近藤康平 「ライブペインティング」

「色、そのものを持っていきますね」

もみじ市を1週間後に控えたある日、彼は私の前でこう言った。グラスを持つその手には、落ち切っていないアクリル絵の具がついたままで。楽しみだな、早くお客さんに会いたいな。そう、穏やかに微笑みながら。

彼との出会いは、去年の8月。あるアーティストのライブを観るために行った、江ノ島の小さなライブハウスで、初めて彼に出会った。彼は、音の中で、音に反応しながら、全身で絵を描いていた。私は、次から次へと色が変わっていく大きなキャンバスから目が離せないまま、音に色がついていく光景に夢中になっていた。

それから約半年後。近所のカフェで、偶然にも彼と隣り合わせた。江ノ島で絵を描いていた彼だと気がつかないままおしゃべりをし、彼がお店をあとにした数分後、あの時の彼だと気がついた。江ノ島での空間や絵が鮮やかに思い出されて、ふとこう思った。もし今年、もみじ市があるなら、絶対彼を呼びたい。彼に出てもらいたい、と。ひとつ夢ができた。ドキドキしながら、真冬の帰り道を急いだ。

そしていま。あの時の夢が叶った。彼がもみじ市にやってくる。真っ白な大きいキャンバスと、たくさんの絵の具を持って。青空の下で、思いっきり絵を描くために。

彼の名前は、近藤康平さん。ライブペインティングパフォーマー、絵描きだ。彼は、ひとりで黙々と描くのではなく、様々なミュージシャンの演奏に反応・同期しながら、即興で絵を描いている。

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彼は、筆をほとんど使わないで絵を描く。アクリル絵の具を直接手に取り、ものすごいスピードで真っ白のキャンバスを色の海に染めていく。圧巻なのだ。頭が真っ白になるとか、言葉が出ないとか、ありきたりだけど、まさにその感覚に自分自身が深く深く潜っていくのがわかる。

数分の間で、みるみる絵が変わっていく。海が、森に。夜が、朝に。女の子が現れ、猫が横切り、クジラが泳いだりもする。瞬きをする余裕さえも与えてくれない。いや、正確には、瞬きをすることがもったいないのだ。

次は何色に変化するのだろうか。次は何が現れるのだろう。想像してみるけれど、彼の手は、私が想うところをはるかに超え、また違う色の世界を描いていく。

「直接手で描くのは、感動の伝わる加減が違ってくるような気がしているからなんです。筆を使うと、その分タイムラグが発生してしまう。観てくれるお客さんも、ミュージシャンも、そして自分自身も、ずっと感動していたいし、させたいんです。驚かせたいんです。だから、一瞬たりとも無駄にしたくないんです」

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ライブペインティングをする人の多くは、最初から最後までずっと描き続け、1枚の絵を完成させる。けれど、彼のライブペインティングは違う。描きはじめた数分後には絵が出来上がり、さらに数分後にはまた違う絵になっている。彼の絵には “完成” という言葉がない。描きはじめたときからすでにひとつの作品でもあるし、その場で描き終えたあとも、まだその世界が続いているような気がしてくる。

「絵を届けたい人にちゃんと届けるためには何がいいかと考えた時、このライブペインティングがいちばんだと思いました。生身で、直接、同じ空間を共有して届けたいなと。観てくれている人と、その場を共有したいといつも思っています。物語を共有したいんです。その場にいてよかったという強烈な思いを味わってもらいたいし、僕自身も味わいたいと思って描いています」

“共有” 、彼の中でずっと大切にしている大きなコンセプトだという。そして、共有するための大事な役割を担っているのが、彼の絵の中に登場する、動物や人などのモチーフだ。

「抽象画であれば、その模様だけでも成り立ちます。でも、観てくれている人との距離を縮めたい。そう思ったとき、人や動物を入れることで物語ができ、絵を通してコミュニケーションが生まれるんです」

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アトリエにこもって、自分の世界に潜り、ひたすら描き続ける。絵描きと聞いて多くの人が想像するのは、きっとそんな姿。けれど彼は違う。絵を届けたい人がいて、観てくれる人がいて、その空間があって、初めて彼の絵が呼吸をする。

彼の絵が呼吸を始めると、観ている私たちは、森の中へ、海の中へ、どこへでも自由に行ける。ひとりにもなれるし、誰かと一緒になることもできる。そして、気がつけば、いつか見たことのあるような、どこか懐かしい景色の中にいる。

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近藤さんは、絵を学んだことがない。すべて自己流、独学なのだ。

「学んでいない分、学んだ人には絶対できないような発想ができると思って。絵の描き方、絵描きとしてのスタイルも、自分が思うままにやっています。モデルケースはありません。だって、絵を描きながら全国ツアーなんて、聞いたことがないでしょ? すべて、実験中なんです」

ゆっくりと穏やかな口調で、話してくれた。

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週末、多摩川河川敷の晴れた空の下に、色の森が現れます。一緒にその森に迷い込んでみませんか? どこか懐かしいような、いつか夢の中で見たような。楽しくほっとできるその場所に、ご案内します。

< 近藤康平 「ライブペインティング」のご案内 >

開催日時:
10月19日(土)12:00頃 約40~50分間
10月20日(日)12:00頃 約40~50分間

演奏:原田茶飯事

参加方法:当日、直接ブースへ起こしください。

 【近藤康平さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
はじめまして。近藤康平です。絵描きです。今、「color power spot」という個展をしています。ひとつの色が、僕等の日常をパワースポットに変えてくれるような、そんな気がします。

もみじ市は、そんな色や、音や、食べ物や、飲み物や人たちが集まるのだと思います。みんなが多摩川河川敷をパワースポットに変えてくれるのだと思います。みんなで癒されましょう。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
青です。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
“色そのもの” を持っていきます。そして、盟友である原田茶飯事くんという最高のミュージシャンとライブペインティングをします。真っ白の大きなキャンバスにカラフルな絵を描きます。真っ白な服や靴できてくれた方、ご希望があれば直接絵を描きますよ!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、三角マークが目印の万能調味料の開発者。今回はどんなお食事を用意してくれるのでしょうか?

文●高松宏美

喫茶tayu-tau「旅のピクニックセット」(20日)

人は想像すらできないほど膨大な量の情報の海の中を泳ぎ、たくさんのちいさな選択を積み重ねて生きている。そんな中、ふと何かを感じ一歩を踏み出したことが、思いもかけない出来事を生み出すことがある。

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 喫茶tayu-tauを営むご夫婦飯島慎さんと寿代さんは運のよい人だ。若いころに勤めていた会社で出会い、ふたりの幸せな生活をイメージして漠然と「カフェをやりたい」と考えていたときに、とある雑誌の記事に出会ったことがきっかけで、やがては「喫茶tayu-tau」を開くこととなる。雑誌で気になるお店のことを知るということは誰にでもあることだろう。でもここからが他の人とは違うところだ。当時千葉県で暮らしていたふたりは履歴書を持って、茨城県にある、はじめて訪れるその店の門を叩くのである。

ふたりの予感は的中、実際にお店に入ってみてそのおもてなしに感激し、「こういうキラキラした暮らしをしている人がいるんだ!」と感銘を受ける。面接の結果、寿代さんはそのお店で働けることとなり、慎さんはお店のオーナーの紹介で別のレストランで働く機会を得る。今では全国からファンが訪れ、のちの有名店オーナーを数多く輩出することになるその店や、繋がりのあった北関東のすぐれた飲食店関係者と関わることで、いわばカフェの英才教育を受けて数年を過ごした。

そこで吸収し、見つけた自分たちの「好き」を膨らませてできあがったのが今の喫茶tayu-tauだ。「運と勢いとタイミングでしたね」と笑うふたりだが、よい運をたぐり寄せ、確かな選択を続けてきたからこその結果であり、幸せをつくり出す才能と心持ちを持っているのだと思う。

喫茶tayu-tauのふたりはきっと不器用な人だ。地元の人たちに愛されるその店は、開店後すぐに満席になってしまう。ふたりでお店のすべてを賄っているので待たせてしまうこともある。

「スタッフを増やしたい気持ちもあるんですが、自分たちの考える『おもてなし』について細かいところまで共有できる自信がなくて、ちょっとしたことでお客様に違って伝わってしまうことが怖いんです」

