4回、中塗りを2回、そのあとに仕上げの上塗りをします。押し入れのような部屋の中に並べられたお椀は、塗った漆が垂れてこないように10分ごとに回転する仕組みになっており、細かい塵もつかないように整えられ、湿度と温度を調整して24時間かけて乾燥させます。とても繊細な作業です。

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昔から、分担作業で作られてきた漆器。型師さんが丸木から削り取ったものを、木地師さんがひとつひとつ手で確認しながら、お椀の形にしていきます。おがくずを燃やした燻煙加工で木を乾燥させ、中にいる小さな虫なども処理しています。杉田さんも、信頼する木地師さんに、大きさや厚さはもちろん、その湾曲の具合などを細かく注文していています。手に優しく馴染むその形は、杉田さんがデザインしたオリジナルの形なのです。

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自らのことを「漆工」と呼ぶ杉田さん。
「塗師と言ったら職人のかっこよさがある。憧れるけど自分では名乗りづらい。でも作家などと、大きくも言えない。もっと僕らの世代はフラットでいいんじゃないかな。金属工芸の人は金工っていうから、じゃあ漆工でいいんじゃないかな、と。普段の延長で、肩をはらない漆工。考え方がかわればまた変えるかもしれないけれど。」

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杉田さんの二人のお子さんは、生まれた時から漆の飯椀と汁碗を使っているそう。漆は木から採れる樹液なので、体にも環境にも優しい天然素材。子どもにも安心して使っていただける器なのです。

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さて、みなさんがきっと気になっているお手入れの話。「たいへんそう」というイメージを抱いている方も多いかもしれませんが、さにあらず。直射日光にあてない、水につけっぱなしにしない、柔らかいスポンジで洗うなど、ごく普通のことに注意すれば、とても長持ちするのです。

そう、漆器とは、日常的に使ってほしい器。丈夫で、美しく、口当たりがなめらかな漆器は、「毎日の暮らしにそれがあるだけで人生は豊かになる」と言っても言い過ぎではないと思うのです。

「自分といっしょに歳をとっていく様子も楽しんでもらいたいんです」
杉田さんはそう言います。実は、杉田さんは基本無料で漆の塗り直しをしています。長く長く使ってもらえるように。人生を漆器と一緒に歩んでもらえるように。

もみじ市初出店となる杉田さん。今回は、定番のお椀をはじめ、使いやすい形のお皿、マットな質感のものも持ってきてくださいます。ぜひ、杉田さんの漆器を、その美しさを見ていただきたいと思います。

何度も何度も塗り重ねられた美しい漆の器を、明日から食卓に並べてみませんか。漆器とは、普段使いの器なのです。

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【杉田明彦さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
1978年 東京都文京区生まれ。
学習院文学部哲学科中退
手打蕎麦店での修業の後、07年に輪島へ。
塗師 赤木明登のもとで修業、今年4月に独立。
10月より金沢にて活動。

Q2.今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
椀、皿、鉢、板など。

すみません、これという演出は考えていません。一人一色あればいいのかなとも思います。漆の色は基本は黒です。(細かく言えば濃い飴色ですが)今はそこに顔料を入れていろいろな色を出すこともできますが、黒の中にも微妙な色相の差や、また質感・奥行の違いが出るのでそこが魅力だと思っています。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

続いては、日本を代表すると言っても過言ではないあのイラストレーターさんです。今回は紙だけでなく“布”のものもご用意してくれるそうですよ!

文●鈴木 静華

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拝啓:山口佳子さま

佳子さんと初めて挨拶をしたのは、たしかちょうど2年前、2011年もみじ市の時でした。kata kataが描いてくれたメインビジュアルの富士山を、立体にして、木でつくって持って来てくれたときでしたね。その前にも、もみじ市で何度か顔を合わせているかもしれませんが、初めてきちんと挨拶したのはあの時だったと思います。

それから、佳子さんとは頻繁に顔を合わせることになりましたね。雑貨店で使う什器をつくったり、つつじヶ丘店の机をつくったりという細かい仕事から、手紙社のふたつ目のお店である手紙舎 2nd STORYをつくるという大きな仕事まで、どんな仕事でもお任せできてしまうとても頼りになる存在です。東京蚤の市では毎回、古材を使ったワークショップを考えてくれて、普段はノコギリを握ることも無いような女性や子どもが楽しんで工作をする風景は、あのイベントの名物になりつつあるのではないでしょうか。

以前、一緒にお昼を食べていた時、「カフェをやるのが夢なんだよね」と話してくれたこと憶えていますか? 佳子さんと会うと、よくその時のことを思い出します。

2nd STORYをパートナーの前川さんとふたりでつくっている背中をみながら、いつか自分がつくるお店を思い描きながらつくってくれているのかな、なんてことを思っていました。

僕たちにとって、とても思い入れのある2nd STORYですが、佳子さんがつくってくれたカウンターは、その中でも特に僕が大好きな場所です。点灯式の日、カウンターに座って前川さんとビールを飲みながら、佳子さんが愛おしそうに座っている姿をみて、僕はなんだか心が暖かくなりました。

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今回のもみじ市では仲間である、水口比佐子さん、吉越佐知子さん、松岡良美さんと一緒に女性4人で「bocca」というユニットを結成して、出店してくださるのですよね。

水口さんは、吉越さんと一緒にフォルツァートという会社をやっていて、そこで造形の仕事だったり、陶のものを焼いていたり、お菓子を作っていたりと幅広く活動されている方でしたね。例の富士山の上に乗っているスエヒロガリーノというキャラクターをつくってくれたのも水口さんなのですよね。発泡スチロールを使って見事なまでに、kata kataの絵に描かれていたスエヒロガリーノが立体になっていて、思わずみんなで歓声を上げたものです。

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もみじ市では、水口さんと吉越さんでカラフルな陶のものをつくり、佳子さんと松岡さんで手づくりの木のものを販売したり、木工のワークショップをやったりと実にいろいろなことを企画してくれていますよね。そうだ、それとは別に、事務局からお願いしたあの件もあるんでしたね。楽しみだなぁ。

