The Honey Cafe -The butterfly girl-
今年のテーマが「カラフル」に決まった瞬間、真っ先に思い浮かべたのは彼女の作品だった。カラフルな砂を使い、個性的なキャラクター、世界を描きだす砂絵アーティストのNaoshiさん。
カラフルな砂とは対照的に、Naoshiさんのモチーフとなるキャラクターの表情は”真顔”が多い。
「笑顔の人はそれなりに描くけれど、やはり真顔の表情が好きだ。顔に出さずとも感情があふれてしまうこともあったりして、そんな不器用な感じがたまらなく好きである(例えば、悲しいのに悲しくないふりをしたり、嬉しいのに嬉しくないふりをしてみたり)。まぁ、自分自身は喜怒哀楽が隠しきれない人なので、作品とのつじつまが合わないのですが。そんなもんです」
Naoshiさんが日々まっすぐな言葉で日常を語るブログには、作品に込めた思いがこんな風に綴られていた。
満員タルト
彼女との出会いは2年前のもみじ市に遡る。もみじ市は有志が集まってつくりあげるイベントで、中心となるメンバーは事務局と呼ばれ、その年のテーマや企画を決めたり、出店者さんを探したり。また、それぞれが出店者さんを“担当”し、取材に行き、いまみなさんが読んで下さっているブログを書き上げるのだ。3年前にはじめてもみじ市に足を運び、その翌年事務局に参加した私は、右も左も分からないことだらけ。それでも、自分が訪れたもみじ市で感じた高揚感を(秋晴れの下聞こえてくる音楽、子供の笑い声、ただよってくる美味しいものの匂い、キラキラ光る川面、走り抜けていく電車、会場中のすべての要素が溶け合い包み込む言いようのない幸福感)、奇跡の瞬間を、もっと多くの人に知ってほしい、届けたいと、活動に取り組んだ。
その中の大切な仕事のひとつが、新しい出店者さん探し。事務局の先輩たちが話す、「何度ももみじ市に参加してくれている方はまぎれもなくもみじ市に欠かせない大切な人たちなのだけど、初出店の人の存在も、もみじ市には欠かせないものなんだよね。その人たちとの新しい出会いが、出店者にもスタッフにも刺激を与えてくれるんだよ」という言葉に、わたしも新しい風を吹かせるお手伝いがしたいと声をかけた方が、Naoshiさんだった。
Sweets Typhoon -食べちゃおう-
国内外で砂絵のワークショップや個展の開催をしていたNaoshiさんだが、当時は、もみじ市の存在は知らなかったという。そんな彼女に新米事務局の私が会いに行く。いま考えるとかなり周囲の方々をはらはらさせてしまったのではないだろうか。もみじ市を知らないNaoshiさんにその魅力をしっかりと伝えて、本気を出してもらいたい。Naoshiさんが全力で安心して参加できるようにサポートしたい。自分に課せられた任務に一気に高まる緊張と責任感。その時になってはじめて作家さんの担当をもたせてもらうことの重要さを痛感した。それでも、何より心強かったのは、幾度となく交わすメールのやり取りの中で常にポジティブな言葉を送ってくれ、実際にお会いした際にも、私のつたない説明を聞いて「やるからには全力でやりたいです」と言い切ってくれた彼女の一言だった。
Candy girls -あめふるまち-
そして迎えた当日。これでもかというくらい強烈な日差しが照りつける中、Naoshiさんは終始笑顔で元気いっぱいにワークショップを行ってくれた。実は直前までアメリカで個展を開いていて帰国したばかり。十分な休みを取っていない状況での炎天下の作業。砂絵には決して向いているとは言えない屋外でのイベント。本番を迎えてどんな感想を抱いたのか、正直聞くのが怖い部分もあったのだが、もみじ市が終わったあと、Naoshiさんからもらったメールが、すべてを吹き飛ばしてくれた。
「正直準備の時間があまりにも短くて大慌てな部分もあったんですが、空間全体がハッピーに包まれていてもみじ市すごい!の一言でした!参加できて本当によかったです!お誘いありがとうございました!!」
2011年のもみじ市の様子
昨年、もみじ市は開催されなかった。それを、誰よりも惜しんでくれたのがNaoshiさんだ。実は今年の冬、NaoshiさんはLA(ロサンゼルス)へ留学したのだが、「もみじ市があるなら、参加してからLAへ行きたい」と、予定を調整しようとしてくれていたほど。先月行われた、もみじ市2013の決起大会(出店者とスタッフが集った会)の後のご自身のブログでは、こんなことを書いてくれている。
「2年前に初めて参加したとき、こんなお客さん・作家さん・事務局の方々、すべてがアットホームなイベントがあるのだろうか! と一緒にイベントに参加してきた姉と興奮気味に話したのを今でも覚えている。LAに行こうと決めたときも、もみじ市が終わってからにしよう! と思うほどであった(去年は結局開催されなかったのだけど)。決起大会で事務局の方が、もみじ市は世界一のイベントだと思っています、とおっしゃっておったが、その言葉は、大げさではなく本当にその通りだと思う。わたしももみじ市の一員として盛り上げられるよう、がんばります」