と少し困った顔で語る。ひとりひとりに出来たてのあたたかい料理を提供し、ていねいに説明を添える。グループ客もひとりのお客さんにもゆったりと過ごしてもらえているか店内に目を配り、時にそっと声を掛ける。店内オペレーションの効率を優先にはせず、あくまでお客さんの居心地のよさにこだわる強い意志がそこにある。

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喫茶tayu-tauのふたりはきっと欲張りだ。お店の名前を聞いて、ゆっくりとコーヒーを飲むことができる場所を想像していた。光あふれるゆったりとした空間でおいしいコーヒーを飲むことができるだけで、十分に気持ちのよいお店なのだが、取材の日にいただいた野菜プレートには驚いた。色鮮やかなたくさんの種類の野菜が個性を生かすようにていねいに調理され、見た目もたのしく提供される。人が飲食店に求めることは千差万別だが「この野菜プレートをサーブされて心が踊らない人とは仲良くはなれないな」と唸らされた。味見をさせてもらった人気のメンチカツは、なるほどお酒にも合わせたくなる、男性も満足させる一品だ。その上、寿代さんが作るフランス焼菓子はさっくりとした食感と香ばしさがなんとも好ましい。見回せば品のいい日本とフランスのアンティークがなじんでいて、オープンして1年強とはとても思えない落ち着いた内装である。一体お店のどこに焦点を当てて紹介すればよいのかとうれしい悲鳴をあげてしまう。さらには、お店の将来のことを聞いてみると、近々作家さんの個展やアーティストのライブが予定されているという。ふたりの欲張りな関心はこれからどんな素敵な変化をこの店にもたらすのだろう。

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喫茶tayu-tauの、はじめてのもみじ市出店紹介文を書く機会を得られた私はとてもラッキーな人間だ。あの気持ちのよい日射しが差し込む素晴らしい空間を体感し、色鮮やかな野菜プレートに心を踊らせ、店主ふたりが引き寄せてきた、幸運かつ必然のエピソードを聞くことができた。これからもすこしずつ形を変えて続いていくだろうそのお店のことを想像するだけで、ワクワクさせられた。おまけに自分にとって必ずや再訪することになるだろうお店を、見知らぬ土地に持つことができたのである。

そしてこの紹介文を自らの選択で目にすることになった人たちはきっと幸運の持ち主だ。何人かはこの紹介文で何かを感じ、週末のもみじ市で喫茶tayu-tauのピクニックセットを手にすることになるだろう。多摩川河川敷の気持ちよく抜けた青空と光と芝生の緑と、喫茶tayu-tauのピクニックセットが、あなたに小さな幸福をもたらすだろう。

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 【喫茶tayu-tau 飯島慎さんと寿代さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
三重県津市の喫茶tayu-tauです。大好きな日本やフランスのアンティークと音楽をあつめて作ったお店です。お店を通じて生活がちょっとたのしくなるような提案をしていきたいと思っています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
ちょっと前までは緑色でした。今は、お店の内装に使っているような木の色が好きなので「ちょっとさびれた茶色」です。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
前回のもみじ市でぼくたちがお客さんとして参加した時のように、会場でピクニックを楽しんでいただきたくて、ピクニックに持っていくお弁当をイメージした「旅のピクニックセット」をご用意します。お野菜とお肉の2種類のお弁当です。テーマがカラフルなのでできるだけ彩りのよい野菜などで作れたらと思っています。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは新進気鋭のアーティスト。会場ではライブペインティングを行なってくれます!

文●尾崎博一

まっちん・町野 仁英 「おやつや まっちん」

甘い話に気をつけろ! というけれど、気をつけなくてもいい甘い話だってあります。それは、和菓子職人まっちんこと町野仁英さんの手から生み出される、おやつの話。

「和菓子っていうと堅いイメージがあって、食べてくれる人が構えてしまうかなと思ったんです。みんなで囲んで食べられて、和んでもらえるような、そんなおやつを作りたいんです」

まっちんは和菓子を独学で学びました。全国の和菓子屋をまわって技を見て学んだり、レシピを汲みほどいて、何度も何度も実践を重ねました。こうした経験を通して、まっちんは、素材の魅力の引き出し方と、技術を習得して行きました。

◆ まっちんにだからこそ生み出せるおやつ

素材の魅力を存分に引き出せるまっちんにだからこそ、生み出せるものがあります。

「和菓子という文化を大切にしながら、型にはまらない、自分にしか作れないおやつを作ろうと思いました。自分が食べたいおやつを考えた時、素材の味を活かした、栄養価の高いものだったので、和菓子ではあまり使われない全粒粉や玄米、粗糖を取り入れることにしたんです」

大地の実りがぎっしりと詰まったまっちんのおやつは、素材そのものが持つ本来の味や自然の甘さを、しっかりと感じることができます。

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今年、まっちんは初めての書籍を著しました。その名も『まっちんのおやつ』。

「だれでも気楽においしく作れるということを伝えたくて、どの家庭にもあるような材料で作れるレシピを考えました」

シンプルで簡単だけど飽きのこない、おいしくてやさしい味が詰まった一冊には「特別なものじゃなくて、日常のおやつとして、みんなに作ってほしい。おやつって、いいなぁって思ってほしい」というまっちんの想いが込められています。

◆ しあわせの塊

まっちんの技術、知識、経験、そして想いがぎゅ〜っと詰まった、この上ないおやつ。

わらびまんじゅうもその中のひとつです。

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何なんでしょう、ぽってりしたこの魅惑の塊は。人は、このぽってりした塊を「わらびまんじゅう」と呼んでいます。香り高いきな粉の下には、みずみずしくてぷるんぷるんなわらび餅。さらに、そのモチモチぷるんな食感の中から顔を出す、上品な甘みのこしあん。思わず、ため息まじりの「おいしぃ〜」が飛び出しちゃいます。全ての素材から、自然の甘味が風味として口の中にふわっと広がる、あの感じ。何なんでしょう、あの感じは。あの、思わず口角が上がって、ニヤっとしてしまうあの感じ。人は、あの感じを「しあわせ」と呼んだらいいと思います。

◆ 30年後のおやつ作り

まっちんの作る生菓子は他の生菓子と比べ、保存期間が短くなっています。これは、自然の甘さを引き出すために、糖度を極力落としているから。

「自分のおやつを全国の人に食べてもらいたいけど、生菓子は賞味期限がシビアなので……」

そこで生まれたのが「大地のかりんとう」です。

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全粒粉と厳選した卵を使用した、ザクザクとした噛み応えのあるかりんとうは、噛めば噛むほど口の中に甘みが広がります。

「親子三代に渡って食べられる『30年後のおやつ作り」をテーマにして、開発に開発を重ねました』

素朴な味だけど、きめの細かい丁寧な味。『30年後のおやつ作り』というだけあって、これはおやつタイムの定番になりそうです。おじいちゃん、おばあちゃん、おとうさんにおかあさん、おにいちゃんにいもうと、みんなの中心にある、いつのまにか増えた家族のようなおやつ。「おとうさんが小さいころ、こんな話があってね」とか「今度の日曜日どこ行こっか」とか、いつも会話の真ん中にいる。「大地のかりんとう」は、そんなイメージが浮かぶような、誰かと一緒に食べたくなるおやつです。

まっちんの作るおやつは、「おいしい」を生み出すのはもちろん、みんなでおやつを囲む楽しい時間を生み出してくれます。大切にしたいそんな時間を、さりげない甘さで日常のワンシーンにしてくれるまっちんのおやつ。

まっちんのおやつが届いた先に、おいしくて、楽しくて、うれしくなってほっぺが弾む、そんな甘い話が待っています。

【まっちん 町野 仁英さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
はじめまして!お久しぶりで! まっちんこと町野仁英です。

三重県伊賀上野にて10年前に「和菓子工房まっちん」をオープン。後に岐阜市の和菓子屋「ツバメヤ」の立ち上げをきっかけに岐阜市に移り住み、現在は「山本佐太郎商店」で商品開発・販売を行いながら、岐阜市長良で月に一度のお店「おやつや まっちん」や、全国各地で まっちんのおやつ会を開催してます。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
白と紺色がまっちんカラーです。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
今年は2年ぶりのもみじ市復活をこめ…

・復活! 「わらびまんじゅう」

・復刻! きりん屋&まっちんコラボ商品 (もみじ市限定モデル)
「まるける」
「餡バターサンド」
※パンの販売終了後にきりん屋ブースにて販売開始

・素材が命!
「大地のかりんとう」
「おいも泥棒」
「うのはな日和」
「まっちんのつぶつぶ粒あん」

・魂の一冊! 「まっちんのおやつ本」

もみじ市ならではの想いをこめて…自身のおやつをイメージとしたカラーと、もみじ市でしか味わえない華やかな演出でバッチリ決めたいと思います。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介する方は、同じく三重県から初出店。夫婦で営む小さなカフェながら、近年注目を集めるあのお店の登場です!