取材に訪れたとき、仲間と一緒に笑ったり、冗談を言ってる佳子さんがとても自然で、楽しそうで、印象的でした。佳子さんが心を許した仲間といる姿を見るのは初めてで、とても新鮮だったのです。そんな様子を見て、boccaはとても愉快で楽しいブースを作って、もみじ市を盛り上げてくれると確信しました。

佳子さん、いつもありがとう。お世話になっているのに普段はなかなか面と向かってお礼を伝えることもできていなかったから、こうして機会がつくれたことがうれしいです。もみじ市、楽しみにしていますね。boccaのみなさん、どうぞよろしくお願いします。

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<bocca「カラフル木っ端を使った木工ワークショップ」のご案内>

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開催日時:
 10月19日(土)11:30〜15:00
 10月20日(日)11:00〜14:30

参加費:300円(当日のお支払い)
定員:材料がなくなり次第終了
お申し込み方法:事前のお申し込みなしでご参加いただけます。

【boccaのみなさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
ものづくりに興味があった私たちはそれぞれに違う分野の仕事をしてまいりました。あるとき、お互いのしたい事でコラボができたら楽しいのでは? と言う誰かの提案に皆がうなずき、数年後現実になった次第です。自分たちが楽しもう! のコラボですが気に入っていただけたら幸いです。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
山口:黃色
水口:だいだい色
吉越:透明
松岡:青

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
いろいろな木で作ったお皿や小さなイス、お膳と、陶で作った小物やオブジェを合わせて、カラフルなブースを作りたいと思ってます。
あとカラフルに色をぬった木で誰でも簡単に作れる表札や小物の工作ができるワークショップをします。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは9回を重ねるもみじ市の歴史の中でも初めてとなる“漆”の作家。淡く輝く宝石のような作品が並びます。

文●藤枝大裕

つる9テン(つるぎ堂・九ポ堂・knoten)「小さな活版印刷屋」

活版印刷で作品づくりを行っている、つるぎ堂九ポ堂knoten。この3組が今回合同チーム「つる9テン」としてもみじ市に初出店してくれることになり、つるぎ堂の多田陽平さん、九ポ堂の酒井草平さん・葵さんご夫妻、knotenの岡城直子さんに集まってもらい、西国分寺にある九ポ堂さんの工房でお話を伺いました。

-それでは、さっそくですがつる9テンの結成秘話をお聞かせいただけますか?

knoten・岡城直子(敬称略 以下同)
「結成秘話…、あれかな、レジでの会話が始まりかもしれないですね。私と九ポ堂の葵さんが『世界堂』という画材屋さんでアルバイトをしていて、趣味の話になったんです。『分からないと思うけど…活版印刷が好き』と話すと、たまたまお互い好きだったという…(笑)」

九ポ堂・酒井葵
「いま思うとものすごく運命的だよね。同い年でなかなかいない。そんなこんなで仲良くなりつつ、東京で開催された『活版凸凹フェスタ』というイベントにつるぎ堂、九ポ堂、knotenそれぞれが出店していたんです」 

九ポ堂・酒井草平
「つるぎ堂さんが隣のブースで、初めてお会いしたんですけど、つるさん(多田さん)がお昼ごはんを食べに急にいなくなるんですよ(笑)。代わりにレジをしたりして、妙な親近感が湧きました」 

つるぎ堂・多田陽平
「いやー、まったく覚えていないですね…。そのときはお世話になりました」

九ポ堂・酒井草平
「その後もイベントでちょくちょく顔を合わせるようになりましたね。そして、2011年5月に行われるはずだった活版凸凹フェスタが、東日本大震災の影響で中止になった時、それぞれ参加の準備はしていたので、3組合同で『ちいさな活版印刷屋の夏休み展』という展示・販売イベントを下北沢で行うことになったのが、つる9テン結成のきっかけですね」 

九ポ堂・酒井葵
「そうそう、それで展示会だから名義を決めなきゃ、という話になったんだよね。そしたらつるさんが『つるぎ堂、九ポ堂、knoten、それぞれの文字をとって、つる9テンでいいんじゃないですか』って。つるさんは、いつも気楽に決めちゃいます」 

–なるほど、つる9テンの名付け親は多田さんだったんですね! それでは、次の質問ですが、こうしてグループとして活動することで得られるメリットはありますか?

つるぎ堂・多田陽平
「イベントに出るときは参加費が割り勘になっていい(笑)」 

九ポ堂・酒井葵
「たしかにそうだけど、つるさんもっと良いこと言わないと! 3組の絵柄のテイストがまったく異なるので、お客さんの幅が広がりますね。knotenは女の子に人気で、つるぎ堂はマニア向けというかアートに興味がある人、九ポ堂は漫画や絵本が好きな人に好まれることが多いかな」 

knoten・岡城直子
「あとは、狭い業界なので情報交換が出来ることですね。どこの紙・インキが良いか、お付き合いのある業者さんを紹介してもらったり。集まればすぐに印刷技術などの話になりますね。得意分野もそれぞれ違います」

九ポ堂・酒井葵
「そうだね、なおちゃん(岡城さん)は色んな人とつながりを持っていて、営業力がある。元々、手紙社さんのイベントに呼んでもらえたのもそれがきっかけ。九ポ堂はデータ処理を担当することが多いかな」 

九ポ堂・酒井草平
「つるぎ堂さんは…語学が堪能で、木工が得意」 

つるぎ堂・多田陽平
「どっちも活版に関係ないじゃないですか(笑)」 

-3組でテイストも出来ることも違うからこそ、活動にも幅が生まれているんですね。これもぜひお聞きしたい質問ですが、皆さんそれぞれの作品に対して、どういった印象をお持ちですか?