2年ぶりのもみじ市のテーマは「カラフル」。Naoshiさんの作品を見て欲しい。これ以上、彼女に相応しいテーマがあるだろうか?LAへの留学を経た彼女はますますパワーアップ、海外をはじめ活動の場所もかなり増えている。
「日本で、海外で、と特にこだわりはなく、お声をかけていただいた展示には、100%納得のいく作品を作ることを心がけています。特に海外の展示はお客さんの反応がわからないので、全ては作品次第。一期一会のチャンスを逃さぬように。という想いで制作しています。それでまた展示のお誘いやいいお話をもらえたら、やったー!となりますね。
あと、海外では”アーティスト”がひとつの職業としてきちんと評価されているのがいいなぁと感じました。語学学校で職業についての授業があったのですが、教科書に”医者” “弁護士” “先生”と代表的な職業が並ぶ中、”アーティスト”という文字を見つけた時は『うわぁっ!』と感激しました。(最後の方でしたが。笑)これは日本にはない感覚だなぁと思いますね。日本でも全力ですが、海外に向けても同じように全力で向かっていきたいです。」
活動の場所は関係ない。ひとりのアーティストとして制作を続ける彼女。強い意志のもと、活動の拠点はどんどん広がっている。イギリス発のブログで作品が紹介されたり、もみじ市の後には台北でのアートフェアが待っている。
2013年3月にLAのQpop shop and gallryで開催された展示『Human Flower』
2013年8月に台湾のKaohsiung Design Festival 2013 Leading Exhibitionsのイベントで開催された砂絵ワークショップ
グローバルに成長を続けるNaoshiさん。今回のもみじ市では「キラキラ砂絵」というタイトルで、事前予約なしで参加できるワークショップの開催を行ってくれます! Naoshiさんが事前に用意している数種類の絵柄の中から好きなものを選び、好きな色の砂を4種類選んでカラフルな作品を作ることができますよ。また当日は、新作のステッカーや砂絵キットの販売も。ワークショップ、物販以外のお楽しみも用意してくれているとのことなので、是非皆さんの目で確かめてくださいね。
そしてみなさん、この紹介記事のいちばん下にある、Naoshiさんからのメッセージ動画をぜひご覧下さい。絶対顔が引きつるからと、なんとか顔を出さないようにと練られた作戦の結果をぜひご覧いただきたいと思います。お面にあわせた服装を考え、撮影場所の下見までしてくれた人は、彼女をおいて他にはいません。やるなら徹底的に自分が納得できるまで。日本で、世界で、闘う砂絵アーティストNaoshiさんがお届けするカラフルな時間を、みなさまどうぞお楽しみに。
花束サラリーマン -今すぐここを抜け出そう-
<Naoshi「キラキラ砂絵」のご案内>
開催日時:
10月19日(土)
①11:30~12:00
②12:10~12:40
③12:50~13:20
④14:00~14:30
⑤14:40~15:10
⑥15:20~15:50
10月20日(日)
①11:00~11:30
②11:40~12:10
③12:20~12:50
④13:30~14:00
⑤14:10~14:40
⑥14:50~15:20
所要時間:20~30分
参加費:800円(当日のお支払い)
定員:各回12名
お申し込み方法:事前のお申込みなしでご参加いただけます。当日、ブースまで直接お越しください。
【Naoshiさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
砂を使って絵を描いております。一コマ漫画みたいな絵だね。とよく言われます。作品展示やワークショップを通じて、砂絵の楽しさを広めるべく日々活動中です。
Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
黄色と黒ですかねぇ。前向きと言えば聞こえがいいのですが、『ま、いっか。』とすぐ切り替える(開き直る?)ところがあるので楽観的なイメージの色で黄色かなぁと。あと小さい頃からお笑いと漫画が大好きで、中でもシュールなブラックユーモアの世界観がたまらなく好きなので、そこは黒かなぁと思いました。
Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
もともとカラフルな絵を描いているのですが、至上最強のカラフルな空間づくりに挑戦したいです!
Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!
さて続いてご紹介するのは、年代も国も問わず、自分たちが“かわいいな”と思った感覚だけを頼りに、商品を集めるお二人です。きっとあなたのお気に召す一品が見つけられるのではないでしょうか。
文●市川史織