文●小木曽元哉

井田耕市「立体会場マップ」と「カラフルHOUSE」

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「はるちゃん」
井田さんは、私のことをそう呼んでくれる。苗字でもなく、はるなちゃんでもなく、はるちゃん。井田さんの呼びかける声に、私はいつも親しみを感じて、嬉しくなる。

「どうしましょうねぇ」
井田さんは、いつも問いかけてくれる。考えを押し付けるでもなく、ただ聞いてくるだけでもなく、問いかけて、そして一緒に考えてくれる。これが井田さんのスタイルなのだなぁと思う。

「設計は100%黒子なんです」
井田さんは、あまり前に出ようとしない。だけど、後ろにいてしっかりと支えてくれる、そんな感じがする。手紙社のふたつのカフェ「手紙舎つつじヶ丘本店」と「手紙舎 2nd STORY」、この設計をしたのが井田さんなのだ。「出来上がったものには、自分のにおいよりも、施主さんのにおいが付くように、半年位経ってから行ってみて、その人のにおいになっていたらいいなと思う」と言う井田さんは、何気ない会話の中から、その人が叶えたいと思っている要望や好みを汲み取って、それを形に変えていく。

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雨の日は、「手紙舎にいきたいな」と思う。テーブルに座ってコーヒーを飲みながら外の景色を眺めていると、とても心が落ち着く。

晴れた日には、中庭から眺める空がいい。四方を囲われた空間は、空しか見ることができなくて、それが良い。

秋の夕暮れどきには、開け放たれた窓から虫の声を聞くのがとても良い。明日も頑張ろうという気持ちになれる。

手紙舎つつじヶ丘本店は、昭和40年代に立てられた歴史のある団地の一画に突如現れるごはんとカフェのお店だ。2009年、私は手紙舎が出来上がっていく工程を見る機会に恵まれた。徐々に出来上がっていく空間には、はっとさせられるような細かな仕掛けがたくさんあった。それは例えば、飲食店スペースからキッチンへ向かう間にあるちょっとした段差、ちょっと低めに設置されたトイレのドア、壁いっぱいの木製の本棚、天井からぶら下がる棚と天井とをつなげる細かな細工。随所にちりばめられた仕掛けを見つけたくて、行くたびに次はどんな発見があるだろうと思ってワクワクしたのを今でも覚えている。

井田さんに聞くと、それにはやっぱりひとつひとつ理由があって、団地の広場に向かって長くつながった建物の空間を分けるための要素と、全てが別々になりすぎてしまわないように、つなげるための要素を組み合わせることで、それぞれの空間をつくりながらも、 全体としてのまとまりを出すように設計している、のだそうだ。例えば、段差は空間を分けるための要素。トイレのドアも、本棚の奥の秘密の部屋に入っていく雰囲気を強調するための要素。そして壁いっぱいの本棚は、個々の空間をつなげて統一感を出すための要素、といった感じだ。

井田さんは、空間を切り取るのがとても上手なのだと思う。あまり広くはない店内に、フレームに納めたくなるシーンがたくさんある。それはもちろん偶然ではなくて、どう活かすかを綿密に考えて、読み取った結果だ。そしてそこに、手紙舎がもつ空気感が合わさって、だからやっぱり何度行っても次はどんな発見があるだろう、どんな出会いがあるだろうと思ってワクワクするのだ。

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さて、今年のもみじ市で井田さんは、もみじ市の会場全体を表す「立体会場マップ」、そして出店者のみなさんが手づりしたお面を飾る「カラフルHOUSE」を設置してくれることになった。その設計にあたっても、何度も手紙舎に足を運び、もみじ市事務局のメンバーや大工の山口佳子さんと打合せの時間を設けてくれた。そして、そのコミュニケーションの中から、どういうものにしていくかを読み取っていくのだ。

当日、井田さんは「立体会場マップ」と「カラフルHOUSE」のそばにいるはずだ。リフォームでお悩みの方、お店を始めたいとお考えの方、是非井田さんに相談してみてください。井田さんとの会話の中から、ひょっとしたら、なにかヒントが見つかるかもしれません。

え? 井田さんの「立体会場マップ」と「カラフルHOUSE」、何を目印に見つけたら良いかって? 心配には及びません。それこそが、会場全体の目印になっているはずですから!

【井田耕市さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
設計を行っている井田です。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
背景色です。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
会場マップを考えております。たくさんの色がより映えるようにがんばります!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、三重県からやってくるあの和菓子職人です!

文●上村明菜

楽しい会場企画「パレード・カラフル人大賞・ガイドツアー・手紙の木」を紹介します。

1. もみじ市のファイナルは、みんなで「パレード」!

いつからか、もみじ市のフィナーレは、出店者、お客さま、スタッフ、つまりもみじ市の会場にいるみんなが参加するパレードを行うようになりました。もちろん今年も! ことしのパレードは楽しいですよ。名付けて、「カラフル人パレード」! 

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もみじ市当日、tupera tupera さんのワークショップでお面を作ったひと、調布パルコで開催したもみじ市プレイベントでのお面づくりに参加した人は、ぜひお手製のカラフルなお面を被って参加してください! もちろん、お面がない人も参加OK!

パレードを盛り上げてくれるのは20 日のステージライブのトップバッターでもあるコロリダス。踊り出したくなるような演奏でパレードをカラフルに彩ってくれます! パレードの最後は、みんなでお面を空高く放り投げてファイナーレ。きっと、感動的なフィナーレが迎えられると思います。みなさん、ぜひ「もみじ市の歴史」に参加して下さいね!

【カラフル人パレード/参加無料】
19日(土)15:30
20日(日)15:00
集合場所:tupera tuperaのブース前
参加資格:
tupera tuperaのお面づくりのワークショップに参加した人
調布パルコのプレイベントでお面づくりに参加した人
服装がカラフルな人
「おれ(わたし)の心はいつもカラフルなのさ」という人

2.「カラフル人大賞」を狙え!

「カラフル」がテーマの今年のもみじ市では、もみじ市の2日間、もっともカラフルだった人に贈る「カラフル人大賞」を決めるコンテストを開催します! もみじ市を訪れたお客さまなら誰でも参加でき、エントリー方法も簡単。後日(約一週間後)、投稿された写真の中から「カラフル人大賞」を決定。事務局から、そして、出店者から豪華賞品が送られますので、ぜひ、カラフルな服装で参加して下さいね。

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ここでこっそり、カラフル人大賞を獲得するための、裏技をお教えしましょう。もみじ市の会場の中に「ファクトリー・ゾーン」というエリアがあります(黄色い旗が目印)。このエリアでは、tupera tuperaの「カラフル人工場」きんのむつみさんの「フェイスペイント」hokuriの「青空ネイル」などが行われています。つまり、もみじ市の会場の中で、カラフルになれるチャンスがあるのです! カラフルな服装で、カラフルなお面をかぶり、カラフルフェイスペインティングで、ぜひ写真を撮って、カラフル人大賞にエントリーして下さいね。

【カラフル人大賞/参加無料】
参加のしかた:
1. 第1会場、第2会場にそれぞれ設置されている「カラフル・フォトスポット」を背景に、カラフルなご自身の写真を撮影してください
2. ハッシュタグ「# カラフル人大賞」を付けてTwitter でつぶやいて下さい
3. 後日(約一週間後)、投稿された写真の中から「カラフル人大賞」を決定。もみじ市事務局による大賞(1名様)のほか、5組の出店者による「作家賞」(5名様)を決定! 受賞者には、素敵な賞品が贈られます。

3.「ガイドツアー」でもみじ市を堪能しよう

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過去最大の広さで行われる今年のもみじ市。「どこから楽しめばよいかしら…?」という方も多いのでは? そんな時は入場口の立体会場マップ前、「ガイドツアー」にお越しください。会場をぐるりと一周、ツアー・コンダクターが各エリアの楽しみ方をたっぷりご案内いたします!  両日とも計2回ずつ。途中からのご参加も可能です。ご参加いただいた方には、とっても貴重な「何か」が、ツアー・コンダクターからプレゼントされるかも?