九ポ堂・酒井草平
「つるぎ堂さんは、つるぎ堂さんにしか描けない世界がありますね。人と視点が絶対ちがうし、独創的。“あ”しかないカルタなんて、普通思いつかない。『あるぱか もこもこ やさしいこ』『あるぱかに にているひとに こいをした』『あるぱかに きいても なにも わかりません』だっけ。ああ、ちゃんとカルタ覚えてますね。やっぱり商品と絵柄がユニークで印象的だから」

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–つるぎ堂さんの作品のモチーフは、ロシアのマトリョーシカや日本のこけしなど昔からある郷土玩具であったり、かわいいアルパカだったり、どういったチョイスで選ばれているのでしょうか?

つるぎ堂・多田陽平
「考え方としては、頭の中でいろんなものをコラージュしていって、これおかしな組み合わせだな、というものを探っていくんです。それで、“これだ”と思ったものを描く、という感じです。何と組み合わせても変な感じが出しやすいものを使っている気がします」

九ポ堂・酒井草平
「イラストと組み合わせる言葉も素晴らしい。九ポ堂は小ネタを交ぜて長々と文章を載せるけど、つるぎ堂さんは一行で“仕留める”感じ。バレンタインデー用のカードを作ったときに、『月がきれいですね』という一文を載せていて、これはやられた、と思いましたね。夏目漱石が『I LOVE YOU』を和訳したときに用いた言葉です」 

–九ポ堂さんの作品はいかがですか?

knoten・岡城直子
「九ポ堂さんは、“物語”を生み出す力がすごいですね。夫婦で熱く討論しながら作っている姿をよく見ます。でも、ポストカードだけで終わらせるのはもったいないくらい素敵。本にしたらいいな、と思うくらい」

九ポ堂・酒井草平
「そうだね、最終的にはピクサー社に映画化してもらうつもりでいます(笑)。僕らはネタづくりが大変ですね。印刷をおざなりにしてはいけませんが…やはり“ストーリー”が作品づくりの中心になっています。『雲乃上商店街』『でんでん商店街』など架空の商店街にあるお店を一枚のポストカードに表現した“架空商店街シリーズ”も目指せ100店舗でやっています」

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–九ポ堂のお二人、そして私も好きな小説家・森見登美彦さんの小説の文中には、別の作品のキャラクターがさりげなく出て来たりしますよね。同じひとつの世界で起きていることが分かったとき、ちょっとうれしくなります。九ポ堂さんのつくる世界は、どんな世界でしょうか? 

九ポ堂・酒井草平
「実は、僕らの作品も同じように、別々の作品がひとつの世界になるようにしたいと考えています。ポストカードを見て、ぜひそのつながりを見つけてほしいですね。そういった一つひとつの場所をつなげて立体的に構築しようとするところも、物語が好きだからかな」

–物語を生み出すにあたって、どんなものから影響を受けたり、インスピレーションを得ていますか?

九ポ堂・酒井葵
「二人とも好きなのは、小説家・稲垣足穂さんや、彼に影響を受けたであろう絵本作家・たむらしげるさん。物語の考え方は、漫画家・畑中純さんから影響を受けています。現実とファンタジーの間をいくストーリーがやはり好きです。あとは、ティム・バートン監督のクレイアニメのメイキング映像など、アニメーションのキャラクターがつくられる過程にも感動を覚えますね。物語には欠かせないキャラクターも私たちにとっては大切な存在です」

–knotenさんの作品も他の2組とは異なる世界観がありますが、いかがでしょうか?

九ポ堂・酒井葵
「私たちがつくる商品に比べて、お客さんが主役になれるアイテムが多い気がします。たとえば、文字を書くスペースがあったり、淡い色合いだったり。いろんな人に受け入れられやすいところがあるよね」

knoten・岡城直子
「私たちは手紙を出すのが好きなので、手紙が出しやすいように季節感を意識しています。四季の星座がモチーフのカードもそうして出来ました」 

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–knotenさんは3人で活動されていますが、どういう流れでアイテムが生まれていきますか? 

「私は絵が下手なので、イラストは他の2人に任せて紙選びと製版を担当しています。あと、こんな絵柄を描いてほしい、こんなレターセットがほしい、というような話はよくしますね。自分が好きなものを作りたい。結構わがままなんです」

九ポ堂・酒井葵
「なおちゃんは企画プロデュースをやってるんだね。ある意味デザインをやっている。アートディレクターだ。客観的に見れるからこそ、若い女の子もほしがるものが作れるんじゃないかな」

–それぞれの作品が生まれるバックグラウンドなど、貴重なお話をありがとうございました! 

見る人を不思議な世界へと連れ去るつるぎ堂。こんな世界があったらいいな、そんな誰しもがもつ空想を形にして見せてくれる九ポ堂。思わず使いたくなるようなアイテムで私たちの暮らしを彩ってくれるknoten。今回のもみじ市にはそれぞれの商品販売の他、秋のモチーフを自分で選んで活版印刷でプリントできるレターセットのワークショップも開催してくれるそう。活版印刷機に触れて、自分の手でプレスできる貴重な機会です。つるぎ堂のユニークさ、九ポ堂の物語、knotenの季節感。それぞれがぎゅっと詰まったあなただけの作品がきっとつくれるはず。

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<つる9テン ワークショップ「秋色だより〜秋模様のレターセットを印刷しよう」のご案内>

キノコや虫、枯れ葉、紅葉など秋模様のモチーフを自由に組み合わせてオリジナルレターセットを活版印刷でつくるワークショップを行います。日本製とイギリス製の手動活版印刷機3台を使って、便せんの罫線は2色、封筒は1色で印刷して頂きます。便せんは4枚、封筒は2枚、あなただけの秋色だよりをつくりましょう。

開催日時:
10月19日(土)11:00〜15:30

10月20日(日)10:30〜15:00
 

参加費:1,000円(材料費込み、当日のお支払い)

定員:材料がなくなり次第終了とさせていただきます 
お申し込み方法:当日ブースにて直接お申し込みください 

【つる9テンの皆さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
活版印刷作家のつるぎ堂・九ポ堂・knotenの3組が一緒に活動しています。

【つるぎ堂】
実家は70余年続く活版印刷屋。オーダーを受ける傍ら、動物やマトリョーシカなどをモチーフとしたオリジナル商品も作成。ロシア関連イベントやアルパカフェスタなど活版イベント以外にも多数出展。 