【ガイドツアー】
19日(土)12:00、14:00
20日(日)11:30、13:30
集合場所:立体会場マップ前

4. 「手紙の木」で想いを伝えよう

「手紙の木」は、もみじ市を訪れた人と人とをつなぐ「手紙」が鈴なりに実る不思議な木。この手紙を通して、同じ夢を抱く仲間に出会ったり、翌年のもみじ市に一緒に出かける友だちができたり、素敵な縁が生まれています。手紙の木を見つけたら、そばに置かれた便せんに、誰かに向けて自由に手紙を書いてみてください。あなたがどんな人なのか、夢や、趣味や、もみじ市を訪れたきっかけ…。差し支えなければ、そこにあなたの連絡先も。書き終えたら、その手紙を枝に結び、今度は一つ好きな手紙を取ってください。きっとその手紙を書いた人には、あなたと素敵な共通点があるはずです。

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【手紙の木の参加のしかた/参加無料】
1. まず、皆さんがもみじ市に訪れたら手紙の木のコーナーにある便箋に、もみじ市に訪れる誰かにあてて手紙を書いてください。自分のこと、今日ここに訪れたきっかけ、思ったこと、ラブレター、なんでもかまいません。

2. あなたの書いた手紙を折り、手紙の木に留めてください。

3. あなたの手紙を留めたら、そのかわりに手紙の木に留めてある手紙を一通お持ちかえりください。

4.あなたの書いた手紙は、あなたの後にもみじ市にやって来た方々、またはもみじ市の初めに手紙を木に留めた出店者の方々が手にすることになります。できれば、メールアドレス(差し支えのないフリーメールアドレスなどいかがでしょう?)などを手紙(便箋)に記していただければと思います。そうすれば、あなたの手紙を受け取った方から、あなたに“手紙”が届くかもしれません。

5. もしあなたが受け取った手紙に、手紙を書いた方の連絡先が記されていたら、是非その方に連絡をしてみてくださいね。

誰もが参加できる会場企画。お買い物やライブの合間に、どうぞお楽しみくださいね!

手紙舎「河辺のビストロと旅する雑貨店」

手紙舎は、私の人生を変えた。

手紙舎に出会ってから、私の毎日は、きらきらと輝きだした。
手紙舎がいつもそこにあるということに、私は今まで、どれだけ救われてきただろう。
手紙舎ができてからの四年間は、私にとって、それはもう「奇跡」としか言いようのない出来事の連続だった。

昼間元気に遊びまわっていた子どもたちも、お腹を空かせて、カラスと一緒に家に帰った。そろそろ、晩ごはんの時間だから。きっと今頃、家でテレビでも見ながらくつろいでいるのだろう。そんなことを、仕事帰りに自転車をゆっくりこいで、団地の一軒一軒の窓を眺めながら思う。 

人もまばらになり、静まり返った夜の神代団地。聞こえるのは、虫の声だけ。中央の商店街へ続く、まっすぐな一本道を歩くと、大きなヒマラヤ杉が二本、堂々と立っている姿が見えてくる。そしてそのすぐ横には、ぽっと柔らかい明かりの灯る、一軒の小さな店がある。私はその明かりを確認するとほっとして、安堵のため息をつく。ここが、手紙舎つつじヶ丘本店だ。 

IMG_4433団地のなかの“森”に佇む手紙舎つつじヶ丘本店

私はここから徒歩数分の場所に住んでいる。本棚に囲まれて、昔学校の図工室にあったような、木の大きなテーブルがふたつ並んで、ここは、まるで図書館のようだ。手紙舎の裏に自転車を停め、何段もない低い階段を駆け上がり、木枠のガラスの扉をそっと開ける。

「もえちゃんおかえり!」

私に気付くと、いつも当たり前のように聞こえてくる声があった。手紙舎を経営する、北島勲さんと、わたなべようこさんだ。その声は、もうずっと前から、生まれたときから、私のことを知っているような、そんな雰囲気があった。私は最初、その迎えられ方に少しだけびっくりして、だけどあまりにも違和感がなくて、とっても嬉しくて、もじもじしながら「ただいま」と言ってみたのを覚えている。まだ手紙舎がオープンして一年経っていないくらいだったと思う。

手紙舎は、私の「家族」だ。

手紙舎ができた当初は今のカフェスペースが編集室も兼ねていて、編集の仕事をしながら、北島さんや、ようこさん自らが、カフェの接客をしていた。今ほど知名度も無く、古い団地に突如現れたお洒落な空間を、団地の住民や通りすがりの人々が立ち止まって、不思議そうな目をして様子を伺っていた。いろいろな人が出入りして、その度に北島さん、ようこさんは、「こんにちは」と言って立ち上がって、一人ひとりと丁寧におしゃべりをして。私は、編集作業に集中できるのかな? とおせっかいに心配しながらも、ふたりがあまりにもお客さんを嬉しそうに迎えるので、その風景を、おいしいご飯を食べながら眺めているのが、とても幸せだった。ひとりで行っても手紙舎には誰かが必ずいるから、私はいつも、ひとりじゃなかった。

2009年秋、手紙舎は、古本と雑貨、ごはんの店としてオープンした。私は、工事中から毎日なかを覗いては、いつできるかな、何ができるかな、とわくわくしながら、オープンする日を待っていた。プレオープンの日には、真っ先にごはんを食べに行って、そのときのごはんが、本当に美味しくて、雑貨もすばらしい作家さんの作品ばかりで、近くにこんな店ができたことを、誇らしく思った。手紙舎の設計をした井田耕市さんに会えたのも、ちょうどその日だった。

*つつじヶ丘内観手紙舎つつじヶ丘本店のなかは、まるで図書館のよう

そうして、手紙舎が本格的にオープンするようになってからも、まるで近所に住む親戚の家に遊びに行くような感覚で、ふらっと寄るようになった。すると行く度に、そこで働く人も、お客さんも、徐々に増えている気がした。

ふらっと寄ると、いつも、モノ以外の、何かプラスアルファのプレゼントをもらった。それは、「出会い」だったり、勉強になるようなことだったりしたけれど、そのなかでもいちばんのプレゼントはやっぱり、二年前に「もみじ市の事務局をやらないか」と、北島さんに声をかけてもらえたことだと思う。私はそこで出店者紹介のブログを書かせてもらったことをきっかけにして、作家の活動を始めた。そして翌年には、手紙社主催の京都の紙ものまつりに声をかけてもらって、作家として初めてリトルプレスを制作し、参加させてもらった。何がなんだかわからないうちに事が進んだけれど、今思っても、夢のような出来事だ。それが、今の活動に繋がっていると思うと、やっぱり「奇跡」の出会いとしか、言いようがなかった。

ある日手紙舎つつじヶ丘本店に寄ると、カフェスタッフに、前からずっとここで働いているかのように自然に手紙舎の風景に溶け込み、厨房に静かに佇む、ふわっとしたショートカットの女の子がいた。彼女は、今では手紙舎2nd Storyでシェフを任されている、町田梓さん。

私は彼女に「お帰りなさい、今日はお出かけでしたか」と尋ねられるのがうれしい。彼女が厨房で黙々とパンを捏ねたり、料理をプレートに盛っている姿が、とっても好きだ。それから、2nd Storyは、主にパン中心のメニューが揃っていて、特に、彼女の作るクロックムッシュが好きだ。どっしりチーズがかかっていて、パンはほんのり甘くて、いつまでも食べていたくなる、そんな味。ここでは、少し猫背になって外を眺めたり、大きな口を開けてパンにかじりついたり、時間の許す限り気ままに過ごし、無理をしないで、自分のペースで食べていられる。それは、彼女がいつも自然体でカウンター越しに立っていて、カフェの空気を柔らかく包み込む、まるで空気のような人だからかもしれない。

しばらくして、町田さんがつつじヶ丘本店のシェフになった頃、カフェにまた、ひとりの、フレンチな服装がとっても似合う、お洒落な女の子がいた。彼女は二年前のもみじ市でもボランティアスタッフをしていた、加藤香織さん。「私にしかできないことをやりたい」と、それまで勤めていた会社を辞め、飲食業の道を進むことを決意。手紙舎にスタッフとして入った。今は、手紙舎つつじヶ丘本店のシェフをしている。私は、彼女が手紙舎で働いてくれて、心の底からよかったと思っている。だって彼女の作る料理は、食べ終わった後、誰かに自慢して回ってしまうほど、素晴らしく美味しい。それに、美味しいだけじゃなく、「作品」として素晴らしい。だから毎回その「新作」を食べるのを、私は心待ちにしていた。贅沢な料理は贅沢な空間を作る。いつも「ふふっ」と笑いながらも本当にすごいことをしてしまう彼女は、美味しいごはんを届けるシェフであると共に、鮮やかな食材でお皿を彩るアーティストなんだと思う。 

ある日、手紙舎にふらっと寄ったときのこと。関根利純さんがカフェのスタッフとして働いていた。

「群馬に住んでいるのにどうして?」と不思議がっていると「私もよくわからないんですが、働くことになったんです」と関根さん。何十年勤めていた金融関係の会社を退職し、中学時代からの“腐れ縁”である、北島さんの営む手紙社に入社することになった。「関根さんはもみじ市で人生を変えた男だ」と、北島さんは言った。もみじ市には、スタッフとして第一回目から参加していたが「気付いたら(手紙社に)入っていた」と言う。もみじ市の作家さんやスタッフの目の輝きが素敵だったこと、作り上げる喜びに感動したことが手紙社に入った理由で、今では、手紙社の(ひとり)経理部門兼手紙舎2nd Storyの店長。いつか、特訓中だという関根さんの作ったチーズケーキを試食したけれど、チーズケーキというにはちょっとばかり不思議な味だった。だけど、それから何度も何度も試作を重ねた後に食べた、関根さんの汗と涙のチーズケーキは、素朴な優しさに満ちていて、かみ締めるほど美味しさを増した。関根さんは優しい人となりで人をほっとさせる力があるけれど、心は、群馬県館林市よりもアツい。

彼女と出会ったのはいつだっただろう。彼女、とは、野村奈央さんのこと。あまりにも自然に知り合ったので、いつだったか覚えていないけれど、出会って何度目かのとき、夏の、窓を開け放った手紙舎で彼女と自分たちの夢について語り合ったことがある。彼女は、手紙舎で働くのが夢だということ、何度も入社したい旨を北島さんに打ち明けたことなど、こっそり私に話してくれた。それから少し経った頃、その夢が叶ったという。つつじヶ丘本店で働き出した彼女は、とっても穏やかに、柔らかに、少し、内緒話をするみたいに接客をする。私はこの、一所懸命にしてくれる「内緒話」のような声に耳をすませるのが好きだ。彼女が声を発すると、耳に意識がちゃんと行く。よくお客さんと話をしているけれど、彼女自身も、お客さんと話すのがとっても好きなのだと言う。たまに自転車で手紙舎の前を通ると、いつも満面の笑みで大きく手を振ってくれる野村さん。ついつい、今日もいないかなって、何度も手紙舎を振り返ってしまう。

手紙舎雑貨店は一時期、期間限定で調布PARCOに店舗を出していた。最初は手紙社の編集部の人々が店頭に立っていたけれど、いつからか、とっても不思議な雰囲気の女の子、中村玲子さんがレジに立っていた。私がそこで、雑貨を購入すると、小動物のように目をくるくるさせて、その作家さんのお話をしてくれた。その長いまつげの奥はキラキラしていて、作家さんへの尊敬と愛情が、表情からめいっぱい溢れ出していた。やがて柴崎に新店舗が出来た頃、2nd Storyの雑貨スペースに移った。ふわふわした、不思議な国からやってきた少女のような、独特の佇まい、存在感は、手紙舎にぴたりとはまっている。いつでも作家さんの作品のどこがおすすめか、どういう作家さんなのか、客層に合わせながら、丁寧に楽しそうにお話をしている。その姿を見ていたら、もっともっと作家さんのことを知りたくなる。もっともっと雑貨が欲しくなる。そんな、人の心のピュアな欲求を自然と引き出す力は、きっと誰にでもあるわけではない個性だと思う。

とびきり元気な新居鮎美さんを初めて見たのは、手紙舎2nd Storyだった。彼女は、手紙舎に全く新しい風を吹かせた人だと思う。新居さんはたまに、長い髪をゴムでくるっと束ねている。仕事中、邪魔になるからだろう。新居さんがせっせと荷物を運んだり、在庫の確認をしたりと、歩くたびに、ぴょんぴょんと毛先がはねる。そのぴょんぴょん飛び跳ねる毛先が、新居さんのきびきびした動きを強調していて、私はそれを見るたびに、「働くって、いいなぁ」と、すがすがしく思って見ている。元々、徳島で編集者をしていたけれど、結婚して東京に移り住み、雑貨店も「編集」の一環であるという手紙社の考えに興味を持ち、手紙舎で働くようになった。

彼女の働いている姿は美しい。そして何より、いつも笑顔で、ピンと背筋を伸ばして、軽快な足取りで、元気に私たちを迎えてくれる。そんな彼女が働き出してから、雑貨コーナーは、以前にも増してぱっと明るくなったと思う。新居さんに会うと、なんだか嬉しくなってしまう。こっちまで、元気になってしまう。そんな、太陽のような人だ。

さて、長くなってしまったが、この6人が、今、手紙舎の店舗を動かしているメンバー。それぞれの人生のタイミングのなかで、皆、働く場所として手紙舎を選択し、手紙舎をお客さんにとって過ごしやすい空間にするために、常に全力で自らの仕事と向き合う。その姿は、「青春」のようだ。

2nd_shop2013年春にオープンした、手紙舎2nd storyは、入り口から入って手前が雑貨スペース、奥がカフェスペースとなっており、広々としたカウンターや、ゆったりした客席が魅力

 「手紙舎を知ったきっかけは何ですか?」

この質問に、彼女たちのほとんどが「もみじ市」と答えた。もみじ市に遊びに来たことがあり、その幸せな空間を好きになって、手紙舎を知った。ここで働きたいと思ったという。

今回、そんな、手紙舎を知るきっかけになったもみじ市に参加できることが、心の底から嬉しそうな彼女たち。毎回手紙社の数々のイベントに参加しているけれど、カフェと雑貨がひとつのお店として一緒に参加するイベントは、意外にも、もみじ市が初めてとのこと。カフェは、ひとつのプレートに色とりどりの野菜や、キッシュなどを乗せたデリを中心に。雑貨は、もみじ市に出店する作家さんとコラボレーションをした、オリジナルのテキスタイルのグッズ等を、数多く揃えて出店する。また、今回は特別に、カフェと雑貨が共同でつくった商品も持ってきてくれるそうだ。

私が見てきた手紙舎は、絶えず常に“動いて”いた。人が入れ替わり、増え、だんだん大きく成長した。だけど、ずっと、変わらないこともある。

たとえば、手紙舎つつじヶ丘店では、ごはんを食べて店を出るとき、必ずスタッフがお客さんを、扉を開けて丁寧に見送る。見えなくなるまで、お客さんをにこにこ見守ってくれる。これは、手紙舎がここにできた当初から、ずっと変わっていないことだ。

とある日の夜、団地の明かりも少しずつ消えていく頃。私は手紙舎のガラスのドアを中から開けて、外に出る。

「おやすみなさい」

静まり返ったなかに、小さく響く声。みんながいつまでも、手を振ってくれる。私も何度も振り返り、手を振り続ける。小さな幸福感で満たされる瞬間があった。

どこでその幸福を感じるかは、人によって違うと思うけれど、きっと、手紙舎に来るお客さんは皆、この「小さな幸福感」を求めてやってくるのだと思う。ある人は素晴らしい作家さんの作品を見ていることに幸福感をおぼえ、ある人は美味しい食事を食べているときに幸福感をおぼえ、ある人は店内に流れるBGMやその空間にいること自体に幸福感をおぼえる。そして、手紙舎を去る頃には、心が柔らかく解き放たれて、今日という一日が、少し輝いて見える。