【九ポ堂】
「九ポ」とは活字の大きさの9ポイントに由来します。祖父の残した9ポイントの活字と印刷道具を用いて、皆様にニヤリとしていただけるような、物語性のある作品を作れるよう心がけております。

【knoten】
「クノーテン」とはドイツ語で「結び目」という意味です。小さな一枚が、手にとって下さる方々の縁を結んでくれる一枚になるようなものづくりができたらという想いをこめています。季節を感じられるモチーフなどを中心に、紙やインキの色にこだわりながら手キンと呼ばれる手動の活版印刷機で印刷しています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
【つるぎ堂】
こげ茶

【九ポ堂】
あお

【knoten】
みどり

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
【つるぎ堂】
当日のお楽しみ

【九ポ堂】
イエバコ

【knoten】
四季の星座のレターセット

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、2店舗の手紙舎を作ったあの大工さんのチームです。ものづくり好きの仲間と一緒にやってきます!

文●柿本康治

wato kitchen ×ナカキョウ工房「スープとブローチ」(19日)

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スープとブローチ? この屋号に「?」マークが頭に浮かんだ方も多いのではないでしょうか? でもどうかご安心を。私もそのひとりでしたので。「wato kitchen × ナカキョウ工房」という組み合わせは、2012年に手紙社のイベントである「パンフェス」そして「東京蚤の市」でも拝見していました。ですが、正直に申し上げると、この組み合わせって何なんだろう? そんな疑問がいつも私の頭の中を駆け巡っていたのです。

だから、是が非でもそこを聞いてみたかった。聞かずにはいられませんでした。私は挨拶も早々に、ふたりにこんな問いかけをしてみました 

「どうして、この組み合わせなんですか?」

その問いかけ、待ってましたと言わんばかりのニヤリとした表情のwatoさん。開口一番にこのセリフ。
「ひとことで言うと、仲良し!」
続けて中澤さん。
「そして同級生!」 

意外…、いや、むしろ期待通りと言うべきでしょうか。返ってきたのはそんな答え。私の目の前には無邪気に笑い合うふたり。この取材、長くなりそうだな…。こんな思いを抱えながら、ふたりへのインタビューは始まりました。

結論から言います。取材を終えた時の私の気持ちは、とてもシンプルなものでした。
「このふたり、素晴らしい作り手だな」
この想いに辿り着いた経緯、それはひとまず置いておいて、まずは、おふたりのご紹介から始めましょう。

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watoさんは、フードコーディネーターであり、管理栄養士でもあり、イラストレーターでもある多才な人。主宰するケータリングサービス「wato kitchen」は、今年の9月15日に11周年を迎えました。雑誌やラジオなどで活躍の場を広げているwatoさん。ご存知の方も多いのではないでしょうか? 今回、もみじ市にご参加いただくのは、2011年に続いて2回目となります。

そして、ナカキョウ工房として活動をされている中澤京子さんは、今回、もみじ市初参加。ブローチやピアスなど、身に付けられる作品(アクセサリー)を中心に制作する作家さんです。柿渋布や皮革を使い、色鮮やかな糸で刺繍を施した作品は、今年のもみじ市のテーマ、「カラフル」にぴったり。現在は、鬼子母神で開催されている手作り市が活動のベースとなっており、制作と並行して、多いときには月3回ほど様々な手作り市に参加するなど、多忙な日々を過ごされています。

そんなふたりの出会いは13年前、2000年にまで遡ります。同じイラストスクールに通っっていたことがきっかけで仲良くなり、その後バリで1カ月一緒に暮らしたそう(周囲が“怪しむ”ほど仲良しだったとのこと)。バリから帰国後まもなく、ふたりは創作ユニットを結成します。

「一週間に何度も会っていましたね。一緒にものを作ったり、友人の誕生日にプレゼントを作ったりしました」(watoさん)

「作ること自体はもちろん好きだったんですけど、とにかく人が喜んでくれることが嬉しかったんです。ニヤニヤさせたかったんです」(中澤さん)

その後、ユニットの活動をよそに、先んじて公の活躍の場に恵まれたのはwatoさんでした。2002年にフードコーディネーターとして独立し、「wato kitchen」としてケータリングサービスを立ち上げたことが、そのきっかけです。対して中澤さんは、持ち前の人見知り(中澤さんはご自身のことを「もじ子」と呼びます)が邪魔して、なかなか活動の場を広げられずにいました。作ってはいるけど、ただ作っているだけ。そんな日々が続いていました。中澤さんは、もみじ市が狛江市の泉龍寺で開催されている頃、お客様として、足を運んでくれていたこともあったそうです。

「一緒に行った友人と、いつか自分達もこんなイベントに参加できたらいいねって言いながら、相変わらずもじもじしていました」

転機が訪れたのは、2009年の11月のことでした。watoさんが、自身が主宰するイベントに中澤さんを誘ったのです。

「ずっと、制作を続けていることは知っていたし、やっぱりその作品が純粋に好きだったから、おこがましい言い方になってしまうかもしれないけれど、応援したかったんです」(watoさん)

「初めは絶対無理だって思っていたんですけど、watoが言うならと思って、思い切って参加してみたんです。そしたらその時に用意した、エスキモーインド人とパンジーのブローチが全部売れたんです。自分が作ったものを、お金を出して買ってくれる人がいるんだなって。素直に嬉しかったですね」(中澤さん)

それ以降、中澤さんは積極的に手作り市に参加するようになります。参加を繰り返していくうちに、手もどんどん動いていきました。その段階で、(手を抜かない)プロへの自覚が芽生えたと言います。

「やっと、楽しいお店ができたな」

これはwatoさんの言葉。2012年のパンフェスと東京蚤の市に「wato kitchen × ナカキョウ工房」として参加したいただいたとき、watoさんはこんな想いを秘かに抱いていたそうです。

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watoさんはケータリングの魅力についてこのように話してくれました。