もみじ市当日、彼女たちはきっと、いつものように全力で、裏では大汗をかきながら、表ではふわっと涼しげな佇まいで、お客さんを迎える。

彼女たちにとって特別な、もみじ市の河川敷の会場で。
お客さんや、食材や、作家さんへの愛を、惜しみなく込めて。
あなたの一日を、きらきらと、輝かせるために。

 【手紙舎のみなさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
こんにちは。手紙舎雑貨店とカフェ手紙舎です。普段は東京都調布市にあるつつじヶ丘と柴崎にある2つのお店で営業しております。雑貨店では、今回のもみじ市にも出店して頂ける作家さんの作品をたくさん扱っています。カフェでも、作家さんの器を使いお料理をお客様のもとにとどけています。手紙舎はもみじ市に出店されている作家さんの愛に囲まれた、そんなお店です。実は、雑貨店とカフェがコラボレーションして主店するのは初めて。今までにない、カラフルでわくわくする空間をお届けします。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
「茶色」です。手紙舎の2店舗には常にたくさんのカラフルな個性を持った作家さんの作品が並び、色々なお客様が来店されます。だからこそ、手紙舎のスタッフはプロの黒子になりたいと思っています。作家さんたちの存在を際ださせられる黒子、美味しい時間を過ごして頂けるための黒子、お客様の笑顔になれる場所を作っていくための黒子になりたい! でもスタッフで色について話し合った時に「私たちは黒じゃないね」という結論になりました。ディスプレイやパンやごはんといった、実は隠し切れない特色があるよね、と。だから黒にはなりきれないけれど、私たちはもう少し色の幅があるベース色、「茶色」です。ベージュやダークブラウンのような、個性豊かな黒子がいる場所が、手紙舎なのです!

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
今回はカフェ手紙舎が考える「これぞビストロ!」というプレートをご用意します。カスレやキッシュ、お野菜をふんだんに使ったカラフルなデリを一つのプレートにのせて、皆さんにお届けします。手紙舎にゆかりのあるクリエイターと一緒に作った、オリジナルの紙ものやテキスタイルなどを持っていきます。今回は、カフェ手紙舎の焼き菓子とコラボした商品も作ります。楽しみにしていてくださいね。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、手紙舎を設計したあの人です!

文●池永萌

左藤吹きガラス工房「普通の日の吹きガラス」

「もみじ市にはたくさんのお客さんが来る。ガラスに興味がない人もいると思う。そういうお客さんが、ふとガラスの器を見たときに印象に残るようにしたい。初回は買ってもらえなくても、とにかく見てもらいたいんです」

大量生産できる工業製品よりも、どうしても高価になってしまう手仕事のガラス。しかし、そのガラスのあたたかさ、やさしさ、光を通したときの美しさ、手仕事ならではの表情は、直接見て、触れないと伝わらないのかもしれません。

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左藤玲朗さんの作品に出合ったとき、私はとても懐かしい気持ちになりました。その理由のひとつは、再生ガラスを材料のひとつとして使っていることにあるようです。もともとは醤油の瓶だったガラス、お酒の瓶だったガラス……、昔から使われている瓶の色には、生活に馴染む、良い色が多いのだそうです。とはいえ、再生ガラスを使うことはとても手間がかかります。ガラスを集めることはもちろん、選別、洗浄など、材料を揃えるまでに一苦労です。

左藤さんのガラスといえば”モール”。これは、昔の食器棚などに使われていたストライプに凹凸が入っている模様のことで、これを施すにはやはり、とても手間がかかります。しかし、モールのコップや小鉢などの質感、手触り、光の揺らぎ具合は、他のガラスにはない、なんとも言えない美しさがあります。

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沖縄のガラス工場に2年間勤務し、ガラスの基本的な扱い方を学んだあと、4年前に兵庫県から千葉県九十九里に工房を移した佐藤さん。九十九里を愛する左藤さんの気持ちは、今回作成していただいたお面からも、とてもよく伝わってきます(いちばん下の動画メッセージをご覧ください)。

今回、取材のために工房にお伺いしたいことを伝えると、8月ではなく9月にした方がいいとのことでした。夏場の工房の気温は、40℃を超えます。炉の中は1000℃超え。過酷な環境の下、足下は足袋に下駄、腕には熱さに耐えられるカバーをし、眼にはサングラス、心には忍耐を。研究を重ねたスタイルで、ガラスに向き合います。ひとつひとつの道具も、使いやすいように、動きやすいようにと、試行錯誤の上、自身で作ったオリジナル。左藤さんが作品に真摯に向き合っていることが、至るところから伝わってきます。

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「ガラスは、陶芸のように直接触って作れないので、練習してもできない形があります。そういうときは、道具を工夫し、作り方を見直していくんです」

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 左藤さんが作る器は、普通の日に使ってほしいもの。

「食器棚から出してもらえる回数が多いほうが良い道具という仮定に基づいて、なるべく使い難い要素を削る方向で制作しています。特に何も良いこともなかった日の無事を喜べて、一日の締めくくりに使ってもらえるように」

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7月20日の「左藤吹きガラス工房公式業務日報」と題されるブログには、こう書いてあります。

「昨日手紙社より、2013年もみじ市が10月に開催される旨の発表があった。天気が気になる。開催場所の調布市河川敷のすぐ横には屋根付きの競輪場がありそこを借りる案もあったことと思う。実際骨董市などをそこでやってもいる。だがやっぱり屋外、晴れた空の下の替わりはない。プールでスイカ割りをする人がいないように」

河川敷には、不便なこともたくさんあります。雨が降ると遮るものがなく、場所の変更が必要になります。水道もお手洗いも近くにありません。電気もありません。それでも河川敷を選ぶ理由。左藤さんがわかってくださっていたことがとてもうれしく、私自身、その絶妙な表現であらためて気付かされました。

もみじ市当日、生活に寄り添うような左藤さんのガラスの作品を、ぜひご覧ください。そして、気に入った器があれば手に取り、その夜、できることなら、もみじ市を振り返りながら使ってもらえたなら、私も、きっと左藤さんもうれしいはずです。

【左藤吹きガラス工房さんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
千葉九十九里の左藤吹きガラス工房です。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
ガラスを吹く人は短気な人が多いので火の色オレンジ色です。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
今回は特に小さいものに力を入れています。また私は植物、特に花の形を参考に器を考えることが多いので、器そのものに色を着けていなくても花を感じてもらえるとうれしいです。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのはヤギが目印のあのお店です!

文●鈴木 静華

mado cafe「はらぺこオムライス屋さん」

愛知県岡崎市。JR岡崎駅から歩いて20分ほどの閑静な住宅街の中に、もみじ市に出ることをずっと夢見ていたという一軒のカフェがある。

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「暑いなか大変だったねー!」

まぶしい笑顔で出迎えてくれたのは「mado cafe」のオーナー・柴田真史さん・友香さん夫妻。閑静な住宅街の中に予期せずあらわれた一軒のカフェ。朱色の瓦屋根に、ちょこんと突き出した煙突が目印だ。手間暇かけて丁寧に世話をされていることが分かる開放的な庭には、季節ごとに目を楽しませてくれる草花や、料理に使うこともあるという蜜柑やブルーベリーの木々が青々と葉をひろげている。整然と敷き詰められた砂利までもが美しく、まだ店の中に入ってもいないのに、今日一日がとても素晴らしいものになりそうだという予感が胸をくすぐる。

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子供の頃から家族で喫茶店によく行っていた友香さん。食にまつわる仕事に就いたのはごく自然な流れだったという。根っからの食いしん坊で、喫茶店やカフェで過ごす時間が大好き。カフェでしか働いたことがないのだとか。対する真史さんは大学生の頃、1年ぐらい“ぶらぶら”していた。そのときに通っていた喫茶店やカフェで過ごす時間がとても心地よく、真史さんの人生を動かした。

「その場にいる人が思い思いに自分の時間を過ごせる喫茶店とかカフェって良い場所だなぁ、と思ったんです。このときまで、あまり珈琲を飲んだこともなかったんですが、飲食店でアルバイトをはじめて、気付けば親に頼んで大学を中退させてもらって、調理師専門学校に通っていました」

そんなふたりは、同じカフェで働いていたことがきっかけで知り合い、やがて、「いつかは自分たちのお店を持ちたい」と思うようになる。その夢をサポートしたのが、真史さんのご両親だ。「畑の土地を使ってみたら」と提案をしてくれたことで、mado cafeが物語を紡ぐ場所が決まった。お店を建てるにあたっては、設計士さんや大工さん、友人の力を借りながら、外装、内装全てに関わったという。

「ペンキを塗るのも一苦労でした。今年になって外壁の塗り直しをしたんですが、その時もたくさんの友達が手伝いにきてくれて、なんだかお祭り騒ぎでした」

いつもお店に多くの仲間が集う、mado cafeらしいエピソードだ。

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mado cafeの店内に入ると、気づく。昔懐かしいブラウン管のテレビ、そっと隙間を埋めるように置かれた古道具、存在感を放つ暖炉、行きつけの古道具屋さんで見つけて来たテーブルと椅子、開放感のある高い天井、窓から差し込む穏やかな光、優しい風……、そういうものがすべて混ざり合い、絶妙な調和を取り合いながら、奇跡的な空気感をつくっている。

ふたりが好きな時間がある。それは、お客さまが思い思いに自分の時間を楽しんでくれていると感じる瞬間。

「すべての席がひとりのお客様で埋まったとき、静かなんだけどお客さまはちゃんといて。それぞれがゆっくり過ごしている時間は特別なものがあります。鳥肌が立つような」

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いまや看板メニューとなったマドごはんは、ランチタイムに味わうことができる限定20食のプレートメニュー。調理師免許を持ち、他店で修行を重ねた真史さんがつくるマドごはんは、確かな技術に裏打ちされたプレートだ。いわゆる“カフェメシ”のレベルではない。旬の野菜を中心に乾物や豆類などを使ったお惣菜が少しずつ、大きなプレートに盛り付けられ、ご飯に汁もの、デザートがついてくる。素材の美味しさはそのままに、それぞれ違った調理法で作られる料理はおいしくて美しく、ボリュームもあるので、私のような食いしん坊も食べ終わる頃には満腹になってしまった。しかし、その満腹感は、なんとも清々しい満腹感で、「良いものを食べている」ということを、自分の身体が証明してくれているような感覚だった。

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こんなにおいしいものを提供しているmado cafeだが、真史さんと友香さんは、まだまだ満足していないようだ。mado cafeは今年4月に5周年を迎えた。これからのことを、ふたりは考えている。

「やっぱり、僕たちがやりたいのは、喫茶店なのだと。近所の人が、ふらっとコーヒーを飲みに来られるような喫茶店でありたい。僕たちにとっての喫茶店とは、オムライスやナポリタン、ピザトーストやクリームソーダ、ホットケーキ、カスタードプリンがメニューにあるお店。子どもの頃、喫茶店に連れて行ってもらって、ワクワクしたあの記憶を今でも覚えています。そしてそれは、お子さんからお年を召した方まで、みんなが好きなメニューだと思います。
色々な年代の方が自分の時間をゆっくりと過ごせるお店が僕たちの理想です。本を読みに来ただけでも良いし、少し休憩したり、手帳を整理したり、おしゃべりしたり。美味しかったと言ってもらえるのも嬉しいんですが、ゆっくりできました、という言葉をかけてもらった時の方が何倍も嬉しいです」(真史さん)

「ごはんやおやつも、お客さまが気持ちの良い時間を過ごすために上手に使ってもらえたらいいなって。実は今新たなメニューを試作している真っ最中なんですが、お客さまの時間の邪魔にならない程度の軽食、それも、喫茶店と聞いて思い浮かぶメニューを提供したいと思っています。きちんと選んだ食材でなるべくシンプルなレシピの、優しい軽食を出したい。自分たちがいちばんどきどきしてるのですが、もっとお客さんに喜んでもらえて、気軽に立ち寄ってもらえる場所にしたいなと思っています」(友香さん)

手紙社が主催するイベントに、「カフェフェス」というプロジェクトがある。良いカフェがあると聞けばどこへでも行く手紙社が選りすぐった、本当に良いカフェだけに参加してもらっているカフェと音楽の祭典だ。2011年に調布市の味の素スタジアムで行ったカフェ & ミュージックフェスティバル 、2012年と2013年にニセコで行った森のカフェフェス、そして先月横浜で行った海のカフェフェス。この4回のカフェフェスにすべて参加してくれているのがmado cafeだ。つまりそれは、日本で有数のカフェであることを意味する。カフェフェスの開場前の出店者の朝礼のとき、手紙社のスタッフが、いつもこうmado cafeのことを紹介する。

「東海地方を代表するカフェが、カフェフェスにやって来てくれました。mado cafeのみなさんです!」

美味しいものを食べることが、作ることが好きなふたりがはじめた店は、いまやカフェ好きならば一度は訪れたい店になった。そして今回、満を持して、もみじ市に参加する。決してイベント向きの会場とは言えない河川敷で、2日間とも食事を提供してくれるという。

「もみじ市が迫って来てドキドキしてきました。僕らにとっては本当に憧れのイベント。甲子園のような存在です。実は今回用意するオムライスは、これからmado cafeが進む方向への区切りとして考えています。もみじ市で用意したオムライスを、これからmado cafeの定番にできたらと思い、気合いを入れて用意します!」

今年、もみじ市が行われる多摩川河川敷は、ふだんは野球場として使われている場所だ。全国を代表する作り手が集うもみじ市は、確かにものづくりの世界の甲子園なのかもしれない。

もみじ市の朝、多摩川河川敷に、作り手たちがひと組、またひと組とやって来るあの風景が、私は好きだ。甲子園の入場行進みたいに整然としているわけではないけれど、あの風景は、もみじ市ならではの入場式なのだろう。

2013年もみじ市の入場式が始まりました。まもなく、今回初めてもみじ市に参加する作り手が入場します。愛知県代表、mado cafeのみなさんです!

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【mado cafeさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
愛知県岡崎市のはずれにある小さな喫茶店です。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
シンプルで何事にも引き立て、なじむ、「白」が好きです。料理やデザートを引き立てる白いお皿やお客様の時間をやさしく包む白い店内。気がつけばマドにはたくさんの「白」が溢れていました。そしてそんな「白」に私たちもなれたらと思っています。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
お店ではご用意していないもみじ市特製の「マドのオムライス」をお持ちします。野菜たっぷりでやさしい味わいのマドのオムライスをぜひお楽しみに!みなさんぜひはらぺこでお越し下さい!!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、ガラス作家のあの人です。日々、工房で真摯に作られる作品をどうぞ御覧ください。

文●市川史織

otome-graph. 焼き菓子店 「福田淳子先生のお菓子と川村よしえの文具の詰め合わせ」(19日)

「でもいいんです、だからって美味しいものを我慢する人生より、ちょっとぷくっとしていても美味しいものをたくさん食べれら方がいいなって」

今回の取材で、初めて川村よしえさんにお会いした。素直な気持ちを人に伝えられるようになるまでに時間がかかる私は、初めて会ったにもかかわらず素直な気持ちをコトバにして伝えてきてくれる川村さんを見て、この人となら色々な話ができるかもしれない、そんな気持ちになった。

川村よしえさんは「otome-graph.」という、CDジャケット、書籍の装丁、雑誌、カタログ、広告などの女の子向けのデザインを多く手掛けるデザイン事務所を主催している。川村さんが手掛けるモノには、女の子の”好き”や”かわいい”がぎゅぎゅっと詰まっていて、それはそれは、うっとりとため息きが出るほどだ。

「クリエーターって一発勝負なところがあって、一度失敗したら次はないと思っている。だから一冊一冊適当には作れない。一生懸命、考えながら作っているんです」

それまでは人に頼る仕事のやり方をしていた、という川村さん。でも、ある1冊の本を手掛けたことが転機となって、今の仕事のスタイルができたのだそう。「まわり道ばっかりで人よりも時間がかかるんです」という川村さんの話し方は優しくて、フワフワしているけれど、ひとつひとつのコトバに気持ちがこもっていて、川村さんのまわり道は色々な想いや考えが編みこまれた、芯のある編みもののようだ、と私は思った。

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「私が大好きなクッキーと文房具みたいなものをセットにしたらいいかなって、好きなものを一緒にして売れるっていうのは、もみじ市でしかできないかなって。それで、先生にメールしてラフも書いて、こういうの作りたいですって連絡したんです」

今回もみじ市に持ってきてくれるものについて、伺ったところ、こんな答えが返ってきた。

先生とは、今回一緒に出店をしてくださる料理研究家でパティシエの福田淳子さんのこと。大のクッキー好きである川村さんが今までに出会ったクッキーの中でも、福田さんのクッキーは特別に美味しかったのだそう。「淳子先生はすごい研究熱心なんです」という川村さんのコトバからは、すごく強い気持ちが伝わってくる。だから私もまだ食べたことはないけれど福田さんの作るクッキーは、間違いなく美味しいのだろうという気持ちになってしまう。

もみじ市に来てくれる人たちに手にとってもらえるようなものを一生懸命考えて、ご自身のできることと、福田さんという感性をミックスして今回の形になったのだそう。きっとまたたくさんの時間をかけて考えてくださったのだなぁと嬉しくなって、「これだ」と思ったことに一生懸命進んでいく川村さんのパワーはすごいなぁ、と素直に思った。それにしても、福田さんの美味しいお菓子と、川村さんが手掛けるかわいい雑貨がパッケージされてセットになるなんて、もみじ市はなんて贅沢なんだ!