「相手の要望にいかに応えるか。それがケータリングの醍醐味です。その場所、人に合った食事を、ちゃんと提供をしたいですね。身体はもちろん、それと一緒に、気持ちも元気で健康になってほしいんです」

ときに、watoさんは、思わず誰もが幸せになってしまうあるイタズラを仕込みます。 

「料理を仕込んでいるときに想像するのは、もちろん喜んでもらう姿なわけだけど、そのときに、ひとつ自分なりの企みを忍ばせるんです。要望されたこと以外にこうもやっちゃえ! とか。全ては明かさずに現場に行くんです。そうすると、皆の驚く反応が嬉しくて、ひとりでニヤニヤしちゃうんです」 

一方、ナカキョウ工房と言えば、ブローチ。ユニークでカラフルなキャラクターが特徴的。そんなイメージが、もしかしたら定着しつつあるのかもしれません。けれど、中澤さんは自身が制作するブローチに対する想いを、このように話します。

「とにかく身に付けたかったんです。そうすれば、作品を自分の傍に置いておけるじゃないですか。ブローチってピンをつければ成立するものなので。それに私、イラストの学校に通っていたんですけど、工作とか手芸のように、手を動かして切ったり貼ったりすることの方が好きだったんですよね」

もともと、気に入ったものがあればずっとそればかりで、いわゆるアクセサリーを積極的に楽しむタイプではなかったという中澤さん。正確には、身に付けたいと思えるようなアクセサリーがなかったというのが正しいのかもしれません。そんな中澤さんが、自分が身に付けたいなと思えるもの、そして、自身の作品をそれと照らし合わせたとき、「ブローチ」として見事に当てはまったのです。

「ブローチじゃなきゃダメってことでは全くないんです。希望をいただければもっと色々なものを作ってみたいし。ヘアピン、ヘアゴム、バッグチャームとか。身に付けている人が嬉しそうにしてくれることが、一番嬉しいので」

 「スープ」と「ブローチ」。作るジャンルこそまるで違うけれど、ふたりの創作の先には、必ず、楽しんでもらいたい“相手”が存在しています。話を聞いているだけで、こちらも自然と笑顔がこぼれてきます。

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インタビューもそろそろ終盤。最後に私は、おふたりにお互いがお互いに感じている作品の魅力を聞いてみたくなりました。 

「もうね、常に身につけていますよ。だって、純粋に可愛いじゃないですか。洋服を買いに行くと、店員さんからすごく羨ましがられるんですよ。それを誇らしげに思ったり(笑)。それに、ただの友達だからっていう理由だけだったら、もみじ市には絶対誘いません」(watoさん)

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「食べると本当に元気になるんです。もう、“本当に”元気になるんです!!」(中澤さん) 

中澤さんは、1年程前に一度、制作に没頭するあまり、食事は主に食パンという、そんな生 活が続く日があったそうです。倒れそうなくらいへとへとになってしまった時、あるスープに手を伸ばしました。何を隠そう、それはwatoさんからもらっていたスープ。大切に大切に少しずつ飲んでいた冷凍ストックの、最後のひとつだったのです。口にした瞬間、エネルギーがみなぎって、思わず走り出したくなる程だったそうです。

「私、たまにwatoのケータリングのお手伝いもするんですけど、その時に、彼女、『美味しくなーれって言えば美味しくなるんだよー』っていいながら、ものすごい速さで食材を切ったり、おにぎりを握るんです。でも、その一件があってからは、本当にその通りだなって思うようになりました。人が愛情をかけて何かを作るっていうことの力を感じましたね」

お互いがお互いを、友として、そして作り手として、尊敬し合っていることを強く感じた瞬間でした。

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カラフルなスープとブローチで、身体の内側と外側から、カラフルに彩ってもらいたい。おふたりはこんな想いを抱いて多摩川河川敷にやってきます。watoさんは前回のもみじ市でも大人気だった、いものこ汁で「カラフルいものこ会」を開催してくれるそう。そして、中澤さんは自身の創作の原点である、エスキモーインド人ブローチとパンジーのブローチを先頭に引き連れて、みなさまをカラフルな装いにしてくれるようなアクセサリーを、たっぷりとお持ちいただけるようですよ。

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イラストスクールで出会ったふたりの女性は、それぞれが信じる道をひたむきに進み、13年という時を経た今、誰もが認める作り手として活躍しています。そんなふたりが、唯一無二の親友として、素晴らしきプロの作り手として、手を取り合って、もみじ市に参加してくれること。そのことを、ただただ嬉しく思います。当日はおふたりの間に漂う多幸感に溢れた空気もぜひ感じてみてくださいね。

「ニヤニヤさせてやろう!」

そんな企みを考えながら、ふたりは満面の笑みで、みなさんを多摩川河川敷で迎えてくれることでしょう。

【wato kitchen × ナカキョウ工房さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
【wato kitchen】
こんにちは、フードコーディネーターのwatoです。栄養士としての病院勤務、スープ専門店のメニュー開発などを経て、現在はフリーランスで雑誌などにレシピ紹介をしたり、wato kitchenの名前でイベントに出向いてごはんを作ったりしています。

【ナカキョウ工房】
ナカキョウ工房の中澤京子です。手刺繍と柿渋布や皮革を使って主にブローチをつくっています。手にした人、見つけた人の口元が思わずゆるむような作品作りを心がけています。もみじ市への出店はこれが初めてです。憧れがつまったもみじ市へ参加できますこと、ドキドキわくわくしております。wato kitchenのスープと一緒に、目でも舌でも『カラフル』を楽しんでください!

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
【wato kitchen】
わかりません…。丸一日考えたけど、自分が何色かはよくわかりませんでした。ごめんなさい!