B-01Bセット「甘い、甘い、アクセサリー」
クッキーをイヤリングやブローチに見立てて写真を撮り、カードなどを作りました。
クッキー、焼き菓子とセット販売します。

c-01マドレーヌなど焼き菓子単品の包装も作りました。

普段からストーリーを作るのが好きで、仕事をする中でも背景にはストーリーが流れていて、それを形にしていくのだそう。今回の作品も、ただかわいいというだけじゃなくてストーリーをひとつのパッケージの中に詰め込んでいったのだとか。ちょこっと教えてもらったそのストーリー、ここではナイショにしておきます。是非もみじ市で手に取って直接聞いてみてくださいね。

「私、ワンピースが好きでずっと着ていて、締め付けないじゃないですか、それでどんどんクッキーを食べて、ぷよぷよしてきたからワンピースを自粛してズボンはくことにしてるんです。もいいんです、だからって美味しいものを我慢する人生より、ちょっとぷくっとしていても美味しいものをたくさん食べれら方がいいなって」

好きなものに一直線、自分の気持ちにまっすぐで正直。
私、とてもステキな人に出逢ってしまいました。

【otome-graph. 焼き菓子店 川村よしえさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
otome-graph.グラフィックデザイナー。design for romantic girlsというモットーで
デザインをしています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
何色かは分からないのですが、グレーがいいです。

デザインをする上でグレーて地味だけど、何色とも合うんです。ピンクとも、水色とも。ひっそりとみんなといい関係を作れるようなそんな風になりたいです。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
私は、好きなモノが2つあります。

ひとつはクッキー。
毎朝クッキーを食べてるんですね。クッキーマニアです!

そして、もう一つは文具紙モノ。
海外のみんなが捨ててるチョコを包んであった紙、フリペや牛乳パック、チケット、値札、タクシー運転手がくれたメモの紙まで捨てれません!

この大好きな2つをセットにしたら、もみじ市に来てくださる方はきっと楽しんでいただける! と思いました。

今回は尊敬する料理家の福田淳子先生にお声がけしてクッキーと焼き菓子を作って頂きました。そして、私はカードや、ノートなどを作りました。

Aセットは「子猫とリボンと女の子」というタイトルで撮りためている作品から、お菓子とノートなどをセットにしました。

Bセットは「甘い、甘い、アクセサリー」というタイトルでクッキーをイヤリングやブローチに見立てて写真を撮り、カードなどを作りました。これも、クッキー、焼き菓子とセットしました。

普段はシンプルなプレーンのクッキーが好きですが、今回はカラフルということでココアや、白いお砂糖、赤いジャムなどを使ってクッキーを作って頂いてます。

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのは、カフェフェスにも出店してくれたあの人たちの登場です!

文●上村明菜

はしもとみお「木彫りの移動動物園」

「立体図鑑を作りたいんです! 彫刻動物図鑑を!」
目を輝かせながら、はしもとみおさんは言いました。

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「全世界にいる動物たちの立体図鑑を作りたい。今はまだ200種類くらい。虫や鳥や魚も彫っていたら、一生が一瞬で終わりそう」

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動物を彫ることに人生をかける彫刻家はしもとみおさん。かつては、「動物に関わる仕事がしたい」という想いから獣医や飼育員を考えたこともあったそうです。

はしもとさんは、15歳のときに阪神淡路大震災を経験しました。兵庫県にある実家の被害は大きく、近所のかわいいペットたちも、みんないなくなってしまいました。「形を残したい」。そう強く思ったはしもとさんは、17歳で美術を始めました。

美術は「術」だと話すはしもとさん。訓練で身に付くものなので、反復練習が大切だと言います。はしもとさんは、あまりにもたくさんのスケッチを繰り返しました。描いて来たものは、もちろん動物です。そして、そのスケッチをよりリアルにするため、立体にすることを考えました。鉄や石、陶器などで動物を作ることを試し、結果、彫刻を選択しました。毛並みを表現するには、木が最適だったそうです。

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スケッチした動物たちを彫る作業は、体力勝負でもあります。丸太を購入し、チェーンソーで切り出し、こつこつ彫っていきます。使うのは主に楠の木。すうっとハッカのような香り。虫がつきにくく、国産のものが手に入るから、というのも楠の木を使う理由のひとつ。地産地消にもなるからです。木を彫り、造形が出来たら、アクリル絵の具を中心に、漆やカシューを塗って仕上げて行きます。

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はしもとさんは、目の前に生きている、あるいは生きていた、名前がある動物たちをモデルにして彫っています。その名も「肖像彫刻」。ただの柴犬だったり、ただのチワワではなく、世界に1匹だけの、“その子”を彫るということ。

「自分はアーティストではなく、職人。その子自身をどれだけリアルに残せるか、というお仕事です」

お客さまの依頼を受けて、実際に会いにいき、スケッチをする。そして、アトリエに戻って、彫る。結婚して嫁いでくる妻に、妻が長年かわいがっている実家の犬の彫刻をプレゼントしたい、という男性からの依頼もあったそう。はしもとさんが彫った動物を見て、「■■動物園の●●ちゃんだ」と、わかる人もいるそうです。

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私は、知人にはしもとさんのブログを読むことを勧められ、はしもとさんを知りました。ブログには、はしもとさんが日々感じたことや考えたことが、惜しみなく刻まれていました。あまりにも純粋で、強く、心の奥の方から絞り出されるような言葉の連なりは、私の心の大切なところを、でもふだんは自分では気づいていない大切なところを、きゅっとつかまれるような感覚。こんな感覚をおぼえたのは、生まれて初めてだったと思います。

「大切なことは、自分の目を信じること。目の前の見えるものに素直になること」

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はしもとみおさんは、車に積める限りたくさんの動物たちを連れて、三重県から多摩川河川敷にやってきます。その名も「木彫りの移動動物園」。2日間だけの、はしもとみおさんの動物園に、どうぞお越し下さい。

<「はしもとみおの、木で寝ている柴犬を彫ろう!ワークショップ」のご案内>

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開催日時:
10月19日(土) 13:00~15:30 
10月20日(日) 13:00~15:30 

両日とも満席となりましたので、申し込みを締め切らせていただきます。たくさんのお申し込みありがとうございました。

参加費:4,200円(材料費込み)(当日のお支払い)
定員:各回15名(事前お申し込み制)
持ち物:あれば彫刻刀、汚れてもいい服装、エプロン、バンドエイド(手を切ってしまった時などに)、筆記用具、彫りたい柴犬の資料

10歳未満の子供のかたは保護者同伴でお願いします。
彫刻刀はこちらでも用意してありますので、なくてもかまいません。

【はしもとみおさんに聞きました】
Q1 もみじ市に来てくれるお客様に向けて自己紹介をお願いします。
三重県にアトリエを構え、主に木彫りの動物たちの肖像彫刻を作っています。

Q2 今回のテーマは「カラフル」ですが、あなたは何色ですか?
空色になれたらいいなと思っています。

Q3 今回はどんな作品をご用意してくれていますか? また「カラフル」というテーマに合わせた作品、演出などがあれば教えてください。
今回は羊さん、ヤギさん、犬たち、たくさんの等身大の彫刻たちも連れて行きます。ご自由に写真とかも取っていただけるように、移動動物園を開催したいと思います。

また、ちいさな動物たちは販売できるものも連れて行きます。動物たちそれぞれに、個性といういみでの「カラー」がたくさんありますので、ちいさくてもおおきくてもその彫刻の中にある「カラフル」を探して楽しんでいただければと思っています!

Q4 ご来場くださる皆さんにメッセージをお願いします!

さて、続いてご紹介するのはお菓子とグラフィックの甘い、甘いコラボレーション。女の子の好きがぎゅっと詰まったお菓子に紙ものをご用意してくれます。

文●鈴木静華