ちなみに好きな色は、白(生成色)と黄(からし色)です! 白はどんな色も受け止めてくれて、黄色はどんな色もつなげてくれるので。わたしもそうありたい。

【ナカキョウ工房】
好みの青緑を見かけた時、みぞおちがきゅーっとなるときめきがあります。この感覚は独特なので、きっと「わたしのいろ」なんだと思います。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
【wato kitchen】
前回に引き続き、ふるさと岩手の秋の風物詩「いものこ会」を楽しんでいただきたく、「いものこ汁」を用意いたします(いものこ会とは、河原に敷物を敷いてみんなでいものこ汁をつつきながらわいわいする会です)。

また、今回はカラフル! ということで、いものこ汁以外にもカラフルなスープを作る予定です。敷物を敷いてお待ちしておりますので、お客さま同士おしゃべりを楽しみながらくつろいでくださいね♪

【ナカキョウ工房】
ウキウキするようなブローチをたくさんお持ちします。作家活動をはじめてからずっと作っている顔のブローチ(通称インド人ブローチ)がありまして、カラフル人のお面にはご縁を感じずにはいられません。笑

そんなブローチたちをもみじ市仕様でますますカラフルにして、会場にあふれるであろうカラフル人たちの仲間入りをさせたいと思っています。その他は会場でのお楽しみ…です!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

続いてご紹介するのは、活版印刷に魅了された3組の合同出店です!

文●加藤周一

ルヴァン「天然酵母パン&パイ」

まるでひとつの大きな家族のようだ。

そのお店とそこを訪れる人々の関係性を言葉にしようとしたらこんな言葉が浮かんできた。

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渋谷区富ケ谷。代々木上原の駅の方から井の頭通りの坂をちょうど降りきったところに、天然酵母パンのお店「ルヴァン」はある。20年以上の歴史を持ち、日本に天然酵母のパンをここまで根付かせた、我が国のパンの歴史を語る上で欠かせないお店だ。

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店内にある石窯で焼くルヴァンのパンは、長い間受け継いできた自家製の酵母と国産の麦を使い、どっしりとたくましく、噛めば酵母の酸味や小麦の香りがふんわりと立ち上る。さらに噛むと甘みが口の中を満たしていく。噛めば噛むほど甘みは増してくる。一度、それを体験してしまったら、もうこのお店の虜だ。

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「こんにちは!」「この間はありがとう」「久しぶり、お元気でしたか?」
店内ではいつも親しげな挨拶が交わされている。ルヴァンを知ってからもう何度もこのお店を訪れているけれど、いつもこんな具合だ。そして、ここで働く人はみんな活力に満ちたとても良い顔をしている。いつ何時に訪れても、帰ってきた家族を「おかえり」と迎えるような、そんな笑顔を向けてくれる。パンの味ももちろんあるけれど、この親密な空気に触れたくてついつい足を運びたくなってしまうのだ。

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オーナーは甲田幹夫さん。家族の長。いつも笑顔の、だけど強烈な求心力の持ち主だ。甲田さんが店にいると、お客様はみんなみんなにひっきりなしに声をかける。お店を訪れる人はもちろん、お店の前を自転車で通り過ぎる人さえも、甲田さんの顔をみて、「あら、こんにちは!」と声をかけていく。東京の真ん中で、こんな光景が繰り広げられていることが、すごいと思う。

IMG_4633隣に併設するカフェ「ル・シャレ」では、パンのプレートや珈琲を楽しめる。

「お店は人だからね」
甲田さんは言う。
「お客さんが来た時に感じる心地よさ。それがなんなのかをいつも考えながらやってるよ。例えば、お客さんがカフェに通う理由って、美味しい珈琲を飲みに行くってことはあるけど、あの人がいるから行くってこともあるよね」

IMG_4651この夏より始めた“かきごおり”。「ずっとやりたかった」という甲田さんが自ら作ってくれた。

「うちの場合、お店に段差がないでしょう? お店の前を通る人も、お客さんも、スタッフもみんな同じレベルで接している。すると、前までお客さんだった人が働いてくれたり、働いていたひとがまたお客さんになっていたりしてくれて、みんなつながってくれる。そういうのが良い空気を作ってくれている気がするな」

働く人もできるだけ、自由に伸び伸びと働けるように考えているという甲田さん。その成果は、ルヴァンで修行し、独立した数々のお店の活躍が物語っているだろう。巣立って行ったお店は両手でも数えきれないほどで、名前を挙げればそうそうたる面々が顔をそろえる。

卒業後も機会がある毎にお店を訪れたり、来てもらえたりと変わらず交流があったりもするそうだ。そんなつながりの深さも「大きな家族」のようだと感じる理由の1つかもしれない。

もみじ市でもたくさんのお客さんを包み込んで、“家族”の輪に加えてくれるのではないだろうか。

ルヴァンに流れるこの親密な空気が、あの河川敷でも流れるのだ。

【ルヴァン 甲田幹夫さん、まこさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
はじめての方も、いつも来てくれている方も、こんにちは。パン屋のルヴァンです。

一口食べると、お口がほろんで、二口食べると、お顔がにっこり、三口食べると大好きな人たちと分かちあいたくなるパン。そんなパンをお届けするのが私たちという気持ちで「おいしいパン焼けました、いかがですか~。」と歌っています。
どんなパン屋かな? 気になりましたら、寄ってみてくださいね。四口目に起こることが…わかるかもですよ。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
私たちは「カンパーニュ色」。カンパーニュ色はパン色でもないし、茶色でもないんです。おいしさの色です。

どんなオイルにも合うし、お惣菜にもあう。彩り鮮やかなジャムにもあう。そうとう、かっこいい色なんです。

幸せな人を彩る色でもあり、人を幸せにする可能性を秘めた色でもあります。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
幸せとおいしさが詰まったパンたち。色は季節の色が、自然の色が表現できたらいいな。お楽しみに…

演出は、自然体のルヴァン。なにが飛び出すやら、かな。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、キュートな笑顔のフードコーディネーターとブローチ作家のあのコンビです!

文●藤枝大裕

祖敷大輔と根本真路「絵と雑貨」

緊張をまぎらわせるために大きく深呼吸し、息をととのえる。ゆっくりとトビラが開き迎えてくれたのは、もしかしたら私よりもちょっと緊張しているかもしれないふたりだった。 

雑誌・書籍の表紙や挿絵を手がけるイラストレーターの祖敷大輔さん。書籍のデザインなど印刷物のデザインを手がけるデザイナーの根本真路さん。フリーランスとしてそれぞれ活動をするふたりは今、三鷹にあるビルの一室を事務所とし、同じ空間で仕事をしている。 

いつかは、オリジナルのグッズを作りたいと思っていた祖敷さんに、もみじ市事務局のスタッフが出店の声をかけたのは2年前。その話を受けて祖敷さんが協力を求めたのが、一緒に仕事をしたことがある根本さんだった。

「グッズを作るからデザインを担当してほしいと誘ってもらったんです」

もともと祖敷さんのファンだった根本さんは、この案件をふたつ返事で快諾。初めてふたりで作ったポストカードやメッセージカードは、多摩川の河川敷に並ぶことになる。 

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根本さんが、祖敷さんの存在を知ったのは、現在ポストカードにもなっているゴリラのイラストだ。ある雑誌の1ページにドンと掲載されているのを見て「これ、いい!」とひと目惚れ。そのページを丁寧に切り取り、部屋に飾っておくほど気に入ったのだという。

「いつか一緒に仕事がしたい」

根本さんの中で生まれた野望が叶うのに、時間はそれほどかからなかった。当時、別の雑誌のデザインを担当していた根本さんは、祖敷さんに挿絵を依頼した。 

「根本くんは、仕事を依頼してくれる人の一人でしたよ。だけど、年齢が近かったので話がしやすかったんです」 

何度か仕事をするうちに、ふたりの関係性が少しずつ変わっていく。

「グッズのデザインの話をいただいてから、祖敷さんとの距離がものすごく縮まりました」

もみじ市の出店が、ふたりの大きな転機となったのは言うまでもない。 

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グッズを作る上で、根本さんの存在は必要不可欠だと祖敷さんは言う。

「フリーのイラストレーターになる前は、新聞社の広告局で働いていました。その時の習性といいますか、自分の描くイラストをディレクションするように見てしまうんです。仕事の依頼を受ける時も、イラスト部分がぽっかりと空いたラフが送られてきます。文字が横組だから顔の向きは左がいいとか、全体のバランスを考えて描くことが多いんです。だから、グッズを作るときも『文字とかのせなくて大丈夫? 』って心配して聞いたりしてました」 

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なんとも控えめな祖敷さんの発言に根本さんはいつもこう話す。

「祖敷さんのイラストがいいんです。他は何もいらないんです。それだけでいきましょう!」

絵を描くことに真面目な祖敷さんと、その魅力を誰よりも理解している根本さん。このふたりだからこそ作り出せる世界観がそこにはある。 

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「ここ最近、仕事で依頼があったイラストしか描いていなくて『これではいかん!』と思い、プライベートでも絵を描き始めたんです。その矢先に、今年のもみじ市出店の話をいただきました」

その絵を見せてもらった根本さんはすぐさま、こう答えた。
「すごくいいと思います。今回のグッズはこの絵を使いましょう」

オイルパステルを使って描いた、祖敷さんの絵をいくつか見せてもらった。風景、乗り物、建物、人物。新たに描かれたものには動物以外のものが多くあった。新しく生まれるグッズには、この中のどれかが使われるかもしれない。今あるグッズとはまるっきり違ったものがきっと生まれるんだ。私は、目撃者になった気がして鳥肌が立った。 

個性も役割も異なるふたりが一緒にものづくりをした時、それぞれがそれぞれの力を認め、高め合ったとき、奇跡が起こるのかもしれない。枠にとらわれることなく、自分の殻を破ってしまえるのは、ひとりじゃなく、ふたりだから。久々に制作するというグッズには、ふたりの奇跡がしっかりと刻まれているに違いない。 

【祖敷大輔さんと根本真路さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
イラストレーターの祖敷大輔とデザイナーの根本真路です。2011年から二人でグッズの制作を行っています。 

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
祖敷:白(絵を描くときに大切にしている色) 

根本:青(今年の気分) 

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
書き下ろしのイラストを使ったグッズを販売する予定です。紙もの雑貨以外にも、布を使ったアイテムも用意したいと思っています。もみじ市が、お披露目の場となるのでぜひ見に来てください。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、代々木八幡のあのパン屋さんですよ!

文●新居鮎美

kata kata「型染め・注染・プリント」

松永武さんと高井知絵さんによる型染め・注染のユニット「kata kata」。手ぬぐいをはじめとして、風呂敷、日傘、クッションなどのテキスタイルにまつわる作品を作っている。第1回のもみじ市から参加してくれているふたりは、今ではすっかりもみじ市の顔。今年のもみじ市で前回に引き続きkata kataを担当させてもらうことになった私のもとに、知絵さんからこんなメールが届いた。

「前回のもみじ市ブログを改めて読んだよ。私たちは、上手く言葉にできないからモノを作っている気がするのだけれど、こうやって力強く、完結に言葉に変えてくれるから、なんだか自信をもってもみじ市に参加できるし、kata kataとはこうなんだ! ってことを気づかせてもらってます。ありがとう」

敬愛してやまない一流の作り手が集うもみじ市において、私たち事務局メンバーが担ういちばんの大仕事は、作り手の想いや作品の素晴らしさをより多くの人に伝えるために“ことば”で表現すること。あえて“ことば”にしなくても作品をみればその素晴らしさは一目瞭然で、作品自体がその想いを物語っているのに、それを私の拙い言葉で表現することに、どこか申し訳ない気持ちを抱えていたところもあった。けれど、決して上手ではなくても、“ことば”でしか伝えられない側面や想いがある。だからこそ私たちの役割があって、これこそがもみじ市なのだと改めて気づかされ、背中を押してくれたメールだった。とてもとても嬉しくて、同時に背筋がしゃきっと伸びた。

だから今回も、もみじ市にとって大切なkata kataを、“ことば” で紹介させていただきます。どうぞこの機会に、作品の向こう側にあるおふたりの顔を、想いを、ちょっとだけ覗いてみてください。 

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 kata kataは、“静と動”

“静”は、武さん。「今回はこれに挑戦しよう!」と明確な目的意識を持ち、その姿勢は決してぐらつかない。少しずつ書き溜めたスケッチや断片的な落書きから、その時作りたいモチーフを選ぶ。それはヘビだったり、オオカミだったり、クジラだったり。自分が納得出来るまでじっくりと向き合って完成するデザインは、繊細だけど力強い直線で構成されている。静かで、美しい。

武さんと対照的な知絵さんは“動”。くるくると変わる彼女の表情のように、知絵さんのデザインはとても賑やか。描きたいモチーフがひらめくと、持ち前の集中力を発揮してぱっと勢いよく描きあげてしまう。知絵さんの手によって命を吹き込まれたサーカス団、人形や鳥たちは、今にも手ぬぐいから飛び出してきそうな躍動感に溢れている。作品の作り方も向き合い方も、とても対照的。ふたりの“静と動”の絶妙なバランスから、kata kataの手ぬぐいは生まれている。

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kata kataの、“陰と陽”

ずらっと並ぶ手ぬぐいはカラフルで、まるで絵の具のパレットのよう。鮮やかな水色、ぱっと目をひく赤、眩しい黄色。今までの手ぬぐいのイメージを気持ちよく裏切ってくれる色合いは、描かれるモチーフやデザインによって決められている。この色はどうやって決めているのだろう。

「実は、この水色にはグレーが混ざっています。綺麗な色にグレーや茶色を混ぜることで、その色がぐっと際立って、深みが出るんです。派手に見えるけど、実はいろいろ混ぜているんです」

原色の染料に濁った色をほんの少しずつ混ぜる。そのままの色は使わず、すべて少しずつ濁す。手先を動かして絶妙なさじ加減で、kata kataの色は作り出されている。相性の良い染料、悪い染料。型染めに向いた色合いと、注染の方が表現しやすい色。多くの条件の中で、その色は生まれている。明るくカラフルに見える色でも、それだけではその色の本当の魅力に気づけない。陽の裏には陰がある。陰が陽を引き立てる。そうすることで、鮮やかさがより際立つ。私たちを惹きつけてやまないkata kataの色には、長年の経験から生まれた“陰と陽”の魔法が、ひっそりとかかっている。

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kata kataと、“制約と自由”

「型染め」と呼ばれる染色技法では、下絵に合わせて彫った一枚の大きな型をもとに布を染める。型は繋がっていなければならないため、その中でデザインを決めるという制約がどうしても出てきてしまう。

「ここは途切れないように上手く繋げて、とか、このモチーフとこのモチーフは色を変えたいから離しておかないと、とか、常に頭の中で考えながらデザインをしています。大変だけど、それが型染めの魅力だから、楽しいんですよね」

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型染めを始めてまもなく10年が経とうとしている今年、kata kataは型染めとはまったく異なる技法、プリントの作品を発表した。自らの手で染める作品を中心に作ってきたふたりが、なぜ今プリントなのか。

「型染めや注染で手ぬぐいを作ろうと決めてしまうと、思考も縛られてそれ以上広がらなくなってしまう。もうちょっと考えたら、もっとおもしろいものができるんじゃないかと思いながら作っていたいんです。何を表現したいか、何がいちばん楽しいかをいつも考えています」

そこから生まれたのが、ニワトリ、オオカミ、そしてアホウドリ柄のオリジナルプリント作品。細かなドットが重なるようにして描かれたニワトリは、型染めでは表現することがとても困難なデザイン。少し厚めの生地も、プリントならでは。

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「ワクワクする布を作りたいんです。技法や用途も大事だけれど、まずは絵がある。だから、こういうのはプリントに任せた方がいいなとか、型染めがいいなとか。何を表現したいかによって技法を選んでいるんです」

型染めにある制約とプリントにある自由の中で、布を作りたいという想いに正直に、今日もkata kataはより楽しく表現する方法に想いを巡らせている。 

kata kataは、“来年で10周年!” 

一生懸命に、でも楽しむことを決して忘れずに作り続けてきたkata kata。活動を始めてから10年が経とうとしている。

「作品が受け入れられて売れることは嬉しいです。でも、自分たちも楽しくいたいっていう気持ちもあります。常におもしろいものを作っていたいんです。自分たちが楽しければ、それが伝わって周りも楽しいと思ってくれるんじゃないかと信じてます。自分たちが楽しく熱中出来ることが大事で。それは、この10年ずっと変わっていないし、これからも変わらないと思います」

もみじ市は大人の文化祭だという武さん。来てくれたお客さまの心の中に、少しでも多くの楽しい思い出が残って欲しい。そう願うふたりは、毎回のように楽しい仕掛けを用意してやってきてくれる。今回もいろいろと考えてくれているとのこと。

追加2

いつまでたっても楽しいことに夢中になっていたい。このふたりに会うといつもそう思う。

「カラフル」とは「色彩に富んだ」「華やかな」という意味。いつでも楽しむことを忘れないふたりが作るものは、私たちの生活をより華やかにしてくれる。これまでも、これからも。

 【kata kata 松永武さんと高井知絵さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
型染めと注染と、最近はプリントによるオリジナルの染布を制作しています、kata kataです。布を広げた時に、ものがたりを想像できるような、会話が生まれる作品作りを心がけています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
じゃあ、染料の名前で答えてみようかな。

武さん : グリーンBA (緑)

知絵さん : S・ターキスブルーFBLL 167% (水色)

です。どんな色かは、当日聞いてくださいね。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
今年のテーマ、カラフルですよね。どんぴしゃすぎて困ります! 逆にモノトーンとか作りたくなっちゃいます! というのは冗談ですが、(テーマをおいといて)いつも通りやりたいことやろうと思います。カラフルにとらわれて小さくまとまってしまうことなく、好きなことをやらせていただきます。でも、必ずあなたのこころをカラフルにしますよ。ふぉっふぉっふぉ。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

続いてご紹介するのは、イラストレーションとグラフィックデザインの見事なコラボレーションを実現するあのおふたりです!

文●高松宏美